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文献詳細

雑誌文献

臨床外科52巻9号

1997年09月発行

外科医のための局所解剖学序説・14

腹部の構造 1

著者: 佐々木克典1

所属機関: 1山形大学医学部解剖学第1講座

ページ範囲:P.1173 - P.1182

文献概要

 腹部の体表解剖を考える際,胸部における胸骨のような使い勝手のあるマーカーは残念ながらない.幾分アバウトで考えざるをえないが,その中で多くの情報をもっているのが,イギリスの解剖学者Addison Cが設定したtranspyroric planeである.これは胸骨柄切痕と恥骨結合を垂直に結び,その中点を通る水平な面である.剣状突起の下に手掌を当てた時,手掌の下縁にあたる.この面は第1腰椎と第2腰椎の間に一致し,胃の幽門を筆頭に数多くの重要な臓器,特に腹膜後器官の大半が含まれる.膵臓の頸部はtranspyroricplaneに含まれ脊柱の前にある.頸部を基点にして膵臓の頭部は右側,下方に向かい,体部,尾部は左側,上方に走行する.胆嚢の底部もこの面に含まれる.同時に胆嚢底部は腹直筋の外側縁と肋骨弓とが交差する場所で,第9肋骨の先端とも一致する.十二指腸・空腸曲はこの面で脊柱の左側にあり,腎門は正中より4横指外側に存在する.脊髄が終焉するのもtranspyroric planeである.
 肝臓は体表から輪郭を描くことができる.下縁が右第10肋骨の先端から左の乳首まで,上縁は乳首の真下を通る.一方,背側では第11肋骨が考える手がかりになる.脾臓は左第11肋骨に沿って存在し,脊柱の外側で第11と第12肋骨の間に左右の腎臓の上極が位置する.最も右は1/2肋間ほど左より低い.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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