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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科54巻7号

1999年07月発行

雑誌目次

特集 膵臓外科に対するチャレンジ:切離・吻合の工夫 切離

用手切離:区域切除あるいは部分切除

著者: 高田忠敬

ページ範囲:P.853 - P.857

 十二指腸温存膵頭全切除術においては,十二指腸の血流保持が最も大切である.Kocher授動術を行わないことによるmesoduodenal vesselの温存,そして後上膵十二指腸動脈の温存を心掛ける.膵中央切除では,尾側膵管と空腸の粘膜縫合が術後の膵液漏防止に重要である.腹側膵切除は膵頭下部切除になるが,注意しなければならないことはSantorini管からの下頭枝の損傷による膵液漏である.そのため術中膵管造影によるチェックが大切となる.膵鈎状突起切除では,膵管ステントがWirsung管損傷の防止に役立つ.

器械による切離:TLを用いた膵切離

著者: 中邑光夫 ,   矢原昇 ,   山本光太郎 ,   上野富雄 ,   岡正朗

ページ範囲:P.859 - P.864

 近年,膵切離に器械吻合が使用されるようになり,当科でも1990年から自動吻合器による膵切離を導入している.本稿では,膵切離に用いる各種自動吻合器の特徴を紹介した.膵切離の手技上最も注意しなければならない点は,膵実質の裂傷であり,この対策として器械をセッティングして締め込んでいく際に,できる限りゆっくりと均一に操作することが重要である.この点から膵実質の硬さや厚みに応じて,切離する厚みを設定することが可能なTLを好んで使用している.また,腹腔鏡下の膵体尾部切除に用いるエンドカッターについて言及し,当科における臨床成績について紹介した.

器械による切離:GIA/ENDOGIA

著者: 吉田和彦 ,   藤岡秀一 ,   三澤健之 ,   村井隆三 ,   畝村泰樹 ,   山崎洋次

ページ範囲:P.865 - P.868

 開腹ならびに腹腔鏡下でのlinear stapler(GIA/ENDOGIA)を用いた膵切離の実際について概説した.膵臓の特徴を理解した上でlinear staplerを使用した場合には,従来の用手法に比較して,膵瘻の発生が減少し,出血を来さず,簡便かつ迅速に膵切離を施行できる.Linear staplerを用いた膵切離は,用手法に代わる手技として定着するものと考える.

器械による切離:超音波外科吸引装置

著者: 鈴木康之 ,   黒田嘉和

ページ範囲:P.869 - P.872

 膵尾側切除術後の膵液瘻発生予防を目的に,超音波外科吸引装置(CUSA)を使用し,良好な結果が得られた.CUSAにて膵実質を破砕しつつ,出現する主膵管,分枝膵管,血管を丁寧に結紮切離していく.膵断端の虚血,挫滅の原因となる膵実質縫合閉鎖は行わない.最近では膵頭十二指腸切除術でもCUSAにて膵切離を行っている.この際主膵管は1cm以上長く残し,再建は独自の膵管嵌入法を考案し,これまで6例に施行したが,膵液瘻や膵腸吻合部縫合不全は全く認めていない.CUSAによる膵の切離,再建は容易かつ安全性が高く,特に合併症発生頻度の高い,線維化や膵管拡張のない正常膵の切離には最適の手法である.

器械による切離:バイポーラーシザーズによる膵切離

著者: 安藤秀明 ,   田中淳一 ,   小山研二

ページ範囲:P.873 - P.877

 バイポーラーシザーズはハサミの刃端間に高周波電流を流して,凝固しながら切開していく器械である.膵頭十二指腸切除術における膵切離3例に使用した.実質臓器での応用例が少ないため肝切離実験で実質臓器の切離条件を検討し,0.5cm/秒,18wattで膵切離を行い,術中出血なく安全に膵切離を行い得た.バイポーラー凝固のため,刃間のみの凝固で周囲組織への障害が少なく,切離面に対する障害も少なかったため,主膵管の露出も容易であった.バイポーラーシザーズは他の器械に比較して,周囲組織および切離面に低侵襲であり,切離面が吻合部となる膵頭十二指腸切除における膵切離には適した器械と考えた.

