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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科53巻3号

1998年03月発行

雑誌目次

特集 自己血輸血の現状と将来展望

同種血輸血にかかわる諸問題

著者: 湯浅晋治

ページ範囲:P.285 - P.291

 輸血療法にあたって重要なことは,安全性を確保し,有効かつ適正に使用することである.同種血輸血では感染症の危険は完全には回避できず,また一種の臓器移植であり,同種免疫や移植片対宿主病(GVHD),さらには免疫抑制作用など免疫学的副作用を来すことがある.したがって,これら一定のリスクを念頭に輸血を行うことが基本である.外科手術においては自己血輸血があるので,積極的な推進を図ることが必要である.

T & S,MSBOSシステムによる輸血体系

著者: 面川進 ,   三浦亮

ページ範囲:P.293 - P.297

 手術用血液の適正使用推進を目的としT & S,MSBOSシステムを用いるべきと,厚生省より「輸血療法の適正化に関するガイドライン」が出されている.本システムを導入実施することで,従来の過剰な術前準備血液量を削減することが可能である.また,本システムと自己血輸血は関連させ検討することで適正使用がより推進される.T & S,MSBOSシステムによる無駄な輸血の回避,適正使用推進により,同種血輸血による感染症,GVHDなどの副作用防止効果が期待される.本システムによる輸血体系が広く各医療機関で導入,実施されることが望まれる.

貯血式自己血輸血の現状と問題点

著者: 脇本信博

ページ範囲:P.299 - P.306

 貯血式自己血輸血は自己血輸血の中では最も一般的である.従来から指摘されてきた血液の保存期間の制約と採血後貧血からの回復などの貯血式自己血輸血の問題点は,採血・戻し輸血法の確立およびエリスロポエチンの開発により克服されてきた.ところが,消化器癌手術領域では貧血患者が多いことや術前の準備期間が少ないことなどからその普及が遅れている.
 癌患者では輸血後GVHDが多いことから,とくに同種血輸血を回避する必要がある.輸血療法について国民的注目が集まっている今,自己血輸血の普及のために医療従事者に自覚と自律性が求められていると考えられる.

心臓血管外科領域における術中同種血輸血削減の試み

著者: 国原孝 ,   安田慶秀 ,   椎谷紀彦

ページ範囲:P.307 - P.313

 心臓血管外科における同種血輸血削減方法について,術中,人工心肺中の工夫を中心に紹介した.32例の術中自家血小板採取では血小板を172±45g採取し,採取した血小板の機能が十分保護されていることを示した.術中出血回収法はそれ単独で非破裂腎動脈下腹部大動脈瘤の待機手術で64.3%の無輸血手術を可能とし,輸血量を節減した.1997年の1年間に人工心肺を用いて手術を施行した15歳以上の成人例87例において,術中無輸血が可能であった症例は術前自己血貯血のみでは73.3%,自己血小板採取のみでは38.9%,両者の併用では90.0%であり,同種血輸血削減のためには,赤血球の確保と血小板保護の双方が不可欠であると考えられた.

肝癌手術における自己血輸血

著者: 麦谷達郎 ,   谷口弘毅 ,   山口明浩 ,   高田敦 ,   高橋俊雄

ページ範囲:P.315 - P.320

 自己血輸血を用いた肝細胞癌肝切除例および大腸癌肝転移肝切除例を,同種血輸血例,無輸血例と比較した.肝細胞癌例では自己血例で同種血例に比し術後貧血からの回復が早かった.転移性肝癌例では,自己血例と同種血例は同様の経過を示した,術後T-Bil値の変化において,肝細胞癌例で,自己血例は無輸血例と同様の経過を示したが,同種血例は他に比べ高値を示し,その回復遅延も認めた.転移性肝癌例では,同種血例で術後早期に一時的に高値を認めた.出血量と輸血量の検討より,術前貯血800g,術直前Hct値35〜37%,術中出血量1,300g程度であれば自己血輸血のみの肝切除手術が可能である.

