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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科52巻8号

1997年08月発行

雑誌目次

特集 Q&A 自動吻合器・縫合器の安全,有効な使い方

(Editorial)器械吻合・縫合の小史と問題点

著者: 萩原優

ページ範囲:P.987 - P.990

はじめに
 創傷縫合の歴史は古く,紀元前900年代に蟻に傷口を噛ませ,頭だけを残して縫合した生物ステープルに端を発し,その後様々な工夫がなされてきた.
 器械吻合・縫合が本格的に開発されたのは,この半世紀であり,現在のように広く一般的に臨床応用されたのは,わずか20年前からであり,保険で認められてからは10年あまりに過ぎない.

(Q1)自動吻合器のアンビルサイズならびに自動縫合器のサイズをどのように決めるか.

著者: 宇田川晴司 ,   鶴丸昌彦 ,   梶山美明

ページ範囲:P.991 - P.993

自動吻合器(EEA®)のアンビルサイズ決定
 「EEA®(オートスーチャージャパン)のアンビルサイズ」とは21,25,28,31,34とそろったEEA®のカートリッジ外径を示し,ステイプルのサイズは同一で,アンビルと本体の間隙幅によるステイプルの締め具合はEEA®本体に表示される安全域内で可変である.基本的に消化管吻合部の内径は可及的に大きくあるべきだとすれば,アンビルサイズを決定するのはアンビルの通る臓器のサイズと本体の通る臓器のサイズの2つである.EEA®25ではカートリッジの小ささのために,集束結紮した余剰組織が縫合線に迷入する危惧を感じることもあり,極力28以上のサイズを使うように心がけている.
 以下,胃全摘術後の食道空腸吻合を例にとって解説する.筆者らの1,135例の胃全摘,噴門側胃切除例に伴う食道空腸吻合の経験(1979年2月〜1995年12月)では,EEA®25が173例15.2%に,EEA®28が959例84.5%に,EEA®31が3例0.3%に使用された.最近の10年間(表1)ではEEA®25を使用したのは695例中77例11%で,EEA®25使用の理由の記載を検討すると,少なくとも12例16%において,食道断端口径ではなく空腸への本体の挿入困難が理由とされている.

(Q2)腸管が攣縮してアンビルの挿入が困難な時,挿入中に腸管が裂けてきたらどうするか.

著者: 小澤壯治 ,   安藤暢敏 ,   北川雄光 ,   北島政樹

ページ範囲:P.994 - P.995

 食道切除術や胃切除に伴う消化管再建術にはサーキュラーステイプラーを用いることが多い.このほかにS状結腸切除術や前方切除術においても器械吻合が多用されるが,アンビル挿入に関する注意点は径の細い食道・消化管吻合の場合に代表される.
 食道・胃管吻合,食道・結腸吻合,食道・空腸吻合などが行われるが,アンビル径は25mm以上を用いることを原則としている.食道狭窄などのために口側食道が拡張している場合には28mm径のアンビルを挿入することができる.しかし,口側食道の口径が細く,25mm径のアンビルが挿入できそうにない時には,教室では術後の吻合部狭窄を危惧して,あえて細径の21mm径のアンビルを用いてはいない.

(Q3)Pursestring sutureの後にタバコ縫合糸がずれたり,ステイプルから外れたりしないための工夫は.

著者: 小澤壯治 ,   安藤暢敏 ,   北川雄光 ,   北島政樹

ページ範囲:P.996 - P.996

 Pursestring suture用の器具には2種類あり,タバコ縫合(巾着縫合)鉗子(PSI)と自動タバコ縫合器(Purstring 45または60,USSC製)である(図1).
 前者は腸管の切断予定部を挟み,直針付き2-0ナイロン糸を鉗子に作製されている孔を通過させることによって自動的にタバコ縫合が行われる.後者は腸管の切断予定部を挟み,ちょうどズボンのベルト通しのようにステイプルで2-0非吸収糸を腸管壁に固定するしくみである.

(Q4)自動吻合器使用後,センターロッドに巻きついた切除腸管が全周性のリングになっていない時はどうするか.

著者: 亀岡信悟 ,   板橋道朗

ページ範囲:P.998 - P.999

 自動吻合器使用後の吻合の成否は,センターロッドに巻きついた切除腸管が,口側・肛門側ともに全周性のリング(“ドーナッツ”)になっているか否かと,leakテストで確認する必要があることである.この“ドーナッツ”の確認は,自動吻合器を用いて吻合を行う際には非常に重要な操作である.
 筆者らが行っている“ドーナッツ”の確認方法を示す.

(Q5)Leakテストはしているか.その場合はどんな方法で行っているか.また,leakが見つかった時はどう対処するか.

著者: 亀岡信悟 ,   板橋道朗

ページ範囲:P.1000 - P.1001

 Leakテストは,自動吻合器を用いて器械吻合を行った際に,吻合の確認および追加縫合すべき部位の同定を行う重要な検査法である.したがって,吻合に少しでも不安がある場合には,必ずleakテストを施行すべきである.自動吻合器を用いて器械吻合を行う機会が最も多い食道空腸吻合および低位前方切除についてleakテストの適応,方法およびleakが見つかった場合の対処とそのコツについて具体的に述べる.

