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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科54巻9号

1999年09月発行

雑誌目次

特集 在宅栄養療法の標準管理

在宅栄養療法の適応と選択

著者: 佐藤信昭 ,   小山諭 ,   須田武保 ,   酒井靖夫 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.1121 - P.1124

 在宅栄養療法の適応は,原疾患の如何にかかわらず栄養障害という病態を有する患者であり,原疾患の病態が安定していることが前提となる.選択すべき項目としては,まず経静脈的あるいは経腸的な栄養管理法である.在宅静脈栄養法の適応は中心静脈栄養以外に栄養の維持が困難な患者であり,腸管大量切除,化学療法施行中の一部の悪性腫瘍患者,クローン病などの炎症性腸疾患,慢性特発性仮性腸閉塞症などの腸管運動障害,放射線腸炎,消化吸収不全症候群,難治性下痢症などが対象となる.経腸栄養では投与ルート(経鼻経管VS胃・腸瘻),胃瘻の造設法(外科的VS経皮内視鏡的),経腸栄養剤の種類などの選択が必要である.

在宅栄養療法の医療経済と保険算定

著者: 碓井貞仁

ページ範囲:P.1125 - P.1129

 在宅栄養療法は適応の拡大,企業や看護ステーションの努力などが相俟って年々症例が増加している.この傾向は介護保険制度の導入に伴い,ますます拍車がかかるものと予想される.一方,在宅療法を可能にするためには栄養以外の処置が不要であること,患者や家族が希望し操作手技のできる介護者がいることが要求される.経済面からみると保険適用は徐々に拡大されているが,現状では在宅栄養療法は患者,家族の経済的負担の上に成り立っているといっても過言ではない.患者の社会復帰,QOLの向上のためには経済的諸問題を少しずつでも解決していくことが強く望まれるところである.

在宅栄養療法のシステム構築とチーム管理

著者: 高添正和 ,   斎藤恵子 ,   伊藤美智子

ページ範囲:P.1131 - P.1140

 在宅医療の実行は異種職同士のチームアプローチ+コンビネーションアプローチで行われ,各スタッフの専門性の上に互いが相補的な役割分担を担わなければならない.したがって,その運営に関して,スタッフ同士が共同作業を行うにあたり統一した概念の明確化,情報の共有化,統一した評価基準が必要である.しかも,paternalism(父権主義)を打破し,各自の専門性を各スタッフが互いに尊重し,対等のパートナーシップで結ばれた協調的活動を行うことが在宅医療を真に根付かせるのに必要である.

在宅経腸栄養法のメリット・デメリット

著者: 岩佐幹恵 ,   岩佐正人 ,   小越章平

ページ範囲:P.1141 - P.1144

 在宅経腸栄養法(home enteral nutrition:HEN)は,炎症性腸疾患などの消化器疾患をのみならず脳血管障害などにより嚥下障害や経口摂取が十分にできず,なんらかの栄養補給が必要な患者に対して,在宅栄養管理の可能な場合に行われている.このなかには,在宅成分栄養経管栄養法の適応外疾患や,経腸栄養剤のなかには保険適用外のものもあり,HENが必要であるにもかかわらず,保険が適用されず,患者の経済的負担となっている場合もある.また,HENのサポートシステムが整備されていないために,合併症に対する患者,家族の不安やストレスが潜在している.ここでは,HENの概略を述べ,メリット・デメリットについて言及する.

経腸栄養剤の種類と特徴

著者: 松原肇 ,   島田慈彦

ページ範囲:P.1146 - P.1153

 経腸栄養法は紀元前にエジプトやギリシャにおいてすでに行われていた.経腸栄養法が医療の場に本格的に導入されたのは比較的新しく,近年になってからのことである.1970年代に宇宙食として開発されたアミノ酸製剤が成分栄養法として利用され,その技術が経腸的な高栄養素の投与を可能にした.それ以来,経腸栄養法は大きく見直され,静脈栄養法と並んで重要な位置を占めるようになった.近年では,種々の改良が加えられた多くの特徴ある経腸栄養剤が開発・市販されており,患者の病態に適した経腸栄養の投与が可能となっている.

在宅経腸栄養法の合併症とその対策

著者: 津川信彦

ページ範囲:P.1155 - P.1160

 在宅経腸栄養法が導入されて,在宅にて自由な時間を過ごす恩恵にあずかることができる方が増えてきている一方,これまで経験したことのないその合併症に悩む方も増えつつある.本稿では在宅経腸栄養法の合併症の内容とその対策について述べる.在宅経腸栄養法の合併症は,1)経路栄養チューブに起因した合併症と,2)経腸栄養剤とその投与法に関連した合併症と,3)代謝性合併症が主である.そのうち代謝性合併症は,1)糖代謝異常,2)肝機能異常,3)必須栄養素欠乏,4)微量元素欠乏症などがあげられる.長期連用に伴う微量元素欠乏症としては,1)銅欠乏による貧血,2)亜鉛欠乏による皮膚炎,3)セレン欠乏による心筋症などが報告がある.筆者も微量元素欠乏症を経験したのでその対策について述べる.