吻合

膵腸吻合:粘膜吻合

著者: 今村正之 ,   細谷亮

ページ範囲:P.879 - P.884

 膵空腸吻合は,縫合不全を起こさぬように外科医が細心の注意を払って手術する膵頭十二指腸切除後の再建術の最大の要点である.尾側膵が線維化がなく膵外分泌機能の損なわれていない状態では膵空腸吻合縫合不全の発生頻度が高い.われわれは,以前は膵管非拡張例に完全チューブ外瘻法を,尾側膵管拡張例では膵管空腸粘膜吻合法を選択していた.最近では,尾側膵管の状態にかかわらず全例に膵管空腸粘膜吻合法を施行しているので,現在行っている膵管空腸粘膜吻合による膵空腸吻合法の手術手技の実際をできるだけ具体的に述べ,その手術成績を示した.いまだ症例数が少ないが,膵管空腸粘膜吻合法は安全な方法で,尾側膵正常例にも適応できると考える.

膵腸吻合:膵液完全ドレナージ法

著者: 高橋伸 ,   相浦浩一 ,   星本相淳 ,   鈴木慶一 ,   早津成夫 ,   斉藤淳一 ,   北島政樹

ページ範囲:P.885 - P.890

 われわれが行っている,膵空腸吻合における節付きチューブを用いた膵液完全ドレナージ法における,膵切離,膵管の処理と空腸吻合について手術手技を中心に述べた.さらに,腹腔ドレーンの入れ方,膵液漏となったときの治療法についても言及した.膵液完全ドレナージ法の成績を膵管粘膜吻合法と比較し,早期合併症として膵液漏,腹腔内出血の発生頻度,晩期合併症として膵萎縮と,インシュリンを必要とする糖尿病の発生頻度について検討した.

膵腸吻合:密着吻合法

著者: 柿田章 ,   吉田宗紀

ページ範囲:P.891 - P.896

 われわれの行っている膵空腸密着吻合の手技と成績について述べた.合併症のない理想的な膵消化管吻合の手技上の必要条件とは,1)消化管と膵断端の確実な固定,2)膵断端の血流保持,3)膵液の完全ドレナージ,4)膵断端の完全被覆と考えらる.本術式はこれを満たすべく考案された.その手順は,1)膵管チューブの挿入,2)膵管と空腸粘膜の縫合固定,3)膵実質と空腸壁の貫通糸による密着縫合である.1990年からの連続162例の膵空腸吻合に臨床的に問題となる合併症は全くなく,本法はきわめて安全性の高い術式である.また,手技的に簡便でどんな技量の術者にも短時間で行える上,正常から慢性膵炎までどんな状態の膵にも応用が可能である.これを機会に本術式が広く普及することを期待している.

膵胃吻合(嵌入法+膵管胃粘膜吻合法)—特に膵管非拡張例に対する工夫

著者: 俵藤正信 ,   永井秀雄 ,   塚原宗俊 ,   吉澤浩次 ,   佐久間康成 ,   栗原克己 ,   大木準 ,   近藤泰雄 ,   安田寿彦 ,   笠原小五郎

ページ範囲:P.897 - P.903

 膵頭十二指腸切除後の膵消化管吻合において,残膵が正常で膵管非拡張例に対しわれわれは膵胃吻合(嵌入法+膵管胃粘膜吻合法)を施行してきた.この膵胃吻合は胃後壁を切開し,膵断端を胃内に誘導後,胃内腔から膵実質を愛護的に縫合し確実な膵管胃粘膜吻合が可能な方法である.PPPDでは胃の前後壁を切開して上記吻合を行うが,胃切例では胃切離断端を開放して胃後壁と膵との吻合を行う.短期成績をみると,利点として縫合不全の頻度が少なくかつ縫合不全の重症化がないこと,欠点として術後胃内容停滞が高頻度であることが挙げられる.長期成績は,膵管の開存性が問題となる.概ね良好であるが,少数例に主膵管拡張が認められた.それには縫合不全,膵断端の血流,縫合針糸の関与が考えられる.

