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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科54巻4号

1999年04月発行

雑誌目次

特集 Surgical deviceの有効,安全な使い方

電気メス(電気手術器)の安全な使い方

著者: 酒井順哉

ページ範囲:P.437 - P.446

 電気メス(電気手術器)は手術部位の迅速で容易な切開(cutting),凝固(coagulation)を可能にするが,高周波電流の特性を理解し,適正に外科手術に利用されないと様々な問題が生じる.
 電気メスの事故原因には患者や術者への熱傷事故,皮膚消毒用エタノール製剤などの可燃性消毒液,気管内チューブから流出する酸素への引火などがあるが,いずれも正しい取り扱いを徹底すれば事故は防げる.また,電気メスの使用によるペースメーカ,シリンジポンプ,各種モニターへの雑音障害は医療機器のトラブル原因となっている.
 今後の方向づけが注目される組織焼灼時の煙霧の毒性について,職業安全衛生管理局(OSHA)から「電気メスによる発煙に関するガイドライン」が提言されたことから,手術室看護婦協会(AORN)の勧告にも電気メスの煙霧を強制排気する指針が示された.

バイポーラ式電気メスの有効,安全な使い方

著者: 長谷川潔 ,   高山忠利 ,   幕内雅敏

ページ範囲:P.447 - P.451

 バイポーラ式電気メスは電流が体内を通って対極板で回収されるモノポーラ方式と異なり,電流の流れは局所にとどまる.したがって,バイポーラ方式では周囲組織への傷害を最小限に抑えつつ,目的の部位をピンポイントで焼灼あるいは凝固,止血することが可能である.他に対極板が不要という長所を持つが,モノポーラ方式に比べ電極の形状が複雑になり,壊れやすいという短所がある.状況に応じて両者を使い分けることが大切である.

マイクロ波手術器の有効,安全な使い方

著者: 田伏克惇

ページ範囲:P.453 - P.463

 マイクロ波手術器はTABUSEとZENITANIによりわが国で開発されたもので,その商標名マイクロターゼ®(MICROTAZE®)の由来となっている.マイクロ波のエネルギーの集束法をモノポーラ型アンテナとし,組織内で照射することできわめて限局した効率のよい熱エネルギーを組織自ら発生させ,手術器として用いることができるように開発された.またパラボラアンテナやバイポーラアンテナと違って,その発振は非常にシンプルなため同軸ケーブルの太さ,軟性,硬性,彎曲の程度を自由に変え,またアンテナの形状,長さを変えることで様々な手術に応用できるものである.組織温度100℃以下で凝固,止血できるその効果は実質臓器に応用され,固形癌の凝固治療に発展し,外科,内科,泌尿器科のみならず眼科,脳外科,心血管外科へと発展しつつある.

超音波外科用吸引装置の有効,安全な使い方

著者: 山本雄造 ,   猪飼伊和夫 ,   森本泰介 ,   山本成尚 ,   飯室勇二 ,   佐藤誠二 ,   嶌原康行 ,   山岡義生

ページ範囲:P.465 - P.469

 超音波外科用吸引装置は本体で発生させた電気エネルギーをハンドピースに内蔵されたトランスデューサーにより超音波振動に変換し,ハンドピース先端のチップを振動させることで組織を“選択的”に破砕することができる.神経,血管,リンパ管のような弾性のある組織にはその作用が弱く,破砕が行われない特徴がある.したがって,肝切離のように細かな脈管系が実質組織のなかに埋没しており,前もっての脈管処理が不可能な臓器の切離にきわめて有用である.しかしながらその動作原理から凝固,止血機能は有しておらず,補助をするdeviceが必要である.腹部外科での使用が一般的である肝切除においてその有効,かつ,安全な使い方を解説する.