(Q6)自動吻合器使用時,締め込みノブを回して吻合する腸管を密着させるが,締め込みノブを締めすぎないほうが良いのか.また,ファイア操作は締めすぎないほうが良いのか.

著者: 亀岡信悟 ,   板橋道朗

ページ範囲:P.1002 - P.1004

締め込みノブ
 安全な器械吻合を行うためには各々の器械の構造と特徴を理解することが肝要である.現在繁用されている自動吻合器は,エチコンエンドサージェリー社のILSとオートスチャージャパン社のPPCEEA®であろう.この2機種はほぼ同様の機構で成り立っているが,細部では異なっている.
 吻合腸管を密着させる締め込みノブは,いずれもネジによる回転式である.締め込みの表示もほぼ同様で,適正な締め込みはガップセッティングスケール内にインジケターが表示される(図).ILSでは,締め込み程度に若干の幅が与えられている(2.5〜1.0mm).吻合される腸管の厚みは均一ではなく,浮腫や肥厚を伴う部位でやむをえず吻合する場合には,状況により締め込み程度を変える必要があるからである.吻合する部分の組織が異常に厚くあるいは薄く見える場合には,術者の判断により,吻合に適切な程度に組織が圧縮されるまで回転により調節を行う.一方,PPCEEA®では,締め込みノブの締め具合に関係なく一律に2.0mmの設定となっている.ファイア操作はセーフティを解除して行うが,いずれの吻合器も適正範囲内に締め込みノブが締め込まれていないときは,セーフティが解除できない構造となっている.

(Q7)直線状で両側縫合式の自動縫合器使用時,カートリッジを交換後にファイアリングノブ(プラスチックハンドル)が作動しなくなったら.

著者: 吉野肇一

ページ範囲:P.1006 - P.1007

 まず,次の機構を理解する必要がある.
 GIA®(オートスーチャージャパン)では,カートリッジを本体に装着する前でも,誤ってファイアリングノブを少しでも動かしたのちにファイアリングノブを元の位置に戻すと,安全機構が作動して,ファイアリングノブはロックされ,動かなくなる.カートリッジを本体に装着したあとでも,ファイアリングノブを少しでも動かしたのちに,すなわち,少しでもファイア操作を行ったのちに,ファイアリングノブを元の位置に戻すと,同様にロックされ,動かなくなる.これは,最初のファイア操作でステイプルがカートリッジから出てしまった状態で,再度,ファイア操作を行うと,ステイプルなしで胃腸を離断するという危険な操作になることを防ぐためである.

(Q8)自動縫合器使用時,余ったステイプルが腹腔内に落ちないようにする工夫は.

著者: 吉野肇一

ページ範囲:P.1008 - P.1008

 アンビル側にグリセリン等の粘性のあるものを塗布して,組織にかからないステイプルをアンビルにくっ付けてしまうとか,術野にガーゼを敷いたその上で縫合器を使用するなどの工夫がされている.なお,チタニウムは磁性が弱いので,磁石で吸着することはできない.
 このような遊離ステイプルは,臨床上,大きな障害にならないものと理論的ないし経験上考えている.理由は,現在のステイプルの材質はチタニウムまたはチタニウム合金で,生物学的な活性は低く,かつ,ファイア後B字型となり,鋭的な局面はなく,人体に直接的な悪影響を及ぼす可能性がきわめて低い,実際に遊離したステイプルによる障害を認めたことがない,などである.また,CTやMRIの画像への影響もほとんどないか,あってもごくわずかである.

(Q9)自動縫合器使用時,切離断端から出血が見られた場合どうするか.また切離断端の補強はどうするか.

著者: 吉野肇一

ページ範囲:P.1009 - P.1009

 切離断端からの出血に対して,まず留意すべきことはその予防である.直線状の片側閉鎖型自動縫合器(TA®1),ロティキュレーター®1)),リニヤーステイプラー2),アクセス2))では,ファイア後,腸管の切離操作が行われるが,切離後,術野の邪魔になるので,すぐに縫合器を外すことが一般的である.しかし,ここで縫合器を数分間そのままにしておくと,断端を軽度に圧迫していることになり,断端からの出血の予防にきわめて有効である.これらの縫合器はファイア後も1mm以上の間隔が保れているので,このような操作により断端部が壊死に陥ることはない.両側縫合式の自動縫合器(GIA®1),リニヤーカッター®2))では,切離と同時に縫合器の腸管から自動的に外れてしまうので,このような操作はできない.
 断端からの出血に対して最も安全な止血法は圧迫であるが,これでも止まらないときは針糸による縫合止血ないし,バイポーラ電気メスをステイプルに触れないように電気凝固するとよい.バイポーラ式ではない,一般的な電気メスによる凝固は,断端部の多くのステイプルに熱が伝導されるおそれから,禁忌とされている.なお,チタニウムの通電性は低い.

(Q10)頸部吻合で自動吻合器本体を挿入するために胃管を切開する部位はどこが良いか.また自動吻合器を使う場合,胃管の距離が足りず吻合しにくい時の対応は.

