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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科52巻6号

1997年06月発行

雑誌目次

特集 輸血後GVHDをめぐる諸問題

〔Editorial〕輸血療法のあり方

著者: 高橋孝喜

ページ範囲:P.707 - P.708

 輸血をめぐる状況の変化が近年益々激しくなっている.1995年7月,輸血用血液も対象に含めた製造物責任法(PL法)が施行されたことに続いて,1996年3月,輸血後移植片対宿主病(輸血後GVHD)に関する訴訟が提起され,さらにそれを受けて,同年4月,厚生省より全国の医療機関に防止策の徹底を求める緊急通達が出されるに至った.いわゆる「薬害AIDS」の解明も,輸血のあり方を厳しく問い直すものといえる.
 PL法の対象である製造物に輸血用血液が該当するかは,下記の①〜③の理由により疑問がある.すなわち,

GVHDの発症機序と診断

著者: 丸屋悦子 ,   伊藤和彦

ページ範囲:P.709 - P.718

 輸血後GVHDは輸血後1〜2週間後に発熱,発疹が発現し,下痢などの臨床症状,肝機能障害,骨髄低形成に基づく白血球,とくに顆粒球の減少,血小板減少の検査所見が特徴的であり,治療が難しく,輸血後4週間前後で死に至る疾患である.この疾患の発症には輸血血液中のリンパ球が受血者により拒絶されず(すなわちhost versus graft reactionは起こらない),かつその拒絶されないリンパ球が活性化(アロ認識機構)し増殖することが必須条件である.これらの必須条件を成立させる免疫学的なメカニズムについて考察する.

輸血後GVHD治療の可能性

著者: 安川正貴

ページ範囲:P.719 - P.723

 輸血後GVHDに対しては,その予防対策を全国的規模で講じることが急務であるが,現時点では治療法の開発も重要な点乱である.輸血後GVHDの確立された治療法はないが,受血者同種抗原に対する供血者由来細胞傷害性T細胞(CTL)の機能抑制に焦点を当てるべきである.CTLの機能抑制には,抗原認識阻害,細胞内シグナル伝達抑制,細胞傷害機構の阻害などの可能性が考えられる.ほとんどの症例における直接死因は骨髄抑制による敗血症であるため,無菌室での治療やG—CSFの早期投与も重要である.輸血後GVHDの治療においてきわめて重要な点は,できる限り早期に診断し,強力なT細胞免疫抑制療法を実施することであると考えられる.

輸血後GVHDを防ぐための対策—自己血輸血

著者: 新名主宏一 ,   前畠良智 ,   下野治子

ページ範囲:P.725 - P.729

 自己血輸血療法の患者サイドの第一義的利点は,輸血後GVHDをはじめとした同種血輸血副作用の回避であることは論を待たないが,それと同等,あるいはそれ以上に大きな利点として,自己血は貴重な自己資源であり患者自身が主体であることに由来する克病心の高揚,そして,唯一無二の安全性に由来する術後合併症の軽減という2つの要素を背景とした“周術期患者のquality oflifeの向上”という点を強調したい.この点が強調される限り,同種血の安全性がいかに高まろうとも,本邦における自己血輸血療法は自然医療としてさらに定着していくものと考えられる.

輸血後GVHDを防ぐための対策—放射線照射輸血

著者: 関口定美

ページ範囲:P.731 - P.736

 わが国における輸血後GVHDは免疫の正常な患者に発生しており,従来報告された症例とは異なる,いわば輸血副作用の日本病といってもよい.発生の要因となる因子は心血管外科手術,担癌手術のみならず,消化管出血の場合も発生しており,高齢者,初回輸血,血縁者からの血液,採血3日までの新鮮血を輸血する場合はGVHDの危険があると考え,現在,最も確実な予防法は15〜50Gyの放射線照射を行うことである.緊急時等でやむをえず放射線照射を行えない時は,次善の策である保存14日以降の血液を使うとか,白血球除去フィルターの使用も考えることが必要であろう.日本輸血学会では放射線照射のガイドラインⅢを公表しており,これを参考にして普段から院内GVHD予防対策を決めておくことが大切である.

