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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科52巻7号

1997年07月発行

雑誌目次

特集 経腸栄養法—最新の動向

経腸栄養法の適応—静脈栄養法と比較して

著者: 田代亜彦 ,   山森秀夫 ,   高木一也 ,   林永規 ,   新田宙 ,   佐野渉 ,   豊田康義 ,   板橋輝美 ,   西谷慶 ,   平野純子 ,   中島伸之

ページ範囲:P.849 - P.856

 経腸栄養法は,静脈栄養法に比べ安全であり,廉価に施行出来るなどの利便性ばかりが強調されたため,cost benefitに鈍感な日本の医療制度のもとでは外国に大きく出遅れた形になった.本稿では経腸栄養法のメリットと静脈栄養のデメリットについてその学問的な背景を述べ,特に重症患者の栄養管理における経腸栄養法の意義につき概述する.

経腸栄養法に用いられる器材と方法

著者: 山中英治 ,   森毅 ,   明平圭司 ,   道浦拓 ,   中根恭司 ,   日置紘士郎

ページ範囲:P.857 - P.861

 術前術後の輸液・栄養管理には,中心静脈栄養法(IVH)が便利であるため汎用されてきた.しかしカテーテル感染などの合併症を考慮すると,短期の栄養管理には末梢静脈栄養法で十分であり,また長期間の栄養管理が必要な症例には生理的で安全な経腸栄養法(以下,EN)の施行が望ましい.外科の臨床においてENがそれほど普及しなかった理由として,投与経路であるカテーテル留置の煩雑さ,カテーテル閉塞などのトラブル,下痢,腹満,腹痛などの副作用症状などが挙げられる.ENの有用性が主張されるにつれて,外科医のENに対する理解や施行上の知識も深まってきた.そして優れた経腸栄養剤の開発に加えて,カテーテルやポンプなどの器材も改良されたことから,カテーテルの留置の簡便化,カテーテルトラブルや副作用症状の減少が実現しつつある.さらに在宅栄養管理が奨められる方向にあり,器材や保険点数などが改善されれば,ENは一層普及するものと考えられる.

経腸栄養剤の種類・特徴

著者: 碓井貞仁

ページ範囲:P.863 - P.869

 経腸栄養法は術前・術後栄養管理,あるいは外来栄養管理に不可欠のもので,その存用性はきわめて高い,近年経腸栄養法の進歩,発展は目覚しいものがあり,経口,経管栄養剤も次々と開発されている.筆者は従来から経腸栄養剤を自然食品流動食,半消化態栄養剤,完全消化態栄養剤に分類していたが,リキッドタイプ経腸栄養剤の開発によりこの分類法はいささか色あせたものとなり,これに代わる時代に即した分類が必要と思われる,しかしながらいかに優れた製剤であってもそれらの特徴,種類,適応,投与法などを理解し正しい使い方をすることが重要で,臨床的有用性もそれによって大きく異なってくる.優れた製剤の開発と正しい適応の選択,投与上のいくつかのポイントを守ることが有用性の評価につながるものと考えられる.

経腸栄養法における合併症とその対策

著者: 城谷典保 ,   亀岡信悟

ページ範囲:P.871 - P.877

 経腸経管栄養法は強制栄養であり,実施に伴い合併症が生じることがある.消化器系合併症では,腹部膨満,悪心,嘔吐や下痢が発生しやすい.代謝合併症は,水分過剰投与,高張性脱水,糖代謝異常,必須脂肪酸欠乏症,高窒素血症,高アンモニア血症,肝機能障害,電解質異常,ビタミン欠乏症,微量元素欠乏症などがみられる.感染性合併症としては,吸引性肺炎や栄養剤,器材の汚染による腸炎がある.栄養チューブによる合併症としては,経鼻腔栄養チューブではサイズや材質によるものが多く,胃瘻,腸瘻チューブでは,留置時の手技にまつわり重大な合併症が発生することがある.これらの合併症の原因、診断,処置および予防策について述べた.

特殊病態下における栄養法 ①肝不全・慢性肝障害

著者: 齋藤英昭

ページ範囲:P.879 - P.884

 肝臓は生体での代謝で中心的な役割をはたしている.このため肝障害では,エネルギー代謝,糖,蛋白・アミノ酸,脂質などの代謝に異常を生じる.とくに慢性肝障害では脂肪の燃焼の増加と骨格筋の崩壊によって,体脂肪量と骨格筋蛋白量が減少する.また芳香族アミノ酸代謝の異常が肝性脳症の一因とも言われる.経腸栄養は,このような慢性肝障害患者の蛋白—カロリー不足を是正する.また肝不全用経腸栄養製剤による肝性脳症発症予防効果も示唆されている.しかし,多彩な原因による肝障害での経腸栄養管理については,なお一層の綿密な臨床比較検討が必要である.