著者: 三吉博

ページ範囲:P.1010 - P.1011

頸部吻合で自動吻合器本体を挿入するために胃管を切開する部位としては,どこが良いか
 器械吻合のために自動吻合器を胃管内へ挿入する際の切開部位としては,理論的には胃管の前壁,後壁,小彎側,大彎側,それに胃管先端の5か所が考えられる.しかし頸部に挙上した後の限られた術野での吻合を考慮した場合,後壁からの吻合器挿人は操作の面で難がある.また大彎側に吻合器挿入のための切開部を設けると胃管の栄養血管である右胃大網から短胃動静脈系への血行を遮断するかたちとなる.したがって,吻合器挿入ルートとしては上記以外の前壁,小彎側,または胃管先端部が推奨されるのは明らかである.
 これら3つのルートのうち,現在筆者らは小彎側からのルートを選び,形成胃管作製時の自動縫合器の最口側のステイプラーを数針外して,これを吻合器の挿入部位としている.前壁または胃管先端部を用いないのは,新たに切開部を設けることが手技的に繁雑であること,および胃管大彎側からの流入血行を維持する胃壁内の血管ネットワーク1)を,新たな切開によりさらに障害しないためである.自動吻合器挿入部位は吻合終了後,再び自動縫合器によって閉鎖される.

(Q11)頸部吻合では食道と胃管のどの部位を吻合するのか.また,食道胃吻合部が縫合不全を起こさないための工夫は.

著者: 三吉博

ページ範囲:P.1012 - P.1013

頸部吻合で食道と胃管のどの部位を吻合するのか
 頸部食道胃管吻合術の際,食道側については頸部食道断端を用いることは異論のないところである.しかし胃管の吻合部位については未だに結論が出ていない.
 教室では近年1aser-Doppler血流測定法を用いて胃管のviabilityについての実験的検討を行ってきた1).その結果,胃壁の組織血流量が10ml/min/100g組織重量未満に低下すると高率に組織学的変化が発生し,吻合には不利となることが明らかとなった.そこで犬胃管モデルの血流分布を検討すると(図),thermography上の低温部に当たる胃管先端の部位は10ml未満の組織血流量を示し,血流上吻合には適さないことがわかった.また臨床例を用いて行った予備的検討でも,数値は異なるものの実験と同様,胃管先端の組織血流量は有意に低下していた2)

(Q12)頸部吻合で術後吻合部狭窄とならないための工夫は.

著者: 小堀鷗一郎 ,   清水利夫 ,   田辺友紀男 ,   露久保辰夫 ,   上村志伸

ページ範囲:P.1014 - P.1016

 頸部食道胃(結腸)吻合部狭窄の要因は,物理的要因と手術操作に起因するものに分けられる.物理的要因は換言すれば器械吻合による狭窄である.手縫い吻合に比して,器械吻合に吻合部狭窄の発生頻度が高いことは多くの報告に指摘されているが1,2),一方,器械吻合には確実性,縫合不全の防止,手術時間の短縮など,いくつかの利点があることから,多くの施設で日常行われているのが現状であろう.筆者らの施設における食道癌切除例70症例(1993年10月〜1996年12月)のうちの頸部食道胃吻合56例についてみると,42例(75%)に器械吻合が行われているが,手縫い吻合が行われた14症例は,いずれも胃管の挙上性が十分ではなく,頸部創内での器械操作が困難な症例,食道の口径が狭い症例,そして吻合部位が頸部食道高位となる症例に限られている.すなわち,少なくとも自験例については手縫い吻合群にバイアスがかかっており,両群における吻合部狭窄の発生頻度を比較することは意味がなく,また,器械吻合が手縫い吻合に比して吻合部狭窄をきたしやすいとしても,その頻度の差は絶対的なものではないこと,発生した吻合部狭窄に対しては内視鏡的拡張術という有効な治療法が存在することから,症例によって両者を使い分ける方向が望ましいと考える.ただ,21mm径のアンビルは高頻度に吻合部狭窄をきたすところから3),25mm径,可能ならば28mm径を使用すべきである.

(Q13)吻合部位が頸部食道高位となる場合の吻合法は.

著者: 小堀鷗一郎 ,   清水利夫 ,   露久保辰夫 ,   田辺友紀男 ,   上村志伸

ページ範囲:P.1018 - P.1019

 最初に明らかにしておくべきことは,頸部食道高位とはどの程度の高さを指すかという点である.ここでは,輪状咽頭筋に切開などの手術操作が及ぶような,稀にしか経験しないような事例ではなく,気管,喉頭が術野を狭くして,吻合操作を困難にする,通常の症例を念頭において述べることとする(図1,2).
 頸部食道高位吻合の場合,胸壁前経路以外における第一選択は手縫い吻合と考える.その理由は,胃管に吻合する頸部食道の長さが十分でないため,アンビルを挿入,縫着した際食道壁に過剰に伸展が加わり,吻合操作中にとくに縫着糸周辺における損傷が危惧されるためである.手縫い縫合の場合は,3または4ゼロ吸収糸を用いたGambee一層縫合を行っている.

(Q14)Billroth ⅠおよびBillroth Ⅱで自動吻合器を使用する際,自動吻合器本体はどこから挿入し,残胃のどの部位で吻合するか.

