icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科54巻8号

1999年08月発行

雑誌目次

特集 3D画像診断の肝胆膵手術への応用

3D-CTを用いた肝の解剖

著者: 渡会伸治 ,   志沢良一 ,   金村栄秀 ,   田中邦哉 ,   遠藤格 ,   関戸仁 ,   嶋田紘

ページ範囲:P.993 - P.997

 3D-CT画像でどこまで肝の解剖がわかるか,どのような応用が可能かを紹介した.3D-CTは肝内門脈3次分枝,3mm径の肝静脈の描出が可能であった.これを用いると,肝静脈灌流領域によるS8の亜分類,中肝静脈灌流領域の切除術,さらにはP4やS4のドレナージ静脈の同定からS4bを温存した拡大右葉切除術などが可能となると考えられた.

肝区画切除に対する3DCTの有用性

著者: 大坪毅人 ,   高崎健 ,   本柳嘉信 ,   唐沢英偉

ページ範囲:P.999 - P.1003

 グリソン鞘の分岐形態は肝門部で左区域枝,中区域枝,右区域枝の3本の2次分枝に分かれ,肝内に分岐する.2次分枝以降の3次分枝の分岐形態は症例によりさまざまで,一定の規則を見出すことができない.
 従来の画像診断とくに腫瘍の存在部位診断については,2次元画像から腫瘍と脈管との位置関係を頭の中で3次元画像に組み立てる必要があった.特に3次分枝以降のグリソン鞘処理による区画切除では,腫瘍と脈管の位置関係の把握は従来の2次元画像では非常に複雑で困難であった.3DCTの登場により腫瘍と脈管の位置関係の立体的把握が容易に可能となり,肝区画切除においても,術前シミュレーションが可能となった.

肝・胆道外科における術中3DUSの応用

著者: 島津元秀 ,   若林剛 ,   田辺稔 ,   橋本浩 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1005 - P.1009

 肝臓外科における術中超音波検査は肝腫瘍の局在ならびに肝内脈管の走行を把握し,肝切除術を安全,正確かつ系統的に行うために必須の検査である.また胆道外科とくに肝門部胆管癌,胆嚢癌の手術においても進展度診断に有用であり,肝切除範囲,胆管切離部位の確認に用いられている.しかしながら熟練した検者以外には理解しにくく,画像の客観的評価や立体的把握が困難な場合がある.
 3D超音波画像(3DUS)はその欠点を軽減し,肝・胆道手術において腫瘍と脈管系の立体構築をリアルタイムに客観的に把握し,適切な脈管処理,surgical marginの確保を行うために有用な術中検査である.

肝切除におけるリアルタイム3次元血管撮影法(RSM−3D-DSA)の有用性

著者: 山口明浩 ,   谷口弘毅 ,   高利守 ,   國嶋憲 ,   山岸久一

ページ範囲:P.1011 - P.1017

 肝切除の術前血管造影検査に従来のDSA (digital subtraction angiography)による検査に加え,リアルタイムに3次元表示するリアルタイム3次元撮影法(realtime smoothed mask−3rd dimentiondigital subtraction angiography,島津製作所:以下,RSM−3D-DSA)を導入している.RSM−3D-DSAではモーションアーチファクトが解消され,微細な血管描出にも優れており,病変部の立体的な位置関係を具体的かつ詳細にリアルタイムに真の3次元画像として表示できる.この画像を見る者すべてが簡単に3次元イメージを共有認識でき,肝切除に際しては担癌区域の同定に始まり,その立体的位置と大きさの把握,また切離予定Glisson枝(門脈枝)の決定などが解剖学的位置関係に誤解が生まれずにディスカッションできるため,肝切除がより円滑に行える.

3D-CTおよびvirtual cholangioscopy(VCS)の胆嚢癌診断への応用

著者: 趙明浩 ,   岡住慎一 ,   高山亘 ,   竹田明彦 ,   岩崎好太郎 ,   笹川真一 ,   夏目俊之 ,   河野世章 ,   浅野武秀 ,   落合武徳

ページ範囲:P.1019 - P.1022

 選択的胆嚢動脈造影下CTのデータから胆嚢のdrainage veinの立体構築(3D-CT),およびvirtual cholangioscopyの作製を行った.胆嚢癌5例において合計12本の胆嚢静脈を明瞭に描出できた.肝内流入区域は5本がS4a,6本がS5,1本がS6であり,肝床部の浸潤傾向を示す癌に対しては,肝S4a,S5切除を基本術式とすることは合理的であると考えられた.さらに術前に胆嚢静脈の肝内流入領域を把握することは術式決定の有力な情報になりうることが示唆された.またvirtualcholangioscopyは隆起性病変4例,陥凹性病変1例をすべて表示することが可能であった.今後空間分解能の向上とともに胆道系の有用な検査になると考えられた.

