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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科52巻9号

1997年09月発行

雑誌目次

特集 甲状腺と上皮小体の外科—最近の進歩

超音波(エコー)とエコーガイド下穿刺吸引細胞診(UG-FNAB)—特に手術適応の決定と術式の決定に果たす役割

著者: 横沢保 ,   宮内昭 ,   松塚文夫 ,   平井啓介 ,   小林彰 ,   小林薫 ,   深田修司 ,   覚道健一 ,   隈寛二

ページ範囲:P.1115 - P.1122

 超音波とUG-FNABの果たす役割は,頸部疾患のスクリーニングと経過観察のほか,外科的には大きく2つに分けられる.1.UG-FNABを併用した手術適応と術式の決定:UG-FNABの導入によって,術前細胞診の診断率が改善する.また,手術術式の決定(葉切か全摘か)に対しても,対側の癌多発,対側リンパ節転移の検出ができる.2.UG-FNABの手技を応用した治療への応用:UG-FNABの手技とパワードプラを応用すると,PEITをより安全に行うことができる.適応は,バセドウ病術後再発,プランマー病,根治手術不能甲状腺癌(特に転移リンパ節再発例),嚢胞性の甲状腺腫などである.

99mTc-MIBIによる甲状腺と上皮小体腫瘤の局在診断

著者: 高見博 ,   大島統男 ,   原澤有美 ,   久保敦司

ページ範囲:P.1125 - P.1129

 99mTc-MIBIシンチグラフィは最近出現した優れた局在診断能を有する検査法である.とくに,上皮小体では的確に局在診断が可能で,臨床的有用性は高い.甲状腺腫でも集積するため,その鑑別は難しいが,double adenoma,異所性上皮小体腺腫では,超音波検査より診断能は高い.しかし,両者の性格を考えると,局在診断の第1選択は超音波検査といえる.手術術式はUSとMIBIにより,通常では患側のみの上皮小体検索で十分である.甲状腺腫では全ての組織型に集積する.上皮小体と異なり,超音波検査では検出しにくい部位にある術後の転移巣の検出に意義があると考えられる.いずれにしても,臨床応用すべき核種であるといえる.

甲状腺癌の予後(生存時間)の推定

著者: 野口志郎

ページ範囲:P.1131 - P.1135

 悪性腫瘍や死亡率の高い慢性疾患では,患者や患者の家族,医師にとって最も関心があるのは,予後すなわち生存時間である.予後を数字あるいは段階で表現できれば好都合である.予後分類法の基本的考え方は,理論的に予後を推測するのではなく,現実の予後調査に基づいた生存データをもとに予後因子を探し出し,それらの相互関係を明らかにして新しい分類法を作るほうが合理的であるとの考え方である.今までに借界各国で発表されている甲状腺癌の予後因子は必ずしも一致していない.ほとんどの報告で一致しているのは,年齢,腫瘍の最大径ないし大きさ,甲状腺被膜外への浸潤であり,遠隔転移の有無もその点について記述してある場合には一致している.予後因子にならないとした論文の中には症例数が少ないために単に統計的有意差を見いだせなかったものも含まれていると思われる.

遺伝性髄様癌におけるRET遺伝子検索

著者: 北村裕 ,   清水一雄 ,   田中茂夫

ページ範囲:P.1137 - P.1142

 遺伝性甲状腺髄様癌は常染色体優性遺伝形式を示すMEN2A, NEN2BおよびFMTCに分類される.遺伝性髄様癌診療の中心的問題である家系内保因者のスクリーニングは,従来calcitonin誘発試験により行われてきたが,近年RET遺伝子の異常がこれらの疾患の原因であることが判明し(MEN2AとFMTCではcodon609, 611,618,620,634,MEN2Bではcodon918のmissense mutationが代表的),遺伝子診断が導入された.遺伝子診断は信頼性が高く,一度の採血で済み,保因者に加えて非保因者も確実に診断できるなど,きわめて優れた検査法である.しかし遺伝子診断の施行にあたっては医療面以外の問題も含まれ,遺伝性疾患を取り巻く社会環境の整備が強く望まれる.

