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文献詳細

雑誌文献

臨床外科53巻2号

1998年02月発行

遺伝子治療の最前線・8

p53遺伝子導入による肺癌治療

著者: 日伝晶夫1 藤原俊義1 田中紀章1

所属機関: 1岡山大学医学部第1外科

ページ範囲:P.235 - P.239

文献概要

はじめに
 近年,分子生物学の進歩により癌細胞における様々な遺伝子異常が観察され,その異常が癌の発生および進展の原因であることが明らかになった.突然変異による癌遺伝子の活性化や,特異的染色体の欠損・変異による癌抑制遺伝子の不活性化はきわめて多くのヒト悪性腫瘍に認められており,複数の遺伝子に生じた変化が正常細胞の癌化を招くと考えられている.そこで,異常をもつ遺伝子を正常遺伝子に置換するか,あるいは欠陥遺伝子の機能を正常遺伝子で補うことにより,癌細胞の悪性形質を治療しようとする遺伝子治療の概念が生まれてきた.
 癌抑制遺伝子はその正常機能が脱落したときに細胞を癌化させるものであり,遺伝子転写,細胞分裂,DNAの修復などに働いている.多くの癌では片方のアレルの癌抑制遺伝子が部分的あるいは完全欠失し,同時に対立遺伝子に点突然変異などの微小変異が生じることで癌抑制機能が不活化されている.これまで報告されている癌抑制遺伝子のなかでp53遺伝子は最も多くのヒト悪性腫瘍で異常が認められ,その変異や欠失による機能喪失は,癌細胞の異常増殖能,治療抵抗性,血管新生能などの悪性形質の発現に関与している.癌の遺伝子異常は別個の染色体に位置する複数の遺伝子に認められるにもかかわらず,単一の正常癌抑制遺伝子を導入することによりその増殖は著しく抑制され,悪性形質の治療が可能であると考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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