胆道癌における術前画像診断としての3D-CTの有用性

著者: 鈴木正徳 ,   海野倫明 ,   遠藤公人 ,   片寄友 ,   児玉英鎌 ,   柿田徹也 ,   藤原耕 ,   松野正紀

ページ範囲:P.1023 - P.1029

 Helical CT技術とcomputer graphics技術の発達により,肝胆道系臓器における各種脈管の3D imagingは格段の進歩をみせており,分単位という短時間で画面上に多種類の構造物の同時描出も可能となった.さらにリアルタイムに画像を回転させることにより,腫瘍の存在範囲や血管浸潤範囲も把握しやすくなっている.術前に3D imageを作製した上で肝内脈管の分岐形態や腫瘍の浸潤範囲を詳細に検討し,血管と胆管の切離部位を決定することも可能な状況である.今後,手術に対する術前simulationのtoolとしての需要はさらに高まり,近い将来,手術のnavigationにも応用される形に発展していくものと思われる

MRCPによる胆膵疾患の診断

著者: 杉山政則 ,   泉里友文 ,   正木忠彦 ,   森俊幸 ,   跡見裕 ,   蜂屋順一

ページ範囲:P.1031 - P.1036

 MRCP(MR cholangiopancreatography)は膵胆道系を明瞭にかつ非侵襲的に描出できる検査法である.ERCPのように検者に特別な技術を要さない.正常例でもほぼ全例で主膵管,肝外胆管〜肝内胆管二次分枝が描出可能である.MRCPではERCPと異なり,狭窄・閉塞部の遠位側の情報が得られる.Billroth-Ⅱ法やRoux-en-Y吻合などの術後症例でも検査が容易である.膵胆道疾患の診断においてMRCPはERCPにほぼ匹敵する成績が得られている.

胆膵疾患に対する3次元管腔内超音波検査法(three dimensional intraductal ultrasonography:3D-IDUS)の応用

著者: 田中聖人 ,   中島正継 ,   安田健治郎 ,   趙栄済 ,   早雲孝信 ,   望月直美 ,   宇野耕治 ,   塚田圭子 ,   上田モオセ ,   宮田正年 ,   長谷川和範 ,   上野山義人 ,   酒田宗博 ,   河端秀明

ページ範囲:P.1037 - P.1047

 オリンパス光学社製の新しいシステムを用いて,胆膵疾患に対する3次元管腔内超音波検査法(3D-IDUS)の有用性を検討した.本システムは画像処理ユニット,超音波観測装置,3次元超音波プローブ駆動ユニット,3次元超音波プローブなどの機器で構成されており,胆膵管内に挿入した専用のプラスチックシース内をラジアル走査式超音波プローブが駆動ユニットによって機械的かつ連続的に進退することで行い,ラジアル画像とリニア画像の同時表示が可能になっている.施行方法はいずれも経口経乳頭的アプローチで行ったが,何らの合併症もなく安全に実施でき,良好な超音波画像が得られた.本システムの画像は3D-IDUSによる立体表示であるために,従来の超音波像に比べて胆膵領域の解剖学的把握が容易になり,胆膵疾患に対する新たな診断法としての発展が期待きれる.

カラーグラフ 消化器の機能温存・再建手術・12

噴門側胃切除後回盲部上行結腸間置法

著者: 坂本隆 ,   斎藤光和 ,   榊原年宏 ,   斎藤文良 ,   五箇猛一 ,   塚田一博

ページ範囲:P.985 - P.989

はじめに
 胃全摘あるいは噴門側胃切除が行われた場合には,噴門の逆流防止機構や胃体部の食物貯留能が失われ,胃切除術後後遺症として患者はしばしば逆流症状や無胃ないし小胃症状に悩まされることとなる.これに対し,数多くの再建方法が考案され,報告されてきたが,それぞれ一長一短があり,未だ決定的な方法がないのが現実である.
 胃全摘あるいは噴門側胃切除術後の再建方法に関する研究においては,逆流に対する対策とともに代用胃の作製が注目の的となっている.代用胃としては最近の自動縫合器および自動吻合器の発達,普及に伴って,空腸を用いたpouch形成術を試みている施設が多いと考えられる.