生体部分肝移植ドナーにおける自己血輸血

著者: 池上俊彦 ,   橋倉泰彦 ,   窪田達也 ,   浦田浩一 ,   三輪史郎 ,   寺田克 ,   宮川眞一 ,   川崎誠治

ページ範囲:P.321 - P.324

 生体部分肝移植においてドナーの安全性の確保は最も優先される事項の一つである.この目的のために信州大学では,生体部分肝移植ドナーの術前貯血式自己血輸血を行うこととし,これまで実施してきた.目標貯血量は,切除範囲が外側区域ないし拡大外側区域の例で全血400ml,血漿2,000ml,左葉切除では全血800ml,血漿3,000mlとし,これまで行った生体部分肝移植例ドナーでは全例自己血輸血のみで対処できた.自己血輸血に伴う合併症は軽微であった.生体部分肝移植ドナーにおいてはGVHDや感染を防ぐために可能なかぎり自己血輸血を行うべきである.

人工酸素運搬体の位置づけ

著者: 小林紘一

ページ範囲:P.325 - P.333

 使用に当たり血液型の判定や交差試験が必要なく,また感染や不必要な免疫反応の危惧のない人工酸素運搬体が開発されつつある.それらは,1)Perfluorochemicals,2)ヒトやウシのヘモグロビンを利用したもの,3)酸素運搬機能を持つヘム自体も合成し,それを酸素運搬体として利用する全合成系のものなどがある.これらの人工酸素運搬体は出血性ショックや稀有な血液型の症例,体外循環の際の灌流液,経皮的冠動脈拡張術の際の心筋の虚血の予防,心筋梗塞や脳梗塞の際の酸素付加などに利用できることが期待されておりヘモグロビンを利用した人工酸素運搬体の一部のものは臨床でPhaseⅢのtrialまでいっているものがある.またアルブミンにヘムを結合させたアルブミンヘムは,膠質浸透圧を持った酸素運搬体としてresuscitation fluidとしての開発が期待されている.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・39 肝・胆・膵・脾

早期胆嚢癌に対する腹腔鏡下胆嚢全層切除術

著者: 酒井滋 ,   春日井尚 ,   山川達郎

ページ範囲:P.277 - P.282

はじめに
 腹腔鏡下胆嚢摘出術(laparoscopic cholecys-tectomy:以下,LC)は低侵襲手術として高い評価を受け,胆嚢結石症や胆嚢腺筋症などの良性胆嚢疾患に対しての標準的な術式として定着した1).一方,肝切除と広範囲のリンパ節郭清を必要とする進行胆嚢癌に対しては開腹手術が行われているが,従来より単純胆嚢摘出術,あるいは胆嚢全層切除術が行われてきた早期胆嚢癌に対しては十分に腹腔鏡下手術で根治が可能である.胆嚢早期癌のなかでは,Ⅱ型(表面型)やⅢ型(陥凹型)は術前診断はきわめて困難であり,胆嚢結石症として手術された標本に発見されることが多い.これに対してⅠ型(隆起型)は画像学的に捉えられやすく,いわゆる“胆嚢ポリープ”として切除されたなかに早期胆嚢癌が含まれることが多い.このために筆者らは胆嚢の隆起性病変,10mm以上の“胆嚢ポリープ”に対して手術をするときは,早期胆嚢癌の可能性を考慮し,胆嚢壁の全層切除術とsentinel lymph nodeの摘出を行うlaparo-scopic total cholecystectomyを方針としている.