バセドウ病術後再発の指標としてのTSH受容体抗体値

著者: 杉野公則

ページ範囲:P.1145 - P.1148

 TSH受容体抗体(TBII)の測定が容易になり,バセドウ病の臨床に広く使われるようになった.筆者らはTBII値がバセドウ病手術成績にいかに関与しているか,検討を続けてきた.手術直前のTBII値は長期の再発の予知には有用ではなかったが,術後早期の再発には関与していた.また,術前の抗甲状腺薬治療によりTBIIが低下しない症例や逆に上昇する症例では術後再発をきたしやすかった.TBII値がバセドウ病の病勢をある程度は反映しているのであろうが,絶対的なものではなく,今後のさらなる検討を要するものである.

リンパ節郭清を伴う甲状腺全摘時の上皮小体温存に必要な上皮小体の解剖

著者: 登政和

ページ範囲:P.1151 - P.1158

 甲状腺全摘時の上皮小体血行温存にはその動脈だけでなく静脈も必要である.静脈の解剖についてはほとんどわかってないが,Thompson1)の全摘術の成績は優れている.その理由は彼らが甲状腺後側の細い血管をすべて甲状腺固有被膜ぎりぎりで結紮切離し,上皮小体をその血管とともに後ろに残す結果,静脈も温存されるからであろう.リンパ節郭清を伴う全摘時の温存でも,移植の併用で優れた成績の施設が多い.その温存成績が良好な理由は甲状腺と咽頭,食道間“danger zone”にある動脈,静脈の豊富な吻合枝の大部分が残っているからだろう.

腎性上皮小体機能亢進症の手術のタイミング

著者: 舟橋啓臣 ,   冨永芳博 ,   田中勇治 ,   今井常夫 ,   高木弘

ページ範囲:P.1159 - P.1162

 高度な腎性上皮小体機能亢進症に対し,現在では術前に何らかの内科的治療が施されていることが多い.そのため病態は複雑化し,典型的な症例は減少する傾向にある.組織学的に二次性過形成の上皮小体は,diffuse typeとnodular typeに分類される.Nodular typeの腺では,ビタミンD受容体の数は減少し,各結節はmonoclonalな増殖を呈しており,その結果内科的治療,とくにビタミンDパルス療法にも反応しないと推察される.さらに摘出標本を検討すると,500mg以上に腫大した腺の85%はnodular typeであった.そのため超音波検査などの画像診断により腫大した上皮小体の重量が500mg以上であると推測できる場合には,骨回転が亢進していることを確認した上で,他臓器への異所性石灰化が進行する前に上皮小体摘出術を行うべきである.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・33 大腸

クローン病に対する腹腔鏡下手術の方法

著者: 渡邊昌彦 ,   大上正裕 ,   寺本龍生 ,   安井信隆 ,   奈良井慎 ,   石原雅巳 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1111 - P.1114

はじめに
 腹腔鏡下手術は,胆摘をはじめ消化管の良・悪性疾患に対する新しい治療法として注目されている.なかでも小腸や大腸はその解剖学的な特殊性から,腹腔鏡下手術に適している.小腸は本来可動性があり,結腸も腹腔鏡下に剥離・授動すれば小腸と同様に創外に露出して切除・吻合する腹腔鏡併用(補助下)手術が容易にできる.さらに腸は血管系も単純なので腹腔鏡下の処理が容易である.このような理由で,腸疾患に対して本法は広く普及しようとしている1)
 外科手術の適応となる腸疾患の大半は大腸癌である.しかし,腹腔鏡下手術は開腹に比べリンパ節郭清の難易度が高く,予後については開腹術との比較検討がなされていないため,本法の可否は未だ賛否の分かれるところである2〜4).一方,良性疾患は郭清が不要であり,もともと開腹を可能な限り避けなければならないので,低侵襲の腹腔鏡下手術が適している考えられる.しかし,炎症性腸疾患(IBD)に関する報告は少なく,適応や方法などについて一定の見解は得られてはいない5,6).われわれはIBDのうちクローン病19例に本法を応用し,良好な成績を得ている7〜11)

病院めぐり

和歌山労災病院外科

著者: 小林康人

ページ範囲:P.1164 - P.1164

 当院は,和歌山県最北部を東西に流れる紀の川河口で,大阪府との県境にも近い和歌山市古屋に位置し,住友金属工業とその関連会社の工業地帯が隣接しており,和歌山市および大阪府泉南地区,関西空港周辺を診療圏としています.昭和34年に地元和歌山市と市商工会議所の要望により,和歌山に労災病院を誘致すべく誘致促進委員会が発足し,労働省などに働きかけ,昭和41年6月に病床数300床で開院しました.その後,周辺地域の人口増加に伴う患者数の増加により,昭和60年までに86床増床し,現在の386床,1日の外来患者数約1,200人という規模となりました.
 外科は昭和41年の開院当初より和歌山県立医科大学第2外科(消化器外科)より医師の派遣を受け,現在まで一宮前副院長兼外科部長以下約30名が勤務し,現在は谷口部長以下,小林,寺下,上畑,堀田,中村の6名と1名の研修医の計7名で構成されています.

