icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科54巻6号

1999年06月発行

雑誌目次

特集 直腸癌の治療—機能温存手術のプログレス

直腸周辺の局所解剖(示説)

著者: 佐藤達夫 ,   坂本裕和

ページ範囲:P.721 - P.730

 排尿および性機能とかかわりの深い骨盤外科では,機能温存手術の開発に必要な局所解剖学の重要性が増大している.筆者らも,3年前に本誌の同様の企画において直腸の局所解剖について実際の剖出所見をカラー写真を用いて示説を試み(臨外51(8):961-968,1996)1),手術に携わる外科医の参考に供したところである.今回は,前回以降に行った解剖の所見を追加する.骨盤神経叢の構成と分布に加えて,会陰筋,外尿道括約筋,骨盤内リンパ系,大動脈周囲リンパ節などを供覧する.前回の示説と合わせて参考にしていただきたい.

膀胱機能温存直腸切除術とその成績

著者: 森田隆幸 ,   伊藤卓 ,   村田暁彦 ,   平間公昭 ,   鈴木純 ,   木村寛 ,   牧野容子 ,   一戸和成 ,   宮本慶一 ,   柏葉光宏

ページ範囲:P.731 - P.740

 排尿機能温存を目的とした自律神経温存手術の臨床的意義は大きい.両側の骨盤神経叢の温存がはかられれば理想的であるが,一側の温存例では軽度ながら術後初期に排尿障害を示す例があり,特に会陰部操作の加わる直腸切断術後には尿失禁の認められる例もある.このような場合でも自律神経非温存例と根本的に異なるのは回復の期待がもてるということであり,そのためにも適切な排尿補助を疎かにしないことが大切である.手術の実際にあたっては骨盤内の臓器と自律神経の局所解剖を良く理解し,骨盤神経叢と膀胱枝の温存に注意を払うことが肝要である.

直腸癌に対して射精機能を維持する自律神経温存術

著者: 大木繁男 ,   池秀之 ,   舛井秀宣 ,   市川靖史 ,   山口茂樹 ,   杉田昭 ,   嶋田紘

ページ範囲:P.741 - P.745

 男性性機能とくに射精機能を維持するには腰部交感神経の温存が必要である.腰部交感神経は腰部交感神経幹から下腸間膜動脈(IMA)近傍,大動脈前面,大動脈分岐部,岬角,骨盤神経叢を通過して精嚢腺,前立腺,尿道,膀胱に至る.これらの経路のうちどこで損傷しても射精機能障害が発生するが,特にIMAを結紮,切除する時には神経を損傷しやすい.そこで腰部交感神経とIMAの最短距離を測定すると,右では0〜2mm25.6%,3〜9mm5.1%,10mm以上66.2%であった.左では0〜2mm28.2%,3〜9mm25.6%,10mm以上46.2%であった.また左右の腰部交感神経の合流形式を分類すると,IMA直下型20.5%,大動脈前面型35.9%,大動脈分岐部尾側型41.0%,合流なし型2.6%であった.これらを考慮して自律神経温存術を行ったところ術後の射精機能は91%に維持された.

経肛門的結腸肛門吻合術とその成績

著者: 寺本龍生 ,   渡邊昌彦 ,   北島政樹

ページ範囲:P.747 - P.752

 近年,器械吻合法の導入により下部直腸癌でも括約筋温存手術(SPO)が容易に行われるようになった.しかしながら安全な肛門側断端を確保するためには歯状線で切離しなければならない症例では器械吻合を断念せざるをえない.このような症例に対してあらかじめ経肛門的に直視下に肛門側断端を離断しておき,直腸切除後に経肛門的結腸肛門吻合術を施行するPIDCA:peranalintersphincteric rectal dissection and coloanal anastomosisが適応とされる.本術式は解剖生理学的に括約筋を温存できる限界の術式である.