特殊病態下における栄養法 ②腎不全

著者: 久保仁 ,   加藤尚彦 ,   大井景子 ,   中村宏二

ページ範囲:P.885 - P.889

 腎不全患者には糖・蛋白質・脂質・電解質など種々の代謝異常があり,低栄養の患者も多い.経腸栄養を行う場合,基本的には高カロリー・低蛋白で水分およびNa,Kなどの電解質含有量が少ないものがよい.しかし,慢性腎不全,急性腎不全,および合併症の有無など様々な状況に応じて必要量は著しく異なり,代謝異常についての十分な知識が無いと栄養管理が不可能であるばかりか,患者を危険な状態に陥れかねない.
 本稿では腎不全患者の経腸栄養を行う場合の栄養管理の基本と経腸栄養法の実際および限界について述べた.

特殊病態下における栄養法 ③短腸症候群

著者: 遠藤昌夫

ページ範囲:P.891 - P.898

 短腸症候群の予後は,残存腸管の長さと代償機能に依存している.本症候群に対する栄養管理は,消化管からの吸収不全に基づく多種の栄養的欠落をいかに過不足なく補給し,残存腸管の代償機序をいかに速く,十分に発達させるかの2点に集約される.術後早期には経腸栄養を補助とする静脈栄養,後期には静脈栄養を補助とした経腸栄養が管理の基本となる.経腸栄養の役割はin-traluminal stimulationとintraluminal nutritionで,早期の開始によりTPNの合併症としての胆汁うっ滞性肝障害と腸粘膜萎縮を防止し,グルタミンおよびアルギニンの添加により粘膜増殖を促す.しかし,過剰な経腸栄養負荷に伴なう粘膜障害とbacterial translocationには絶えず注意が必要である.

特殊病態下における栄養法 ④悪性腫瘍(メサイオニン)

著者: 久保田哲朗

ページ範囲:P.899 - P.903

 メサイオニンは必須アミノ酸であり,重要なメチル供与体である.腫瘍細胞の多くはover-methylationの状態にあり,メサイオニンの欠乏は直接的に腫瘍の増殖を抑制する.AO-90はメサイオニン欠乏輸液であり,5-fluorouracil,mitomycin Cとの併用により進行・再発胃癌に対して26〜30%の奏効率を発現し,通過障害の改善などQOLの改善をもたらした.メサイオニン分解酵素は特異的にメサイオニンを分解するため,絶食することなく血清中および腫瘍中のメサイオニン濃度を低下させることが可能である.現在まで3症例に対する投与が行われ,安全性と血清中メサイオニンの有効な低下が確認された.

在宅経腸栄養法

著者: 酒井靖夫 ,   村上博史 ,   丸田智章 ,   畠山悟 ,   下山雅朗 ,   蛭川浩史 ,   須田武保 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.905 - P.910

 在宅経腸栄養法(以下,HEN)は通常病院内で行われている経腸栄養を,適切な患者選択のもとに,簡略化された方法で家庭において行うものであり,患者のQOLおよび医療経済上も有用で,1988年4月に医療保険適用がなされてから一層普及してきている、1994年4月の改正で,何らかの消化吸収障害がある症例に限定されていた疾患枠が撤廃され,医療機関の届け出の必要もなくなったが,消化態栄養剤を経管的に投与した場合に限定されており,医学上の適応と医療保険適用とに若干のずれがみられる.本稿では,HEN施行時の経腸栄養剤の選択や投与経路などで医療保険上留意すべき点,患者指導の内容や長期管理などについて概説した.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・31 大腸

先天性腟欠損症に対するS状結腸を用いた腹腔鏡下造腟術

著者: 大橋秀一 ,   神野治樹

ページ範囲:P.841 - P.846

はじめに
 近年,腹腔鏡下胆嚢摘出術1)をはじめとする内視鏡下手術は急速に発展,普及するとともに,大腸手術に対してもその適応拡大が図られつつある2).筆者らも腹腔鏡下大腸手術の豊富な経験を基に,最近では婦人科との連携によって,先天性腟欠損症に対する有茎S状結腸を用いた腹腔鏡下造腟術を施行して良好な成績を得ている3)
 先天性の腟欠損症は,一般的にはRokitansky-Kuster-Hauser症候群と呼ばれており4),女性器の発育障害による先天性腟欠損と痕跡的子宮が主な異常で,第2次性徴や卵巣・卵管・外陰部は正常である.本症の治療法としては外科的な形成手術あるのみであり,中でも遊離皮膚弁利用法,骨盤腹膜法,S状結腸利用法の3つの方法が主として行われている.いずれの方法にも長所短所があり,作製時の安全性や簡便性という点では遊離皮膚弁利用法に一日の長があるが,機能性,自然性,永続性においてはS状結腸利用法が最も優れている5)

