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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科53巻1号

1998年01月発行

雑誌目次

特集 胆道ドレナージを考える

5.Expandable Metallic Stentを用いた胆道内瘻術の適応と問題点

著者: 若林剛 ,   中塚誠之 ,   藤原広和 ,   浦上秀次郎 ,   篠田昌宏 ,   加藤悠太郎 ,   相浦浩一 ,   島津元秀 ,   平松京一 ,   北島政樹

ページ範囲:P.59 - P.65

 切除不能な悪性胆道閉塞に対して,stentを用いた内瘻化術が一般化した.筆者らの内瘻化術の変遷は,1980年代がtube stentを使用した経皮経肝的から経内視鏡的留置へ,そして1990年代に入りExpandable Metallic Stent(EMS)の経皮経肝的留置と経内視鏡的tube stent留置の症例による使い分けが始まり,今ではEMSの経内視鏡的留置が加わり,一方tube stentの経皮経肝的留置が行われなくなった.一般的にEMSは開存率と確実性において優れ,tube stentは経済性と安易な点が有利である.経皮経肝的留置は手技が確実で肝門部閉塞に有利であり,一方経内視鏡的留置はより低侵襲でありPTCDを省略した一期的内瘻化が可能である.胆嚢癌浸潤による肝門部閉塞にcov-ered stentを使用した自験例を紹介し,現在,市販されている各種EMSを比較した.

6.PTCD施行後の減黄不良例と対策

著者: 小西一朗 ,   上田順彦 ,   永川宅和

ページ範囲:P.67 - P.70

 PTCD 260例(胆嚢癌48例,胆管癌81例,膵頭部癌59例,十二指腸乳頭部癌11例,総胆管結石嵌頓20例,胃癌再発リンパ節転移25例,その他16例)を対象として,減黄効果を得るための工夫,減黄率b値に基づく胆管閉塞部位別の減黄効果,さらに減黄不良例に対する対策を検討した.減黄有効例は,上部閉塞88例中80例(90.9%),中下部閉塞172例中158例(91.9%)で,減黄不良例はそれぞれ8例,14例であった.減黄不良22例のうち,肝腹膜転移がなく根治術が可能と診断された膵胆道系原発癌7例(胆嚢癌1例,中下部胆管癌5例,膵頭部癌1例)に対し,胆汁酸製剤投与に加え白己排出胆汁100ml/日の飲用を行い,減黄効果を得た.

1.術前減黄は必要か

肝門部悪性胆道閉塞に対する術前胆道ドレナージの必要性

著者: 佐野力 ,   二村雄次 ,   神谷順一 ,   梛野正人 ,   金井道夫 ,   上坂克彦

ページ範囲:P.13 - P.20

 肝門部悪性胆道閉塞の根治切除には,肝切除を伴う肝内区域,亜区域胆管枝の切除再建が必要な場合が多く,病変の正確な進展度診断なくしては合理的切除術式を立案できない.また肝門部の正確な局所解剖を1例ごとに把握しなければ,立案した合理的術式を安全かつ確実に実行することはできない.これらのためには,術前精密診断として,選択的経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)を行い,鮮明な胆管造影を種々の体位で撮影して胆管壁内進展を読影し,症例によっては経皮経肝胆道内視鏡検査(PTCS)で胆管粘膜病変を診断する必要がある.
 さらに術後肝不全の危険因子である肝内区域性胆管炎の料坊と治療を行うためにも選択的影像直達式PTBDは必須である.

膵頭十二指腸切除症例の術後合併症からみた術前減黄の意義に関する検討

著者: 福原稔之 ,   小林展章 ,   梶原建熈

ページ範囲:P.21 - P.25

 閉塞性黄疸患者に対する術前減黄の意義を検討する目的で,対象を膵頭十二指腸切除術を施行した症例とし,術直前の血清総ビリルビン値の高低,術前の減黄処置の有無,術前の減黄効果の良不良により術後合併症発生率,死亡率を比較したが,いずれにおいても差を認めず,また,膵頭十二指腸切除術による減黄効渠も良好であった.
 悪性疾患による閉塞性黄疵に対してのPTCD,ENBDなどの減黄処置は,胆道系に対する診断面における有用性は明らかではあるが,血清総ビリルビン値に基準を設定してまで減黄効果を待つ必要はなく,術前診断が確定次第,膵頭十二指腸切除術を施行することは可能と考えられた.