輸血後GVHDを防ぐための対策—白血球除去血輸血

著者: 坂本久浩

ページ範囲:P.737 - P.740

 輸血用血液に混在する白血球による副作用としては,発熱などの非溶血性副作用の発生頻度が高く,またCMV,HTLV-I,EBウイルス感染も引き起こすが,近年では致命率の高い輸血後GVHDが注目され,その予防対策の確立と普及が急がれている.その1つの方法として血液中の白血球の生理食塩水による洗浄,除去,解凍赤血球の利用や各種白血球除去フィルターによる吸着除去などの方法が実用化されているが,いずれも完全に白血球を除去することは難しく,白血球抗原による同種免疫や非溶血性副作用の予防,軽減やCMVの感染予防には効果があるが,輸血後GVHDは予防できていない.

特集関連症例

白血球除去フィルターによっても予防できなかった輸血後GVHD症例

著者: 高梨美乃子

ページ範囲:P.741 - P.744

 白血球除去フィルターを使用した患者に輸血後GVHDが発症した初めての報告である.
 患者は67歳の女性,非ホジキンリンパ腫に対し化学療法を行い,白血球除去フィルターを用いた20単位の血小板と8単位の赤血球輸血を受けた.化学療法後17日目,皮診が出現し,以後,発熱,全身紅斑,骨髄抑制,肝機能異常,悪心・嘔吐,タール便,水様下痢,汎血管内凝固症候群,吐血を呈し,化学療法後39日目に死亡した.病理解剖所見は急性GVHDに一致した.この症例はHLA-A24,Bw52,C blankという日本人に最も多いハプロタイプを持っており,患者はHLAハプロタイプが一致する血液を輸血された可能性が高い.
 白血球除去フィルターは輸血後GVHDを予防できないことが示された.輸血後GVHDの危険のある場合には,リンパ球を含むすべての血液製剤に放射線照射をすることを勧める.

HLA-AとDPの不一致による輸血後GVHD

著者: 南雲文夫

ページ範囲:P.745 - P.748

 胃潰瘍の出血による貧血改善のために行われた400ml由来赤血球濃厚液1バッグの輸血で輸血後GVHDを発症した症例を経験し,患者と供血者間でHLA-AとDPの不一致を確認した.患者は輸血後12日目に発熱,14日目から紅斑が出現し,34日目に消化管出血で死亡した.HLAは患者と供血者間でHLA-B,Cw,DRB1,DQA1,DQB1は一致していたが,HLA-AとDPB1が異なっており,患者は「HLA-A24,A33,DPB10201,0501」,供血者は「HLA-A24,A—,DPB11901,0501」であった.このクラスIとクラスII両抗原の不適合が輸血後GVHD発症の原因と考えられた.患者と供血者問でHLA-DPの不一致が確認された輸血後GVHDの症例は本例が最初であった.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・30 大腸

腹腔鏡下直腸前方切除術

著者: 渡邊昌彦 ,   大上正裕 ,   寺本龍生 ,   北島政樹

ページ範囲:P.699 - P.705

はじめに
 腹腔鏡下手術は胆摘術をはじめとして,種々の消化器疾患に応用されるようになった1).なかでも大腸は後腹膜から剥離し十分に授動すれば,小さな皮切で容易に腔外に露出し,切除・吻合を行うことができる2〜4).また,大腸は血管系も単純なため,腹腔鏡下に動静脈を処理することも比較的容易である.したがって,腸疾患は腹腔鏡下手術の良い適応と考え,筆者らは172例の各種腸疾患に対して本法を施行した.しかし,S状結腸下部や直腸の病変に対しては,少なくとも肛側腸管の切離と吻合を腹腔鏡下に行ういわゆる前方切除が必要である.前方切除は様々な腹腔鏡下腸切除の中でも難易度が高く,高度な手技と各種器械の応用力が要求される.
 本稿では前方切除の適応,方法および留意点などについて筆者らの経験をもとに詳述する.