著者: 西連寺意勲 ,   小林理 ,   本橋久彦

ページ範囲:P.1020 - P.1021

 筆者らの施行している幽門側胃切除後の器械吻合器を用いたBillroth I(B-1)法1)およびBillroth Ⅱ(B-Ⅱ)法再建術式(神奈川がんセンター式:K式)は,病変部の存在する胃を切除摘出するとき,残胃の切除端の一部を開放口にしておき,そこから残胃に自動吻合器であるILS(エチコンエンドサージェリー)ないしはEEA®(オートスーチャージャパン)を挿入し,十二指腸断端や空腸と残胃を吻合する方法である.このK式B-ⅠないしB-Ⅱ法について述べる.
 ここでは病変部の胃切除を行うところから説明を始める.十二指腸の切離はB-Ⅰでは十二指腸切離部位に巾着縫合器をかけて切離する.B-ⅡではGIA®60(オートスーチャージャパン)もしくはリニヤーカッター55(エチコンエンドサージェリー)(4列の直列のステイプルの中央を縫合しながら切断する自動縫合器)で切断する.胃の切離は,切離予定線の大彎側1/3に胃の切離予定線に平行に2本のリスター鉗子をかけ,電気メスにて鉗子の間を切離し,さらに,小彎側の胃の切離予定線をGIA®80で切断する(図1).リスター鉗子を外すと,残胃の大彎側寄りの切離端は約4〜5cm開放されており,開放口となる.この開口部から残胃の可動性に合わせて,ILSを残胃内に挿入するのは容易である.アンビル部を外したILS本体を残胃に挿入後,ロブを回しながらcenter rodを胃壁から貫通させる.

(Q15)Billroth Ⅱで自動縫合器使用により胃空腸吻合を行いたいが,吻合部近傍の血行障害を予防する工夫は.

著者: 西連寺意勲 ,   小林理 ,   本橋久彦

ページ範囲:P.1022 - P.1024

 Billroth Ⅰ法(B-Ⅰ)法は,食物の通過(十二指腸を食物が通過)が生理的であることと,術式の操作がB-Ⅱ法より簡便であることから,胃亜全摘後の再建術式としてはB-Ⅰ法が第一選択とされる.筆者らのB-Ⅱ法を選択する一般的な基準は,B-Ⅰ法が施行困難な症例(残胃と十二指腸を吻合すると吻合部の緊張が過大になると考えられる症例や,十二指腸を十分切除したため吻合部の少くなくなった症例)に対して適応としている.しかし,歴史的にみると,B-Ⅱ法がB-Ⅰ法よりも選択されることが多い時代もあったようである.それは,胃空腸の端側吻合が血行障害が少なく安全な術式であると考えられていたからと思われる.したがって,胃空腸の端側ないしは側側吻合では血行障害は少ないと考えられる.手技上の点からいえば,B-Ⅱ吻合においても,(Q-14)で紹介したようなILSを使用する筆者らのK式B-Ⅱ吻合が簡便であり,筆者らは現在,B-Ⅱにおいてもサーキュラーステイプラー(ILS:エチコンエンドサージェリー)を使用している.しかし,GIA®(オートスーチャージャパン)ないしはリニヤーカッター(エチコンエンドサージェリー)によるB-Ⅱ法も施行可能である1).ここでは筆者らの方法を紹介する.
 残胃の作り方は(Q-14)で紹介したのと同様であるが,残胃開口部はK式B-Ⅰ施行時よりできるだけ狭くしておく.

(Q16)Billroth Ⅰで自動縫合器を使用し,残胃と十二指腸を三角法で行う利点は.

著者: 森田純二

ページ範囲:P.1026 - P.1027

 筆者らの施設では,1989年よりTA®(オートスーチャージャパン)によるBillroth Ⅰ法の再建術を施行し,これまでに約150例を経験した.本法に対する手術術式や利点などについては,すでに報告1〜3)しているが,簡単に術式を紹介しておく.
 通常の胃切除術と同様に血管の処理を行い,幽門輪直下で十二指腸を切離する.十二指腸の断端は,小児用の腸鉗子にて把持しておく.胃の切離線はTA®90にて閉鎖し,staplerに沿って胃を切離し胃切除術を完了する.残胃の大彎側に比較的余裕を持って鉗子をかけ十二指腸断端と近づける.十二指腸断端との口径を考え,staplerの一部を切除する.吻合はまず後壁から開始するが,残胃ならびに十二指腸に適宜指示糸やアリスなどで引き寄せ,図1のようにTA®にて後壁を内翻して形成する.余剰の組織は適宜切除する.

(Q17)胃全摘術および噴門側胃切除術後の空腸パウチによる再建の際の自動縫合器の使い方は.

著者: 竹下公矢 ,   斉藤直也 ,   本田徹 ,   谷雅夫 ,   林政澤 ,   佐伯伊知郎

ページ範囲:P.1028 - P.1030

 胃癌においては胃全摘術であれ,亜全摘術であれ,術後に様々な障害が出現することが多い.したがって,空腸パウチを代用胃として機能させこれらの問題を克服する目的で,以下の術式を採用している.

(Q18)自動吻合器による回腸・結腸,結腸・結腸吻合法にはどのような手技があるか.

著者: 須田武保 ,   瀧井康公 ,   酒井康夫 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.1031 - P.1033

 回腸と結腸ileocolostomyあるいは結腸間colocolostomyの自動吻合器による手技は,遊離された状態ならば腸管の厚さの違いがあるものの,原則として同じである.以下に各種手技を概説する.

(Q19)DST(ダブルステイプリング法)の際,リニヤー型縫合器で直腸を閉鎖時に,骨盤腔が狭く器具が入りにくい場合の工夫は.

