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文献詳細

雑誌文献

臨床外科54巻11号

1999年10月発行

特集 薬物療法マニュアル

Ⅲ.周術期の薬物療法 2.緊急手術

胃十二指腸潰瘍穿孔

著者: 近藤泰理1

所属機関: 1東海大学医学部付属東京病院外科

ページ範囲:P.175 - P.176

文献概要

薬物療法の意義
 H2受容体拮抗剤(H2RA)やproton pump inhibitor(PPI)などの薬物療法が進歩し,胃十二指腸潰瘍全体の手術件数は激減しているが,穿孔症例数は減少していない.十二指腸潰瘍穿孔についてみると,わが国においては広範囲胃切除術が広く行われてきた.筆者らは十二指腸潰瘍穿孔例に対して,緊急手術時に穿孔部大網充填術ならびに減酸処置として幽門形成術を付加しない選択的近位迷走神経切離術(SPV)を86例に施行し,術後累積再発率を検討した結果,術後10年累積再発率が26.6%と少なからず認められ,SPV術後1年時に高酸分泌能を示す症例は潰瘍再発をきたしやすいことを報告した1).また,緊急手術時に減酸処置を行わずに穿孔部大網充填術単独とした43例の術後5年累積再発率を検討した結果,術後にH2RAを継続投与した17例は22.2%であるのに対し,H2RAを継続投与しなかった26例は55.3%と高率であることから,穿孔部閉鎖単独症例に対する薬物療法の重要性が示唆された2)
 胃潰瘍穿孔例は症例数が少ないが,一般に穿孔部が大きく,high risk症例であることが多い.胃癌の穿孔との鑑別を常に考慮し,救命を目的に穿孔部の一時的な閉鎖を行った場合でも術後に内視鏡による胃癌との鑑別診断が重要であると考えられる3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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