消化器疾患の総合画像診断

膵頭部癌の術前進展度診断

著者: 今泉俊秀 ,   原田信比古 ,   羽鳥隆 ,   福田晃 ,   高崎健

ページ範囲:P.1049 - P.1053

はじめに
 膵癌の切除率は後腹膜神経叢郭清や主要血管合併切除,広範リンパ節郭清などいわゆる拡大手術の導入によって向上したものの,生存率の向上には直結していないのが現状である.膵癌は切除しえても根治度AまたはBすなわち治癒切除が得られなければ,非切除症例とほぼ同等の転帰をたどることが知られている1).したがって,膵癌の外科治療においては術前に画像診断を駆使して進展度診断を正確に行い,手術の適応を決定することが重要である.本稿では浸潤性膵管癌の術前画像診断の進め方について,症例を供覧しつつ述べる.

病院めぐり

坂総合病院外科

著者: 阿南陽二

ページ範囲:P.1054 - P.1054

 JR仙石線で仙台駅から24分,下馬駅で降りると坂病院は目の前です.昔からの港町塩釜市を含む近隣2市3町と仙台市東部を合わせた,約25万人の地域が当院の診療圏です.
 坂総合病院は1912年,元軍医の坂定義が私立塩釜病院として開業したのに端を発し,1937年二代目院長坂猶興によって坂病院と改称されました(塩竃市醫師會史による).飢饉のときには「白馬にまたがる院長が米俵を配って歩いた」という伝説が残っていますが,貧困のために医療の恩恵に浴せない人々に尽くす姿勢は戦後も引き継がれ,「働くひとびとの医療機関」である全日本民主医療機関連合会(民医連)に加盟し現在に至っています.

星総合病院外科

著者: 野水整

ページ範囲:P.1055 - P.1055

 郡山市は人口33万を擁する福島県第一の都市で,周辺市町村を併せると60万人を越す医療圏ですが,県下でも大病院が集中する激戦区で医療サービス面で厳しい競争を強いられています.当院は大正14年に開設され来年で75周年を迎える財団法人病院で,標榜23科,480床の総合病院です.JR郡山駅から徒歩10分/車で3分のところ,郡山市の中心部にありながら300台の駐車スペースを確保しています.また,付属施設として精神科・慢性疾患の付属病院と特老施設や在宅看護支援センター,それに高等看護学院を併設しています.
 当院外科は,常勤4名と福島県立医科大学第2外科からの1年間のローテーター2名,および医大2外からの日替わりパート1名の計7名体制で診療を行っています.診療内容は,乳腺・甲状腺外科と消化器外科を2本の柱とし,肛門科,呼吸器外科と結局はなんでも外科でやっています.施設認定としては,日本外科学会,日本消化器外科学会,日本乳癌学会の認定を受けており,日本外科学会および日本消化器外科学会の指導医と日本乳癌学会の専門医がおります.年間手術数は全麻390,脊麻140,局麻70の計約600例であり,乳腺・甲状腺が約100例,胃癌・大腸癌が130例,胆石80例となっています.

私の工夫—手術・処置・手順

胃切除後膵液瘻に対するドレーン留置および洗浄法の工夫

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.1056 - P.1057

1.はじめに
 胃手術後の合併症として膵液瘻があり,いったん発生すると難治性である.時には重症化し回復まで長期間要したり,腹腔内出血や腹腔内膿瘍をきたし致死的な場合もある1).胃切除後の膵液瘻に対しドレーン留置および効果的な洗浄法の工夫について述べる.