2.PTCDか,ENBDか

閉塞性黄疸症例に対する経皮経肝的減黄術

著者: 植田俊夫 ,   大島進 ,   近藤礎

ページ範囲:P.27 - P.30

 経皮経肝的胆道減黄手技実施後胆道出血の発症率は5.1%(重篤な出血例発症率は0.8%),胸腔関連の合併症発症率は2.7%,手技に関連する死亡率は0.3%であり,容認できる範囲と考える.経皮経肝的胆道減黄手技に続いて種々の診断・治療面での有用な手技を容易に繰り返し実施できるゆえに,閉塞性黄疸に対しては疾患の内容を問わず,経皮経肝的胆道減黄術が第一選択と考える.それらの手技は(1)反復胆道造影,(2)PTCS,(3)長期間QOLを維持できる術前減黄手技,(4)手術非適応悪性黄疸に対するtubeやEMSによる内瘻術である.

閉塞性黄疸に対する内視鏡的胆道ドレナージの意義

著者: 徳原真 ,   杉山政則 ,   跡見裕

ページ範囲:P.33 - P.36

 内視鏡的胆道ドレナージ術は安全で確実なドレナージ法である.PTBDが困難である胆管非拡張や腹水貯留例にも施行でき,非観血的であるため凝固異常を伴う症例にも可能である.合併症の頻度も低く,腹膜炎や出血など重篤なものもない.下技の成功率,減黄の効果も良好である.ただし,悪性腫瘍による症例で,十二指腸へのファイバー挿人困難例,胆管の強度狭窄例,肝門部〜肝内肌管狭窄例では成績は不良である.緊急で早期に減圧が必要な急性化膿性胆管炎やハイリスク症例には第一選択となるドレナージ法と考えられる.

3.EST付加は必要か

内視鏡的緊急胆道ドレナージ—EST付加・ENBDの意義

著者: 栗栖茂

ページ範囲:P.37 - P.41

 総胆管結石嵌頓に対する緊急胆管ドレナージに関して,ESTを付加したENBDの有用性と手技の実際について報告する.1984年から1996年までの13年間の緊急胆道ドレナージ症例は302例(内視鏡的249,経皮的39,緊急手術14)であった.初期はESTを行わないENBDが主流で,成功率94%,ドレナージ不良による死亡と膵炎を各1例経験したが,1992年以後積極的にESTを付加することによってドレナージ成功率は100%に向上した.乳頭に嵌頓した結石を突き上げ,主としてガイドワイヤーを用いる方法によってESTを付加し,7FrENBDを挿人した.EST付加は処置具の安定した活用とドレナージ効果において有用であった.乳頭切開範囲は可及的に小切開とし,小切開ESTでは乳頭機能は温存された.

EST付加は必ずしも必要ではない

著者: 大谷泰雄 ,   田中豊 ,   津久井優 ,   飛田浩輔 ,   森屋秀樹 ,   石過孝文 ,   堂脇昌一 ,   杉尾芳紀 ,   田島知郎 ,   幕内博康

ページ範囲:P.43 - P.46

 総胆管結石嵌頓に対して,従来よりESTを施行せずに総胆管切開+T-tube挿人手術で対処していたが,胆管結石嵌頓による閉塞性黄疸にESTを併用しない細径5FrのENBDを挿入することによるドレナージを施行して以来,5FrENBDを(1)胆道ドレナージ,(2)ESWLの造影ルート,(3)ENBD応用手術に施行し,ESTを併用しないで対処してきた.ESTは重篤な合併症の報告もあり,総胆管結石の再発を繰り返す症例のみに適応があると考える.