膵管膵管吻合

著者: 早川直和 ,   山本英夫 ,   川端康次 ,   二村雄次

ページ範囲:P.905 - P.908

 膵管膵管吻合は一部の外傷性膵断裂に用いられてきた術式である.自験例(11歳,男児,主膵管の離断を伴う外傷性完全膵断裂に対して受傷後4日目に主膵管再建を行い良好な経過であった)を呈示し術式の要点について述べた.そのポイントは手術時期,膵管膵管縫合法,経十二指腸,経胃的外瘻による膵液ドレナージ法である.膵管膵管吻合は挫滅の少ない完全膵断裂例にもっとも良い適応と考えられる.その他には症例は限られるが,切除範囲が少なく,主膵管離断をともなう膵切除後の再建にも応用できるものと考えられる.膵温存の観点からは優れた術式であり,状況に応じてチャレンジすべきである.

切離・吻合—膵の用手切離と膵胃吻合の工夫

著者: 木村理

ページ範囲:P.909 - P.913

 十二指腸温存膵頭切除術では膵の切離は膵体部と膵頭部の2か所になる.膵体部実質の切離はメスで行い,膵実質内の血管から出血がみられた場合にその部分をZ縫合する.主膵管は膵実質の切離線で切離する.膵頭部の切離は膵実質を少しずつ小児用ケリーですくって結紮・切離し,できる限りすべての小膵管を結紮するように施行する.膵断端を閉じる方向に結節縫合を掛ける.膵胃吻合法は嵌入法と粘膜吻合法を併せた方法である.まず「全層縫合」,つまり膵前面の実質と穴の開いた胃の口側部分の壁の全層との縫合を行う.主膵管のある部では主膵管と膵実質を合わせて掛ける.次いで「漿膜筋層縫合」,つまり膵の漿膜および実質と胃の漿膜筋層縫合を施行する.この方法の利点は,主膵管が開くような運針であり,膵実質切離面は胃漿膜側で確実に覆われ死腔は存在しなくなることである.いずれにしろ膵実質を壊さないようにするための運針と糸結びが最も重要である.

腹腔鏡補助下膵頭十二指腸切除術

著者: 宇山一朗 ,   杉岡篤 ,   小森義之 ,   松井英男 ,   藤田順子 ,   曽我良平 ,   若山敦司 ,   岡本喜一郎 ,   大山晃弘 ,   蓮見昭武 ,   高原哲也 ,   飯田修平

ページ範囲:P.915 - P.918

 膵頭十二指腸切除術は,肝十二指腸間膜内リンパ節の郭清や,複雑な再建を必要とするため,腹腔鏡下手術はほとんど施行されていない.われわれは,気腹下操作と,小開腹+腹壁吊り上げ法を併用し,リンパ節郭清を伴った腹腔鏡補助下膵頭十二指腸切除術を施行した.施行術式は,標準的膵頭十二指腸切除が2例,幽門輪温存膵頭十二指腸切除が2例である.術後膵液瘻は1例もなく,幽門輪温存術の1例に胃内容停滞症状を認めたが,保存的に軽快した.術後疼痛は軽度であり,全例術後2日目までに離床し,術後4日目から経口摂取が開始可能であった.すべての操作を腹腔鏡下に行うことは,現時点では手技的に困難であるが,腹腔鏡補助下には膵頭十二指腸切除は可能であり,低侵襲な手技と思われる.