病院めぐり

社会保険神戸中央病院外科

著者: 山根越夫

ページ範囲:P.749 - P.749

 社会保険神戸中央病院は,昭和23年,当時の神戸市生田区で病床45床で発足しました.昭和61年春,著明な人口増加を続ける神戸市北区へ迎えられ,遠くに淡路島,大阪湾を望む丘陵地に新築移転しました.開院間もなく満床となる盛況で,10年を経た今,地域の中核病院として不動の地位を確立した感があります.診療科は14科(424床)で,併設施設として健康管理センター(人間ドック),看護学校,老健施設を有し,さらに昨年より緩和ケア病棟もスタートし,予防医学から終末医療までのより高度な総合的医療をめざしている病院です.
 私ども外科のスタッフは西岡副院長を含め7名です.全員が京都府立医科大学第1外科出身で,2名の研修ローテーターが含まれます.病床数は45〜50床と少ないため常にベッド待ちの状態です.年間の手術件数は例年約600例前後で,週12例の手術枠をフル稼働しています.さらに地域の二次救急も担っているため,年間70例程度の臨時手術があります.

メディカルエッセー 『航跡』・10

メキシコの小児外科医

著者: 木村健

ページ範囲:P.750 - P.751

 1984年のメキシコ小児外科学会は,メキシコシティーから西に1時間程飛んだグアダラハラで開かれた.2年前のグアダラハラ初訪問に続いて,こんどは小児外科学会のメインゲストとして招いてもらい,アミーゴ達と懐しい再会をした.アミーゴ達というのは,“悪性”アレオラに率いられたグアダラハラ小児病院の外科チーム10名.ドクトールアレオラは本名をベニグノアレオラというが,“ベニグノ(良性)”とは誰一人として呼ぶものはない.みんなに“マリグノ(悪性)”と呼ばれている.一旦話しだすと演壇から引きずり下ろされるまでしゃべりつづける点が“悪性”と呼ばれる理由だそうだ.
 学会の前夜祭は10人ほどのマリアッチが奏でるラテンミュージックに乗ってはじまった.400人ほどの出席者の殆んどはカミさんや恋人連れで休養かたがたの学会参加であるから,パーティーが盛り上らぬわけがない.突然会場が暗くなり,ドラムの連続音とともにスポットライトがステージ中央に立っバンドリーダーに当てられる.ソンブレロを頭に載せ鼻下に八の字ヒゲを蓄えた男が,「ドクターキムラ,グアダラハラへようこそ」と流暢な日本語を発するのである.つづいて,「今日は日本の神戸からやって来た特別ゲストシンガーに,いま日本で大流行の『雨に咲く花』を唄ってもらいます」とアナウンスするではないか.何たる不意討ちとアミーゴ達を恨んでみてもときすでに遅し.

私の工夫—手術・処置・手順・32

固定マットレスと血圧計用マンシェットを用いた開胸用側臥位固定法

著者: 岡本亮爾 ,   菅野元喜 ,   福山訓生

ページ範囲:P.752 - P.752

 われわれは,胸腔鏡下手術および開胸手術に際する側臥位の体位の固定に外科手術用固定マットレスおよび血圧計用マンシェットを用いて良好な結果を得ているので報告する.
 手術台に外科手術用固定マットレス(商品名:イージートップ)を敷き,さらに患者の側胸部から側腹部にあたる位置に血圧測定用マンシェットを置く.麻酔操作が完了した後,患者を側臥位にし,固定用マットレスにより患者の体型を形作りマットレス内の空気を抜いてマットレスを硬化させる.さらに健側側胸部に置いた血圧計用のマンシェットを膨らませることによって患側側胸部を弧状に持ち上げ,患側肋間を十分に広げることができる(図).開胸時には血圧計用マンシェットの空気を抜くだけで患側肋間を狭めることができ,閉胸操作が容易に行える.

