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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科53巻8号

1998年08月発行

雑誌目次

特集 肛門疾患診断・治療のノウハウ

肛門部の解剖と生理

著者: 黒川彰夫

ページ範囲:P.961 - P.965

 肛門は消化管末端に位置し,複雑で特殊な解剖学的構造から成り,排便機能を調整・保持する大切な役割を果たしている.上皮は皮膚,anoderm,直腸粘膜で構成され,肛門小窩,肛門腺,上皮下には静脈叢が存在し,痔瘻や痔核の発生に関与している.また,肛門周囲の筋組織は複雑に交錯し,体性神経と自律神経の両者の支配を受けることによって肛門の微妙な生理機能が維持されている.
 したがって,肛門の構造と機能を軽視した治療は重大な障害を残す可能性があるので,肛門疾患の診断・治療に際しては,肛門部の解剖と生理の特殊性を十分に把握する必要がある.

肛門診察の実際

著者: 松田保秀 ,   友近浩 ,   川上和彦 ,   佐藤滋美 ,   木村浩三 ,   石原廉 ,   中村悟

ページ範囲:P.967 - P.974

 肛門疾患は未だに秘められた雰囲気の中で取り扱われている傾向がある.その診察に当たっては消化器病の一環として捉えるべきである.
 診察手順は問診→視診→指診→器具診→診断の順であり,診断は指診による直腸肛門部の立体的な病変の把握から始まる.また,患者の訴える症状を組み合わせることによって疾患が構築されるのも肛門部の特徴である.
 最近の診察器具を用いた診断は特に痔核や肛門ポリープ,脱肛,痔痩には有用である.中でも経肛門的超音波検査やCCDと筒型肛門鏡とを接続した肛門診察システム,直腸肛門内圧測定などは客観的な肛門評価法として優れたものである.

痔核の治療—治療法の選択

著者: 小杉光世

ページ範囲:P.975 - P.983

 痔核の治療法はその種類と症状に合わせて選ぶ.軽度,中等度のものは保存的療法を主に,高度症例は外来手術・処置あるいは手術療法を選択する.
 対症療法に加え,より長期の効果が得られ,有効かつ安全で,合併症のない治療法で簡単な手技が望ましい.より低侵襲の治療法を提供するため,痔核の基礎知識を基に正しく診断し,患者さんには可能な治療選択肢について,それぞれの治療法の成績効果,欠点,注意すべき点などを,インフォームド・コンセントする.普及しているミリガン・モーガン法と日本における代表的専門医の工夫の概略も紹介し,臨床的頻度の高い痔核の保存的療法から手術療法まで筆者の私見をQ&Aで考察した.

痔核の治療—保存的治療から手術まで

著者: 松島誠 ,   田中良明 ,   長谷川信吾 ,   鈴木和徳 ,   松村奈緒美 ,   馬場真木子 ,   鈴木裕 ,   柳田謙蔵 ,   松島善視

ページ範囲:P.985 - P.990

 良性疾患である痔核の治療は生活療法を含めた保存的治療を主体として行う.痔核の出血,疼痛は保存的治療でのコントロールが大多数の症例で可能であり,脱出もある程度のものまでは保存的に消失または軽快させることができる.これらの方法で効果がみられないものに対しては患者の希望によって手術を行うが,現在の半閉鎖なり完全閉鎖での結紮切除法はどのような痔核例にもほぼ対応でき,術者ごとに多少の技術的な違いはあっても完成された良い方法であると考えられる.この手技に熟練し,術後の合併症や疼痛コントロールに習熟すれば,痔核の手術は肛門の機能と形態を全く損うことのない,安心して施行できる手術の1つであるといえる.

