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文献詳細

雑誌文献

臨床外科53巻8号

1998年08月発行

文献概要

外科医のための局所解剖学序説・25

骨盤部の構造 4

著者: 佐々木克典1

所属機関: 1信州大学医学部解剖学第一講座

ページ範囲:P.1045 - P.1054

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 腸壁内神経叢の神経節細胞の欠如により生ずる先天性巨大結腸症は,発見者であるデンマークの小児科医Hirschsprung Hの名前が冠され,Hirschsprung病として知られている.彼は長男であったために父が経営していたタバコ会社を引き継ぐことが期待されていたが,医学への強い興味に父もその希望をあきらめざるをえなかった.消化管の閉鎖と関わりを持つようになったのはインターンとして研修していた時である.1年の間に4例の食道閉鎖の症例を経験し,かつ上司であったLevy教授が以前経験した食道閉鎖の2症例を彼に与え,このチャンスに拍車をかけたことに端を発する.次のように述べている.“この稀な幸運は是非物にしなければならない.私のこの気持ちは畏敬するLevy教授が彼が以前観察した症例を私に与えてくれたことでさらに強まった”.有意義な人生を決定するきっかけはたたみかけるようにして起こるが,しかしそれを見逃す人も少なくない.Hirschsprungはその機微をつかむことができた.その後消化管の閉塞が彼の興味の対象となり,かの有名な疾患の発見に至るのである.1888年「Jahrbuch für Kinderheilkunde」にHirsch-sprung病の2例を報告した."お分かりになるようにこれは結腸であるが,このような大きさの結腸がたった11か月で死亡した幼児のものだと知れば驚かない人はいないはずである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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