メディカルエッセー 『航跡』・34

日米医師ドレスコード比較論

著者: 木村健

ページ範囲:P.1058 - P.1059

 毎日オフィスに送られて来る山のような情報の中には,大学職員としてセクシャルハラスメントの予防心得や,医療禍誤訴訟に巻き込まれた際の対策なども混じっている.医療訴訟の法延に出るのは被告と限らない.単なる証人として出延する場合でも,相手方の弁護士に相当痛めつけられるのを覚悟せねばならぬ.その対策を詳しく記した小冊子がなかなか興味深かった.
 まず渦中の手術や手技に関しては,あらゆる文献に目を通して理論武装し,相手に隙を与えない.出延の前に理髪店に行って,ボサボサ頭を整髪する.髪をきちんと七三に分けると,童顔でも大人びて見え,その道の大御所らしい印象を与える.次に持っているスーツの中で一番高価で仕立てもよく,落ち着いた色,保守的なデザインのものを選んでプロのクリーニング屋にプレスしてもらう.ワイシャツは白,洗いざらしたものでなく番手の高い上質なのをこの際新調する.ネクタイはスーツにマッチした落ち着いた色柄,靴も履き古したバックスキンなどでなく,ピカピカ光る高級に見えるのを選んで履く.上から下までバリッとした身なりで,背筋をすっと伸ばし,相手の眼の奥に焦点を固定して対決するのが肝心である.

医療保険指導室より・5

術後合併症の制御—DIC,循環不全,呼吸不全

著者: 渋谷哲男 ,   内山喜一郎 ,   小熊将之 ,   塩谷猛 ,   森山雄吉 ,   清水淑文

ページ範囲:P.1061 - P.1067

はじめに
 術後合併症としてのDIC,循環不全,呼吸不全などが発生すれば致死的になる.これらの合併症を未然に防ぎ,不幸にも発生した場合には早期診断して治療することが大切である.そのためにはこれらの状態を理解していなければ治癒は望めない.さらに治療に当たっては薬剤の適応も熟知していなければならない.これらについて述べる.

外科医に必要な整形外科common diseaseの知識・3

腰痛症

著者: 山下敏彦

ページ範囲:P.1070 - P.1071

疾患の概念
 腰痛は成人の80%以上が経験するとされており,最もありふれた愁訴の1つである.しかし,腰痛を引き起こす原因は実に様々である(表).腰痛には,短期間で自然軽快するものから,背景に重大な疾患が存在するものまでがあり,的確な診断が必要となる.腰痛症は急性腰痛と慢性腰痛に大きく分けられる.

外科医に必要な泌尿器科common diseaseの知識・1

血尿

著者: 吉村一良

ページ範囲:P.1072 - P.1074

はじめに
 血尿は腎・尿路系のどこかに何らかの原因があって赤血球が尿中に流出したものである.その70%は泌尿器科的疾患,20〜25%が内科・小児科疾患,5〜10%が特発性腎出血と言われている.男女別に分けると男性の肉眼的血尿では尿路結石が最も多く,次いで悪性腫瘍が多く認められる.女性においては肉眼的血尿の原因の多くは尿路感染症である.以下,一般外科医が携わると思われる一般外来および救急診療において,血尿を主訴とする患者の診療に際しての要点を述べる.血尿の原因疾患は泌尿器科系(外科系)疾患のみならず内科・小児科的疾患など多岐にわたるため,まず血尿の分類から概念を説明し,初期診療の助けとしたい.

臨床研究

食道癌術後の再建胃管潰瘍症例の解析

著者: 鈴木裕之 ,   齋藤礼次郎 ,   佐々木晋一 ,   奥山学 ,   小川純一 ,   北村道彦

ページ範囲:P.1075 - P.1079

はじめに
 食道癌切除後の再建臓器としては胃管が用いられることが最も多い.当科では胃管を後縦隔経路に挙上し,頸部で頸部食道と吻合する方法を標準再建術式としている1).これは再建経路が後縦隔と生理的であり,嚥下ならびに経口摂取が良好で,術後患者のQOLの面でも有利なためである,一方で,食道癌治療成績の向上により長期生存例が増えるにつれて,挙上胃管に潰瘍の発生をみたという報告が散見されるようになった2).胃管潰瘍はひとたび発症すると治療に難渋する例が多いこと,その発生機序についてはまだ明確になっていないことから臨床上重要な問題である.今回,食道癌術後の胃管潰瘍の発症機序解明ならびに早期発見と治療法の確立のために,過去12年間の胃管潰瘍症例の詳細な検討を行った.