痔瘻の治療—括約筋温存術を中心に

著者: 瀧上隆夫 ,   嶋村廣視 ,   竹馬彰 ,   根津真司 ,   仲本雅子 ,   竹馬浩

ページ範囲:P.991 - P.1000

 日常診療で比較的よく遭遇する肛門周囲膿瘍,痔瘻は歯状線上にある肛門小窩より細菌が侵入し,肛門腺に小膿瘍を形成し,そこから周囲のいろいろなスペースに炎症が波及することによって形成される.膿瘍期は疼痛が激しく,放置すれば広範囲蜂窩織炎,特に糖尿病などの基礎疾患を有する場合は嫌気性菌感染症(Fournier's syndrome)も併発しかねないので,診断がつき次第切開排膿を心がけるべきである.膿瘍期に一期的に根治手術を行うべきかどうかはその時の状況によるが,一般には膿瘍期がおさまり,瘻管の完成を待って二期的に根治手術に踏み切るのがよい.
 痔瘻手術の原則は肛門小窩(原発口)とそれに続く肛門腺(原発巣)を完全に切除することにあるが,その際の括約筋の処置の仕方,二次口の処置の仕方に関して諸家によりいろいろな工夫がなされている.肛門後方の低位筋間痔瘻は開放術式(lay open)で問題ないが,側方,前方の低位筋間痔瘻はできる限り括約筋温存術式で行うべきである.
 高位筋間痔痩,坐骨直腸窩痔痩も初回手術例では可及的に括約筋を温存する術式が勧められる.本稿では当院で行っている縫合のしやすい強彎Vicryl®2-0を用いた括約筋温存術式について述べる.

痔瘻の治療—外来処置と手術法の選択

著者: 佐原力三郎

ページ範囲:P.1001 - P.1009

 痔瘻は肛門腺への感染によって生じる.その多くは括約筋を貫いており,手術療法による治療が主体である.根治性,機能温存,治癒期間の短縮そして低侵襲のいずれもが課題になる.肛門の解剖,生理を熟知し,痔瘻の型診断を正確に下すことにより手術手技を選択できる.Ⅰ型は開放術,Ⅱ型の後方は開放術,Ⅱ型の前方あるいは側方は括約筋温存術,Ⅲ型は筋肉充填術,Ⅳ型は肛門保護手術である.乳幼児痔瘻やクローン病の痔瘻のように特殊なタイプもあるが,手術の適応やタイミングを考慮すればquality of lifeは改善される.将来的にはday surgeryの適応が広がっていくなかで,痔瘻結紮術(seton法)も日常の診療に加えていくべき術式と思われた.

裂肛の治療—病期と病型に応じた治療法

著者: 友近浩

ページ範囲:P.1011 - P.1013

 裂肛の病態は比較的単純で,ごくありふれた疾患であるため,一般医家に軽視されがちで,手術適応であるにもかかわらず放置されたり,漫然と保存治療を続けられているケースが意外に多い.現在,裂肛の手術療法の主流は皮膚弁移動術(SSG法)から側方皮下内括約筋切開術(LSIS)へと移行しつつあるが,実際の診療に際しては裂肛の病期・病型に応じて治療法を選択し,適宜組み合わせていくべきである1).また本疾患は肛門疾患の中でも,とりわけday surgeryないしshort stay surgeryとして取り扱うべき疾患であり,その点をも考慮した術式・麻酔法の選択が望ましい.

裂肛の治療—ニトログリセリン軟膏治療を中心に

著者: 服部和伸

ページ範囲:P.1015 - P.1019

 内括約筋の収縮を抑制する神経伝達物質としてnitric oxideが知られてきた.この供給体であるニトログリセリン軟膏を用いた治療が試みられるようになり,裂肛治療のストラテジーが変化しつつある.急性裂肛は便の軟便化や肛門衛生などの保存療法を行うが,内括約筋の痙攣が強い場合はニトログリセリン軟膏を使用する.慢性裂肛はまずニトログリセリン軟膏治療を行う.無効ならば用手肛門拡張や側方皮下内括約筋切開術(LSIS)を行う.器質的肛門狭窄があるものには早川式の皮膚弁移動術(SSG),痔瘻を合併しているものではY-V〜V-YによるSSG法を行う.従来,用手肛門拡張やLSISが必要であった症例の多くはニトログリセリン軟膏治療で手術を回避できる.

肛門周囲疾患の診断と治療

著者: 日高久光 ,   黒木政純

ページ範囲:P.1020 - P.1025

 痔核,裂肛,痔瘻以外の肛門疾患には膿皮症,毛巣瘻,コンジロームなどの周囲皮膚領域にみられる疾患がある.いずれも診断が下されれば根治手術が必要であるが,病態の理解のもとに適切な手術がなされないと再発の可能性は高い.
 また痔核術後の後遺症としてみられる粘膜脱や狭窄も,その多くは手術が必要である.粘膜脱では結紮切除(LE法)や結紮切除とsliding skin graft法(SSG法)を組み合わせた手術法(LE-SSG法)を症例により使い分けている.術後狭窄の高度の例には慢性裂肛に行うSSG法を行う.
 痔痩の術後にみられる括約不全(括約筋損傷)には括約筋修復手術を行うが,術後の感染を引き起こすと機能回復が困難なので注意が必要である.