カラーグラフ 消化器の機能温存・再建手術・11

噴門側胃切除後のJ-pouch間置による再建術

著者: 竹下公矢 ,   関田吉久 ,   佐伯伊知郎 ,   林政澤 ,   本田徹 ,   谷雅夫 ,   斎藤直也 ,   岩井武尚

ページ範囲:P.845 - P.851

はじめに
 従来,胃上部早期癌症例ではその根治性を求めてD2リンパ節郭清を伴う胃全摘術が採用されることが多かった.しかし,最近では全摘術後に逆流性食道炎,ダンピング症候群,栄養障害など様々なQOLの障害が発生することから,なるべく臓器や機能を温存する種々の術式が考案,実施されるようになってきた.筆者らも1994年より噴門側切除後,食道と残胃の間に二重空腸pouchを間置する術式を採用している1〜4).そしてその際,より確実な側側吻合と止血操作を行うため,種々の工夫を加えている.本論文では筆者らの手術術式とその主な術後成績について述べる.

私の工夫—手術・処置・手順

硬膜外麻酔用インフュージョンポンプを用いた四肢動脈閉塞患者に対するProstaglandin E1動注療法の工夫

著者: 谷保直仁 ,   秋山一也 ,   高沢有史 ,   佐藤宏明

ページ範囲:P.920 - P.921

はじめに
 四肢末梢の潰瘍・疼痛・冷感などを訴える動脈閉塞による指趾虚血患者に対し,ProstaglandinE1製剤動注療法の効果は確立されたものとなっている1).しかし,動脈内投与については手技上の煩雑さ,投与中患者の行動制限,高齢者の合併症予防など,投与方法の限界が存在する.そこで今回われわれは,患側の動脈中枢側に動脈圧測定用のカテーテル・硬膜外麻酔用ポンプを使用し,持続動注療法を試み良好な結果を得たので報告する.

病院めぐり

米沢市立病院外科

著者: 北村正敏

ページ範囲:P.922 - P.922

 独眼竜伊達正宗の生まれ故郷であり,名君上杉鷹山を生んだ上杉の城下町米沢市は,山形県県南に位置する人口9万4,000人の歴史と出で湯の中核都市で,渓流釣りや冬のスキーのほか米沢牛が有名です.当院は最上川の上流,松川河畔に昭和60年3月に竣工した地上7階,診療科15,病床数460床(一般378床,精神科82床),医師数50名(麻酔科2名,放射線科2名常勤)を擁する基幹病院で,「優しさ」「良質」「公正」を医療理念に,地域中核病院として医療の質と患者サービスの向上に努めています.
 外科は1979年から福島医大第1外科,心臓血管外科および山形大第2外科の関連病院となり,渡辺興治副院長(S44卒)の下,北村(S47卒)を科長として,常勤医6名,派遣医1名の計7名のスタッフが消化管(鈴木),肝胆膵(菅野),肺・乳腺(今井),心血管(高野),鏡視下手術など一般消化器外科を中心に手術を行っています.専門外来に乳腺,血管クリニックがあります.

岩手県立久慈病院外科

著者: 阿部正

ページ範囲:P.923 - P.923

 久慈市は,日本一広い岩手県の北東部に位置し,陸中海岸国立公園北端の街で風光明媚な小袖海岸,久慈琥珀,小久慈焼,三船九蔵柔聖などでご存じの方もおられると思います.
 岩手県立久慈病院は昭和10年4月九戸病院として開設しましたが,昭和20年4月久慈大火で全焼,その後増改築を重ね,昭和32年8月岩手県立久慈病院と改称し,平成10年3月,県立病院ではじめて救命救急センターを併設して新築移転しました.診療圏としては久慈市ほか5町村を含め8万人弱で決して大きくはないのですが,総合病院は一つですので患者さんは集中してきます.病院は市の中心部からから北東へ1.5km位の所で,4階以上からは太平洋を望むことができます.病床数は358床で,内訳は一般330床,救命救急センター20床(ICU 6床含む),伝染8床です.診療科は19科で常勤医41名,主な医療設備としてはMRI,ヘリカルCT 2台,ライナック,ガンマカメラ,体外衝撃波結石破砕装置,皮膚治療レーザー装置などがあります.処方,注射,検査すべてのオーダリングシステムに加えて自動再来受付機や自動会計入金機が導入されています.平成10年度の1日平均外来患者数は約1,500人,病床利用率は約93%,夜間の救急外来患者数約35〜40人とかなり忙しい病院です.

