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医療保険指導室より・1
これだけは知ってほしい保険診療のルール
著者: 宮澤幸久1
所属機関: 1帝京大学医学部臨床病理学・第2外科
ページ範囲:P.506 - P.510
文献購入ページに移動はじめに—なぜ,今,保険診療か?—
わが国の医療,とくにその経済的基盤からみた医療は,1961年に導入された国民皆保険制度に支えられて行われてきた.導入当初には残存していた制限診療も翌年には撤廃され,国民生活の向上による国民の医療に関する関心の高まりからちょっとした病気でも医療機関を受診する習慣が広がったこととあいまって,医療費は増大した.診療報酬については物価,人件費へのスライド制がとられ,さらに,新薬,新検査法,新治療法が次々と保険収載されたことにより,医療費の総額および国民総所得に占める割合は年々増大することとなった.また,わが国の保険医療制度は原則として現物給付*であり,他の国では例をみないフリーアクセス,出来高払い**の制度であることが,医療費増大に影響してきたのも事実である.1998年度の国民総医療費の概算は28兆8千億円であり,1997年9月の窓口での一部負担金の引き上げなどによる患者の受診抑制で,保険制度導入後,初めて前年比減となったが,老人医療費は9兆円を超えている(図1).2025年には総医療費は50兆円を超え,このうち65歳以上が60%強を占めるものと推計されている(図2).これら膨大化する医療費は国策上,重大な問題であるが,対応は後手後手に回っている.
わが国の医療,とくにその経済的基盤からみた医療は,1961年に導入された国民皆保険制度に支えられて行われてきた.導入当初には残存していた制限診療も翌年には撤廃され,国民生活の向上による国民の医療に関する関心の高まりからちょっとした病気でも医療機関を受診する習慣が広がったこととあいまって,医療費は増大した.診療報酬については物価,人件費へのスライド制がとられ,さらに,新薬,新検査法,新治療法が次々と保険収載されたことにより,医療費の総額および国民総所得に占める割合は年々増大することとなった.また,わが国の保険医療制度は原則として現物給付*であり,他の国では例をみないフリーアクセス,出来高払い**の制度であることが,医療費増大に影響してきたのも事実である.1998年度の国民総医療費の概算は28兆8千億円であり,1997年9月の窓口での一部負担金の引き上げなどによる患者の受診抑制で,保険制度導入後,初めて前年比減となったが,老人医療費は9兆円を超えている(図1).2025年には総医療費は50兆円を超え,このうち65歳以上が60%強を占めるものと推計されている(図2).これら膨大化する医療費は国策上,重大な問題であるが,対応は後手後手に回っている.
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