社団法人鹿児島共済会南風病院外科

著者: 山田一隆

ページ範囲:P.1165 - P.1165

 当院は昭和29年9月に96床でスタートし,現在は診療科12科,ベッド数338床で運営されています.鹿児島市の中心に位置し,薩摩藩の鶴丸城跡や西郷さんの銅像などの名所旧跡に囲まれており,病院7階の職員食堂からみる桜島は絶景です.診療圏は鹿児島市を中心としていますが,鹿児島県全域からの紹介患者さんも多く,鹿児島県の中核病院のひとつとして地域医療に貢献しています.
 外科は昭和32年1月に鹿児島大学第1外科の関連施設として開設され,当初は結核病床を約150床有していたこともあって,呼吸器疾患中心の診療が行われていたようです.その後,昭和41年には鹿児島大学第2内科の協力のもとに消化器科が開設され,それ以降は外科も消化器疾患を中心とした診療が行われ,現在に至っています.また,末永副院長と山田(外科部長)は日本外科学会の指導医であり,消化器外科学会,消化器病学会および大腸肛門病学会の認定施設としての実績をあげています.平成8年度の手術症例数は全麻308例,腰/硬麻39例,局麻16例でした.全麻症例の疾患別内訳は,悪性疾患が197例(食道癌5,胃癌69,小腸・大腸癌80,胆道・膵癌14,HCC 6,肺癌6,甲状腺・乳癌16),その他にIBD22例(潰瘍性大腸炎7,クローン病15),胆石症36例,膵石症4例などでした.

臨床外科交見室

外科医の臨床研修について思いつくまま

著者: 滝吉郎

ページ範囲:P.1167 - P.1167

 最近,臨床研修についてその重要さや,在り方についてよく話題になる.外科でも臨床研修の内容や期間についての議論がよくされていて,各大学などで臨床研修プログラムなどもできつつある.これについて,一病院の外科医(20年目)でスタッフ5人をかかえる部長として思いつくまま書かせていただく.
 普通,最初に臨床研修をスタートするのは大学病院である.ここで外科としての基本的な清潔・不潔の概念,手術の墓本動作,カルテの書き方,処方箋,麻薬の取り扱いなどを覚える.しかし,それだけではいざ一般病院に赴任しても外科医としての実働能力はあまりないのが実情である.できれば大学で1年以内に基本的なことを覚えて,早く一般病院で実践的な研修をつむべきだと思う.

私の工夫—手術・処置・手順・35

新生児における鎖骨下静脈穿刺法

著者: 佐藤正人 ,   濱田吉則 ,   日置紘士郎

ページ範囲:P.1169 - P.1169

 中心静脈への到達方法には静脈切開法と静脈穿刺法があり,前者では外頸静脈切開法が,後者では鎖骨下静脈穿刺法が一般的である.静脈切開法では皮膚切開が必要なこと,外頸静脈虚脱時に静脈切開やカニュレーションが困難であることなどから,近年われわれは新生児症例においても鎖骨下静脈穿刺法をfirst choiceとして用いている.

メディカルエッセー 『航跡』・13

フェニックスから夢はカナダへ翔ぶ

著者: 木村健

ページ範囲:P.1170 - P.1171

 1982年5月,第13回米国小児外科学会はアリゾナのフェニックスで開かれた.前の年に世界で初めて成功を収めた先天性広範気管狭窄症の肋軟骨グラフトによる新手術・手技1)が演題に採用され,意気揚々と太平洋を渡ったのが昨日のことのようにありありと思い出されるのである.
 帝国ホテルの旧館をデザインしたライト氏の設計による由緒あるビルトモアホテルに着く.年季の入った,どっしりした石造りの建物の周囲は,まるで緑のカーペットを敷きつめたような名門ゴルフコース.US女子オープンゴルフトーナメントが当地で開かれたのもむべなるかなである.ロビイに立つと,目前を世界各国からやって来た小児外科の巨匠たちが往来する.まるで小児外科USオープンの最中に居るような気分である.その中に師と仰ぐフィッシャー教授の姿を見つけた.彼は米国小児外科学会には欠かさず出席していたが,1989年ハーバードの教授を引退し,最近はほとんど会っていない.当時,神戸から米国小児外科学会に演題が採用されると,フィッシャー教授に再会できるのが楽しみであった.

