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特集 分子生物学的診断は病理診断に迫れるか
乳癌の分子生物学的診断と病理診断—現状と展望
著者: 津田均1
所属機関: 1国立がんセンター研究所病理部
ページ範囲:P.829 - P.833
文献購入ページに移動 癌の生物学的特徴,患者予後の予測を従来よりもさらに正確に知るための手段として遺伝子・染色体レベルの検索(分子生物学的診断)に期待がかけられている.乳癌では既に幾つかの遺伝子・染色体変化が既存の臨床病期やリンパ節転移の程度とは独立した予後因子であることが示された.同時に各遺伝子・染色体変化は乳癌の異型度・組織型との間に強い相関関係を有しており,分子生物学的診断と病理診断との優劣が問題となり得る.前者は後者に比し客観性,再現性,特異的治療の可能性といった点で有利といわれるが,体系的分類は未だ不十分である.本稿では乳癌で見出された遺伝子・染色体変化の持つ臨床・病理学的意義について研究の現状を述べ,将来の分子生物学的診断と病理診断と関係についていくつかのシナリオを描いてみた.
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