著者: 中越享 ,   澤井照光 ,   辻孝 ,   綾部公懿

ページ範囲:P.1034 - P.1035

 器械吻合とくにdouble stapling technique(DST)の導入は,直腸癌低位前方切除術後の再建をより安全かつ容易にした.その術式の特徴は直腸肛門側の断端の閉鎖を容易にし,口径の異なる腸管の吻合を汚染の少ない術野で可能にしたことにある.しかし,安全な術式ではあるが,生じうるトラブルは皆無ではない.その1つに直腸側の断端の閉鎖時に生じる困難性がある.すなわち,直腸切離予定線と腫瘍との間に直角鉗子をかけ,経肛門的に残存直腸内を十分洗浄した後,リニヤーステイプラーにて閉鎖するわけであるが,この際骨盤腔が狭くリニヤーステイプラーが入りにくい,または入らない場合がある.
 通常の直腸前方切除術におけるDSTで用いるリニヤーステイプラーとしてはUSサージカル社のTA®55とロティキュレーター®55,エチコンエンドサージェリー社のTL60,TX60,アクセス55がある.直腸壁の厚さに応じてステイプルの大きさを選択できるのはTA®55,ロティキュレーター®55,TX60,アクセス55であり,筆者らは通常グリーン・カートリッジのものを用いている.このステイプルの脚の高さは4.8mmで,打ち込んだ後の高さが2.0mmとなる.TL®60はステイプル・サイズは選択できないが,挟み込む組織の厚さを調節できるようになっている.

(Q20)DST(ダブルステイプリング法)の際,直腸断端部のセンター・ロッドの貫通部位は.

著者: 中越享 ,   澤井照光 ,   辻孝 ,   綾部公懿

ページ範囲:P.1036 - P.1037

 直腸癌低位前方切除術におけるdouble sta-pling technique(DST)による再建術での術中トラブルの一つに,サーキュラーステイプラーで打ち抜く部位に関するものがある.直腸断端部においてセンターロッドのトッロカーを直腸壁に貫通させる際,前後方向にはリニヤー・ステイプル・ラインの前壁か後壁か,ないしはリニヤー・ステイプル・ラインそのものに貫通させる3通りの方法があり,左右方向にはドッグイヤーを両側に残すようにする場合と,ドッグイヤーを片側にのみ残す場合の2通りの方法がある.筆者らの教室での直腸癌前方切除術における170例のDST症例のうち,トロッカー貫通部位に関する術中・術後トラブルは6例(3.5%)であった.そのすべてがリニヤー・ステイプル・ラインの前壁か後壁か,またはリニヤー・ステイプル・ラインそのものに貫通させるかの問題で生じたトラブルであって,左右方向すなわちドッグイヤーの残し方で生じたトラブルはないので,以下,トッロカー貫通部位がリニヤー・ステイプル・ラインの前壁・後壁・ラインそのもののいずれが最良かについて述べる.
 筆者らの教室では1986年にDSTを開始したが,当初はリニヤー・ステイプル・ラインの前壁にセンターロッドを貫通させていた.

(Q21)Double Stapling Anastomosis(DSA)でのdog earの処置法は.

著者: 森田隆幸 ,   小田桐弘毅 ,   今充

ページ範囲:P.1038 - P.1039

 Double stapling anastomosis(DSA)で吻合を行う場合,長短の差こそあれ吻合部両端にdogearが形成される.臨床的に問題となるのは,①直腸内に遊離した癌細胞がこの部分に閉じ込められ吻合部再発を助長することはないのか,②断端のstaple lineから出血をきたすことはないのか,③縫合不全の原因になることはないのか,という懸念である.
 DSA普及後数年たっが,現在まで吻合部再発が増加したという報告はみられず,同部への癌細胞の遺残は稀なものと思われる.また,直腸断端のstaple lineからの出血はoozing程度のものが大部分であるが,直腸間膜を一部巻き込んでいる場合は注意を要する.筆者らは予防的な意味で両端に1針ずつZ型縫合をおき対処している.

(Q22)Double Stapling Anastomosis(DSA)で縫合不全を起こさないコツは.

著者: 森田隆幸 ,   中村文彦 ,   今充

ページ範囲:P.1040 - P.1041

 縫合不全をきたす要因は全身的なものとして,イレウス,低栄養状態,動脈硬化や糖尿病による血管病変,術中,術後の大量出血,ステロイド長期投与,放射線照射などがある.また,局所的な因子としては吻合操作の不慣れなどによる不完全吻合,腸管接合時の過度の締めつけによる組織の挫滅,急激な内圧の上昇,骨盤腔内の感染,MRSAや虚血性腸炎などの腸管の炎症などが挙げられる.一般的な吻合と同様に,全身状態の改善,腸管清浄とくに腸管内容の除去を目的にしたmechanical preparationは縫合不全防止の原則である.
 Double stapling anastomosis(DSA)の普及により,下部直腸癌に対しても肛門括約筋温存手術が積極的に採用されるようになったが,逆に,縫合不全のriskも増すと考えなければならない.その理由の第1として,肛門管近傍に近づくほど腸管壁が厚くなることが挙げられる.直腸断端の閉鎖には,TA®55(オートスーチャージャパン)やTL60,TLH30(エチコンエンドサージェリー)を用いているが,炎症性浮腫などにより腸管の肥厚がある場合には,リニヤーステイプラーでの過度の締めつけにより組織が挫滅され,dog earのstaple lineから漏れを生じることがある.TL60,TLH 30では用手的に締めつけの加減ができるなどの利点もあり,各種リニヤーステイプラーの特性をよく理解し使用すべきである.

