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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科53巻13号

1998年12月発行

雑誌目次

特集 外科・形成外科の連携と展望

〔Editorial〕形成外科手技の進歩と外科治療への応用

著者: 波利井清紀

ページ範囲:P.1537 - P.1540

 形成外科は体表ならびにその近傍の組織を中心とした欠損や,変形を治療する専門性の高い外科学の一分野として発展してきた.
 特に,過去20年間の進歩は著しく,マイクロサージャリーなどの各種の新しい手技が開発されている.Team surgeryとして外科系各分野と密接な関係を保ち,高度な医療を提供しているので,その概要を紹介する.

マイクロサージャリーによる消化管再建

著者: 中塚貴志 ,   米原啓之 ,   市岡滋 ,   波利井清紀 ,   朝戸裕貴 ,   多久嶋亮彦

ページ範囲:P.1541 - P.1546

 下咽頭・頸部食道の再建には古くから形成外科的手技が用いられてきた.近年ではマイクロサージャリーを用いた遊離組織移植術の導入により,従来の有茎(筋)皮弁などを用いる方法に比べ術後合併症の減少,罹病期間の短縮など治療成績の向上をみている.さらに喉頭を温存する術式にも応用され,良好な成績を得るなど患者のQOLの向上にも貢献している.また外科的手技である有茎腸管挙上による食道再建においても,腸管末梢の血行補強にマイクロサージャリーによる手技が用いられ,術後合併症の予防に役立っている.
 本稿ではこれらの再建術における基本的な手技,注意点などについて述べた.

難治性食道皮膚瘻の治療

著者: 清川兼輔 ,   田井良明 ,   井上要二郎

ページ範囲:P.1547 - P.1553

 筆者らの行っている難治性食道皮膚瘻の治療法について述べる.難治性食道皮膚瘻を確実に閉鎖するためには,①瘻孔の創縁を血行の良い状態にすること,②血行の良い組織を用いて欠損部を再建することが必要である.①に対しては瘻孔部のデブリドマンを周囲の組織を含めて比較的広範囲に行った.②に対しては大胸筋皮弁または遊離空腸を用いた.その適応は再建食道内に胃液や胆汁などの消化液が逆流しない場合は大胸筋皮弁を,逆流する場合は遊離空腸を第一適応とした.また,全身状態の悪化などにより遊離空腸による一期的再建が行えない場合は,大胸筋皮弁による二期的再建を行った.
 7例の治療(大胸筋皮弁による一期的再建2例,遊離空腸による一期的再建2例,大胸筋皮弁による二期的再建3例)を行った.7例中2例(大胸筋皮弁による一期的再建と二期的再建の各1例)に小瘻孔を生じたが,術後4週間以内に自然閉鎖し,全例で経口摂取が可能となった.

乳癌切除後の乳房再建術

著者: 酒井成身

ページ範囲:P.1555 - P.1561

 乳癌術後において乳房再建を行うことは患者のQOLを向上させる意味で,その効果は非常に大きい.乳房再建で最も簡単な方法は,生理食塩水を満たす生理食塩水バッグを挿入することである.また生理食塩水バッグ挿入部に皮膚の緊張のある場合は,まずティッシュ・エクスパンダーを挿入し,皮膚や皮下組織が伸展したなら生理食塩水バッグに入れ替えることができる.このティッシュ・エクスパンダーは乳腺皮下切除などで,少しでも乳房の形を保ちたい場合に患者の再建に対する考えがまとまるまで一時的に入れておくことができる.これらのほかに広背筋皮弁,腹直筋皮弁を用いる方法がある.

腹腔内臓器手術におけるマイクロサージャリーの応用—Back wall techniqueを用いた血行再建

著者: 山本有平 ,   佐々木了 ,   古川洋志 ,   皆川英彦 ,   杉原平樹 ,   野平久仁彦

ページ範囲:P.1563 - P.1567

 当教室は1991年より膵・胆道癌の主要血管合併切除再建および生体部分肝移植に参加し,マイクロサージャリーを応用した各種血行再建術を行ってきた.腹腔内手術における血行再建では血管後壁を先に縫合し,血管把持クリップを反転させる必要がないback wall techniqueによる血管吻合が非常に適している.本法は腹腔内という深く狭い吻合野において,かつ生体部分肝移植におけるグラフト側の肝動脈のように十分な長さがとれない短い血管の吻合に特に有用であり,microvascular surgeonとして是非とも習熟すべき血管吻合手技の1つと考える.