臨床外科交見室

open tension-freeヘルニア修復術におけるメッシュの固定の必要性について

著者: 山本俊二

ページ範囲:P.336 - P.337

 成人鼠径ヘルニアに対して,人工のメッシュを用いることにより,縫合部に緊張がかからない修復ができ,また,脆弱化した組織の補強もでき再発を防止することができる1,2).このメッシュを用いたopen tension-freeヘルニア修復術の術式や成績については,これまでにも発表している3-6).現在,製品化されたプラグやパッチが市販されるようになり7),取り扱いが容易となり,open tension-freeヘルニア修復術としてmesh-plug法7)が,多くの施設でも施行されるようになった8)
 ただし,ヘルニア嚢を処理しないで,単に腹腔内に翻転し,この部分にメッシュ・プラグを挿入するだけであったり,メッシュ・パッチを鼠径管後壁に置くだけであったりして,メッシュの固定を行わない施設がある.たしかに,メッシュはそれ自身強力であるとともに,その網の目の中に線維芽細胞の増殖が加わり,4〜5週間後には周囲組織と強固に結合する.しかし,メッシュの不確実な固定が,プラグの逸脱や,パッチのちぢみをきたし,再発することが指摘されている9).実際われわれは,他院でメッシュを固定しなかったために再発をきたした症例を,過去1年間に2例経験している.メッシュを固定しない方法の誤りを指摘するとともに,手術中のメッシュの確実な固定の重要性を強調したい.

私の工夫—手術・処置・手順・40

乳腺部分切除—針糸による切除範囲の経皮的標識

著者: 宮内昭 ,   木原実 ,   松坂憲一 ,   西谷暁子

ページ範囲:P.339 - P.339

 乳腺部分切除の適応はこの10年ほどで大きく変化した.以前の乳腺腫瘤や硬結に対する摘出生検はほぼ影を潜め,代わって乳房温存療法としての乳腺部分切除が出現し,マンモグラフィーでの乳房微細石灰化巣や超音波検査と超音波ガイド下の穿刺吸引細胞診で悪性が疑われる非触知病変に対する乳腺部分切除が増えてきた.このような場合にはいずれも術前に設定した切除範囲を正確に切除することが必要である.乳房温存手術では意図した範囲と実際の切除範囲のズレは断端陽性をもたらし,局所再発のリスクを高める.意図した切除範囲を正確に切除するために,しばしば色素を注入してマーキングすることが行われているようである.液体の色素の注入では色素が拡散して術野が染色され手術の妨げとなる.そこでキシロカインゼリーなどと混ぜて注入することも報告されている.われわれは数年前から皮膚切開の前に経皮的に針糸でマーキングしており,実際的に有用な方法であると思うので報告する.

メディカルエッセー 『航跡』・19

何拠へ行くのか一般外科研修制度

著者: 木村健

ページ範囲:P.340 - P.341

 アイオワ大学の外科は,一般外科,心臓胸部外科および脳外科の3部門に分かれている.Sur-geon-in-chiefがその上に立って総指揮を執る.
 一般外科は,消化器,血管,移植,形成,小児,熱傷,腫瘍,内分泌,それに外傷外科のセクションに分科分業しており,各セクションはそれぞれのディレクターが責任をもって運営する.運営という言葉には科の経営,すなわち財政の収支バランスをとる仕事も含まれていて,外から見るほどたやすくはない.外科各科の収入源の90%は手術料である.手術料は1セントたりとも私することはなく,すべて科の収入とされる.この収入から学長,医学部長,外科および一般外科にそれぞれの定めた比率に応じて“税金”を取られる.さらに病院からは個々のスタッフのオフィスの1平方フィートあたりいくらと定めた家賃を取られる.このほかに光熱費やコンピュータの使用料もある.患者さまを診るたびに,時間あたり何十ドルもの外来使用料を病院に召し上げられる.アメリカの手術代がいくら高いといっても,稼いだカネのあらかた半分はこうした経費で消えてしまい,残りをスタッフや秘書の給料,旅費その他大学人としての活動費に充てると,何年経っても財政は黒字にはならない.ニッポンと違って州立の大学といえども星条旗は親方になってくれないから,分科の責任者はあの手この手で経費の節約と,収入を増やす努力を強いられる.