外科医のための局所解剖学序説・11

胸部の構造 6

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.753 - P.763

 25歳の女性の心臓が54歳の男性の縦隔に収まったのは1967年12月3日だった.BarnardCNが行った心臓移植成功のニュースはケープタウンからあっという間に世界をかけめぐり,当時中学生だった筆者の胸も高ぶらせた.
 移植は次のように行われた."ドナーの心臓を16℃まで冷却し,腕頭動脈より遠位で上行大動脈を外し,下大静脈を横隔膜の部位で,上大静脈を奇静脈が流入するレベルで,最後に左右の肺動脈を切り心臓を摘出した.

手術手技

自動吻合器を用いた幽門側胃切除術(Billroth I法)における工夫

著者: 忠岡信彦 ,   中村靖幸 ,   吉永和史 ,   猪又雄一 ,   柵山年和 ,   高橋宣胖

ページ範囲:P.765 - P.769

はじめに
 以前より,幽門側胃切除術Billroth I法再建における自動吻合器の応用に関する報告は散見され,その有用性が確認されている.近年,胃切除術における器械吻合に対する診療報酬点数が改訂された結果,より自動吻合器が利用しやすくなっており,今後さらにその利用頻度は増加していくと思われる.
 今までに発表された方法は,いずれも吻合に際してcircular staplerのshaft挿入を残胃の切開部または幽門より行うものが一般的である1〜5).しかし,その操作性,利便性については一長一短があり,さらに改善の余地があると考えられる.1994年より,筆者らも積極的に自動縫合/吻合器を利用してきたが,最近従来の方法の欠点を解消する新手技を考案し,良好な結果を得ているのでその手技(トルネード法)について述べる.

臨床研究

高速らせんCTを用いた腹腔鏡下胆嚢摘出術の術前難易度の検討

著者: 權雅憲 ,   乾広幸 ,   今村敦 ,   上辻章二 ,   上山泰男

ページ範囲:P.771 - P.774

はじめに
 腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下,LC)はその根治性と入院期間の短縮と早期の社会復帰,術後の疼痛と不快感の軽減,美容的な効果などの利点を持つことから,胆嚢摘出術の標準術式となっている1).術前胆道造影法としては,経静脈性胆道造影(以下,DIC)や内視鏡的逆行性胆道造影(以下,ERC),経皮経肝胆道造影などがあるが,低侵襲との観点からはDICが最も簡便である.大橋ら2)はDICを用いて,LCの術前難易度を評価し,その有用性を報告している.しかし,DICは簡便であるが,胆管描出能には限界があり,ERCは描出に優れるが,LCの術前検査としては侵襲が大きい.
 高速らせんCT(スパイラルCT;以下,SCT)は従来のCTではオーバーラップスキャンでしかできなかった間隙のない広範なスキャンが1回の呼吸停止で可能となり,造影スキャンの場合には短時間で均一な造影効果の高い撮影ができる.また任意の位置での多断面画像再構成ができるため,小さな病変をスライスの中心にしたパーシャルボリューム効果の少ない画像が得られる.さらに軸位方向の分解能と連続性がよいため多断面再構成像や高精度の3次元再構成像が得られるなどの利点を有している3).筆者らはDIC後にSCTを用いて,胆道を立体再構成し,LCの難易度との関連を検討した.

消化器外科手術における自己血輸血および遺伝子組み換えヒトエリスロポエチンの有用性に関する検討

著者: 篠塚望 ,   小山勇 ,   門倉正樹 ,   大畑昌彦 ,   安西春幸 ,   山崎達雄 ,   尾本良三

ページ範囲:P.775 - P.779

はじめに
 近年,消化器外科領域でも同種血輸血を回避し,自己血輸血を施行する試みが多く行われるようになってきた1〜3).しかし,癌患者では術前より貧血を呈する症例が多いことや,貯血のための十分な時間を確保できないなどの理由から,未だに普及していないのが現状である.今回筆者らは,消化器癌患者において,術前より遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン(rh-EPO:エポジン)を投与しつつ自己血貯血を施行し,その有用性について検討したので報告する.