病院めぐり

市立敦賀病院外科

著者: 石田文生

ページ範囲:P.911 - P.911

 敦賀湾の幸の集まる漁港あるいは北前船で賑わう貿易港として発達した敦賀の街は,西の舞鶴,小浜からの街道と北陸道の交わる陸路の要所としても栄えてきました.古くは都を去った足利義昭が滞在した金ヶ崎の地も今では桜の名所として市民に親しまれています.最近では高速増殖炉「もんじゅ」とナホトカ号の重油漂着で街の名前が有名になってしまったのは悲しいことですが…….
 この敦賀に明治15年,県立敦賀病院として開設されたのが当院のはじまりで,昭和30年に市立敦賀病院と改称されました.平成6年に現在の診療施設が完成し,診療科16科,病床358床(うち外科40床)の診療体制となりました.病棟からは北の敦賀港に停泊する小樽行きのフェリーが見え,南には滋賀県と境をなす山々の緑が目を楽しませてくれます.

メディカルエッセー 『航跡』・11

ウイーン—ブダペスト間無賃乗車

著者: 木村健

ページ範囲:P.912 - P.913

 1985年7月,ウィーンで開かれた英国小児外科学会を終えて,鉄路ハンガリーのブダペストに向かった,ウィーン駅午前11時発ブダペスト行き国際列車は,続いて開催されるハンガリー小児外科学会に出席する小児外科医のグループでほぼ満席であった.学会の前にウィーンに向かう途上立寄ったスイスのチューリッヒ市内の旅行社でこの列車のコンパートメントを予約,往復の旅費25ドルを払って手にしたチケットをパスポートの間に挟んで重いラゲージをひきずりながら広い駅の構内で乗るべき列車を探す.低いプラットホームから客車のデッキに上るステップに足をかけると,ひと安心のせいか,どっと汗がふき出るのであった.
 チケットに書かれた番号のコンパートメントにたどり着く.この車輌の乗客はみんな見慣れた顔ばかり,まるで国際小児外科修学旅行の団体のような様を呈している.サンディエゴのデビッド・コリンズ夫妻が同じ6人掛けのコンパートメントに坐っていて,アメリカンらしく歓声で迎えてくれるのであった.何年か前,サンディエゴ小児病院に招いてもらい一緒に手術をした鎖肛の子どものその後の経過や,奥方の可愛がっていた仔牛ほどの愛犬が押込み強盗を退散させたことなど,想い出ばなしにふけっている間にも,列車はすべるがごとくウィーン駅をあとにしたのであった.ハンガリーとの国境まで30kmと無いのである.

外科医のための局所解剖学序説・12

胸部の構造 7

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.915 - P.925

 最初に一期的に,完成された形で肺全摘手術を行ったのはGraham EAである.この手術を受けた患者は48歳の内科医で異常なほど冷徹であった.彼はGrahamに正確な診断を求めた.左上肺の気管支原発性肺癌であると告げられた時,身辺を整理するために一端故郷に戻りたいと,また仲間の病理学者に見せるためにバイオプシーのスライドを貸して欲しいとGrahamに頼んだ.当時のGrahamは知らなかったが,故郷で墓まで購入していたのである.一方で彼はオプティミストでもあった.欠けた歯を治療してBarnes Hospitalに舞い戻った.
 1933年4月5日,歴史的な手術が行われた.しかしこれは最初から意図されたものでなく,当初は上肺切除のみに限る予定であった.ところが開胸すると腫瘍は下葉の気管支に近接しており,また下葉の上部に結節が認められ,さらに葉間裂がはっきりしなかった.このような状況下でGra-hamは次のように述べている."肺全摘だけが唯一の選択だと私には思えた.患者の友人の内科医が手術室に来ていたので,彼に上葉切除は無意味で全摘をやるしかないのだと述べ,意見を求めた.しかしこのやりとりはあまり役に立たなかった.彼はこのような手術は以前行われたことがあるかと聞いてきたので,「ない」と答えた.動物では成功しており,実際私自身も動物ではやったことはあるが,ヒトで一期的に全摘した例は知らないと付け加えた.