(Q23)直腸手術時,結腸J pouch再建法での自動吻合器の使い方と注意点は.

著者: 楠正人 ,   柳秀憲 ,   山村武平

ページ範囲:P.1042 - P.1043

 近年,自動吻合器・縫合器の開発により直腸の切除や再建は安全で容易なものになったといえる.特に機能温存という観点からみると,より低位での切除・吻合が可能となり,永久人工肛門回避に貢献している.しかし一方ではstaplerの特性を熟知し,使用に慣れることが切除成績向上や合併症防止のために外科医に求められている.この項では,最近広く行われるようになったcolonic J pouchについて述べる.

(Q24)膵切除に自動縫合器・吻合器は有効か.

著者: 升田吉雄

ページ範囲:P.1044 - P.1045

はじめに
 今日,自動縫合器[TA®(オートスーチャージャパン),RL(エチコンエンドサージェリー)]および自動吻合器[PCEEA®,GIA®(オートスーチャージャパン),ILS,PLC(エチコンエンドサージェリー)]は,その簡便性および信頼性の向上によって広く有用性を認められ,健保適用の範囲も徐々に拡大されてきた.しかし健保適用外であっても,自動縫合器・吻合器の使用が有効な手段となる手技があるが,膵臓切離・断端の処理もそのひとつである.
 膵臓切離に際しては蛋白分解酵素を主成分とした膵外分泌液の漏出による膿瘍・膵液瘻の形成や,自己組織消化に伴いリンパ郭清により,むき出しとなった主要な血管の破綻に起因する大出血などの術後合併症の発症を未然に防ぎ,その断端処理を簡便かつ確実・迅速に行うことが重要である.

(Q25)肝切除における自動縫合器の有用性は.

著者: 矢永勝彦 ,   杉町圭蔵

ページ範囲:P.1046 - P.1047

はじめに
 肝切除においては術中出血量が合併症ならびに再発と関連する1,2).このため肝切除に際しては短期予後ならびに長期予後の両面から,原則的に切除領域の流入血管である肝動脈・門脈枝,そして可能なら流出血管である肝静脈の処理を行った後に肝実質切離を行う,いわゆるcontrolledmethodを用いる3)
 本稿では,肝切除における自動縫合器の有用性を紹介する.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・32

小児の直腸脱に対する腹腔鏡下手術—prolapsing techniqueによる直腸切除と直腸固定術式

著者: 森川康英 ,   星野健 ,   北島政樹

ページ範囲:P.979 - P.982

はじめに
 小児期における直腸脱は排便時に直腸の粘膜脱を主体とするものがその大部分を占めるが,中には成人と同様に直腸全層の完全脱出を伴うrectalprocidentiaと言われる形態のものが見られる.これまで前者には注射療法を含めて保存的な治療がその主流を占めてきたが,後者の病態には様々な手術法が選択されてきた3).近年,本症に対しても腹腔鏡下にアプローチを行った報告が散見されるようになってきた.筆者らは幼児におけるこの病態に対して独自に腹腔鏡下アプローチを行い,これまでに良好な結果を得ることができたので,その手技の詳細とポイントについて紹介する.

臨床外科交見室

外科手術の変遷と普遍性

著者: 加藤博明

ページ範囲:P.1048 - P.1048

 研修医と一緒に手術をしている.「この層に入れば,ほら血がでないだろ.大事なのは層だよ.層.」“Schicht”.自分も同じ医者になりたてのころ,20年も上の部長先生に同じことを言われていたものである.その“Schi-cht”,“Schicht”という言葉が耳にこびりついて,今また自分より20年も下の先生相手に,同じことを言っている.電気メスの良いものがなく,もちろんCUSAもレーザーもなかった時代,クーパーで切るか,結紮するか,剥離するか決めるのがすべてその“Schicht”だった.しかし20年たってもその言葉は小生の手術に生き,役立っている.どんなに時代が変わっても,人間のからだの仕組みや構造は変わらない.解剖学の本は何年たっても使えるから不思議だ.したがって,人の体にメスを入れ治療をしようとする限り,手術の原則というか「コツ」はあまり変化していくとは思えない.小生が教えた若い先生がまた20年後に同じことを言っているかもしれない.
 一方で外科学のめざましい発展は,外科医に次々と難問を突き付けてきた.本来局所治療であり欠損治癒を伴うものであった外科手術の常識が許されなくなってきたのである.例えば,乳癌の手術.Halstedtの手術では,乳癌の組織だけでなくその近隣組織である大小胸筋とともに乳房を切断し,所属リンパ節をできるだけ郭清する.

私の工夫—手術・処置・手順・34

消化管吻合における持針器の把持と運針のコツ

著者: 戸田完治

ページ範囲:P.1049 - P.1049

1.消化管吻合
 胃全摘後の食道・空腸吻合は,自動吻合器の発達により,器械吻合をする術者が多くなってきた昨今である.時間の短縮と,縫合不全の予防のため,器械吻合が好まれる理由もある.しかし,器械吻合による吻合部狭窄などの合併症を考えると,手縫いも捨て難い.私は現在も手縫いを常としている.
 食道・空腸吻合は層々吻合とし,漿膜・筋層吻合は,3-0ブラック・シルクで,粘膜吻合は3-0バイクリル糸で,いずれも単純縫合としている.