遺伝子治療の最前線・9

MDR1遺伝子導入による癌治療

著者: 杉本芳一

ページ範囲:P.343 - P.349

はじめに
 抗癌剤を用いた癌の化学療法は外科手術,放射線治療とともに現在の癌治療の根幹を成すものであるが,この時,正常細胞への毒性が常に問題となる.とりわけ抗癌剤の血液細胞に対する毒性(骨髄抑制)は,癌化学療法における最大の投与量規定因子である.抗癌剤は通常静脈内に投与されるので,最初に抗癌剤がさらされる末梢血細胞は抗癌剤による一次的な障害を受ける.また,多くの抗癌剤は増殖している細胞に強い細胞毒性を示すため,抗癌剤の投与は骨髄中にある造血前駆細胞,造血幹細胞(これから増殖分化して末梢血液細胞となる細胞)に強いダメージを与え,これが二次的障害として血液細胞の再生産を阻害する.この血液毒性は白血球や血小板の減少として現れ,感染や出血など時として致死的になりうる副作用を引き起こす.したがって,実際には患者が耐えられる投与量ぎりぎりの量の抗癌剤を投与して,できる限り癌細胞を殱滅するというのが現在の癌化学療法の戦略とその本質的な限界である.
 筆者らはこの現状を打破するために,抗癌剤耐性遺伝子を癌患者の造血幹細胞に導入して,患者の血液細胞を抗癌剤に耐性にすることにより,抗癌剤の骨髄に対する副作用を軽減し,より安全により有効な治療を行う,という抗癌剤耐性遺伝子を用いた遺伝子治療法を提唱している.

外科医のための局所解剖学序説・20

腹部の構造・7

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.351 - P.361

 「世界外科学史年表」(佐藤正)によれば最初に腎臓摘出を行ったのは1869年ハイデルベルクのSimon Gであると記載されてある.129年前の論文が国内で手に入るかどうか心配であったが,1施設のみDtsch Klinのバックナンバーを持っていた.期待していたところ,送られてきた論文は2ページにも満たないもので,暫定的な報告にすぎなかった.これが評価を受けている論文とは思えず,他のいくつかの論文の引用文献をチェックしてみたが,間違いなかった.これを見て思うに後世(おそらく半世紀以後)評価されるのは論文の長短でも,発表された雑誌の知名度でもなく,付加的な要素がすべて取り払われた後に残る実質的なもの(何をやったか,何を得たか)だけなのだろう.カオス理論の萌芽になる論文が目に触れることもないような気象学雑誌に発表されたことを思い出す.要はどのような雑誌であれ,データを眠らせずに発表しておくことが大事だという良い例である.
 この短い論文から最初の腎臓摘出がどのような状況下で行われたかを見てみよう,歴史的な手術が行われる1年半前に当の患者は卵巣嚢腫の手術のため入院した.開腹してみると嚢腫は子宮に密に癒合していた.そのため卵巣摘出と同時に子宮摘出も行った.さらに嚢腫は子宮だけでなく尿管も巻き込んでいたので,抜き取るようにして尿管を分離した.ところが術後恥骨上部に尿管瘻ができてしまい,左腎臓の尿がその場所から流れてくる羽目になった.

病院めぐり

津山中央病院外科

著者: 向井晃太

ページ範囲:P.362 - P.362

 津山市は,岡山県北東部の旧『美作(みまさか)の国』の中心に位置し,中国山地の山々に囲まれた閑静な城下町です.自然に恵まれ,春には桜の名所鶴山公園に5,000本の桜が咲き,また,つつじ,藤,紅葉などでも有名です.この津山市の中心に財団法人慈風会津山中央病院があります.
 当院は,昭和29年に『県北に総合病院を』という目的で数人の心有る開業医が集まって創立されました.創立の動機からして,各科の独自性を尊重し,患者中心の医療を心がけ,院内の各科が仲良く,小回りが効くのが特徴です.診療圏は広く,人口9万人の津山市を中心として岡山県北東部全域(兵庫県の一部を含む)約30万人の基幹病院として発展してきました.現在,病床数は369床,診療科は16科です.また,14種類の指定医療機関となっています.