4.内瘻か,外瘻か

胆道内瘻ドレナージ

著者: 松永浩明 ,   難波江俊永 ,   新山秀昭 ,   高畑俊一 ,   宇都宮成洋 ,   横畑和紀 ,   千々岩一男 ,   田中雅夫

ページ範囲:P.47 - P.51

 閉塞性黄疸の非観血的胆道ドレナージ法には外瘻法と内瘻法がある.内瘻法の適応は手術不能の膵,胆道悪性腫瘍に対する永久的ドレナージや胆管結石による急性閉塞性(化膿性)胆管炎,一期的に胆石除去が施行できない大結石や多数の結石症例である.内瘻法の利点は,外瘻のような大量の体液の喪失がないこと,腸管内に肌汁が流人するため脂質の消化吸収障害や空腹期の消化管運動障害がないことがあげられる.さらに内瘻法では肝切除後の肝再生能も外瘻法より良好で,腸内細菌の増加や腸管粘膜の損傷を起こしにくいためエンドトキシン血症予防にもつながるとされる.閉塞性黄疸の胆道ドレナージには胆汁の腸肝循環を保つことが可能な内瘻化が望ましい.

胆道ドレナージの内瘻・外瘻の使い分けのポイント

著者: 熊沢健一 ,   塩澤俊一 ,   土屋玲 ,   増田俊夫 ,   芳賀駿介 ,   梶原哲郎

ページ範囲:P.53 - P.57

 胆道ドレナージに対し外瘻と内瘻のどちらが良いのか,どこに差があるのかを考察した.実験的には内瘻の胆汁中へのビリルビン排泄能は外瘻より高かったが,減黄率には差がなかった.脂質代謝ではコレステロールの排除,HMG CoA reductase活性の戻りは外瘻のほうが早かった.また,外瘻により排泄胆汁中ビリルビン量を測定することにより早期に肝機能の評価が可能であった.根治術を前提としたドレナージでは外瘻のほうが早く手術に持っていける点で有利と思われた.非切除例に対する永久ドレナージは患者のQOLを考えて内瘻化が優れていると言える.しかし,膵癌や胆嚢癌の在宅期間はきわめて短く,胆管癌などよりトラブルが多い.したがって内瘻化を行うときには原発巣と予後を考慮する必要がある.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・37 肝・胆・膵・脾

経胆嚢管的総胆管結石摘出術

著者: 木村泰三 ,   川辺昭浩 ,   桜町俊二 ,   小林利彦 ,   吉田雅行

ページ範囲:P.5 - P.10

はじめに
 胆嚢結石の標準術式が腹腔鏡下胆嚢摘出術(laparoscopic cholecystectomy:以下,LC)となった今日,胆嚢胆管結石に対してどのような治療を行うのが良いかについては議論のあるところであろう.現時点で最も多く採用されている方法は,内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)(あるいはバルーン拡張術(EPBD))+LCであると思われる.しかし,LCと同時に経胆嚢管的に胆管結石も摘出できる(一期的切石)のであれば,乳頭機能の温存,患者に与える苦痛の軽減,入院期間の短縮,医療費の節約1)などを考えると,一期的切石が理想的方法であろう.にもかかわらずなかなか普及しない理由は,手技の難度が比較的高いことにあるが,種々の器具・器械の開発,手技の工夫により次第に容易な手技となってきている.ここでは筆者らの用いている器具を紹介し,手術手技の要点を述べる.

病院めぐり

済生会江津総合病院外科

著者: 村上雅一

ページ範囲:P.72 - P.72

 済生会江津総合病院は,島根県西部,石見地方にある江津市の小高い丘の上に位置し,近くには江の川の河口が開け,また,病院からは毎日のように表情を変える日本海が見渡せます.当院は昭和30年4月に49床で開設され,その後計4回の増改築がなされ,現在では11診療科,許可病床数314床(一般300床,結核14床)の,この地域の基幹病院として発展しています.現在当院は建物が老朽化し,またこれ以上増改築を行うスペースもないことから,病院の移転,新築を検討中でありますが,実現にはもうしばらく時間がかかりそうです.診療圏は江津市,浜田市,大田市,邑智郡,仁摩郡,那賀郡などの広範囲にわたります.島根県は全国一の高齢者県であり,とくに石見地方では65歳以上の高齢者が約25%を占め,過疎も進行しています.必然的に患者の平均年齢も高く,老人医療に関する昨今の改革は,当院にとっては大問題となっています.
 当院外科は,現在岸本宏之院長以下,阿部重郎副院長,万木英一外科部長,塩田摂成,星野和義,そして村上の6名となっており,いずれも鳥取大学第1外科の出身であります.他に週1回鳥根医科大学第1外科より,心臓血管外科1名の応援を受けています.また,日本外科学会,日本消化器外科学会の認定医修練施設にもなっています.