広範囲腹壁欠損に対する腹筋再建

著者: 光嶋勲 ,   稲川喜一 ,   奥本和生 ,   森口隆彦

ページ範囲:P.1569 - P.1575

 腹壁欠損に対しては鼠径皮弁,腹直筋皮弁,外腹斜筋筋膜弁,大腿張筋皮弁,大腿直筋皮弁などの再建術がある.長期有効性から考えれば小欠損であっても人工材料は避け,自家筋膜移植を第1選択としたい.これまで再建が難しかった広範囲腹壁欠損に対して,近年マイクロサージャリーを用いた遊離筋皮弁移植術が導入された.広範囲欠損例に対しては単なる閉鎖ではなく,神経付き筋皮弁移植による腹筋機能を持つ腹壁の再建を目標としたい.

会陰部・骨盤内臓器摘出後の再建

著者: 佐々木健司 ,   野崎幹弘 ,   寺田伸一 ,   森岡康祐

ページ範囲:P.1577 - P.1584

 会陰・殿部は肛門,尿道口,外性殖器などの大切な器官があり,悪性腫瘍切除後の再建は皮膚組織欠損の被覆だけでなく,その機能を考慮しながら再建法を選択する必要がある.近年,局所皮弁や筋膜皮弁,筋皮弁を使用しての再建は形成外科医のみならず,一般外科や産婦人科医の間にも広く普及しつつある.それにつれ皮弁による再建術後の問題点も出てきた.すなわち,皮弁壊死,瘻孔,肛門の狭窄,bulkyな皮弁による歩行障害,女性泌尿・生殖器における尿道口狭窄,尿線の乱れ,腟口露出による粘膜びらん,疼痛,性交障害などである.最近,筆者らはそれらを考慮しながら再建法を選択し,さらに若干の工夫を行っているので自験例を中心に述べた.

カラーグラフ 消化器の機能温存・再建手術・4

幽門保存胃切除術—とくに幽門下動脈の温存法について

著者: 沢井清司 ,   阪倉長平 ,   大辻英吾 ,   北村和也 ,   谷口弘毅 ,   萩原明於 ,   山口俊晴

ページ範囲:P.1529 - P.1534

はじめに
 幽門保存胃切除術(PPG)は胆汁の胃への逆流がなく,胃の貯留能も保たれるので,胃中部の早期胃癌に対して多く行われるようになってきている.
 PPGを行う際,根治性を高めるために幽門上リンパ節(No.5)および幽門下リンパ節(No.6)を郭清すると1),残される幽門の血流が障害され縫合不全や吻合部狭窄の原因となることがある.一方,No.5またはNo.6リンパ節郭清が不要な症例を適応とすると,適応症例がかなり限られてしまう2,3)

私の工夫—手術・処置・手順・48

直腸切断術における術直前直腸洗浄による会陰創感染防止の工夫

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.1585 - P.1585

1.はじめに
 直腸切断術—Milesの手術—は古くから施行されている術式である.最近は低位前方切除術が技術的にも比較的容易に行われるため,直腸切断術は減少傾向であり,直腸癌手術の20%程度と報告されている1).しかし肛門近くの進行癌もいまだ多く,また前方切除後の再発で直腸切断術が再手術として行われることもある.この手術合併症としては出血やイレウスが代表的であるが,それ以外に会陰創の感染が比較的高頻度で生じ,術後,痛みや長期入院を余儀なくされている原因になっている場合がある.この感染の頻度を減少させるために以下のように工夫した.