下部直腸癌に対するJ型結腸嚢肛門吻合術とその治療成績

著者: 須田武保 ,   島村公年 ,   山崎俊幸 ,   岡本春彦 ,   酒井靖夫 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.753 - P.758

 下部直腸癌に対して施行された低位前方切除,結腸(嚢)肛門吻合術54例(J型44,St型10)について検討した.5年生存率はDukes分類でみて,A 100%,B 82%,C 69%であった.術後再発率は全体では18.5%,局所再発では5.6%であった.術後1日平均排便回数は時間の経過とともに減少したが,常にJ型のほうがSt型より少なくなっていた.術後1年以上経過例を対象とした肛門内圧検査では,J型に比べSt型では括約筋強化により便貯留能を補うという適応が起こっていた.アンケートでは排便機能に対して80%以上がまあまあ満足以上と答えた.以上より本術式では適応を厳密にすることで根治性が損なわれることはなく,排便状況,肛門内圧検査からみても概ね満足できる結果とQOLが得られていた.

低侵襲経肛門的局所切除術(MITAS)とその成績

著者: 前田耕太郎 ,   丸田守人 ,   内海俊明 ,   滝沢健次郎 ,   升森宏次

ページ範囲:P.759 - P.764

 肛門機能温存術式としての低侵襲経肛門的局所切除術(minimally invasive transanal surgery:MITAS)の手技の要点と成績を概説した.MITASは直腸の局所切除術式として肛門機能温存に有利なだけでなく,排便機能の温存にも有利である.さらに追加切除が必要と考えられた場合でも,MITASでは自動縫合器を用いて直腸を切開することなく縫合しているため周囲組織の炎症反応が少なく,肛門括約筋温存手術が容易に施行できる利点がある.MITASはどの部位の直腸にも,出血量や手術時間もより少なく,短く施行でき,経口摂取も早期に可能で,退院までの日数も従来より短縮でき,合併症も少ない,機能温存に有利なminimally invasiveな術式である.

直腸癌に対するendoluminal surgery:経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー

著者: 金平永二 ,   大村健二 ,   木下敬弘 ,   石田善敬 ,   海東恵子 ,   渡辺洋宇

ページ範囲:P.765 - P.769

 経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEM)は低侵襲直腸局所切除であり,内視鏡的粘膜切除術(EMR)と従来の手術治療の間を埋める選択肢である.本術式では専用に開発された手術用直腸鏡を肛門から挿入し,内視鏡の視野の下,外科的一括切除と縫合を行う.
 欧米からは多くの臨床報告があり,本術式の優れた機能温存性と,従来の治療法と比較した場合の優位性が明らかになってきた.TEMは本邦においても1992年以降急速に普及しているが,今後経済面や技術教育面での問題が解決されなければならない.

カラーグラフ 消化器の機能温存・再建手術・10

空腸パウチ間置(JPI)による幽門側切除後の代用胃作製手術

著者: 三輪晃一

ページ範囲:P.715 - P.719

はじめに
 幽門側切除術の再建はBillroth I法が一般的である.しかし,術後5年以上経過した人々へのアンケート調査1)によると,癌再発の不安からは解放されたものの,少なくとも3分の2の人々は胃切除術を原因とする何らかの愁訴に悩まされている.とりわけ,術前に比べての“1回の食事量の減少”が問題で,“食事の内容に気をつける”,“時間をかける”,“間食を増やす”など,患者それぞれの工夫で対処しているのが現状である.
 筆者らはこのような“小胃症状”への予防策として,1989年残胃と十二指腸の間に口側は二重腸管によるパウチ,肛門側は順蠕動導管で構成される空腸脚を間置する再建法を考案し,jejunal pouchinterposition(JPI)と名づけ,Billroth I法に代わる再建法としてこれまで用いてきた1〜3).この再建法はパウチで残胃の貯留能を補い,順蠕動導管にダンピングと十二指腸胃逆流を予防する幽門の役目を期待するところに特徴がある(図1).