超音波振動メスの有効,安全な使い方

著者: 三浦純一 ,   井上仁 ,   斎藤雅文 ,   樋口光徳 ,   山下方俊 ,   畑穆

ページ範囲:P.471 - P.476

 超音波振動メスは先端のブレードを20〜100μmの振幅で,1秒間に約20,000回ないし約55,000回振動させることにより,組織の切開と凝固を行うメスである.鋏の形をしたシアーズタイプのメスは,直径3mmまでの動脈を出血なしに切離できる性能を持ち,いまや内視鏡下手術にはなくてはならない存在になっている.しかしながら,超音波振動メスの切開能と凝固能は相反する関係にあるので,速く切開してしまうと凝固が不十分で思わぬ出血をきたす結果になりかねない.操作の習熟に若干の時間を要するが,甲状腺,乳腺,肝および膵などの実質臓器も切離することができ,内視鏡下手術ばかりでなく通常の手術でも超音波振動メスの適応の範囲は広がりつつある.

バイポーラシザーズの有効,安全な使い方

著者: 小川哲史 ,   大和田進 ,   竹吉泉 ,   森下靖雄

ページ範囲:P.479 - P.482

 近年開発されたバイポーラシザーズ(商品名Power Star®,Johnson & Johnson Medical社製)は,モノポーラ電気メスの機能を持った剪刀で,直径2〜3mmの血管に対して凝固,切離が可能である.バイポーラシザーズは低電圧で使用でき,アクティブ電極とリターン電極は各々片側の刃にあるため,電流は生体を通過せず局所のみに放出される.このため,モノポーラと比べ隣接した組織への電気的損傷がなく,熱損傷も少ない.使用上の利点は凝固を確認しながら鋭的切離ができるため,器械を持ち替える操作や結紮などの止血操作が省け,手技の簡便化と時間の短縮が可能なことと,神経や血管の周囲でも安全な凝固,切離ができることである.胸部食道癌における反回神経周囲リンパ節郭清に使用した結果,術後の反回神経麻痺は16%であった.食道癌根治術のように狭く深い視野で神経や血管を温存する際には特に有用である.使用上の注意点は刃先の温度上昇による組織の熱損傷を防ぐため,刃先が神経や大血管などに直接に触れないことと,適宜,刃先を冷却することである.良好なメンテナンスにより再利用が可能で,患者のみならず医療従事者の熱傷や感電事故のリスクも軽減できる.
 バイポーラシザーズを使用することで,より安全で簡便な手術操作が可能で,新しい手術方法が開発される可能性がある.

アルゴンビームコアギュレーターの有効,安全な使い方

著者: 權雅憲

ページ範囲:P.483 - P.488

 電気メスの普及により手術時の止血が容易となっているが,肝,脾,腎などの実質臓器からの出血やoozingなどの広範な出血に対する止血は困難な場合が多い.また近年の鏡視下手術の急速な展開に伴い,より簡便で確実な止血機器が必要となってきた.アルゴンビームコアギュレーターはアルゴンガス流を介した高周波エネルギーで目標部位に熱凝固を起こし止血する機器であり,従来の電気メスでは不可能であった広範かつ均一で迅速な凝固,止血が可能となり,一般外科手術時の止血手段として有用である.近年の低侵襲を目的とした鏡視下手術ではアルゴンビームコアギュレーターの特性がさらに発揮されるが,気腹時の使用に際しては慎重な操作が必要である.

カラーグラフ 消化器の機能温存・再建手術・8

噴門側胃切除術—代用胃を用いた再建術式

著者: 傳野隆一 ,   浦英樹 ,   星川剛 ,   山口浩司 ,   八十島孝博 ,   宍戸隆之 ,   平田公一

ページ範囲:P.429 - P.433

はじめに
 教室では噴門側早期胃癌に対し,根治性を損なうことなく幽門機能温存を目的とした噴門側胃切除術を施行している.その再建術式としてはさまざまな方法があり,問題点の存在が知られている.食道残胃吻合法では手技は簡便であるが逆流性食道炎の発生頻度が高く1),食道残胃間に空腸を間置したMerendino法2)では小胃症状が出現しやすいなど,術後のQOLが損なわれることが多いとされてきた.そこで逆流性食道炎,小胃症状,ダンピング症状などの術後障害の発生を防止する目的で食道残胃間に空腸嚢間置術を行ってきた.良好な結果を得ているので本術式の手術手技について紹介する.