外科医に必要な耳鼻咽喉科common diseaseの知識・14

いびき,睡眠時無呼吸症候群

著者: 飯田祐紀子

ページ範囲:P.924 - P.925

はじめに
 いびきは稀な症状ではないため,一般的に異常に大きくなければ病的と認識されないことが多い.耳鼻咽喉科を受診する場合,本人は意識しないが家族に指摘されて来ることがほとんどである.しかし,いびきは睡眠中の呼吸状態に何らかの異常があることを示す.いびきだけでなく睡眠時無呼吸症候群を生じると,全身に及ぼす影響も重大となる.

外科医に必要な整形外科common diseaseの知識・2

脱臼

著者: 青木光広

ページ範囲:P.926 - P.927

脱臼の概念1,3)
 脱臼とは一般に関節の外傷性脱臼(dislocationof joint)のことを意味している.関節包の裂傷部から相対する関節面のどちらか一方(一般に骨頭)が関節包外に脱出し,関節面が正常の位置関係を失うものを指す.相対する関節面で一部でも接触を保つ場合には亜脱臼(subluxation)という.
 脱臼は捻挫を引き起こす力以上の外力が加わり,関節に正常な可動範囲を越えた運動が強制された場合に発症する.通常は関節を制動する役割を担っている骨突起,関節臼蓋縁がてこの支点となって骨頭が関節裂隙から逸脱する.

医療保険指導室より・4

抗菌薬使用上の留意点

著者: 柴孝也

ページ範囲:P.929 - P.937

 Penicillin Gが登場して以来半世紀以上が経過した.この間新規の抗菌薬が相次いで開発され長い歴史の中では耐性菌の出現,新たにみられる副作用,相互作用など臨床上注目すべき事項が多くなってきている.今や抗菌薬の正しい知識の修得に基づく適正な抗菌薬療法の実施が要求されている.
 ここでは,門外官であるが外科領域における抗菌薬使用上の留意点について,下記のような視点から略記する.

臨床研究

胃十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療

著者: 能浦真吾 ,   中口和則 ,   古川順康 ,   陶文暁

ページ範囲:P.939 - P.943

はじめに
 従来より胃十二指腸潰瘍穿孔は絶対的手術適応とされ,主に広範囲胃切除術や迷走神経切離術が用いられてきた1).最近では,以前の胃切除術を中心とした術式にかわり,H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤を併用した単純閉鎖術や大網充填術のみならず,従来は例外的と考えられていた保存的治療が試みられるようになってきた2,3).当科でも以前は,胃十二指腸潰瘍穿孔に対しては広範囲胃切除術十腹腔ドレナージ術を基本としていたが,1995年1月より適応を選び,保存的治療を導入している.今回,われわれは自験例を検討し,その適応と成績について報告する.

手術手技

骨盤内臓器全摘術後の尿路変向術としてのneobladder(Studer変法)

著者: 山本俊二 ,   山中望 ,   前田敏樹 ,   内田靖之 ,   矢部慎一 ,   中野正人 ,   坂野茂 ,   山田裕二 ,   武中篤 ,   山本正之

ページ範囲:P.945 - P.949

はじめに
 尿路系臓器に浸潤した進行直腸癌に対する骨盤内臓器全摘術後1)の尿路変向術としては,回腸導管造設術や一側尿管皮膚瘻術などの失禁型尿路変向術が行われているが2),人工肛門とのdoublestomasとなり,患者のquality of life(QOL)は著しく低下する.
 一方,膀胱癌においては膀胱全摘術後に,尿道からの自然排尿が可能なneobladderが作製され,安定した成績が報告されている3).今回,骨盤内臓器全摘術後の尿路変向術としてStuder変法4)による膀胱再建術を施行した直腸癌症例を経験したので報告する.

