特集 サイトカインからみた周術期管理
肝切除により惹起される生体反応と組織傷害について—とくにサイトカインを中心として
著者:
島田光生1
竹中賢治1
調憲1
藤原雄1
祇園智信1
杉町圭蔵1
所属機関:
1九州大学医学部第2外科
ページ範囲:P.599 - P.604
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肝切除により惹起される反応と肝傷害のメカニズムについて,(1)プロスタグランディン系,(2)凝固線溶系,(3)サイトカイン系から検討した.(1)プロスタグランディン系では肝切除術中に,とくにトロンボキサンA2(TXA2)の上昇が観察された.このTXA2術中増加はTXA2合成阻害剤(OKY−046)により抑制され,その結果肝傷害の軽減(術後のAST値,ALT値の低下)が認められた.(2)凝固線溶系では肝切除術中早期に凝固系のみならず,独立的に線溶系も活性化されることが判明し,この術中大量出血の原因となる線溶亢進はnafamostat mesilateにより抑制できた.その結果,肝切除における無意味な凍結血漿使用を回避できた.(3)サイトカイン系では肝切除術中にIL-1β,IL-6の上昇が観察され,術後3日目にCRPのピークが観察された.また,このサイトカイン血症は術前のステロイド投与により抑制でき,その結果,術後の血清ビリルビン値の低下とCRPの低下が認められた.また,術中の肝生検組織の接着分子染色により,肝切除術中に肝類洞に接着分子が発現することが判明した.以上の如く,肝切除術中にすでに種々の反応が惹起されていることを銘記することが重要である.また,これらの過剰な生体反応の制御により,肝傷害を含む全身諸臓器の傷害軽減が可能であることが示唆された.