病院めぐり

泉大津市立病院外科

著者: 尾野光市

ページ範囲:P.1050 - P.1050

 泉大津市は大阪府南部に位置し,全国の毛布の95%を生産する人口約7万人の町です.関西新空港の開港に伴い,近年駅前にホテル,高層マンション,ショッピングセンターが建ち並び,大変賑やかになりました.
 当院は,昭和5年,病床数27床の和泉公民病院として設立され,昭和25年,泉大津市,和泉市の2市による公立和泉病院として運営された後,昭和47年に独立し,泉大津市立病院となりました.一般病床数215床,常勤医師数33名の総合病院で,市民の病院として親しまれています.

庄原赤十字病院外科

著者: 中尾篤典

ページ範囲:P.1051 - P.1051

 庄原赤十字病院は,大正14年組合立庄原病院として創立され,昭和18年日本赤十字社に移管されました.以来,広島県北部の中核病院をなし,地域医療の担い手として発展してきました.現在は,内科,外科,整形外科,産婦人科,脳神経外科,麻酔科,泌尿器科,眼科,皮膚科,耳鼻咽喉科,小児科の11診療科が開かれており,230床を有する総合病院として活動しています.
 病院のある庄原市は,中国山地の豊かな自然に囲まれた風光明媚な田園都市です.中国自動車道のおかげでいくらか便利になったものの,まだまだ周辺の町村は交通の便が悪く,日に数本のバスを乗り継いで通院する患者さんもおられるほどです.当然高齢者の割合が高く,合併症をもったリスクの高い手術症例が多いのも特徴です.

メディカルエッセー 『航跡』・12

Colon Patch Graft手術,オーストラリアへ行く

著者: 木村健

ページ範囲:P.1052 - P.1053

 1984年3月,オーストラリアの首都,キャンベラ空港に降り立ったのは昼すぎ,夏の残り日が照りつける最中であった.迎えてくれたDr.Tの車でロイヤルキャンベラ病院に向かう.小児病棟に着くと,急き立てられるようにして病室に案内された.不思議に思いながら歩を進めると,目の前に雲つくような大男が立ちはだかる.陽焼けした肌は赤鬼のごとく,頭に生えている金髪をふり乱した姿は大航海時代の水夫頭のイメージである.わけのわからぬままこの男に抱きすくめられ,いのち縮む思いがするのであった.男は腕の力をゆるめると,私の眼の奥をじっとのぞき込んで,「ユーがドクターキムラか?」というのである.「イエス」と答えると蒼眼から見る見る涙があふれ出て来て頬を伝い始めるのであった.「一体これはどういうことですか」後ろに立つDr.Tに尋ねる.「ユーの手術で私のボーイがいのち拾いしたのです」と大男は再び私を抱きすくめるのであった.
 1981年5月,フロリダのターポンスプリングで開かれた米英合同小児外科学会には世界中から600人の小児外科医が集まった.この学会で私は今日colon patch graft法と呼ばれて広く施行されている広範ヒルシュスプルング病に対する新しい手術法を発表した.

外科医のための局所解剖学序説・13

胸部の構造 8

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.1055 - P.1063

 胸部の最後に食道にまつわるエピソードをとりあげる.食道空置バイパス術の業績をたどると,Roux Cの仕事までさかのぼることができる.しかし彼の手術は,結果においても,評価の上でも,決して歯切れのいいものでなく,紆余曲折した.
 有名なRoux-en-Y loopを頸部まで持ち上げたのは,最初から意図されたものでなく,術中に決定された.このようなことは新しい術式が世に出る時,前回のGrahamの肺全摘でもそうであったようにしばしば起きる.

遺伝子治療の最前線・2

遺伝子治療とバイラルベクター

著者: 岡田秀穂 ,   吉田純

ページ範囲:P.1065 - P.1068

はじめに
 近年の遺伝子工学および細胞生物学のめざましい進歩によって,多くの遺伝病の原因遺伝子,あるいはがん遺伝子,がん抑制遺伝子が明らかとなってきた.こうした異常な遺伝子を正常化するという遺伝子治療の可能性は,1980年代にレトロウイルスを用いた遺伝子導入法の基礎が確立するに至って,倫理的な面の検討も行われるようになり,1990年9月に,検討,合意済みの遺伝子治療の第1例がNIHでADA欠損症の女児に対して施行された.以来,米国を中心に遺伝病のみならず,AIDSや悪性腫瘍を対象にした様々な遺伝子導入方法による遺伝子治療のプロトコールが検討,認可され,施行されている.日本でも1993年4月に厚生省から遺伝子治療のガイドラインが発表され,着々と基盤づくりが行われつつある.しかし依然として遺伝子治療においては,いかに効率よく安全に目的遺伝子を導入するかが技術的な根本問題である.遺伝子の運び屋(ベクター)としては,ウイルスを用いる方法とそれ以外の方法に大きく分けられる.本稿ではそのうちで特にウイルスを用いた方法について,現在までの知見をできるだけ平易にまとめてみたい.