医療保険指導室より・3

術中使用薬剤・材料—知っておきたい保険適用

著者: 永田徹

ページ範囲:P.771 - P.775

はじめに
 近年では,あらゆる分野における外科手術において,手術手技や薬剤・材料の開発進歩により,術後成績は格段の向上が得られるようになった.しかし,その反面,高額な薬剤や材料の多用による医療費の増大が問題になっていることも事実である.
 現在のわが国の医療は,本誌4月号(54:506-510)でも記述されているように,出来高払いの保険制度を原則としているが,そのルールの中に,ある“しばり”があることも理解した上で治療に当たらなければならない.

病院めぐり

—財団法人太田綜合病院附属—太田西ノ内病院外科

著者: 石井芳正

ページ範囲:P.776 - P.776

 当院は福島県のほぼ中央部に位置する人口30万人の商都である郡山市にあり,明治28年に開設されました.その後増改築を繰り返し,また附属病院(太田記念病院:病床数100床,太田熱海病院:病床数688床)・関連施設を新設する一方,新たに平成元年9月に診療科28,病床数1,000床,医師総数120名余の近代的な当地区の基幹病院としてオープンしました.特に急性期疾患・高度医療に対応するために救命救急センターを有する高機能総合病院としての役割を担っており,厚生省の臨床研修指定病院をはじめとして各学会の認定施設となっております.
 さて外科は小児外科(新潟大学),呼吸器外科(東北大学),心臓血管外科(昭和大学)が別に独立しており,われわれ一般・消化器外科は高橋正泰部長(福島県立医科大学第2外科),山崎繁部長(東京医科歯科大学第1外科),太田一寿部長(新潟大学外科)を中心に,石井(福島医大),堀田(東京医科歯科大),飯田(東京医科歯科大),中山(福島医大)の7名の常勤医と福島医大第2外科および東京医科歯科大第1外科という2つの全く異なった医局から8名の非常勤医師を派遣していただき,計15名で1つの外科として診療を行っております.外科の病棟はいずれも混合病棟ですが3病棟あり,3人の部長がそれぞれを統括し,手術などは疾患別に編成されるという体制をとっています.

天和会松田病院外科

著者: 松田忠和

ページ範囲:P.777 - P.777

 当院は古都,岡山県倉敷市の美観地区と最近完成したチボリ公園の中間に位置し,JR倉敷駅より徒歩5分の利便の地にありながら,街中とは思えぬ閑静な環境にあります.昭和30年12月に院長松田和雄が,岡山市の榊原病院(当時故榊原亨院長先生,現心臓病センター榊原病院)より外科松田病院として当地で開設し,その後増改築を繰り返し164床となり,さらに昭和62年に全面新築を行い現在に至っております.当院の法人名「天和」は故榊原亨先生より贈られた言葉で,人事を尽くして天命を待ち,職員全員がお互い和して病気に立ち向かいなさいという意味で,院内各部署に院是として掲示されています.
 現在の診療科は,外科,内科,整形外科,脳神経外科,泌尿器科,麻酔科の外科系主体で,外科(消化器外科)は病床数50〜60床で運営しております.当倉敷市は人口43万人ほどの地方都市に,倉敷中央病院,川崎医科大学付属病院という1,000床以上の巨大施設が2か所,200〜300床の中規模施設が5か所あり現在の厳しい医療情勢の下,医療施設の激甚な競争地域でもあり,当院のような小規模病院が生き残るためには,ある意味での専門化が必要と考えられます.そのため,昭和60年消化器外科部長として松田が就任以降,肝胆膵疾患の診断から手術,さらには終末期医療までを中核に据えて一貫した診療を行うという特色を出しております.