病院めぐり

王子総合病院外科

著者: 水戸康文

ページ範囲:P.490 - P.490

 王子総合病院は,北海道の空の玄関,新千歳空港から南へ車で約20分,太平洋に面した勇払原野の一角に位置する王子製紙工場の城下町,人口約17万人の苫小牧市にあります.当市はアイスホッケー日本リーグの強豪チームのホームタウンとして知られており,近隣はウトナイ湖,樽前山,支笏湖などの自然に恵まれています.冬は寒いのですが,積雪量は少なく,雪に覆われるのは1,2月くらいです.
 当院は西は襟裳岬から,東は登別温泉付近まで,太平洋沿岸の細長い日高,東胆振地域の基幹病院として,その周辺人口は,苫小牧市を含め20数万人に及びます.

長井市立病院外科

著者: 庄司勝

ページ範囲:P.491 - P.491

 西に朝日,南に吾妻,飯豊の山々を臨む山形県南部,置賜盆地の北に長井市はあります.山形県を縦断する最上川は吾妻に源を発し,長井市内で飯豊から白川,朝日から野川が合流します.冬には雪がたくさん降りますが,春には山菜が採れ,花が咲きます.夏にはホタルが舞い,山にはクマもいます.
 当院は昭和14年に長井公立病院としてスタートし,長井西置賜地域の基幹病院として発展してきました.現在,病床数483床,17診療科を有しますが,医師33名,職員353名と慢性的な労働力不足に悩まされつつも,職員一丸となって赤字と戦っています.当院は地域の基幹病院であると同時に,僻地中核病院として指定されており,山間地を訪ねる僻地巡回診療には当科も参加しています.健康講話,血圧測定などの後,素朴な山菜・きのこ料理をいただき,じっちゃ,ばっちゃとお茶を飲むのどかさは当院ならではのものです.

私の工夫—手術・処置・手順

小腸バッグ内に小腸を上手に収納する方法

著者: 下間正隆 ,   鶴田宏史 ,   庄林智 ,   伊藤彰芳 ,   小出一真 ,   中西正芳

ページ範囲:P.492 - P.492

 開腹術中に小腸が視野を妨げる場合,われわれは術野の状況により,小腸バッグ(アイソレーションバッグ®,住友ベークライト),ミクリッツ・ガーゼ,スポンジなどを適宜用いて術野を確保している.
 小腸バッグ内に小腸を収納する際に,小腸がバッグからヌルリと出てしまい,バッグ内に小腸をうまく収納できない場合が時にある.

臨床外科交見室

「ハルステッド理論」とは—ハルステッドの原典を繙く

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.493 - P.493

 「乳房内に発生した乳癌は,増大するにつれて周囲組織に浸潤していきながら,リンパ管を介して全身に転移していく.その際,所属リンパ節は癌細胞が全身に広がるのを防ぐ防波堤(barrier)になっている.乳房を癌を含めて一塊(en bloc)として切除する事が根治になる」というのが,一般的に理解されているいわゆる乳癌の進展に関する「ハルステッド理論」である.乳癌の手術が縮小化に向かっている現在,「ハルステッドの定型的乳房切除術(standard radicalmastectomy)」は,とくにFisherらが「乳癌は全身病である」と主張して以後,批判の的になっている.しかしながら,術式の歴史的変遷を概観し,“一時代を画した術式”を見ていく場合には,その時代背景を無視することは出来ない.そこで,ハルステッドの原典を繙き,ハルステッドの言わんとした論点を探ってみた.その第一報は1894年のAnnals of Surgeryに載った論文1)で,巻末には50人の患者の転帰がわかる病歴の要約が載っている.ここでは,最上部鎖骨下リンパ節,いわゆる“ハルステッドリンパ節”のことであるが,に転移があるとその予後は“unfavorable”とか“hope-less”としている.