遺伝子治療の最前線・1【新連載】

遺伝子治療の現状

著者: 島田隆

ページ範囲:P.927 - P.930

 遺伝子治療は遺伝病の治療法として古くから考えられてきた.実際の臨床試験はアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の治療法として1990年に米国で開始された.その後,遺伝子治療は癌やエイズの治療法としても試みられるようになり,これまでに1,500人以上の患者に対し遺伝子が導入されている.しかし,このように多くの臨床試験が行われているにもかかわらず,その有効性が確認された例はまだ少ない.これまでの臨床研究で重篤な副作用は報告されていないが,臨床効果を得るためには,まだ多くの技術的問題があることが明らかになっている.今後,遺伝子治療が有効な治療技術として発展していくためには,まだ多くの基礎研究が必要である.本稿では現在,米国を中心に進められている遺伝子治療臨床研究のこれまでの経過および現状につき概説する.

臨床外科交見室

癌および癌患者の集学的治療に思うこと—QOLをめざして

著者: 高尾哲人

ページ範囲:P.931 - P.931

 現在,広く行われている癌の集学的治療は,癌を根治して癌死を予防することを目的としている.その長年にわたる業績と反省から,癌対策医療は,癌患者のQOL(quality of life)を目的とした集学的治療に向けられている.癌患者全体の5年生存率は,現行の集学的治療法を駆使しても,五分五分と思われる.したがって,癌根治を目的とした新たな集学的治療法の開発を計る一方,癌患者に対してQOLを目的とした集学的治療を行う必要がある.
 外科的切除術によって根治できる早期がん発見の動機は,がん検診である.喫煙は,多くの癌種発生の高危険因子である.高カロリー・高脂肪食と低繊維食は,大腸癌や乳癌発生の高危険因子である.また,発癌高危険因子は,癌以外の成人病の発生にも,大いに関与している.とくに,呼吸・循環器系には,多大な障害を与える.がん検診の対象者は,日常生活において発癌高危険因子に晒されているか,または,自ら危険因子を取り込んでいる人達である.例えば,肺癌検診は,喫煙者を対象としている.したがって,喫煙の生体に及ぼす悪影響を啓蒙して禁煙を指導することなく検診を行うことは,かえって多くの受診者に喫煙を奨励する結果を招くおそれがある.がん検診の目的は,発癌高危険因子を日常生活から除外することの啓蒙と,癌根治可能な小さな癌腫を発見することにある.

私の工夫—手術・処置・手順・33

腹腔鏡下虫垂切除術における美容的観点からみた皮膚切開

著者: 小笠原邦夫 ,   西井博

ページ範囲:P.932 - P.932

 虫垂炎に対する虫垂切除症例は若年者にも多く,手術創を気にすることも多い.最近,われわれは男性4例,女性3例の計7例に対し,従来の報告とは異なった皮膚切開創から腹腔鏡下虫垂切除手術を行い,最少限度の侵襲で病巣の摘出を行っている.患者側からも負担の軽減と美容的観点から好評が得られている.
 本術式は全身麻酔下に施行する必要がある.Trendelenburg位で臍内側上方に10mmの弓状切開を加え,open laparo-scopyの手法で骨盤腔へ向けて10mmトラカールを刺入する.同部から腹腔鏡を挿入し観察した後,トロカールの挿入部位は腹腔鏡観察下に恥骨上部左右両側のpubic hairの部位から2本のトロカール(10mm)を挿入する(図1,2).下腹部では腹膜と筋層との固定が弱いため,切れの良いトロカールが必要である.恥骨部から挿入した鉗子類を用いて,虫垂切除術を行っている.虫垂間膜をいくつかの格子状に剥離し,clip applierを使用しクリッピングを行い鋏で切離している.虫垂はPretiedloopなどを使用して5mmの間隔で二重結紮し切離する.最近は虫垂および虫垂間膜をEndo-GIAを使用し切離している.手術後は恥骨部右側からペンローズドレーンを挿入し,先端は回盲部からDouglas窩に誘導している(図3).

臨床研究

99mTc-MIBI乳腺シンチグラフイーによる乳癌および腋窩リンパ節転移の診断

著者: 山本俊二 ,   鍛利幸 ,   浮草実 ,   粟根弘治 ,   太田仁八

ページ範囲:P.933 - P.936

はじめに
 乳癌の画像診断では,マンモグラフィーが,乳腺超音波検査,PET,MRIに比べて有用であるといわれているが1),乳腺の発達した症例では,病変の描出が悪く,false-negative症例が25%から45%あるという2)
 腋窩リンパ節の転移の有無は,正確な病期や予後の判定に重要であるが3),腋窩郭清に伴う合併症もあり,腋窩リンパ節転移に対する非侵襲的診断法が確立されれば,不必要な生検や腋窩郭清を行わなくてもよい2,4)

臨床報告・1

異所性(腋窩)乳腺に発生した線維腺腫の1例

著者: 宮本康二 ,   長谷川毅 ,   角田明美 ,   大野あけみ ,   池田庸子

ページ範囲:P.937 - P.940

はじめに
 異所性乳腺に腫瘍が発生することは稀であり,特に線維腺腫の報告例はきわめて稀である1)
 今回,筆者らは右腋窩の異所性乳腺に発生した線維腺腫の1例を経験したので報告する.