私の工夫—手術・処置・手順

腹腔穿刺と腹腔ドレナージの工夫

著者: 渡部脩 ,   岩瀬博之

ページ範囲:P.778 - P.779

 腹腔穿刺は古くから簡便に行われている検査および処置法である.最近では超音波検査やCT検査で腹水の貯留部位を確認できるので安全に行え,出血や腸管の損傷などの合併症もかなり減少しているようである.しかしわれわれ消化器外科医にとっては,消化器癌の増加に伴って腹水に苦しむ患者に遭遇する機会がふえ,かつその患者は術後のあるいは再発の腹腔内癒着を伴うことが多い,従来より腹腔内穿刺部位としてはfour quad-rant tap, Monro-Richter線の外側1/3,McBurney,下腹部正中線の下1/3などが知られているが,当然これらの部位では困難なこともある.そこでわれわれは次のような方法で腹腔内穿刺とドレナージを行っている.まず超音波ではecho free spaceとして,腹部CTではlow densityarea(図1)1)としての腹水貯留を腹壁と右肝側面との間に確認する.患者を仰臥位とし,右腕を頭側に挙上する.穿刺部位は通常第10肋間,中腋窩線上で行っているが,腹水の貯留量や部位,月刊蔵の腫大,萎縮,形態などにより適宜変えている.穿刺部位が決まったら,皮膚を消毒し,局所麻酔を施し,皮膚に数ミリ切開を加え,外筒チューブを装着した穿刺針でやや頭側に向かって穿刺し,腹水が吸引確認できたら外筒チューブを挿入し,肝側面に沿って横隔膜下面に向かって進める.次いで3方括栓を介して排液バッグに接続する.

臨床外科交見室

Where is McBurney's point?

著者: 佐藤紀

ページ範囲:P.780 - P.781

 現在でこそ急性虫垂炎を重篤な疾患と考える人は稀で,虫垂切除術の死亡率もほとんどゼロに近く,外科を志す研修医が真っ先に執刀させてもらう手術となっている.しかしながら,手術療法が導入される以前の急性虫垂炎の死亡率はきわめて高く,50%に及んでいた1).急性虫垂炎に対して最初に虫垂切除術を行ったのは英国の外科医,Lawson Taitで1880年のことであったが1),この分野で最も名の知られているのはMcBurneyであろう.彼はMcBurney点,McBurney切開にその名を残している.しかし,McBurney点とはいったいどこなのであろうか.
 先日,学生のプリントを見ていたところ,「McBurney点は右の上前腸骨棘と臍を結ぶ線の中点である」との記載が眼にとまった.これは昔習ったのと違うぞ,と思いながら手近にあった教科書を調べてみるとその出典はすぐに明らかとなった.わが国で広く使われているであろう内科診断学の教科書であった2).確かにMcBurney点は上前腸骨棘と臍を結ぶ線(筆者注:臍棘線,あるいはMonro−Richiter線という)の中点であると書いてある.そこで最近わが国で出版された医学事典,内科,外科の教科書をいくつか調べてみると表のような結果となった.

メディカルエッセー 『航跡』・33

米国大学病院で外科教授になる過程(3)

著者: 木村健

ページ範囲:P.782 - P.783

 少々話が外れるが,1996年夏,タイガー・ウッズは全米アマチュアゴルフ選手権で優勝したあと,プロへの転向を宣言した.その2か月後には米国プロゴルファー協会のツアーで優勝をさらったのであるから世間はびっくりした.翌年4月のマスターズでは2位に12ストロークの大差をつけて優勝,グリーンジャケットの栄に輝いた.
 米国プロゴルファー協会の規定によると,プロゴルファーになるには研修過程を経て資格テストに合格し,はじめてツアーに参加できるそうだ.同じ頃,ジャック・ニクラウスの息子がプロテストに挑んだが合格できなかった.研修過程を踏まず,プロテストも受けなかったタイガーが,プロゴルファーの資格を得たのは何故か?アメリカの各種団体には,必ず例外規定が設けられている.例外規定がない場合には,少くとも例外規定を作ることが可能であると定められている.タイガーがプロになったのは,規定の研修を終えプロテストに合格するという過程を経なくとも,理事会が承認し会員から反論がなければプロの資格を与えてもよいという例外規定があったからだ.