反復開胸術後の呼吸障害に関する臨床的検討—特に再開胸のアプローチによる差異について

著者: 大田豊隆 ,   奥村伸二

ページ範囲:P.781 - P.785

はじめに
 肋間開胸や胸骨縦切開による術後呼吸機能への影響については従来多くの報告がなされてきた1〜5).両側開胸症例では術後長期的に呼吸機能が低下することが知られているが,再開胸法の差異による呼吸機能への影響については十分な検討はされていない.長期的な手術成績の向上と合わせて,近年の肺癌や動脈硬化性疾患(特に虚血性心疾患や大動脈瘤)の増加により両側開胸や肋間開胸と胸骨縦切開の組み合わせなど,異なるアプローチで再開胸を要する症例が増加してきている、今回,当院で経験した再開胸術症例の再開胸法の差異による術後の呼吸障害について検討したので報告する.

癌告知について—東北農村部の一般病院における現状

著者: 稲葉行男 ,   渡部修一 ,   野村尚 ,   大江信哉 ,   飯沼俊信 ,   林健一 ,   千葉昌和

ページ範囲:P.787 - P.791

はじめに
 インフォームド・コンセント(以下IC)の概念の普及に伴い,かつてはタブーとされてきた癌の告知も徐々に浸透しつつある1〜5).しかし,癌告知に対する各病院の方針はその地域性,立地条件,サポート体制,対象患者などの違いから一律ではなく,実際の医療現場ではケースバイケースに行っているのが現状と思われる.
 当病院は山形県内陸の農村部に位置する一般病院であるが6),1994年から患者の自己決定権の尊重を目的として「癌」という言葉を使っての癌告知を行ってきた.今回,当科で手術を受けた患者を対象に,周術期における癌告知の状況とその推移について検討したので報告する.

臨床報告・1

有症状Meckel憩室15例の検討

著者: 中村哲 ,   浮草実 ,   有本明 ,   山本俊二 ,   中島康夫 ,   花房徹児 ,   粟根弘治

ページ範囲:P.793 - P.796

はじめに
 Meckel憩室は,特有の症状がないため開腹手術時に偶然発見されるか,または腸閉塞,出血,炎症などの合併症をきたして発見されるものがほとんどで,その術前診断は容易ではない.筆者らが当科において過去20年間に有症状にて手術を行ったMeckel憩室症例は15例で,そのうち出血にて発症した症例に関しては全例,術前診断が可能で待機手術を施行しえたので,今回,その1例を呈示し若干の文献的考察を加えて報告する.

一期的根治術を施行し得た食道・膵頭部同時性重複癌の1例

著者: 大越修 ,   前田長生 ,   山口邦彦 ,   萩原優 ,   品川俊人 ,   山内栄五郎

ページ範囲:P.797 - P.801

はじめに
 近年の画像診断法の発達と普及や治療成績の向上により,食道の同時性重複癌症例も増加する傾向にあるが,膵癌との重複癌症例はきわめて稀とされている.今回,筆者らは胃切既往のある食道および膵頭部膵管内乳頭腺癌の同時性重複癌症例に対し,一期的根治術を施行し,良好な結果を得たので報告する.

前胸部巨大神経鞘腫の1例

著者: 中尾篤典 ,   阪上賢一 ,   光岡晋太郎 ,   宇田征史 ,   井藤久雄

ページ範囲:P.803 - P.805

はじめに
 神経鞘腫は神経の分布する部位ならば全身のいずれにも発生しうるが,胸壁発生例は比較的稀であり,本邦過去20年の文献のなかで,十分な記載のある報告例は自験例を含めて18例1〜5)に過ぎない.今回筆者らは前胸壁に発生した長径11cmに及ぶ大きな神経鞘腫を経験したが,検索しえた胸壁発生神経鞘腫のなかでは2番目に大きく,非常に貴重な症例と思われるので報告する.