外科医のための局所解剖学序説・14

腹部の構造 1

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.1173 - P.1182

 腹部の体表解剖を考える際,胸部における胸骨のような使い勝手のあるマーカーは残念ながらない.幾分アバウトで考えざるをえないが,その中で多くの情報をもっているのが,イギリスの解剖学者Addison Cが設定したtranspyroric planeである.これは胸骨柄切痕と恥骨結合を垂直に結び,その中点を通る水平な面である.剣状突起の下に手掌を当てた時,手掌の下縁にあたる.この面は第1腰椎と第2腰椎の間に一致し,胃の幽門を筆頭に数多くの重要な臓器,特に腹膜後器官の大半が含まれる.膵臓の頸部はtranspyroricplaneに含まれ脊柱の前にある.頸部を基点にして膵臓の頭部は右側,下方に向かい,体部,尾部は左側,上方に走行する.胆嚢の底部もこの面に含まれる.同時に胆嚢底部は腹直筋の外側縁と肋骨弓とが交差する場所で,第9肋骨の先端とも一致する.十二指腸・空腸曲はこの面で脊柱の左側にあり,腎門は正中より4横指外側に存在する.脊髄が終焉するのもtranspyroric planeである.
 肝臓は体表から輪郭を描くことができる.下縁が右第10肋骨の先端から左の乳首まで,上縁は乳首の真下を通る.一方,背側では第11肋骨が考える手がかりになる.脾臓は左第11肋骨に沿って存在し,脊柱の外側で第11と第12肋骨の間に左右の腎臓の上極が位置する.最も右は1/2肋間ほど左より低い.

遺伝子治療の最前線・3

アンチセンス法による遺伝子治療—生体内分磯能解析法と消化器癌遺伝子治療への応用

著者: 阪倉長平 ,   小出一真 ,   荒金英樹 ,   萩原明於 ,   山口俊晴 ,   高橋俊雄

ページ範囲:P.1185 - P.1191

はじめに
 遺伝子レベルで固形腫瘍の発生と進展が明らかになり,特定の分子を標的とした治療法の開発が行われている.アンチセンスを用いて癌遺伝子の発現を制御し,治療に応用しようとする戦略について,基礎から応用例までを概説する.
 癌遺伝子や癌抑制遺伝子の発見により,細胞内でこれらの異常が蓄積することにより癌化(とさらなる悪性化)が引き起こされる,いわゆる癌の多段階発癌説が提唱され,癌は遺伝子病であるとの認識が定着した.

臨床研究

膵胃吻合後の入院期間の短縮化

著者: 青木孝文 ,   井田健 ,   寺村康史 ,   小林裕之 ,   河本泉

ページ範囲:P.1195 - P.1200

はじめに
 膵断端の吻合は縫合不全を起こしやすく,膵頭十二指腸切除(以下,PD)を行う機会の少ない外科医にとり,気の安まらない吻合の一つである.Waugh and Clagett1)の30例中の1例以来,膵胃吻合には50年余りの歴史があるが,あまり一般化していない.しかし吻合手技は簡単で,術後管理も容易であるので,われわれは1988年より膵胃吻合を開始し,同じ再建法で20例に行った.PD後の入院期間は,比較的長期となる症例が多い中で,どのような要因で短期化が計れるかを検討した.

臨床報告・1

乳腺アポクリン癌3例の臨床的検討

著者: 佐藤典宏 ,   的場直行 ,   藤井輝正 ,   亀岡宣久 ,   佐藤和洋 ,   井上強

ページ範囲:P.1203 - P.1207

はじめに
 乳腺アポクリン癌は,腫瘍細胞のアポクリン化生を特徴とする乳癌の特殊型である1).本症は比較的稀な疾患であり2,3),その臨床像生物学的特徴については十分に解明されていないのが現状である4).今回,当科で経験したアポクリン癌3例につき,その臨床的検討を行った.