鳥取県立中央病院外科

著者: 岸清志

ページ範囲:P.73 - P.73

 現在の鳥取県立中央病院は昭和50年,鳥取市内からおよそ6km離れた千代川河口に近い郊外に新築移転されました.その後救命救急センター,腎センター,周産期センター,総合検診センターを組織し,診療科21科を擁し,今では名実ともに鳥取県東部の中核病院として重要な役割を果たしており,とくに高度先進医療を担うことが求められています,平成8年9月には手狭となった外来部門を切り離し,amenityを重視した新外来棟が完成,同時にコンピュータによるオーダリングシステムが導入されました.病床数417床,平均在院日数約20日,常勤および非常勤医師数59人,1日外来患者数は950人程度です.鳥取市の人口14万人に周辺人口を合わせてもたかだか30万人足らずの医療圏に同規模病院が当院を含め4病院もあり,小さなコップの中での熾烈な生き残り戦争が展開されています.ある程度以上の医療レベルを保たなければ病院としての存在意義が消滅する状況は反面,患者の立場からは望ましい環境にあるといえます.
 さて当外科は昭和43年,鳥取大学医学部第1外科(綾部正大第1外科初代教授)から2名の外科医が派遣されスタートしました.その後,麻酔科,脳神経外科,心・血管・呼吸器外科(乳腺,甲状腺も担当)が独立新設され,昭和50年からは消化器・一般外科(昭和60年からは小児外科増設)に専念することとなりました.

メディカルエッセー 『航跡』・17

カナダ横断30日間講演旅行(4)—モントリオールの休日

著者: 木村健

ページ範囲:P.74 - P.75

 モントリオール空港に着くと,ガットマン教授夫妻が迎えてくれた.はじめてお目にかかる奥方は世界に名高い精神科の教授と聞いていたので,小むずかしい御仁に違いないと秘かに決め込んでいた.思惑と裏腹に若々しく,魅力いっぱいで,ダイナミックな知性に満ちた女性であったので,対話の間をもたせる埋草に用意しておいたパーティー用のお話には御用もなく,まずはめでたしめでたしであった.
 街角の標識や看板は断然フランス語が優位に立っている.耳にはさむ会話もすべてフランス語に聞こえてしまう.カナダは英仏両語を公用語とし,小中学校では両国語を均等に教えることが義務である.しかし,西のバンクーバー,東のハリファックスでは専ら英語のみが使われていた.道路標識などなんとなく英語だけのように思えたので,「英仏両語が公用語といっても,このあたりは英語だけのようですね」とたずねると,相手は「ケベックからはかなり離れてますからね」といってニヤリと笑うのであった.

外科医のための局所解剖学序説・18

腹部の構造 5

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.77 - P.86

 最近の研究のスタイルは多数の人間がシステマティックに行うのが主流で,大きな効果をあげている.しかし真に独自の研究がなされる時は1人の人間の強い個性と飽く無き情熱が主体となり,多人数で成されるものからは生まれにくい.1人の人間ができることなどはたかが知れていると広言して憚らない人もいるが,私はそうは思わない.プリオン説を唱えたPrusinerは徹底的な批判にさらされながら自説を曲げず,今回ノーベル賞を受賞した.その人柄をある人は“非常に攻撃的,活動的な人だ”と寸評した.自分の研究を広めるためというより,守るために攻撃的にならざるをえなかったのではないかと推測するが,研究を守り切ったのは1人の人間であったことに私は注目したい.このような例を最初に掲げたのは,肝臓移植が現在のような形になったのもStarzl TEとCalne RYを双壁とする強い意志と個性を持つ人間が核として初期に存在したからだと述べたかったからである.彼らが行った基礎から臨床にわたる広範囲な研究には圧倒される.決してつけ焼刃的なものではものは成就しないことを改めて思い知らされる.
 しかしここでは彼らが行っている同所性肝移植ではなく,おそらく将来忘れ去られるであろう異所性肝移植について書き留めておきたい.