メディカルエッセー 『航跡』・31

米国大学病院で外科教授になる過程(1)

著者: 木村健

ページ範囲:P.494 - P.495

 米国の研修医にとって,11月から2月半ばにかけての間は就職運動もしくは専門分野のフェローシップ獲得のための準備期間である.5年の研修期間が終わって一人前の一般外科医としての資格が得られると大学病院のスタッフとしてアカデミック医学に進むか,開業医のグループに入って地域医療に貢献するか,選ぶ途は二つに一つである.日本でいう病院勤務医という選択肢は米国には存在しない.その理由は医・院分業であるからだ.研修医のサラリーは病院から支給されるが,スタッフ外科医は手術毎に自分の決めた技術料を請求し,その総額からオフィスの家賃,光然費,人件費などを差し引いた残りを取得する.手術料は外科医によって請求する額が違う.また年間に行う件数にも個人差がある.独立独歩の外科医を病院が月給で丸抱えすることはできない.すなわち,医師と病院の財政が分離しているので,わたしはこれを医・院分業と呼んでいる.ニッポンでは手術に関わるモノも技もひとまとめの経費として病院が保険機関に請求し,その中から一定の規定に従って医師にサラリーを支給する.ひとりで何百例もの手術をする人と数十例にとどまる人が同じサラリーでは不公平なのではないか.何百例も手がける人はより多くの収入があって当然だろう.この間題を解決するのがインセンティブプラン(実利案)である.病院に代わって各科が医師の収入をプールし,これを働きに応じて分配するという方法である.

外科医に必要な産婦人科common diseaseの知識・11

前置胎盤

著者: 亀山良亘

ページ範囲:P.496 - P.497

はじめに
 前置胎盤とは胎盤の位置異常で,内子宮口の全体,もしくは一部を胎盤が覆う状態をいう.その頻度は0.5%程度と言われている.また,帝王切開既往のある妊婦は前置胎盤のリスクが増加すると言われている1)
 前置胎盤は近年超音波の発達により容易に診断がつけられるようになってきているが,大量出血を起こす可能性があり,母児の生命にかかわる恐れもあるので十分注意をして診ていく必要がある.

外科医に必要な耳鼻咽喉科common diseaseの知識・11

急性扁桃炎,扁桃周囲膿瘍

著者: 寺崎雅子

ページ範囲:P.498 - P.499

はじめに
 耳鼻咽喉科領域の各諸臓器は感覚器であるとともに,生命維持のための酸素や栄養の取り入れ口にもなっている.したがって,外界のあらゆる刺激を受けるとともに細菌,ウイルスなどに汚染されやすく,とくに細菌感染の好発部位であると言える,抗生物質によっても難治性の感染症となることも少なくない.代表的な扁桃疾患である急性扁桃炎と扁桃周囲膿瘍は,日常診療において遭遇することが多い疾患である.

消化器疾患の総合画像診断

スキルス胃癌

著者: 古河洋 ,   平塚正弘 ,   今岡真義 ,   石川治 ,   甲利幸 ,   佐々木洋 ,   亀山雅男 ,   大東弘明 ,   安田卓司 ,   村田幸平 ,   山田晃正

ページ範囲:P.501 - P.505

はじめに
 胃癌の診断法として,バリウムを使った胃透視術が次第に行われなくなりつつある.しかし,一方では胃透視は「検診」の方法として広く支持されており,現時点では不可欠のものであると考える.ここでは,内視鏡検査よりもむしろバリウム胃透視が有効であった症例1,2)を呈示し,その有用性を述べたい.