病院めぐり

仙台オープン病院外科

著者: 土屋誉

ページ範囲:P.1586 - P.1586

 人口100万人の杜の都,仙台市の北部,泉ヶ岳を望む住宅地に仙台オープン病院は立地しています.当院は昭和51年医師会と仙台市が協力し,本邦初の公設民営型の病院として(財)鶴ヶ谷オープン病院の名称で開設されました.現在では救急救命センターを併設し,名称も仙台市医療センター仙台オープン病院と改め,330床を有する病院として仙台市および周辺市町村の広い地域における医療の中で重要な役割を担っております.オープン病院という名前が示す通り開設当初より開業医との連携が密接な病院で,当院に登録されている開業医(登録医)は現在450名に達し,病診連携室という部門を中心に患者の紹介がスムーズに行われており,その結果外来患者の紹介率は82.4%と高率であります.そのため本年9月1日には,地域医療支援病院として全国で初めて認可され,今後益々,患者を中心として開業医および病院の理想の関係を構築すべく日夜奮闘しております.また開業医が主治医となり手術を行うことも可能で,婦人科を中心にそのシステムが利用されています.診療科は内科,消化器内科,循環器内科,呼吸器内科,心臓血管外科およびわれわれの消化器外科で,診療科が少ない分それぞれの科が高度の専門医療を行っています.

山形市立病院済生館外科

著者: 片桐茂

ページ範囲:P.1587 - P.1587

 山形市は人口25万余の山形県都であり,蔵王スキー場,東北四大祭りの一つ花笠祭り,芭蕉の訪れた山寺立石寺などが全国に知られています.この山形市の市街地の中心部に当院は位置しております.当院は山形市立病院済生館と呼ばれ,館と名のつく全国にも数少ない病院の一つで,明治6年の開院以来,今年で125年を迎える伝統ある病院です.
 当院は平成4年11月に,診療科15,病床数595床,医師総数74名の近代的新病院に生まれ変わりました.厚生省の臨床研修指定病院にも認定され,「生命の尊厳と人間愛を基本として,みなさんの健康を守るため,保険・福祉と連携し,地域の基幹病院としての使命を果たします」を基本理念として掲げ,当地の中核病院として,高いレベルの医療と患者サービスの提供に努めています.

癌の化学療法レビュー・8

食道癌の化学療法

著者: 市川度 ,   仁瓶善郎 ,   杉原健一

ページ範囲:P.1591 - P.1596

はじめに
 食道癌は他の消化器癌に比較して抗癌剤に対する感受性が良好であり,現在までに多くの臨床研究が行われてきた.また,放射線治療にも感受性が高く,特に局所のコントロールを目的とした場合は,放射線療法は重要な位置を占めている,切除不能の遠隔転移を伴う症例では,化学療法が第一選択となることは論を待たないが,局所の過進展のため切除不能と診断された症例では,化学療法に放射線療法を加えたchemoradiation ther-apy(CRT)が選択されることが多い.
 切除可能例では3領域郭清を含む外科切除により5年生存率が50%を超える報告もあるが,一般には進行食道癌の予後は外科切除単独では不良である.このため,遠隔成績を向上させるべく,化学療法,放射線療法,CRTなどの補助療法を手術療法に追加して行う試みが行われてきた.

外科医に必要な耳鼻咽喉科common diseaseの知識・7

外耳道異物,鼻腔内異物

著者: 難波玄

ページ範囲:P.1597 - P.1599

はじめに
 外耳道異物,鼻腔内異物は一般外来や救急外来でしばしば遭遇する疾患であり,異物の種類によりその摘出方法は異なり,熟練と技術を必要とする.

外科医に必要な産婦人科common diseaseの知識・7

卵巣腫瘍

著者: 中川智佳子

ページ範囲:P.1600 - P.1602

はじめに
 卵巣に発生する腫瘍はその解剖学的特性から症状に乏しく,早期発見が困難なことが多い.一口に卵巣腫瘍といっても機能性嚢胞や炎症性腫大をも含む.また,臨床的には良性,境界悪性,悪性に分類され,患者の妊孕性の希望の有無や初期癌か進行癌かによって治療方針が異なってくる.

臨床研究

上部消化管切除症例における後期ダンピング症候群とα glucosidase inhibitor(ボグリボース)の使用経験

著者: 八幡浩 ,   内田一徳 ,   丸林誠二 ,   浅原利正 ,   江草玄士 ,   土肥雪彦

ページ範囲:P.1603 - P.1607

はじめに
 胃癌,食道癌の治療成績の向上に伴い,長期生存例におけるQOLが問題になってきた.これらの手術を受けた症例では,骨障害や早期ダンピング以外に後期ダンピング症候群を生じる1)ことがあり,術後のQOLを悪くする原因の1つとなっている.患者は後期ダンピング症状に対して頻回の食事摂取で症状の緩和に努めているが,完全には防止できない.通常は脱力感,冷汗などの軽い症状であるが,時には意識消失を生じることもあり,切実な合併症でもある.
 今回,筆者らは上部消化管切除後の患者における耐糖能と後期ダンピング症候群について検討し,後期ダンピング症状のある症例にα-glucosidase inhibitor(ボグリボース)を投与し,良好な結果を得たので報告する.