〔座談会〕肛門疾患day surgeryの実際

著者: 岩垂純一 ,   石山勇司 ,   松田直樹 ,   坂田寛人

ページ範囲:P.1027 - P.1037

 岩垂(司会)本日はお忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます.「肛門疾患day surgeryの実際」というテーマでお話ししていただきたいと思います.
 初めに,day surgeryというのは特に目新しいことではなく,無床診療所の肛門科の先生のところではday surgeryは日常行われてきたわけです.最近時代の要請といいますか,経済情勢が非常に厳しくなり,良性疾患である肛門の手術のために患者が長い期間勤務を休むことに対して抵抗感があります.それから,医療情勢も厳しくなって,医療費の削減という状況,すなわち出来高払いから,包括化,定額制の方向に向かっていく傾向があります.今年4月の診療報酬の改定で,痔核手術に対して日帰り手術の点数が1,000点加算されるようになり,いよいよ肛門疾患に対するday surgeryが広まっていくのではないかと考えます.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・44 肝・胆・膵・脾

腹腔鏡補助下膵頭十二指腸切除術,腹腔鏡下膵体尾部切除術

著者: 宇山一朗 ,   杉岡篤 ,   小森義之 ,   藤田順子 ,   蓮見昭武 ,   高原哲也 ,   飯田修平

ページ範囲:P.953 - P.958

はじめに
 腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術はGagnerらにより1992年に初めて報告されたが1),リンパ節郭清と安全性の面でまだまだ問題があり,本邦では施行されていない.また,腹腔鏡下膵体尾部切除術は膵頭十二指腸切除と異なり再建を必要としないため,最近報告例が散見される2〜4).ここでは筆者らの施行している腹腔鏡補助下膵頭十二指腸切除と腹腔鏡下膵体尾部切除術を紹介する.

私の工夫—手術・処置・手順・45

器械吻合におけるアンビル装着の失敗しないコツ—エンドループを補助に使う方法

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.1039 - P.1039

1.器械吻合
 最近の消化管吻合における器械吻合の発達は著しい.器械の進歩や操作の慣れにより,手術時間の短縮や縫合不全の減少など患者にとって福音がもたらされている.しかし術中のトラブルや合併症が全くないわけではない.とくに胃全摘手術や低位前方切除などやり直しが困難な手術では器械吻合は一度で成功させなければならない.PCEEA®やプロキシメイト®ILSの環状型吻合器を使用するときの失敗する要因のかなりの部分が,アンビル装着の不完全により生じる.そこでこの部位の操作の失敗を少なくする工夫を考案した.

病院めぐり

松山市民病院外科

著者: 渡辺良平

ページ範囲:P.1040 - P.1040

 当院は,松山城の南西,JR松山駅より徒歩3分の所にあります.戦後しばらく駅前地区には医療機関がなく,地元の幼児が飴玉を喉につめ,そのまま死亡するという痛ましい事例が発生したことが契機となり,地元有志が病院の設立を発起し,昭和31年6月1日に松山市民病院が開設されました.経営主体は「財団法人永頼会」であり,関連施設として松山中央乳児保育園があります.永頼という名称は,書経「大禹謨」にある「萬世永頼」をその出典とし,舜帝が禹の治水の功績に対し「万世の後まで永くおかげをこうむるであろう」と褒め称えた言葉に由来します.職員一同はこの言葉に流れる精神を忘れることなく,地域社会への病院本来の使命を達成すべく日々努力を重ねています.
 内科と外科,病床数20をもって発足しましたが,昭和36年産婦人科,昭和41年耳鼻科と眼科を設け総合病院としての態勢を整え,昭和42年脳外科,麻酔科,昭和46年整形外科,皮膚科,昭和50年以後病理部,泌尿器科,小児科と逐次診療科目を拡充しました.この間,宮田院長のもと施設も除々に拡張し,平成6年10月に現在の新館建築を完了し,現在19診療科538床(すべて一般病床)+透析12床,医師数78名,1日平均外来患者数約1,200名であります.