医療保険指導室より・1

これだけは知ってほしい保険診療のルール

著者: 宮澤幸久

ページ範囲:P.506 - P.510

はじめに—なぜ,今,保険診療か?—
 わが国の医療,とくにその経済的基盤からみた医療は,1961年に導入された国民皆保険制度に支えられて行われてきた.導入当初には残存していた制限診療も翌年には撤廃され,国民生活の向上による国民の医療に関する関心の高まりからちょっとした病気でも医療機関を受診する習慣が広がったこととあいまって,医療費は増大した.診療報酬については物価,人件費へのスライド制がとられ,さらに,新薬,新検査法,新治療法が次々と保険収載されたことにより,医療費の総額および国民総所得に占める割合は年々増大することとなった.また,わが国の保険医療制度は原則として現物給付であり,他の国では例をみないフリーアクセス,出来高払い**の制度であることが,医療費増大に影響してきたのも事実である.1998年度の国民総医療費の概算は28兆8千億円であり,1997年9月の窓口での一部負担金の引き上げなどによる患者の受診抑制で,保険制度導入後,初めて前年比減となったが,老人医療費は9兆円を超えている(図1).2025年には総医療費は50兆円を超え,このうち65歳以上が60%強を占めるものと推計されている(図2).これら膨大化する医療費は国策上,重大な問題であるが,対応は後手後手に回っている.

臨床研究

食道粘膜癌における内視鏡的粘膜切除例の臨床的検討

著者: 石後岡正弘 ,   内沢政英 ,   山崎左雪 ,   河島秀昭 ,   原隆志 ,   細川誉至雄

ページ範囲:P.511 - P.513

はじめに
 近年,食道癌に対する診断技術の向上により食道表在癌とりわけ粘膜癌症例が増加している1〜3).それに伴い切除例の治療成績とともにその病理組織学的特徴も明らかとなってきた1〜3).また治療法においても内視鏡的粘膜切除術(EMR)が開発され,その手技も確立されてきている4〜6).当院においても早期胃癌に対する高張NaCl-epinephrine液(HSE)局注を併用した内視鏡的粘膜切除術(ERHSE)7)を1984年より主に食道良性腫瘍に対して施行してきた8)が,1989年以降表在癌のスクリーニング法としての色素内視鏡により表在癌症例が増加しており,粘膜癌に対しても積極的にEMRを施行している.今回,EMR症例の臨床的特徴を明らかにし,今後の診療における注意点を検討した.

臨床報告・1

皮膚神経線維肉腫,脊髄悪性神経鞘腫,膵腫瘍を合併したvon Recklinghausen病の1例

著者: 石川真 ,   長瀬通隆 ,   可知宏隆 ,   関野昌宏 ,   越川卓

ページ範囲:P.515 - P.519

はじめに
 von Recklinghausen病(以下,R病)は悪性腫瘍の合併が報告されている1).神経線維肉腫,脳脊髄腫瘍などの本疾患に直接関連あるものから,消化管,乳癌などの皮膚神経系以外の臓器にも悪性腫瘍が合併すると言われているが報告例は少ない2).今回,皮膚神経線維肉腫の既往をもち,経過観察中,脊髄悪性神経鞘腫,膵漿液性嚢胞腺癌が疑われる膵腫瘍を同時に合併したR病を経験したので報告する.

α-フエトプロテイン産生下行結腸癌の1例

著者: 長井一信 ,   三角俊毅 ,   川崎誠治 ,   村上正和 ,   唐土善郎 ,   山本雅彦 ,   曽田益弘

ページ範囲:P.521 - P.524

はじめに
 α-フェトプロテイン(以下,AFP)は,肝細胞癌,悪性奇形腫の有力な補助診断法として臨床的に広く応用されているが,消化管腫瘍でもしばしば高値を呈することが知られている1).しかし中後腸系腫瘍では稀であり,なかでも結腸癌症例は自験例を含め15例の報告を認めるにすぎない.今回筆者らはAFP産生下行結腸癌の1例を経験したので報告する.

酸素吸入療法が奏効した門脈ガス血症を呈した大腸嚢腫様気腫症の1例

著者: 宇高徹総 ,   堀堅造 ,   安藤隆史 ,   辻和宏 ,   三谷英信 ,   山根正修

ページ範囲:P.525 - P.527

はじめに
 門脈ガス血症は主に腸管壊死を伴う虚血性腸疾患にみられる合併症で,予後不良の徴候とされてきた.近年,さまざまな腹部疾患に合併した門脈ガス血症の報告例の増加とともに生存率の改善がみられている.
 今回筆者らは,酸素吸入療法により治癒した門脈ガス血症を呈した結腸腸管嚢腫様気腫症(pneu-matosis cystoides intestinalis:以下,PCI)の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