異時性大腸多発癌症例の検討—高率に併存する腺腫および同時性多発癌

著者: 澤井照光 ,   辻孝 ,   安武亨 ,   中越享 ,   綾部公懿 ,   福田豊

ページ範囲:P.1609 - P.1612

はじめに
 大腸は多発癌が多い臓器として知られている.大腸癌の好発年齢は60歳代で,かつその治療成績は良好であり,日本人の平均寿命を考慮すると異時性大腸多発癌の発生は臨床的に重要な問題である.しかしながら,大腸多発癌の頻度は高いとはいえ10%前後であって1〜4),大腸癌の9割は単発癌である.したがって,大腸癌切除後に異時性多発癌が発生するリスクを判定することが術後の適切なsurveillanceにつながるものと考えられる.
 そこで,今回筆者らは過去30年間に経験した異時性大腸多発癌16例,合計47病変を集計し,その臨床病理学的諸因子を同時期における一般大腸癌と比較検討したので報告する.

手術手技

深部用マイクロ波凝固電極を用いた腹腔鏡下肝部分切除術

著者: 竹内仁司 ,   田村竜二 ,   柚木靖弘 ,   田中屋宏爾 ,   安井義政 ,   小長英二

ページ範囲:P.1613 - P.1617

はじめに
 肝細胞癌の治療として外科的切除1),経カテーテル的肝動脈塞栓術2)(transcatheter arterial embolization:TAE),経皮経肝的アルコール注入療法3)(percutaneous ethanol injection thera-py:PEIT)の単独療法,あるいはそれらのいくつかを組み合わせた治療法が行われてきたが,これらの治療法はそれぞれ限界がある.新しい局所療法である経皮的マイクロ波凝固療法(per-cutaneous microwave coagulation therapy:PMCT)4)は,照射局所が確実に凝固,壊死に陥るため,PEITに代わる治療5)として今日広く行われるようになった.当院でも4年前より行ってきたが6),PMCTの適応にも限界がある.すなわち,肝表面の腫瘍では熱が周辺組織に及び,腹壁熱傷や腸管,胆嚢などの管腔臓器の穿孔を誘発する恐れがある.筆者らはこうした経皮的治療困難な部位に対し,深部用マイクロ波電極を用いて腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.本法は腫瘍切除と周辺組織に対するマイクロ波凝固作用によって,より確実な治療効果が期待できる.また,手技的にも簡便なため,今後広く普及する可能性があるので報告する.

臨床報告・1

盲腸に発生した腺扁平上皮癌の1例

著者: 竹林正孝 ,   村上雅一 ,   野坂仁愛 ,   若月俊郎 ,   岡本恒之 ,   谷田理

ページ範囲:P.1619 - P.1622

はじめに
 大腸原発の悪性腫瘍は肛門,直腸下部を除くとそのほとんどが腺癌であり,結腸に扁平上皮癌成分を含んだ腺扁平上皮癌が発生することは稀である.今回筆者らは,盲腸に発生した腺扁平上皮癌症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

投手にみられた野球による右鎖骨下動脈閉塞の1例

著者: 岡本哲也 ,   玉内登志雄 ,   小林一郎 ,   市橋鋭一 ,   桜井恒久

ページ範囲:P.1623 - P.1625

はじめに
 上肢の外傷性慢性動脈閉塞において,血栓が中枢側へ進展し脳症状を呈することは稀で1),本邦では報告がない.今回筆者らは,慢性外傷に起因した上腕動脈閉塞が中枢性に進展して,脳梗塞を発症した1例を経験したので報告する.

von Recklinghausen病合併右胃大網動脈瘤破裂の1例

著者: 川合正行 ,   佐橋清美 ,   秋田幸彦 ,   岸田喜彦 ,   住田啓 ,   川村憲市

ページ範囲:P.1627 - P.1629

はじめに
 von Recklinghausen病(以下,R病)は皮膚色素斑,神経系腫瘍を主病変とする常染色体優性遺伝疾患であるが,血管病変を合併した症例報告も散見される.両者には相互に関連があると考えられるので文献的考察を加えて考察する.