外科医に必要な耳鼻咽喉科common diseaseの知識・13

頸部膿瘍

著者: 岡本和人

ページ範囲:P.784 - P.785

疾患の概念
 頸部膿瘍,特に深頸部膿瘍は病状進行の速さと重症度において緊急の診断,治療を要する疾患である.その頻度は高いものではなく,筆者の病院でも緊急手術で頸部外切開にまで至る症例は年間1〜4件である.しかし膿瘍前状態(pre-abscess)にある頭頸部領域の感染症の頻度は決して少なくない(表1).
 また頸部膿瘍は往々にして原因となる感染症に対してすでに治療が先行していることが多い.抗生剤の起因菌に対する感受性,患者の易感染性(糖尿病,人工透析中など)の要因で治療効果が上がりにくい時に重篤な深頸部膿瘍に進展する例が多い.膿瘍の形成には嫌気性菌の混合感染が多くみられる(表2).

外科医に必要な整形外科common diseaseの知識・1

骨折

著者: 薄井正道

ページ範囲:P.786 - P.787

疾患の概念
 骨折とは骨組織が外力によってある部の連絡を絶たれた状態をいう.外力が骨の抗力に勝った場合に発生する.骨に何らかの脆弱性があるために通常では生じないほどの外力で生じる骨折を病的骨折という(図a).また,正常の骨に通常では生じないほどの外力が繰り返し加わって生じる骨折を疲労骨折という.軟部組織が損傷し骨折部が外界と交通している開放骨折は,外界と交通のない皮下骨折に比べて治療は難しい.

臨床報告・1

11回の切除を行った後腹膜脂肪肉腫の1例

著者: 郷右近祐司 ,   神保雅幸 ,   関根義人 ,   遠藤忠雄

ページ範囲:P.793 - P.796

はじめに
 後腹膜脂肪肉腫は外科的切除が治療の基本である疾患であるが,切除後の局所再発率が高く,化学療法も効果に乏しいため,再切除を余儀なくされる場合1)が多い.今回筆者らは初回手術時より7年間に11回の手術を行った後腹膜脂肪肉腫の1例を経験したので報告する.

胃癌術後の異時性孤立性脾転移の1切除例

著者: 高橋祐 ,   長谷川洋 ,   小木曽清二 ,   塩見正哉 ,   籾山正人 ,   太平周作

ページ範囲:P.797 - P.800

はじめに
 癌の脾臓転移は複数の転移巣を伴った末期状態で認められる場合がほとんどで,孤立性に脾臓転移をきたすことはきわめて稀である1)
 今回筆者らは,進行胃癌術後に孤立性脾転移が出現し,切除しえた症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

痔出血で高度の貧血を呈した先天性第XI因子欠乏症の1例

著者: 安永正浩 ,   大熊利之 ,   本郷弘昭 ,   荒瀬正信

ページ範囲:P.801 - P.803

はじめに
 先天性第XI因子欠乏症は血友病Cとも呼ばれ,1953年Rosenthalら1)によって初めて報告された常染色体劣性遺伝の非常に稀な疾患である.発生頻度は血友病群の1〜7%とされており2),本邦では松岡ら3)以来まだ40数家系しか報告されておらず,その手術報告例も少ない.消化器外科領域では小林ら4)の胆嚢摘出術と作左部ら5)の胃癌根治術の報告例がある.今回筆者らは,繰り返す痔出血による高度の貧血を契機に発見された先天性第XI因子欠乏症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

胸腺カルチノイドに合併した家族性上皮小体機能亢進症の1例

著者: 野崎功雄 ,   宗淳一 ,   土井原博義 ,   平井隆二 ,   安藤陽夫 ,   清水信義

ページ範囲:P.805 - P.809

はじめに
 胸腺カルチノイドは全カルチノイドの6.2%を占める稀な疾患であるが,クッシング症候群を合併したり,多発性内分泌腺腫症(multiple endocrineneoplasia:以下,MEN)に合併することが知られている.
 今回筆者らはMEN 1型1人を含む上皮小体機能亢進症の家系で,上皮小体機能亢進症と胸腺カルチノイドのリンパ節再発をきたした症例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

盲腸後窩ヘルニアの1例

著者: 岩瀬博之 ,   鈴木義真 ,   新村光司 ,   渡部脩

ページ範囲:P.811 - P.814

はじめに
 内ヘルニア,なかでも盲腸後窩ヘルニアは稀である.今回,亜イレウスで発症し,保存的に軽快後,精査にて診断,手術を施行した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