直腸内分泌細胞癌の1例

著者: 石田雅俊 ,   山田正治 ,   宮田幹世 ,   川﨑靖仁 ,   下向博洋 ,   高橋良和

ページ範囲:P.1209 - P.1212

はじめに
 消化管の内分泌細胞由来の腫瘍はカルチノイド腫瘍として総称されてきたが,近年そのなかでも非常に悪性度の高い内分泌細胞癌(EC)と悪性度の低い典型的カルチノイド(CC)に分類されるようになってきた1).ECの発生頻度は非常に低いが,全消化管中で直腸は部位的に頻度が低く1),検索し得た範囲内では本邦で過去に12例のみである(表1)2-5)、われわれは,今回新たに直腸内分泌細胞癌を経験し,直腸の典型的カルチノイド腫瘍と癌関連遺伝子蛋白を含めた免疫組織学的検討を加えたので報告する.

CTスキャンによって術前に診断した魚骨穿通による腹腔腫瘤の1例

著者: 津田基晴 ,   鈴木衛 ,   小山信二 ,   三崎拓郎 ,   石沢伸 ,   北川鉄人

ページ範囲:P.1213 - P.1216

はじめに
 異物による消化管穿通(穿孔)は決して稀ではないが,術前に診断がつくことは稀である.今回われわれは,血液透析中の患者において,術前のCTスキャンで診断し得た魚骨による横行結腸穿通の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

術前診断に穿刺吸引細胞診が有用であった若年者顔面の汗腺癌の1例

著者: 宮本康二 ,   角田明美 ,   北山美佳 ,   大野あけみ ,   池田庸子 ,   牧本和生

ページ範囲:P.1219 - P.1222

はじめに
 汗腺癌は一般的に皮膚科で扱われることが多く,外科医は遭遇する機会が少ないため診断が区難なことも多い.今回われわれは,穿刺吸引細胞診により,生検することなく術前より皮膚付属器の腺腫または悪性腫瘍を疑い,切除術を施行後も再発を認めない症例を経験したので報告する.

腎転移を認めた直腸悪性黒色腫の1切除例

著者: 高森薫生 ,   杉原重哲 ,   上村晋一 ,   金子隆幸 ,   江上哲弘

ページ範囲:P.1223 - P.1225

はじめに
 悪性黒色腫は通常皮膚にみられる腫瘍であるが,稀に消化管にも発生し,なかでは直腸肝門部に比較的多くみられる1).最近,われわれは直腸切断術後1年2か月目に腎転移を認め,腎摘出術を施行した直腸悪性黒色腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

肝梗塞を合併したnonocclusive mesenterio ischemiaの1例

著者: 大野毅 ,   中島公洋 ,   藤井及三 ,   岡崎仁 ,   安田光宏 ,   穴井秀明

ページ範囲:P.1227 - P.1231

はじめに
 非閉塞性腸管梗塞症(nonocclusive mesentericischemia:以下,NOMI)は,主幹動静脈に器質的な閉塞がないにもかかわらず,腸管に虚血あるいは壊死の生じる疾患である1-3),今回われわれは広範囲の肝梗塞を伴ったNOMIを経験した.このような肝梗塞を合併したNOMIは本邦報告6例4-7)のみという非常に稀なものであり,症例を呈示するとともに診断,治療について若干の文献的考察を加えて報告する.

内瘻造設後,胆管拡張形態に変化をきたした先天性胆道拡張症の1例

著者: 成田洋 ,   若杉健弘 ,   加藤克己 ,   羽籐誠記 ,   伊藤昭敏 ,   真辺忠夫

ページ範囲:P.1233 - P.1237

はじめに
 先天性胆道拡張症に対する標準術式が,内瘻術から嚢胞切除,胆道再建による分流手術に代わって久しい.この間,内瘻術の抱える様々な問題が明らかとなり,過去の内瘻術施行症例に対しても何手術にて嚢胞切除,胆道再建術を行うのが原則と考えられている.こうした症例において内瘻造設時にみられた拡張胆管が分流手術の時点でいかなる形態を示していたかを知ることは,先天性胆道拡張症の胆管拡張の成因を探るうえにもきわめて興味深い問題と思われる.
 最近われわれは,24年前に内瘻術を受けた先天性胆道拡張症で,分流手術時には当時の嚢胞状拡張が変化していたという,胆管拡張機序を知るうえで示唆に富むと思われる1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告・2

特徴的な超音波像の得られた血管平滑筋腫の1例

著者: 小野寺健一 ,   佐藤孝

ページ範囲:P.1239 - P.1240

はじめに
 血管平滑筋腫(以下,本症)は,四肢に好発する有痛性皮下腫瘍である1).本邦ではすでに618例以上が報告されているが2),その超音波(以下,US)像については記載が乏しい.筆者らは特徴的なUS像の得られた本症の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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