直腸癌術後早期に発症したCronkhite-Canada症候群の1例

著者: 中川悟 ,   遠藤和彦 ,   田邊匡 ,   佐々木正貴 ,   大川彰 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.1631 - P.1634

はじめに
 Cronkhite-Canada症候群(以下,C-C症候群)は低蛋白血症,脱毛,爪甲の萎縮,皮膚の色素沈着を伴う比較的稀な非遺伝性の消化管ポリポーシスとして知られている1,2).近年,報告例が増加し,癌の合併についても注目されるようになってきている3,4).今回,直腸癌の術後早期に本症候群を発症した1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

大腸多発MALTリンパ腫の1例

著者: 深田民人 ,   吹野俊介 ,   林英一 ,   岡田稔 ,   岡田耕一郎 ,   牧原一彦

ページ範囲:P.1635 - P.1639

はじめに
 消化管原発悪性リンパ腫の中でも大腸原発悪性リンパ腫の頻度は低い1).今回筆者らは上行結腸および直腸に多発した粘膜関連リンパ組織リンパ腫(mucosa-associated lymphoid tissueリンパ腫2,3):以下,MALTリンパ腫)の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

鼠径管に発生したmulticystic mesotheliomaの1例

著者: 林正彦 ,   平井一郎 ,   野々山孝志 ,   水谷隆

ページ範囲:P.1641 - P.1644

はじめに
 Multicystic mesotheliomaは主として腹膜に発生する多発性嚢胞をきたす稀な疾患である.今回,鼠径部腫瘤として鼠径ヘルニア嚢に発生したと考えられる本腫瘍を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

胃の絞扼壊死をきたした遅発性外傷性横隔膜ヘルニアに対する噴門側胃切除術の1例

著者: 吉川武志 ,   伊達洋至 ,   土井原博義 ,   安藤陽夫 ,   清水信義 ,   橋詰博行

ページ範囲:P.1645 - P.1648

はじめに
 近年交通事故の増加などにより外傷性横隔膜ヘルニアの報告例は増加しているが,ヘルニア内容が嵌頓し,絞扼,壊死をきたした症例の報告は少ない.
 今回,筆者らは交通事故による受傷4か月後に施行した肋間神経移行術を契機に発症し,脱出した胃の絞扼,壊死をきたした外傷性横隔膜ヘルニアの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

Scapulothoracic dissociationの3例

著者: 高田伸彦 ,   仁科雅良 ,   藤井千穂 ,   荻野隆光 ,   小濱啓次 ,   今井茂樹 ,   鳥越誠之

ページ範囲:P.1649 - P.1652

はじめに
 鎖骨下動脈損傷は比較的稀な損傷であり,ときに腕神経叢損傷を伴うことがある1).今回筆者らは腕神経叢引き抜き損傷を伴った鎖骨下動脈損傷,いわゆるscapulothoracic dissociationの3例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

肝細胞癌の異時性副腎転移の1切除例

著者: 馬場秀文 ,   渡辺稔彦 ,   板野理 ,   三浦弘志 ,   今井裕 ,   笹井伸哉

ページ範囲:P.1653 - P.1656

はじめに
 肝細胞癌に対する積極的な手術療法さらにエタノール局所療法(PEIT),肝動脈化学塞栓療法(TAE)などの集学的治療の結果,肝内転移あるいは多中心性発生肝細胞癌に対しての治療成績は改善され,長期生存が可能となり,肝以外の臓器への転移・再発に遭遇することも稀ではなくなった.一般的に肝細胞癌の転移・再発部位としては肝内転移が多く,次に肺,骨であり1),またその遠隔転移症例に対する治療は困難であり,成績も不良なことが多い.
 今回,筆者らは肝細胞癌手術1年7か月後に左副腎転移をきたし,転移巣を含めて左副腎部分切除後5年生存の得られた症例を経験したので報告する.

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「臨床外科」第53巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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