臨床報告・1

用手的に整復された成人腸重積症の1例

著者: 梶原隆 ,   住友健三 ,   吉田順一 ,   山口浩 ,   池田真一 ,   松尾憲一

ページ範囲:P.951 - P.954

はじめに
 成人の腸重積症は何らかの器質的疾患に起因するものが多く1,2),特発性腸重積症は稀である.最近われわれは,成人の腸重積症に対して手術時に小腸造影を行い特発性と診断し得た1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

胸腔鏡下に摘出した胸壁神経鞘腫の1例

著者: 与儀喜邦 ,   佐野浩一郎 ,   上釜勇 ,   土持昭男 ,   末吉和宣 ,   瀬戸口敏明

ページ範囲:P.955 - P.958

はじめに
 従来,胸壁から発生した腫瘍に対しては主に開胸手術が行われていたが,最近では胸腔鏡下手術の適応症例が増加している.今回われわれは,胸腔鏡下に摘出した右胸壁由来の神経鞘腫の1例を経験したので報告する.

虚血性心疾患症例における大動脈内バルーンパンピング補助下拡大肝左葉切除術

著者: 黒﨑功 ,   畠山勝義 ,   佐藤好信 ,   坪野俊広 ,   大関一 ,   宮北靖

ページ範囲:P.959 - P.962

はじめに
 重篤な冠動脈疾患(IHD)症例に対する非心臓手術では,急性心筋梗塞の悪化・発生防止が術中術後管理の要点である.肝切除術でも,IHD併存症例は,非併存例に比較して有意に術後のIHD発生率が高いといわれている1).本報告では重篤なIHDを併存した胆管細胞癌に対し,大動脈内バルーンパンピング(IABP)補助下に拡大左葉切除を施行した症例を呈示し,若干の文献的考察を加えた.

虫垂粘液嚢腫軸捻転症の1例

著者: 福良清貴 ,   久保文武 ,   山筋忠 ,   愛甲孝

ページ範囲:P.963 - P.966

はじめに
 虫垂粘液嚢腫は本邦では約400例以上の報告1)があり決して稀な疾患ではない.しかしながら,急性腹症で発症する例は頻度が低く,日常臨床の場で遭遇することは比較的稀である.今回われわれは,当初,急性虫垂炎を疑われ,開腹して虫垂粘液嚢腫の軸捻転症と診断したきわめて稀な1症例を経験したので報告する.

膵頭十二指腸切除術に加え右半結腸切除術を施行した十二指腸平滑筋肉腫の1例

著者: 宮本康二 ,   山本哲也 ,   清水幸雄 ,   由良二郎 ,   林慎 ,   池田庸子 ,   玉木雅人

ページ範囲:P.967 - P.970

はじめに
 十二指腸平滑筋肉腫は比較的稀であるが,切除方針については一定の見解は無く,合併切除例の報告は少ない1)
 今回われわれは,手拳大の十二指腸平滑筋肉腫が結腸間膜に浸潤していたため,膵頭十二指腸切除術に加え右半結腸切除術を施行し,術後3年を経過して健在な症例を経験したので報告する.

吸引生検により回腸にインプランテーションした膀胱癌の1例

著者: 中川国利 ,   阿部永 ,   鈴木幸正 ,   豊島豊 ,   桃野哲 ,   佐々木陽平

ページ範囲:P.971 - P.974

はじめに
 膀胱癌はリンパ節,肺,肝,骨には転移を来すが,小腸への転移はきわめて稀である1).今回われわれは,経腹的骨盤内リンパ節吸引生検2)にて回腸にインプランテーションしたと推察される膀胱癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告・2

半月状線ヘルニアの1例

著者: 後藤田直人 ,   板野聡 ,   堀木貞幸 ,   寺田紀彦 ,   児玉雅治

ページ範囲:P.975 - P.977

はじめに
 半月状線ヘルニアは腹壁ヘルニアの一つで,腹横筋腱膜であるspigelian fasciaの脆弱化に起因する非常に稀な疾患である.今回われわれは,半月状線ヘルニアの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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