後腹膜脂肪肉腫の5例

著者: 池田英二 ,   小野監作 ,   大塚康吉 ,   湯浅一郎 ,   小西寿一郎 ,   國友忠義

ページ範囲:P.807 - P.810

はじめに
 後腹膜原発悪性腫瘍中,わが国では脂肪肉腫が最も頻度が高く1),また術後局所再発が起こりやすい.筆者らは現在まで5例の後腹膜脂肪肉腫症例を経験しており,特に再発に対する治療について長期予後の点から報告する.

後膵腹膜窩に発育した巨大胃平滑筋肉腫の1例

著者: 松谷泰男 ,   尾池文隆 ,   中西章人 ,   鎌田壽夫 ,   宍戸直彦 ,   近藤隆史 ,   長尾修二

ページ範囲:P.813 - P.817

はじめに
 胃平滑筋肉腫は胃原発の悪性腫瘍の中で1%前後を占めるにすぎない稀な疾患である.そのうち,腫瘍の最大径が15cmを超えるものは巨大胃平滑筋肉腫と呼ばれており1),現在まで本邦において約80例の切除報告がある.しかしながら,胃から発生した腫瘍が膵の背側に存在したという例は,文献を渉猟する限り見当たらない.今回筆者らは,膵背側に存在する一見後腹膜原発腫瘍を思わせる巨大な腫瘍が,その後の諸検査,手術所見により,胃穹窿部から発生して膵背側の後膵腹膜窩において発育した平滑筋肉腫であると確診できた稀な症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

小腸憩室頸部捻転の1例

著者: 竹内真 ,   宮崎洋史 ,   古川秋生 ,   市東昌也 ,   神徳純一

ページ範囲:P.819 - P.822

はじめに
 今回筆者らは,回腸上部(小腸全長の中央)に存在する22×9×6cmという巨大な真性憩室が頸部の軸捻転を起こし,腹膜炎を発症した成人例を経験した.この憩室はいくつかの点で単純にMeckel憩室とは考えにくい.
 Meckel憩室,および類似の回腸憩室について若干の考察を加えて報告する.

空腸平滑筋肉腫による成人腸重積症の1例

著者: 和田義人 ,   林田啓介 ,   枝国信三 ,   鹿毛明義 ,   自見厚郎

ページ範囲:P.823 - P.826

はじめに
 成人腸重積症は日常臨床で常に考慮するほど高頻度の疾患ではなく,乳幼児に比べ比較的稀な疾患とされ1),その原因として60〜80%が腫瘍によるものと考えられている2).小腸では悪性リンパ腫3),腺癌や脂肪腫4)などの報告があるが,小腸平滑筋肉腫の頻度は低く6),またその約75〜90%が管外性に発育するため閉塞症状は少ない10).今回筆者らは,腸重積を契機に発見された空腸平滑筋肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

空腸悪性平滑筋芽細胞腫が先進部となった成人腸重積症の1例

著者: 淀縄聡 ,   小川功 ,   山部克己 ,   平野稔 ,   高橋正彦

ページ範囲:P.827 - P.830

はじめに
 成人における腸重積症は比較的稀な疾患であり,腸管の腫瘤性病変に起因することが多い1,2).今回,筆者らは空腸に発生した悪性平滑筋芽細胞腫が先進部となった腸重積症の1例を経験したので報告する.

左腎門部前面に広がる後腹膜腫瘍として発見された十二指腸平滑筋肉腫の1例

著者: 藤川貴久 ,   西川俊邦 ,   松末智 ,   武田博士

ページ範囲:P.831 - P.834

はじめに
 小腸の平滑筋肉腫は小腸悪性腫瘍の25〜30%を占め1〜3),悪性リンパ腫,小腸癌と合わせて全体の約90%を占めている.発生部位は空腸,とくにTreitz靭帯から60cm以内の空腸に好発しているが2,3),十二指腸の平滑筋肉腫はきわめて稀で,報告が散見されるのみである4〜10).今回,筆者らは,左腎門部前面に広がる後腹膜腫瘍として発見された十二指腸平滑筋肉腫の症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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