癒着によって形成したループに盲腸が嵌頓し,茎捻転を起こしたMeckel憩室の1例

著者: 徳家敦夫 ,   秦浩一郎 ,   梁純明 ,   北岡昭宏 ,   徳永行彦 ,   大隅喜代志

ページ範囲:P.529 - P.532

はじめに
 卵黄管の遺残であるMeckel憩室は多くの場合無症状で経過し,臨床症状を呈することは比較的少ないが,合併症として憩室炎,出血,穿孔,腸重積,腸閉塞などが報告されている1).本邦では腸閉塞が最も多いとされ,Meckel憩室を原因とした腸閉塞や茎捻転の報告はしばしば見られる2〜6).しかし,そのほとんどはmesodiverticular bandに小腸が嵌頓したものや憩室単独の茎捻転であり,憩室の茎捻転に盲腸の嵌頓が合併した症例は本邦では未だ報告例がない.今回筆者らは癒着により形成したループに盲腸が嵌頓し,それが誘因となり茎捻転を起したと思われるMeckel憩室の1例を経験したので報告する.

上行結腸に原発した腺扁平上皮癌の1例

著者: 小川功 ,   淀縄聡 ,   後藤行延 ,   平野稔 ,   藤原明

ページ範囲:P.533 - P.535

はじめに
 組織学的に稀な大腸腺扁平上皮癌の1例を経験したので,その臨床像ならびに組織発生に関して若干の考察を加え報告する.

胃横行結腸瘻を形成した胃潰瘍の1例

著者: 西森武雄 ,   坂崎庄平 ,   柳川憲一 ,   荻澤佳奈 ,   韓憲男

ページ範囲:P.537 - P.541

はじめに
 胃潰瘍の合併症としては出血,穿孔,狭窄などが知られており1),隣接臓器への穿通,瘻孔形成例も稀にみられることがある.今回筆者らは横行結腸との瘻孔を形成した胃潰瘍の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

初回手術時に腹膜播種を認めた肝外突出・低分化型肝細胞癌の1切除例

著者: 馬場秀文 ,   渡辺稔彦 ,   板野理 ,   三浦弘志 ,   今井裕 ,   笹井伸哉

ページ範囲:P.543 - P.547

はじめに
 肝細胞癌(以下,HCC)は発育が比較的緩徐な腫瘍であり,初回手術時に遠隔転移として腹膜播種を認める症例は非常に稀である1,2).今回,筆者らは手術時に腹膜播種を伴った肝外突出・低分化型肝細胞癌の1例を経験したので報告する

転移性耳下腺腫瘍の1例

著者: 津田基晴 ,   山下昭雄 ,   土岐善紀 ,   三崎拓郎 ,   堀津良志 ,   本間正教

ページ範囲:P.549 - P.552

はじめに
 転移性耳下腺腫瘍は稀な疾患である.今回筆者らは眼瞼癌が耳下腺へ転移をきたした症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

男子潜在乳癌の1例

著者: 大野一英 ,   升田吉雄 ,   遠藤文夫 ,   小幡五郎 ,   伊丹真紀子 ,   野呂昌弘

ページ範囲:P.553 - P.555

はじめに
 臨床的に乳房に異常を認めず,腋窩リンパ節などの転移巣から乳癌が発見された場合,これを潜在乳癌と呼んでいる.今回,筆者らは男子潜在乳癌と考えられる症例を経験したので報告する.

糖尿病に合併したFournier's gangreneの1例

著者: 山内仁 ,   吉見富洋 ,   河野修三 ,   志田大 ,   塩山靖和 ,   小泉澄彦

ページ範囲:P.557 - P.560

はじめに
 Fournier's gangreneは陰嚢,陰茎,肛門部に発症する壊死性筋膜炎であり,糖尿病などの感染防御機構が低下しうる慢性疾患に合併する頻度が高い.また適切な治療が行われないと急速に進行し死に至る場合も多い1).今回筆者らはコントロール不良な糖尿病に合併したFournier's gangreneの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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