国立福山病院外科

著者: 大﨑俊英

ページ範囲:P.363 - P.363

 当院は,明治41年4月に福山衛戌病院として創立され,昭和12年4月に福山陸軍病院と改称,昭和20年12月厚生省へ移管,国立福山病院として病床数230床で診療を開始しました.昭和41年7月に現在地に新築移転(定床350床)し,昭和47年6月より定床460床(一般410床,伝病50床)となり現在に至っています.
 診療科は20科で,総合診療施設として,母子医療センター,癌診療,人間ドック,原爆クリニックなどを行い,さらにへき地中核医療,第二次救急医療病院,エイズ拠点病院の指定を受け備後地域の中核的医療機関として地域医療に貢献していますが,国立病院も再編成,経営改善,政策医療の推進など,大きな変換を迫られている昨今です.

臨床研究

大腸低分化腺癌の臨床病理学的検討

著者: 井上雄志 ,   鈴木衛 ,   高崎健

ページ範囲:P.365 - P.368

はじめに
 大腸癌はほとんどが高・中分化腺癌であり,低分化腺癌の頻度は全体の5%前後1)であって比較的稀である.また大腸低分化腺癌は生物学的悪性度が高く,予後の悪さが論じられている1-3)が,比較的稀であることから不明瞭な点も少なくない.そこで今回われわれは,教室で経験した低分化腺癌57例の臨床病理学的特徴および予後について,高・中分化腺癌と比較検討し,若干の知見を得たので報告する.

臨床報告・1

13歳男子に発症した大腸憩室炎の1例

著者: 澤田傑 ,   飯田辰美 ,   水谷知央 ,   後藤全宏

ページ範囲:P.369 - P.371

はじめに
 われわれは13歳の男子に発症した大腸憩室炎を経験した.急性虫垂炎との鑑別が困難であったが腹腔鏡を使用し診断,手術を施行した.10代の若年者に憩室炎が発症するのは稀と思われるため,若干の文献的考察を含め報告する.

下腿壊死を来した外傷性腸骨動脈閉塞症の1例

著者: 石川雅彦 ,   森本典雄

ページ範囲:P.373 - P.375

はじめに
 四肢の外傷性血管損傷では,受傷早期の診断と治療が救肢のために重要である1).今回,鈍的外傷による腸骨動脈閉塞症にて保存的治療を選択されるも,虚血症状の進行により下腿切断に至った症例を経験したので,その治療過程の問題点につき検討した.

再切除を施行した後腹膜原発hemangiopericytomaの1例

著者: 山田達治 ,   近藤哲 ,   小川弘俊 ,   中村従之 ,   大場泰洋 ,   矢野孝

ページ範囲:P.377 - P.382

はじめに
 後腹膜原発hemangiopericytomaは稀な疾患であり,腫瘍自体が大きく血管に富むため,切除には大量出血を伴うことが多い1-6).今回,同腫瘍の局所再発をも再切除できた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

胃転移を認めた肺紡錘細胞癌の1例

著者: 杢野泰司 ,   千木良晴ひこ ,   加藤岳人 ,   坂口憲史 ,   吉田克嗣 ,   前多松喜

ページ範囲:P.383 - P.386

はじめに
 肺癌の胃への転移は比較的少なく,しかもそのほとんどは剖検時に偶然発見され,臨床的に胃の転移巣が診断されることは稀である.今回われわれは,肺紡錘細胞癌の胃転移の1例を経験したので報告する.

脾血管肉腫の1例

著者: 中川国利 ,   阿部永 ,   鈴木幸正 ,   豊島隆 ,   桃野哲 ,   佐々木陽平

ページ範囲:P.387 - P.390

はじめに
 脾臓に原発する悪性腫瘍はきわめて稀であり,術前診断が困難な例が少なくない1,2).われわれは左上腹部痛を主訴とし,術後の病理組織学的検索により,胃への転移を伴う脾血管肉腫と判明した1切除例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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