早期虫垂癌が要因となつた完全型虫垂重積症の1例

著者: 斎藤隆道 ,   浮草実 ,   亥埜恵一 ,   井ノ本琢也 ,   鍛利幸 ,   東山洋 ,   粟根弘治

ページ範囲:P.815 - P.818

はじめに
 虫垂重積症は本邦での報告例が現在までに80例に満たない非常に稀な疾患である1)が,筆者らは最近,早期虫垂癌がその病態生理学的要因と考えられ,虫垂が完全に盲腸内に翻転する完全型虫垂重積症を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

大腸結核に併存した大腸癌の1例—本邦報告例の検討

著者: 中尾篤典 ,   藤澤憲司 ,   三村久 ,   江澤和彦 ,   磯崎博司 ,   田中紀章

ページ範囲:P.819 - P.821

はじめに
 大腸癌と大腸結核の併存は比較的稀で,本邦では60例足らずが報告されている2〜9)にすぎない.今回筆者らは大腸結核に併存した大腸癌の1手術例を経験したので,両者の関係につき文献的考察を加えて報告する.

進行乳癌症例に対する経橈骨動脈的アプローチによる超選択的動注療法の試み

著者: 大島秀紀 ,   山城一弘 ,   山本雅明 ,   平田公一

ページ範囲:P.823 - P.827

はじめに
 進行乳癌に対し動注療法は局所コントロールの点できわめて有効な治療法として知られている1)が,従来法でのカテーテル設置では侵襲,動作制限などの点が問題点として指摘されている.今回筆者らは進行乳癌症例に対し経橈骨動脈的アプローチ(trans-radial-arterial approach:以下,TRA)による超選択的動注療法を試みたところ,良好な結果を得たので報告する.

胆管,胃,膵に同時発生した三重複癌の1切除例

著者: 高橋由至 ,   恩田昌彦 ,   松田健 ,   内田英二 ,   田尻孝 ,   山下精彦

ページ範囲:P.829 - P.832

はじめに
 近年,悪性腫瘍に対する診断技術,治療の進歩および社会の高齢化とともに,いわゆる重複癌(primary multiple malignant tumors)1)の報告例も年々増加傾向にある2〜4)が,胆管,胃,膵に発生した同時性三重複癌は本邦において未だ文献的な報告はない.今回1切除例を紹介し,若干の文献的考察も加え報告する.

イレウス管のバルーン部による空腸穿孔の1例

著者: 澤井照光 ,   辻孝 ,   黒崎伸子 ,   安武亨 ,   中越享 ,   綾部公懿

ページ範囲:P.833 - P.836

はじめに
 臨床外科医にとって日常的に遭遇する機会の多いイレウスに対し,イレウス管は保存的治療の中心として有用であるだけでなく,閉塞部位の質的診断を行う手段としても重要な役割を果たしている.また,チューブ自体の材質や形状についても改良が進み,最近では使用する上で困難性を感じることはほとんどなくなった.しかしながら,その便利さの反面,稀ではあるが重篤な合併症をきたす可能性が指摘されている1,2).最近,筆者らはイレウス管のバルーンによる持続的圧迫から空腸に壊死を生じて,穿孔性腹膜炎をきたしたと考えられた1症例を経験したので報告する.

臨床報告・2

フルコナゾール直接注入が奏効した術後腹腔内膿瘍の1例

著者: 津田倫樹 ,   宇都宮勝之 ,   小林秀紀 ,   渡邉千之

ページ範囲:P.837 - P.838

はじめに
 消化器外科領域における深在性真菌症は,担癌患者などのimmunocompromised hostにおける術後感染症として近年益々重要な問題となっている1).その1つとして術後腹腔内膿瘍があり,しばしばその治療に難渋する場合がある.今回筆者らは胃切除後に発生した真菌細菌混合性腹腔内膿瘍に対し,ドレーンよりフルコナゾール(以下,FLCZ)を直接注入して奏効した1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら