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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科53巻10号

1998年10月発行

雑誌目次

特集 胃癌術後補助化学療法をめぐって

胃癌の補助化学療法の現状と将来展望

著者: 中島聰總 ,   太田恵一朗 ,   大山繁和

ページ範囲:P.1253 - P.1260

 胃癌の術後補助化学療法として,わが国ではMMC,5-FU,UFTなどの単独,あるいはMFC,FAMなどの多剤併用療法が使用され,また西欧諸国では5-FUを中心とした多剤併用療法(5-FU+MeCCNU,FAM,FAME,FAMXT)が使用されてきた.わが国では一部のsubsetに補助化学療法の有用性が示唆されたが,全体としての統計的有意な補助化学療法の報告は少なかった.西欧諸国においても延命効果を報告したものは少なかった.しかし最近のmeta-analysisの結果は補助化学療法の有用性を示唆し,また延命効果を示唆する単独の報告も散見されるようになった.今後,入念に企画されたプロトコールに基づく多施設共同研究により,胃癌の標準治療としての補助化学療法を早急に確立する必要があり,研究を実行し支援する共同研究機構の整備が不可欠である.

比較試験による胃癌術後補助化学療法の評価—JCOG胃がん外科グループによる臨床試験

著者: 北村正次 ,   荒井邦佳 ,   岩崎善毅

ページ範囲:P.1261 - P.1269

 欧米および日本における胃癌術後の補助化学療法の臨床試験の結果をレビューするとともに,JCOG胃がん外科グループが施行してきた臨床試験を紹介した.欧米における補助化学療法の研究では有効性を示したものはきわめて少なく否定的である.日本の臨床試験では全体では補助化学療法群に有意差を持った有用性は示されなかったが,層別解析において手術単独より優る結果がみられた.これらの結果を背景に化学療法同士の比較試験が行われてきたが,最近になり手術単独群と比較し,その有用性を再評価すべきであるとの認識が出てきた.現在,JCOGの臨床試験では,補助化学療法群と手術単独群の比較を行っており,さらにN・SAS-GCでは現在,使用量の最も多いUFTの有効性を手術単独群と比較するトライアルが大規模に行われている.今後,胃癌の治癒切除後の補助化学療法の臨床試験は,手術単独群を対象として統計学的な根拠に基づいたsample sizeの設定,適切な対象症例,手術のquality control,ICH・GCPにのっとったプロトコール作成と厳重なデータ管理などが整ってはじめて評価に耐え得る成績が出て来るものと考えられる.

胃癌に対する術後補助化学療法におけるインフォームド・コンセント

著者: 古川俊治

ページ範囲:P.1271 - P.1278

 胃癌術後補助化学療法におけるインフォームド・コンセント(以下,IC)に当たっては,病名および進行程度,術後補助化学療法の内容,副作用の種類と発症率,他の術後補助療法と比較した場合の利益・不利益,予想される予後について,当該患者が重要視すると考られる事項が説明されなければならない.その際前提として,①stageⅡの60〜70%,stageⅢの40〜50%の患者は手術のみで治癒しており,そもそも術後補助療法一般が全く不必要である点,②仮に遺残癌細胞が存在する場合であっても,補助化学療法の奏効率は低率である点が明確にされなければならない.stageⅡ以上の患者には術後補助化学療法について一応の説明を行う必要があるが,stageⅠaの患者にはその適用がある旨の説明をすべきではない.胃癌術後補助化学療法を無作為割付比較対照臨床研究として実施する場合には,原則として新GCPに準拠したICが必要であり,一定事項について記載した説明文書を交付して説明した上,文書により同意を得る必要がある.一方,患者に治療法の選択決定が留保された臨床研究では,一般的対象事項の説明で足りるが,研究内容の合理性に加え,効果の不確実性と副作用の危険性についての慎重なICが必要である.

抗癌剤感受性試験と補助化学療法—これまでの総括

著者: 久保田哲朗

ページ範囲:P.1279 - P.1284

 胃癌補助化学療法の生存期間延長における有用性の結論はcontroversialである.われわれはMTTアッセイ,HDRAを用いて胃癌補助化学療法選択における抗癌剤感受性試験の有用性を検討してきた.少なくとも低感受性群に対する補助化学療法は手術単独群に比して生存期間を延長する可能性は低く,一律に補助化学療法を行うことは避けるべきである.しかし化学療法によりメリットを受ける感受性群も同時に存在する.ブラインド法により行われたグループ研究を含めた複数のretrospective studyにおいて,感受性試験は補助化学療法選択に有用であり,現在prospective studyによる確認が進行中である.

高度進行胃癌における術後化学療法と抗癌剤感受性試験—prospective studyでの検討

著者: 磯部陽 ,   久保田哲朗 ,   窪地淳 ,   島田敦 ,   島伸吾 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1285 - P.1289

 胃癌術後補助化学療法における抗癌剤感受性試験の有用性をprospectiveに検討するために,高度進行・再発胃癌の手術例28例にhistoculture drug response assay(HDRA)を行い,その結果に基づいて術後化学療法を行った.HDRAの判定可能率は86%で,MMC,5-FU,ADM,CDDPの4薬剤いずれかに対する感受性が陽性であった高感受性群は13例,すべてが陰性であった低感受性群は11例であった.高感受性群には陽性薬剤を投与し,低感受性群には標準的化学療法か無化学療法のいずれかを選択して両群の予後を比較した.高感受性群の50%生存期間は10.6か月で,低感受性群の5.5か月に比して良好であり(p=0.01),抗癌剤感受性試験により選択された補助化学療法が進行胃癌の術後生存期間を延長することが示唆された.

Evidence based medicineの観点からみた胃癌補助免疫化学療法の評価

著者: 坂本純一 ,   生越喬二 ,   合地明 ,   中里博昭

ページ範囲:P.1291 - P.1299

 癌病態治療研究会メタアナリシス研究班の協同研究により,胃癌に対する補助免疫化学療法を化学療法単独治療と比較した臨床試験の結果を統合し,メタアナリシスによる評価を行った.PSKの効果をみた7試験(4,732例)ではOR 0.89,p=0.043,対象をT2+T3症例に絞り込んだIPD解析ではOR 0.78,p=0.047,T2+T3,PPD(+)症例ではOR 0.63,p=0.01と,要因依存性の治療効果が強く示唆された.また非治癒切除胃癌に対するOK−432の筋注,皮下注の7試験ではOR 0.98,p=0.90であったが,治癒切除胃癌に対する経口投与ではOR 0.85,p=0.20となり,moderateではあるが予後の改善に有用である可能性が示された.

カラーグラフ 消化器の機能温存・再建手術・2

胸部食道癌に対する機能的拡大リンパ節郭清術—右気管支動脈,迷走神経気管支枝および心臓枝,奇静脈弓,胸管温存手術

著者: 藤田博正 ,   末吉晋 ,   山名秀明 ,   白水和雄

ページ範囲:P.1245 - P.1251

はじめに
 筆者らは頸胸腹三領域リンパ節郭清術を胸部食道癌切除例に対する標準手術と考えている.その適応基準は,(1)根治切除例,(2)70歳未満,(3)低リスク症例の3条件である.リスクの判定は肝腎心肺機能に糖尿病の程度を加味したスコアリング法,エルゴメータによる運動時最大酸素摂取量,アシアロ肝シンチ,術前補助療法の有無などを勘案して行っている.最近の数年間では(1),(2)の適応基準をクリアしていれば,できる限り三領域郭清術を行う方針であり,胸部食道癌切除例の70%以上に施行している.
 三領域郭清術の適応拡大にあたり,「合理的リンパ節郭清」と「機能的温存縦隔リンパ節郭清」の2点を重視した.「合理的リンパ節郭清」とは食道癌のリンパ節転移・再発の様式ならびに生存率から各リンパ節の重要性を評価し,それに基づいて郭清範囲を決定した1,2).「機能温存縦隔リンパ節郭清」では術後合併症の検討や動物実験に基づき,気道の阻血を防止するために右気管支動脈を温存し,咳嗽反射の減弱や消失を防止するために右迷走神経気管支(肺)枝を温存した3,4).さらに3rdspaceへの体液貯留を減少させる目的で胸管を温存した.奇静脈弓の温存は縦隔郭清時や後縦隔胃管挙上時の気管支動脈の損傷を防止することが主たる目的である.現在では,気管分岐部にまたがる進行食道癌を除き,この機能的拡大リンパ節郭清術を施行している.

私の工夫—手術・処置・手順・46

Tチューブ挿入時の早期抜去対策の工夫—大網を利用する方法

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.1301 - P.1302

1.はじめに
 最近,総胆管結石に対する手術は,EST+腹腔鏡下胆嚢摘出術や腹腔鏡を利用した胆管切開法が提唱されている.しかし,通常の開腹手術で総胆管を切開し,Tチューブ挿入の従来の方法を施行している施設も多いと思われる.この方法の利点は,安全に比較的短時間で行えることである.欠点は,Tチューブ挿入に伴う合併症が時々あること,Tチューブ抜去まで約3週間を要することである.また,高齢者や糖尿病や肝硬変合併などの患者では,瘻孔形成不全が時々見られ,Tチューブ抜去後発熱,激痛,ときには胆汁漏がみられることがある.その対策として以下のように工夫した.

外科医に必要な耳鼻咽喉科common diseaseの知識・5

顔面外傷(特に鼻骨骨折)

著者: 渡辺悟郎

ページ範囲:P.1303 - P.1305

疾患の概念
 近年の交通事故,スポーツ外傷,労働災害などの増加とともに,顔面外傷に接する機会が多くなり,われわれ耳鼻科医も積極的に取り扱うことが多くなった.
 顔面外傷は軟部組織の損傷と顔面骨の損傷に分類される.顔面骨骨折で一番多いのは鼻骨骨折である.

外科医に必要な産婦人科common diseaseの知識・5

子宮内膜症

著者: 野田隆弘

ページ範囲:P.1306 - P.1307

 子宮内膜症とは子宮内膜の性質を有する組織が子宮以外の部位に存在している状態である.本疾患は主として月経を有する女性に好発し,閉経とともにその頻度は減少する.子宮内膜症は多くの場合,骨盤腹膜や骨盤内臓器に発生し,月経痛,不妊など多彩な症状を呈する.

病院めぐり

仙台市立病院外科

著者: 酒井信光

ページ範囲:P.1308 - P.1308

 仙台市立病院は,仙台市の中心部にあり,JR仙台駅から地下鉄線で南にひと駅の,五橋にあります.
 当院は昭和5年に,市の社会事業の一つとして開設され,以後増改築,移転を重ね,昭和55年に,創立50周年を期して現在の地に新築移転しております.当然のことながら,医療を通して地域社会に密着した関わりを常に要求されており,平成3年には救急センターが増設され,平成5年には老人性痴呆疾患センターが増設されております.現在の診療科は19科,常勤医師100名で,病床数549床,外来1日平均患者数1,340人です.診療のスムーズな対応のため,今年からコンピュータによるオーダリングシステムが導入されております.平成10年に病院管理機構の認定施設の指定を受けました.日頃の努力が認められたものと思います.

白生会胃腸病院外科

著者: 高橋克郎

ページ範囲:P.1309 - P.1309

 白生会胃腸病院は,津軽平野の中心で,当地が生んだ歌手・吉 幾三の歌で有名な雪国・五所川原市にあり,霊峰・岩木山,別名津軽富士を間近に望む場所に建っています.電車の本数や映画館の数では都市部には遠く及びませんが,患者を愛し,和やかさを与えるように,汗を流して励めと言う意味の『愛と和と汗と』をモットーに,医療スタッフはもとより,職員一丸となって日夜地域医療に励んでいます.
 当院は昭和37年に佐藤浩平院長(現白生会々長)の下,日本のメイヨークリニックを目指し,10床で開設された佐藤外科医院を基盤に,現在,6診療科,266床と発展を遂げ,当地域の基幹病院となっており,また,救急外来は年間約500台の救急車を受け入れ,救急医療の中核ともなっています.

メディカルエッセー 『航跡』・26

チーフレジデント物語—チーフレジデントは科の要なり

著者: 木村健

ページ範囲:P.1310 - P.1311

 毎朝6時半には家を出てボストン南部の海岸沿いに走る3Aと呼ぶローカル道路を北進する.右手には長い砂浜のウォールストンビーチが広がり,はるか霞の彼方にボストン市街の高層ビルが浮かび上ってくる.128号線に乗ってさらに北上すると,毎朝のことながら,片道4車線のハイウェーはまるで無限に続く長大な駐車場の様相を呈する.市内に向かう車でぎっちり埋めつくされ,にっちもさっちも行かない.ボストン名物の朝の渋滞である.ボストン市内で高速道路を降りた車は狭くて迷路のごとき道路に阻まれて動きがとれない.その上誇り高きボストニアンは信号が赤であろうと青であろうと,われ関せずどんどん横切るから,仕方なしに車のほうが停まって人を先に行かせる.わずか1マイルの道程を30分かかって小児病院の駐車場にたどりつくと,さすが早朝だけあってまだ車は少ない.駐車場といっても舗装もない只の空地.2週間前,病院の検査技師がホールドアップに遭い,有り金残らずまき上げられたという物騒なスポットである.
 小児外科レジデントのチームは,7時に新生児ICUから始めて,1時間かけて全患者を回診したのち,8時から手術を開始する.手術日は月曜から金曜日までの5日間.当時の記録を見ると1年間に800例余りの手術をしているから,週に16例として日になおすと3例強平均である.

癌の化学療法レビュー・6

大腸癌の化学療法

著者: 市川度 ,   仁瓶善郎 ,   杉原健一

ページ範囲:P.1313 - P.1320

はじめに
 最近増加傾向にある大腸癌に対する治療の主軸は外科手術である.本邦における大腸癌に対する手術治療成績の向上は著しく,原発巣の切除率は85〜95%であり,治癒切除率は70〜80%に達している1).しかし,約20〜30%に再発・死亡を認め,その原因は肝転移,局所再発が大半を占めている.肝転移に対しては積極的に肝切除術が行われ,5年生存率は30〜40%と外科治療成績の向上が認められものの,肝切除の可能な症例は30〜40%に過ぎない1).したがって,大腸癌の予後のさらなる向上には化学療法や放射線療法などによる補助療法や再発症例に対する有効な治療法の導入が不可欠である.
 元来,大腸癌は薬剤抵抗性の腫瘍であり,進行再発大腸癌に対する従来の化学療法には限界がみられた.しかし,合理的な抗癌剤の投与方法,投与様式が研究され,biochemical modulation(BCM)の概念の臨床導入により,現在,大腸癌の化学療法はまさに黎明期を迎えている.

臨床研究

経肛門的内視鏡下マイクロサージエリー(TEM)40症例の治療成績

著者: 阿保昌樹 ,   黒川良望 ,   安藤健二郎 ,   三井一浩 ,   上野達之 ,   里見進

ページ範囲:P.1321 - P.1326

はじめに
 近年,患者のquality of life(QOL)を考慮し,より低侵襲の治療法を選択する傾向が一般化しつつある.特に直腸癌に対する手術法に関しては人工肛門という問題も絡み,患者のQOLに多大な影響を与えるため,慎重な選択が要求される.
 早期直腸癌におけるリンパ節転移をきたすリスクファクターは,過去の膨大な切除標本の検討により明らかとなってきており,局所切除にて根治可能か否かを判断することが可能となった.直腸局所切除法としては,ポリペクトミー,EMRなどの内視鏡的切除があり,外科的局所切除法として経肛門的,経仙骨的,経括約筋的アプローチ法が挙げられる.

臨床報告・1

胃軸捻転を伴った傍食道型食道裂孔ヘルニアの2例

著者: 吉田禎宏 ,   中田昭愷 ,   斎藤恒雄 ,   今冨亨亮 ,   浅井晶子

ページ範囲:P.1327 - P.1331

はじめに
 胃軸捻転を伴った食道裂孔ヘルニアは本邦では稀であり,27例の報告があるに過ぎない1〜10).今回,臓器軸性胃軸捻転を伴った傍食道型食道裂孔ヘルニアの2例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

感染を伴い急速に増大した上腕動脈瘤の1治験例

著者: 田村昌也 ,   関雅博 ,   坪田誠 ,   遠藤将光 ,   車谷宏

ページ範囲:P.1333 - P.1336

はじめに
 上肢に発生する動脈瘤は少なく,中でも非外傷性のものは特に稀である1),今回われわれは,感染を伴い急速に増大した動脈硬化性上腕動脈瘤に対して外科的に治療した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

子宮癌で腹腔内留置リザーバーカテーテルが直腸穿通をきたした1例

著者: 岩上栄 ,   林外史英 ,   菊地誠 ,   足立巌 ,   武川昭男 ,   渡辺洋宇

ページ範囲:P.1337 - P.1341

はじめに
 腹腔内化学療法は腹膜播種を転移経路とする悪性疾患に対する治療法である.腹腔内化学療法を定期的に施行するためには皮下植え込み式カテーテルを設置するが,長期間の留置によりカテーテルの閉塞,癒着が生じることが問題になっている.しかし,カテーテルが消化管を損傷したとの報告例は少ない.今回われわれは,子宮体癌Ⅰb期に対して皮下植え込み式カテーテルを用いてcis-platin(CDDP)50 mgを2回腹腔内投与終了1年2か月後にカテーテルによる直腸穿通をきたした症例を経験したので報告する.

特徴的な画像を呈した魚骨の消化管穿通による腹腔内膿瘍の1例

著者: 星野和義 ,   村上雅一 ,   塩田摂成 ,   万木英一 ,   阿部重郎 ,   岸本宏之

ページ範囲:P.1343 - P.1346

はじめに
 魚骨の消化管穿通による腹壁あるいは腹腔内膿瘍は比較的稀であり,術前に診断することは困難とされてきた1〜4)
 今回,われわれは,術前診断はできなかったが,術後retrospectiveに検討すると特徴的な画像所見を呈した魚骨の消化管穿通による腹腔内膿瘍の1例を経験したので報告する.

MRI検査で発生部位を推定しえた後腹膜神経鞘腫の1例

著者: 馬場秀文 ,   田中克典 ,   菅重尚 ,   三浦弘志 ,   今井裕 ,   佐藤秀昭

ページ範囲:P.1347 - P.1351

はじめに
 神経鞘腫は末梢神経のSchwann細胞から発生する腫瘍で,好発部位は頭頸部および四肢であり,後腹膜原発は比較的稀とされている1).また,その術前診断は特有の症状を認めないため困難なことが多い.今回われわれは,腹部超音波検査で後腹膜腫瘍,MRI検査で腰方形筋の前面を走行する腰神経叢から分枝した末梢神経由来の神経原性腫瘍と診断し,摘出標本の病理組織学的所見より同神経より発生した良性神経鞘腫と確定診断された症例を経験したので報告する.

瘻孔形成過程を観察しえた胆嚢胃瘻の1例

著者: 東平日出夫 ,   今井直基 ,   立山健一郎 ,   角泰廣 ,   坂東道哉 ,   尾関豊

ページ範囲:P.1353 - P.1356

はじめに
 内胆汁瘻のうち胆嚢胃瘻は,胆嚢十二指腸瘻や胆嚢結腸瘻に比べて比較的まれな疾患である.さらにその診断は,特異的な症状がなく,また瘻孔の存在部位を特定することが困難で,術前診断できないことが多い1).今回われわれは,胆石症により胆嚢胃瘻を形成した症例を経験し,その臨床経過から瘻孔の形成時期を特定し,また,術前診断しえたので報告する.

大網転移をきたした肝細胞癌の1例

著者: 坂東道哉 ,   立山健一郎 ,   今井直基 ,   尾関豊 ,   本告成淳 ,   篠崎正美

ページ範囲:P.1357 - P.1359

はじめに
 肝細胞癌が腹膜や大網に播種性転移を生じることは比較的稀であり,報告例も少ない1〜11).われわれは既往治療の経皮的エタノール注入療法(以下,PEI)に起因した播種性転移と思われる,大網転移をきたした肝細胞癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

腎移植後9年目に発生した原発性肺癌の1例

著者: 中尾篤典 ,   斎藤信也 ,   松野剛 ,   八木孝仁 ,   大石正博 ,   井上文之 ,   藤原俊義 ,   田中紀章

ページ範囲:P.1361 - P.1364

はじめに
 腎移植後の長期生着例が増加するに従い,種々の合併症が経験されるようになった.なかでも悪性腫瘍の発生頻度は一般人口のそれよりも高い1)と言われており,重要視されている.今回われわれは,生体腎移植後9年目を経て発生した肺腺扁平上皮癌の1症例を経験した.腎移植後の悪性腫瘍は,皮膚癌や泌尿器癌,悪性リンパ腫1,2)が多く報告されているが,肺癌の報告例は少なく,以下に若干の文献的考察を加えて報告する.

非破裂肝細胞癌切除後に孤立性腹膜再発を生じた1例

著者: 岡崎仁 ,   中島公洋 ,   安田光弘 ,   大野毅 ,   藤井及三 ,   穴井秀明

ページ範囲:P.1367 - P.1369

はじめに
 肝細胞癌の腹膜転移は肺転移などに比べると比較的稀であり1),その転移形式は原発巣破裂による腹腔内播種によるものと考えられている.今回われわれは,非破裂肝細胞癌切除後2回にわたって異時性に孤立性腹膜転移をきたし,2回とも切除した症例を経験したので報告する.

腸腰筋膿瘍を伴った腸骨骨髄炎の1例

著者: 福良清貴 ,   盛真一郎 ,   鮫島浩司 ,   吉見洋士 ,   愛甲孝

ページ範囲:P.1371 - P.1374

はじめに
 腸腰筋膿瘍は結核が蔓延していた時代とは違い,現在われわれ一般外科医が日常臨床の場面で遭遇することはきわめて稀である1).しかしその疾患概念はしっかり把握しておかないと,われわれ外科医だけで対処しうる病態なのかどうか,特に骨・関節が関与した続発性腸腰筋膿瘍2,3)の場合,整形外科に治療を依頼すべきかどうかの判断に迷うことになる.今回われわれは,腸骨の骨髄炎が原因で発症したと考えられるきわめて稀な腸腰筋膿瘍の1症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

臨床報告・2

乳腺アポクリン癌の1例

著者: 中村俊幸 ,   坂口昌幸 ,   小池祥一郎 ,   清水忠博 ,   久米田茂喜 ,   朝日竹四

ページ範囲:P.1375 - P.1376

はじめに
 乳腺アポクリン癌はアポクリン化生部分が優位を占める乳癌で,比較的稀な疾患である.今回われわれは,乳腺アポクリン癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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