遺伝子治療の最前線・7

メタロチオネインプロモーターを用いた遺伝子ターゲッティング

著者: 金隆史 ,   峠哲哉

ページ範囲:P.87 - P.90

はじめに
 1990年に米国で遺伝子治療の第1例が施行されて以来,遺伝性疾患,各種の悪性腫瘍,AIDSなどに遺伝子治療が施行されている1).悪性腫瘍に対しても,これまでTNF—αのTILへの導入2),p53の導入3),多剤耐性遺伝子(MDR gene)の導入4),単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV-tk)の遺伝子導入5)など,多くの標的遺伝子への治療が試みられている.しかしながら,悪性腫瘍そのものが単一の遺伝子の変化ではなく,複数の遺伝子変異の蓄積によるため,十分な効果をあげているとはいえないのが現状である.本稿ではメタロチオネインプロモーターを用いた遺伝子ターゲッティングの1つの試みとして,抗癌剤5’—DFURの活性化酵素であるthymidine phos-phorylase(PyNpase)の遺伝子誘導における筆者らのデータを基に,新たな遺伝子ターゲッティング療法の可能性について述べたい.

臨床外科交見室

「グリソン一括処理」をめぐって

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.91 - P.91

 肝切除はその一面において“出血との闘い”と言って過言ではない.従来より肝外傷に対する治療の一環として様々な止血法(集束結紮,組織充填,焼灼など)が考案され,これらが肝切除に際しての出血制御に臨床応用されてきた.また肝硬変を合併しその肝予備能が低下した患者においては,その予備能に見合った切除術式を行う必要がある.そこで,従来の非定型的切除や部分切除術に替わって登場したのが,幕内氏が提唱した「術中超音波検査を駆使した系統的亜区域切除術(US-guided subsegmentectomy)」であり,その臨床的有用性から広く普及している.
 かくのごとく,肝をその区域ないし亜区域のレベルで解剖学的に正しく“系統的に”切除するには,相応の経験と熟練したテクニックを必要とするのである.また,手術器械の面では,近年になり超音波メスやマイクロウェーブ凝固装置などが導入され,プリングル操作などを組み合わせることにより,実際に肝実質に切り込んでいく際の出血はかなり減少してきた.

手術手技

5トロカール法による腹腔鏡下順行性胆嚢摘出術におけるわれわれの工夫

著者: 馬場秀文 ,   岩丸有史 ,   菅重尚 ,   鈴木文雄 ,   大高均 ,   守谷孝夫

ページ範囲:P.93 - P.97

はじめに
 腹腔鏡下胆嚢摘出術はPerissat,Reddick,Duboisらの報告1-3)似来,胆嚢結石症に対する標準術式として定着し,また手術器具,周辺機器ならびに手術手技の向上により適応が拡大され,ほとんどすべての症例に対して施行されるようになってきた.またその術式は,Calot三角部の術野展開が困難なために,通常の開腹胆嚢摘出術とは異なり逆仔性胆嚢摘出術が一般的に採用されている.また一方で,腹腔鏡下胆嚢摘出術が普及するにつれ,胆嚢管の誤認による胆管損傷,肝動脈損傷などの様々な合併症が報告されるようになった.そこで,われわれは,胆管損傷などの術中合併症を防止する目的で,1996年10月より順行性胆嚢摘出術を標準術式として採用し良好な成績を得たので,その手技上の改良点および成績について報告する.

臨床報告・1

前腹壁に発生した神経鞘腫の1例

著者: 加藤憲治 ,   佐々木英人 ,   井戸政佳 ,   岩田真 ,   長沼達史 ,   藤森健而

ページ範囲:P.99 - P.101

はじめに
 神経鞘腫は頭頸部や四肢に好発する腫瘍で,胸壁や腹壁に発生することは少ない.また特有の症状に乏しく,その術前診断は困難なことが多い1).最近われわれは,前腹壁の深部から腹腔内に突出するように発育した神経鞘腫の1例を経験したので報告する.