回盲部放線菌症の1例

著者: 高島健 ,   佐々木一晃 ,   平池則雄 ,   桧垣長斗 ,   平田公一 ,   岩木宏之

ページ範囲:P.941 - P.944

はじめに
 放線菌症は近年の抗生剤の普及に伴い,今日では比較的稀な疾患となっている.最近,われわれは回盲部放線菌症の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

腹腔鏡下に誤飲性異物(縫い針)を摘出した1例

著者: 朝蔭直樹 ,   前川博 ,   四蔵朋之 ,   塩崎哲三

ページ範囲:P.945 - P.947

はじめに
 消化管異物はそれほど稀な疾患ではなく,自然排出も多いため手術に至ることは少ないとされている1).今回,誤飲した縫い針を腹腔鏡下に摘出し得た1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

腸型Behçet病が疑われた多発性結腸潰瘍の1切除例

著者: 井上雄志 ,   松山秀樹 ,   手塚秀夫 ,   杉山勇治 ,   丸山千文 ,   大網弘 ,   吉田勝俊

ページ範囲:P.949 - P.952

はじめに
 Behçet病は口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍,皮膚症状,眼症状,外陰部潰瘍を主症状とする全身性炎症性疾患1)で,その副症状として消化管に難治性潰瘍を有するものは腸型Behçet病と呼ばれている2,3).Behçet病の消化管潰瘍はUI-ⅢやUI-Ⅳといった深い潰瘍を有することが多く,穿孔性腹膜炎を起こし開腹時にはじめて診断されることも少なくない4).今回われわれは術前および虫垂切除術中にも診断困難であり,切除した結腸に40個以上ときわめて多数の潰瘍を伴っていた腸管Behçet病(疑い)の1切除例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

捻転を合併した小腸間膜原発のlymphangiomaの1例

著者: 山岸文範 ,   沢田石勝 ,   東山考一 ,   穂苅市郎 ,   坂本隆 ,   藤巻雅夫

ページ範囲:P.953 - P.956

はじめに
 小腸間膜原発のlymphangiomaは本邦では現在までに35例報告されているだけの稀な良性腫瘍である.症状は腹痛を中心として多彩であり,CT,超音波検査にて多胞性嚢胞を示すことがあるが術前の確定診断は困難である.今回,術前に卵巣頸捻転と診断した小腸間膜原発のlymphan-giomaを切除したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

結腸癌に併存したメッケル憩室カルチノイドの1例

著者: 浮草実 ,   山本俊二 ,   有本明 ,   中島康夫 ,   花房徹児 ,   粟根弘治

ページ範囲:P.957 - P.960

はじめに
 消化管カルチノイドの発生部位は,本邦では直腸,十二指腸の順に多いとされている1)が,メッケル憩室内に発生することは非常に稀である.われわれは,結腸癌にメッケル憩室カルチノイドが併存した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

石灰化を呈した有茎性胃外発育型平滑筋肉腫の1例

著者: 石田孝雄 ,   小畑満 ,   永合正浩 ,   代田喜典 ,   井ノ口幹人 ,   柿本應青

ページ範囲:P.961 - P.965

はじめに
 有茎性の石灰化を伴った胃外発育型平滑筋肉腫(extra gastric growing Peduncular leiomyosar-coma:EGPLS)はきわめて稀な疾患であり,本邦報告例は自験例を含めて2例にすぎない.われわれは腹部単純X線で石灰化陰影を指摘されたのを契機に発見されたEGPLSを経験し,局所切除を施行したので報告する.

直腸狭窄をきたした子宮内膜症の1例

著者: 坂口昌幸 ,   久米田茂喜 ,   岩浅武彦 ,   堀利雄 ,   小池綏男 ,   石井恵子

ページ範囲:P.967 - P.970

はじめに
 腸管子宮内膜症は比較的稀な疾患であるが,下部消化管の鑑別診断では忘れてはならない疾患である1).今回われわれは,直腸狭窄をきたし,直腸癌との鑑別が困難であった子宮内膜症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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