臨床研究

自己血輸血におけるエリスロポエチン(EPO)製剤投与の内因性EPOに及ぼす影響—EPO投与群,非投与群の比較検討

著者: 前田平生 ,   進藤裕幸 ,   許俊鋭 ,   尾本良三 ,   東博彦 ,   平嶋邦猛

ページ範囲:P.1069 - P.1073

はじめに
 腎臓で産生される造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)は,遺伝子組み換え技術の確立により量産が可能となり,腎性貧血治療薬として有効性,安全性が確立されている1,2).また,この造血効果を応用し,術前貯血式自己血輸血の採血に伴う貧血抑制においてもその効果が認められ3,4),整形外科および心臓外科を中心に広く遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuE-PO)が使用されている.
 最近,自己血輸血でrHuEPOが術後の内因性EPOを抑制するという報告がある5,6).そこで今回,整形外科,心臓外科領域の症例を対象に,rHuEPOが内因性EPOの産生を抑制するか否かを,血清EPO濃度とヘモグロビン(Hb)濃度の関係で検討した.

同時性肝転移を伴った胃癌手術例の検討

著者: 北川雄一 ,   山口晃弘 ,   磯谷正敏 ,   堀明洋 ,   金祐鎬

ページ範囲:P.1075 - P.1078

はじめに
 同時性肝転移を伴った胃癌症例では,その肝転移のために予後が不良と考えて,転移巣のみならず原発巣の治療も消極的となることがある.その反面,予想以上に良好な生命予後を得る症例を経験することもある.肝転移を有する胃癌症例では,原発巣を切除し肝転移巣に対しては動注を含めた積極的な化学療法を行うのが一般的と考えられるが,切除可能な症例には肝切除を勧める報告もある.そこで,これまでに経験した同時性肝転移を伴った胃癌症例につきretrospectiveに調査し,特にその治療方針について検討した.

臨床報告・1

後腹膜腔異物(鍼灸針)の1例

著者: 高橋毅 ,   木村泰三 ,   吉田雅行 ,   小林利彦 ,   渡辺浩 ,   原田幸雄

ページ範囲:P.1079 - P.1083

はじめに
 神経痛などの軽減を目的とした針治療は現在も広く普及しているが,時に当初の意図に反した神経障害など種々の合併症を引き起こすことがある1〜10,12〜16
 今回,筆者らはS状結腸癌の精査時に鍼灸針が後腹膜腔異物として偶然に発見され,疾患の手術と同時に異物摘出術を行った1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

十二指腸潰瘍穿孔保存的治療において硬膜外ブロックが有用であった1例

著者: 井戸弘毅 ,   木村圭一 ,   利光鏡太郎 ,   千田勝紀 ,   太田靖之 ,   高畠貢

ページ範囲:P.1085 - P.1087

はじめに
 胃十二指腸潰瘍穿孔は激しい腹痛を引き起こす疾患のひとつであるが,症状や腹部所見の経過をみるために鎮痛剤は積極的に投与されない傾向がある.今回筆者らは,十二指腸潰瘍穿孔保存的治療中に柊痛のため急性呼吸不全に陥った患者に硬膜外ブロックを施行し,保存的に治療しえた症例を経験したので報告する.

魚骨の虫垂穿孔による腹腔内膿瘍の1例

著者: 小林利彦 ,   木村泰三 ,   高橋直記

ページ範囲:P.1089 - P.1092

はじめに
 魚骨による消化管穿孔・穿通は時に報告がみられるが1〜10),肛門での穿通症例が最も多く,その他の部位での発生は比較的少ないとされている1,2,11).今回,虫垂炎による穿孔性腹膜炎の術前診断にて手術が行われたが,魚骨による虫垂穿孔が原因で腹腔内膿瘍をきたしていた1症例を経験したので報告する.

慢性血液透析患者の胃壁内血腫の1例

著者: 北尾善孝 ,   高木剛 ,   安岡利恵 ,   宮垣拓也 ,   中村隆一 ,   青木正

ページ範囲:P.1093 - P.1096

はじめに
 消化管の壁内血腫は,一般に腹部外傷,抗凝固薬,血友病などの出血性要因により形成される.全腸管壁内血腫のうちの多くは十二指腸に発生し,胃壁内血腫は稀である.今回筆者らは,慢性血液透析患者において発生した胃壁内血腫の1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

成人臍ヘルニア嵌頓の1例

著者: 山本裕 ,   吉田博之 ,   飯野与志美 ,   坂田道生 ,   植田正昭

ページ範囲:P.1097 - P.1099

はじめに
 成人臍ヘルニアは,肥満,妊娠,腹水などによる腹圧上昇の結果発生し,50歳以上の欧米女性に多い.本邦での嵌頓例は過去10年間に6例の報告があるのみで,比較的稀な疾患とされている.本疾患の1手術例を経験したので報告する.

Marlex meshのinlay graftによる閉鎖孔ヘルニア修復術の1例

著者: 和久利彦 ,   細羽俊男 ,   上田祐造 ,   八木健 ,   稲垣登稔

ページ範囲:P.1101 - P.1103

はじめに
 閉鎖孔ヘルニアは比較的稀な疾患で,術前に診断されることは少なく,原因不明のイレウスとして開腹されることが多い.今回,筆者らは,術前のCT検査にて閉鎖孔ヘルニアと診断でき,poly-propylene製のMarlex meshによるヘルニア修復術を行った1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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