手術手技

膵頭部局所切除兼膵管空腸側々吻合術(Frey手術)におけるハーモニック・スカルペル®の有用性

著者: 田中恒夫 ,   善家由香里 ,   時田大輔 ,   山崎浩之 ,   大石幸一 ,   平田雄三 ,   香川直樹 ,   前田貴司 ,   岡本有三 ,   藤高嗣生 ,   福田康彦

ページ範囲:P.1081 - P.1084

はじめに
 膵切除においては膵の切離断端からの出血に悩まされることが多く,有用な止血器具が望まれていた.ハーモニック・スカルペル®1〜3)(ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル社:以下,ハーモニック)は超音波振動のエネルギーを利用しており,従来の電気メスやレーザーメスとは違ったメカニズムによる止血器具である.ハーモニックは腹腔下手術のみならず,さまざまな手術に使用され,高い評価を受けている.筆者らは膵手術においてはハーモニックの有用性は高いことを報告してきた4,5)
 慢性膵炎に対する手術術式のうち膵管拡張を伴う症例に対しては,これまでPartingtonら6)の膵管空腸側々吻合術が広く行われてきた.しかし,膵頭部の膵液のドレナージが不良になりやすい欠点があった.そこで,Frey7〜9)はこの欠点を補う目的で膵頭部の部分切除(coring-out)を追加する術式(Frey手術)を提唱した.Frey手術においては膵切離面が広くなり,当然のことながらそれだけ出血しやすくなる.筆者らはFrey手術にハーモニックを使用し,出血量の軽減と安全性の向上をはかったので報告する.

臨床報告・1

大腸癌による閉塞性小腸炎の1例

著者: 木村臣一 ,   山下裕 ,   湯村正仁 ,   前田宏治 ,   仁熊健文 ,   小谷穣治

ページ範囲:P.1085 - P.1089

はじめに
 大腸癌による閉塞機転により口側大腸に潰瘍性病変が発生する閉塞性大腸炎は時々経験されるが1),同様の病変が小腸に発生することはきわめて少ない19).今回,われわれは亜全周性の盲腸癌症例に発生した閉塞性小腸炎の1例を経験したので報告する.

食道癌術後の再建胃管に発生した早期癌の1例

著者: 福田直人 ,   吉良邦彦 ,   館花明彦 ,   秋山竹松 ,   山川達郎

ページ範囲:P.1091 - P.1094

はじめに
 近年の食道癌治療成績の向上による長期生存例の増加に伴い,再建胃管に発生する残胃癌(以下,胃管癌)の報告例1〜4)が散見されるようになった.再建胃管の大部分は腹腔外に存在するため,手術方法は通常の残胃癌とは異なり,特に進行癌の予後は不良とされてきた2,3).今回筆者らは食道癌術後9年2か月後に発見された早期胃管癌症例を経験したので報告するとともに,本邦報告例を集計して検討を加えた.

嚢胞状形態,消化管出血を呈した回腸原発gastrointestinal stromal tumor (GIST)の1例

著者: 田澤賢一 ,   澤田成朗 ,   野村直樹 ,   桐山誠一 ,   中佳一 ,   堤寛 ,   塚田一博

ページ範囲:P.1095 - P.1099

はじめに
 Gastrointestinal stromal tumor (GIST)は消化管間葉系紡錘形細胞腫瘍の総称で,従来その光学的顕微鏡的所見から平滑筋腫,平滑筋肉腫,または神経鞘腫と診断されていた疾患群である1).しかし,これらの腫瘍は免疫組織学的,電子顕微鏡的検討で子宮などの消化管外平滑筋性腫瘍に比較し,全く異なった性質を認める場合が多く,その診断,治療,予後に関して今なお議論の余地を残している1).今回,筆者らは著明な消化管出血,嚢胞状形態を呈した回腸原発GISTの1例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.

11歳女児に発症し,MRI検査が有用であった骨盤膿瘍の1例

著者: 泉信行 ,   松原智恵 ,   鄭栄植 ,   原章倫 ,   佐竹一成 ,   宮﨑治男

ページ範囲:P.1101 - P.1105

はじめに
 骨盤膿瘍は虫垂炎からの波及や術後合併症として時に生じるが,骨盤腹膜炎から膿瘍形成に至ることは比較的稀である1).今回筆者らは11歳女児に発症し,MRI検査が確定診断に有用であった骨盤膿瘍の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?