十全総合病院外科

著者: 佐々木章公

ページ範囲:P.1041 - P.1041

 当院は,旧別子銅山の麓の愛媛県新居浜市にあります.昭和31年3月に故松尾正三(初代理事長)により内科医院として創設され,その後診療科の新設や病床の増改築を行い,昭和44年4月より現院長,松尾嘉禮のもと財団法人積善会附属十全総合病院と発展し,現在に至っています.
 今の診療科は18科,350床です.昭和63年4月には新病棟が完成し,病室のスペースや廊下の幅も広くゆったりしたものとなり,患者さんにとって,(1)安全な入院生活が送れる病院,(2)治療に適した環境の整った病院,(3)社会復帰がスムーズにできる病院,を目指しています.また人口13万人ほどの地方都市に当院を含めて同規模の病院が4施設もあり,昨今の厳しい医療行政からみると病院経営が苦しいと言われる中,お互いに切磋琢磨し良い意味で競争しあいながら医療技術を向上させるよう努力しており,それがひいては患者サービスなどに貢献しているのではないかと思っています.

メディカルエッセー 『航跡』・24

チーフレジデント物語—再び,カルチャーショック

著者: 木村健

ページ範囲:P.1042 - P.1043

 通りをはさんだポズナーホールにある当直レジデント宿舎の空部屋に仮の宿を見つけたが,それもいつまでも続けるわけにはいかない.アパートを探す段となると,全米どこの街でもまず新聞が頼りである.ニッポンのように不動産屋まで出向く必要はない.新聞の「貸したし」という欄を見ればこと足りる.手術や回診の合間片っぱしから電話をかけてみる.家主不在であったり,たまに電話がつながっても,相手が心もとない英語遣いと知ると電話を切ってしまう人もある.それでもいくつか仮交渉が成立し,下見の予約をとりつけた.Dr.フィッシャーは,患者の状態や手術予定については尋ねてくれるが,「どうだ住居は決まったかい」などとは聞いてくれない.「外国からはじめて来て苦労しているのに助けてくれてもバチは当たるまいに」と恨んだりもした.だが,今にして思うと,「アパートを探すのを助けて欲しい」などと言わずによかったと思っている.ここアイオワ大学でも毎年レジデントが去り新しく来たのと入れ替わる.その都度,教授にむかって住居の手配を手伝えなどというものはいない.外国人であろうが生粋のアメリカンであろうが,そういうことは自分でするのが当たり前というのが常識である.ニッポンでは新しく人を雇うとあれこれ気配りするが,あれは立派な一人前の大人に対してちとかまいすぎではないか.

外科医のための局所解剖学序説・25

骨盤部の構造 4

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.1045 - P.1054

 腸壁内神経叢の神経節細胞の欠如により生ずる先天性巨大結腸症は,発見者であるデンマークの小児科医Hirschsprung Hの名前が冠され,Hirschsprung病として知られている.彼は長男であったために父が経営していたタバコ会社を引き継ぐことが期待されていたが,医学への強い興味に父もその希望をあきらめざるをえなかった.消化管の閉鎖と関わりを持つようになったのはインターンとして研修していた時である.1年の間に4例の食道閉鎖の症例を経験し,かつ上司であったLevy教授が以前経験した食道閉鎖の2症例を彼に与え,このチャンスに拍車をかけたことに端を発する.次のように述べている.“この稀な幸運は是非物にしなければならない.私のこの気持ちは畏敬するLevy教授が彼が以前観察した症例を私に与えてくれたことでさらに強まった”.有意義な人生を決定するきっかけはたたみかけるようにして起こるが,しかしそれを見逃す人も少なくない.Hirschsprungはその機微をつかむことができた.その後消化管の閉塞が彼の興味の対象となり,かの有名な疾患の発見に至るのである.1888年「Jahrbuch für Kinderheilkunde」にHirsch-sprung病の2例を報告した."お分かりになるようにこれは結腸であるが,このような大きさの結腸がたった11か月で死亡した幼児のものだと知れば驚かない人はいないはずである.

Current Topics

外科専門医制度の現状と将来

著者: 青木照明

ページ範囲:P.1055 - P.1061

はじめに
 最近「21世紀の医療」を目指した医療制度の改革案が厚生省関連,文部省関連,政府与党など各方面より呈示され,その中で医師の専門領域の表示とそれに伴う認定医・専門医制度の認定基準の統一化と明確化が記載されており,学会認定医制協議会を中心とした制度の整備への動きが活発化している.本稿では認定医・専門医制のわが国における歴史的経緯を述べ,さらに,外科専門医制の現状を報告する.

遺伝子治療の最前線・14

TK遺伝子導入による癌治療—IL-2遺伝子共導入による効果増強

著者: 山口佳之 ,   高島郁博 ,   檜原淳 ,   峠哲哉

ページ範囲:P.1063 - P.1066

はじめに
 遺伝子工学の進歩により体細胞に遺伝子を導入し,細胞が本来有しない,あるいは低発現している機能を誘導・増強することが可能となった.この進歩は癌治療の研究にも多大な影響を与え,遺伝子導入による治療,すなわち遺伝子治療がまさに21世紀の癌治療として研究・応用されている.Thymidine kinase(TK)遺伝子を用いた治療戦略はその代表的なものであり,すでに海外では臨床応用もなされている.本稿では癌に対するTK遺伝子治療について概説し,教室の研究と合わせ,今後の方向性について検討する.

癌の化学療法レビュー・4

副作用とその対策

著者: 市川度 ,   仁瓶善郎 ,   杉原健一

ページ範囲:P.1067 - P.1072

はじめに
 癌化学療法では,耐用可能な毒性の範囲内で最大の効果を上げることが基本である.従来,抗癌剤は開発段階の第Ⅰ相試験で,投与規則因子(dose limiting factor:以下,DLF)が規定され,それにより最大投与量が決定されてきた.最近では,単位時間(1週間)あたりの薬剤投与量(mg/m2/week),すなわちdose intensity(以下,DI)が治療成績と強く相関することが知られている.
 したがって,DLFに対する支持療法は,最大投与量を増量することが可能となるだけでなく,化学療法のregimenを完遂するうえで必須の治療ともいえる.支持療法によりDIは増え,ひいては治療成績向上につながる.また,癌化学療法の副作用対策は,治療期間中のquality of life(QOL)向上の点からも重要である.

外科医に必要な耳鼻咽喉科common diseaseの知識・3

耳痛(急性外耳道炎,急性中耳炎)

著者: 杉内智子

ページ範囲:P.1073 - P.1075

はじめに
 耳痛は外耳・中耳に病変がある場合と,耳以外の病変の放散痛を耳痛として感じている場合がある(表,図).非耳性耳痛の場合は耳痛関連疾患を念頭において問診や痛みの性状から除外診断を行う.耳性耳痛は問診と視診,圧痛点,耳痛を増大させる条件などで診断は比較的容易である.頻度としては耳性のものが多く,なかでも急性外耳道炎と急性中耳炎は外来で最もよく遭遇する疾患の1つである.

外科医に必要な産婦人科common diseaseの知識・3

骨盤内感染症

著者: 清水孝郎 ,   佐藤信二

ページ範囲:P.1076 - P.1078

概念
 骨盤内感染症とは病原体微生物の腟・子宮頸管からの上向性感染などによって生じる,子宮内膜,子宮付属器,その近傍組織への炎症性症候群であり,子宮内膜炎,子宮付属器炎,子宮傍結合織炎,骨盤腹膜炎などが含まれる1)

臨床報告・1

血清CA 19-9が高値を呈した脾嚢胞の1切除例

著者: 大江正士郎 ,   浮草実 ,   花房徹兒 ,   粟根弘治 ,   福山隆之 ,   新宅雅幸

ページ範囲:P.1079 - P.1082

はじめに
 脾嚢胞は以前より稀な疾患といわれてきたが,近年,画像診断の進歩により,その報告例が増加してきている.しかし,血清CA 19-9が高値を示した脾嚢胞の報告はきわめて少ない.今回,筆者らはCA 19-9産生性の脾嚢胞の1手術例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

乳管内進展により多中心性発生を疑わせた多発乳腺粘液癌の1例

著者: 山本隆嗣 ,   清田誠志 ,   枝川篤永 ,   広橋一裕 ,   木下博明

ページ範囲:P.1083 - P.1087

はじめに
 乳腺原発の粘液癌は乳癌全体では比較的稀であり,他臓器の粘液癌と違い良好な予後をとることが多い1〜3).最近,筆者らは乳管内進展から複数個の腫瘤を認めたために多中心性発生を疑わせた粘液癌を経験したので,粘液癌の病態と術式選択についての考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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