胆嚢横行結腸重複瘻の1例

著者: 津屋洋 ,   村瀬賢治 ,   佐藤哲也 ,   波頭経明 ,   金田成宗 ,   高橋親彦 ,   下川邦泰

ページ範囲:P.103 - P.107

はじめに
 胆嚢結腸疲は特発性内胆汁瘻の中で10%前後の発生頻度であるが1-5),胆嚢と横行結腸に重複瘻孔を来した報告はきわめて稀である.今回われわれは,術前診断が困難であった胆嚢横行結腸重複瘻の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

ハロペリドールにより管状腺腫が授乳性腺腫に変化したと考えられた1例

著者: 長田啓嗣 ,   濱畑哲造 ,   林宏一 ,   山本隆一

ページ範囲:P.109 - P.112

はじめに
 乳腺の良性上皮性腫瘍は,乳癌取扱い規約1)によると1)乳管内乳頭腫,2)乳頭部腺腫,3)腺腫に分類され,さらに腺腫は管状腺腫と授乳性腺腫に亜分類されている.Hertelら2)は管状腺腫が妊娠・授乳期において授乳性腺腫に変化すると推測している.しかし,管状腺腫が授乳性腺腫に変化した症例の報告は見当たらない.今回,ハロペリドール投与中患者の多発性乳房腫瘤を摘出したところ,管状腺腫と授乳性腺腫が混在する組織像を呈した興味深い症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

小腸間膜裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスの1例

著者: 中尾篤典 ,   阪上賢一 ,   宇田征史 ,   光岡晋太郎 ,   中村裕二 ,   大津直也

ページ範囲:P.113 - P.116

はじめに
 小腸間膜裂孔ヘルニアは稀な疾患で,裂孔への腸管の陥入による絞扼性イレウスとして発症するものが多い.その発症は急激で術前診断も困難であり,早期に治療しないと腸管壊死をきたしてしまう重篤かつ緊急性を要する疾患である.今回われわれは小腸間膜裂孔ヘルニアによる絞掘性イレウスの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

術前照射が著効を示し乳房温存術が可能となった一側多発乳癌の1例

著者: 吉田崇 ,   竹尾健 ,   末益公人 ,   東靖宏 ,   黒住昌史

ページ範囲:P.117 - P.121

はじめに
 早期乳癌に対する乳房温存療法は本邦1)でも欧米2,3)と同様に乳房切除術と同等の治療成績が得られてきている.しかし一側多発乳癌,広範な乳管内進展を有する例など乳房温存療法の適応にならない症例も多い.また腫瘍径が大きいものに対する温存療法は切除範囲が広くなるため,美容的な面からも問題を生じやすい.このような症例に対していかにして乳房温存療法の適応を拡大するかが問題となっている.今回われわれは術前照射が著効を示し乳房温存術が可能となった一側多発乳癌の1例を経験したので報告する.

乳腺adenolipomaの1例

著者: 金沢守 ,   守田知明 ,   中村丘 ,   松井則親 ,   兼行俊博

ページ範囲:P.123 - P.125

はじめに
 乳腺の腺脂肪腫(adenolipoma)はfibroadeno-lipoma,hamartomaとも呼ばれる稀な良性腫瘍で,本邦でも1996年の集計で32例の報告があるのみである.われわれは検診で発見された乳腺腺脂肪腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えこれを報告する.

大腿薄筋弁とフィブリン糊充填が奏効したMiles手術後難治性骨盤死腔膿瘍の1例

著者: 鈴鹿伊智雄 ,   井上普文 ,   塩田邦彦 ,   西原正純 ,   中川準平 ,   清水信義

ページ範囲:P.127 - P.130

はじめに
 骨盤死腔膿瘍はMiles手術や骨盤内臓全摘術の合併症の一つであるが,周術期に放射線照射を施行した場合,組織修復力が傷害され感染も併発しやすくなるため,しばしば難治性となる1).かかる症例に対し,大腿薄筋弁充填術とフィブリン糊注入を併用し治癒せしめたので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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