在宅静脈栄養法のメリット・デメリット

著者: 高木洋治 ,   岡田正

ページ範囲:P.1161 - P.1168

 HPN(home parenteral nutrition)のメリットとして患者の家庭復帰,社会復帰が可能になることによるQOLの向上と医療費の削減が挙げられる.しかしわが国のHPN施行は年間700例程度と必ずしも多くない.HPNを行うには入院中治療には必要でなかった患者・家族への施行方法や管理方法の教育・指導や薬剤・器材の供給などが必要である.しかしこれらに対する評価(診療報酬)がほとんど認められておらず,無菌調剤やポンプなどの保険点数も十分ではない.また患者・家族側では自己管理の作業的,経済的,精神的負担があり,その他,緊急時の不安,遠隔地移動や旅行の制限などがデメリットとして挙げられる.

在宅静脈栄養法に用いられるカテーテルの挿入と維持

著者: 西正晴 ,   田代征記

ページ範囲:P.1169 - P.1173

 在宅静脈栄養のカテーテルの留置には鎖骨下静脈穿刺法や外頸静脈切開法などが多く用いられる.静脈穿刺に際しては局所解剖を十分に理解した上で,習熟した手技により,起こりうる合併症を避ける適切なカテーテルの挿入が要求される.Broviac®/Hickman®カテーテルで長期間使用を確保するためには,長い皮下トンネルの作製とカフの確実な皮下埋没が重要である.ポートの埋没にあたっては十分な大きさのポケットを作製し,皮切がポートにかからないようにして逸脱を防ぐなどの工夫が必要である.カテーテルトラブルに対しては,患者・家族に詳細な説明を行い,発生時には可及的早急に受診してもらい処置を行う.

在宅静脈栄養における静脈輸液製剤の種類と特徴

著者: 野村秀明 ,   大柳治正

ページ範囲:P.1175 - P.1183

 完全静脈栄養(total parenteral nutrition:TPN)の進歩とその周辺機材の開発は,消化管機能障害患者の在宅静脈栄養療法(home parenteral nutrition:HPN)の長期化を可能にした.HPNにおける輸液製剤は,その無菌的調整と簡便な調達が必要となる一方,各患者の病態に応じた処方選択の多様性も求められる.ここでは,現在市販されているTPN用静脈輸液剤の各栄養素材(糖質,アミノ酸,脂肪乳剤およびビタミン,微量元素)の組成について概説し,今後のHPNの方向性を探る.

在宅静脈栄養法の合併症とその対策

著者: 吉田祥吾 ,   田尻鉄郎 ,   山崎国司 ,   白水和雄

ページ範囲:P.1185 - P.1190

 HPN管理においてはカテーテル留置期間が長く,管理中に合併症を起こしやすい.カテーテルに関連した合併症には感染症,カテーテルの閉塞などがあり,カテーテルの材質の選択やポートの使用,無菌的管理によって予防するように努める.代謝合併症では微量元素の欠乏や,高血糖あるいは低血糖を起こすことがあるので注意する.臓器の合併症では肝臓,骨などに障害を認めることがあるので,血液検査や画像診断によって早期に診断する.HPN管理では輸液の保存法にも注意を払うことが重要であり,医師,患者,家族,コメディカルが協力してきめ細かな管理を行うことが合併症の予防には不可欠である

カラーグラフ 消化器の機能温存・再建手術・13

全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術

著者: 簾田康一郎 ,   国広理 ,   金谷剛志 ,   三辺大介 ,   亀田久仁郎 ,   望月康久 ,   遠藤格 ,   渡会伸治 ,   嶋田紘

ページ範囲:P.1113 - P.1118

はじめに
 1935年にWhippleら1)が膵頭十二指腸切除術(PD)を報告して以来,PDには消化性潰瘍を予防する目的で幽門側胃切除を加えることが基本的なことと考えられてきた.その後再建法について改良が加えられてきたが,術後に栄養不良のためQOLが低下する例がしばしばみられることから,1978年にTraversoとLongmire2)により全胃と十二指腸球部を温存した幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)が報告された.術後に危惧された吻合部潰瘍の合併は少なく,また食事摂取量が十分で体重減少も少ないことが明らかとなった.適応疾患も最初は慢性膵炎などの良性疾患に限られていたが,最近では膵頭部癌などの悪性疾患に対しても施行されるようになった.教室では悪性疾患に対するPpPDは,第1分枝を含めて右胃動脈・右胃大網動脈は切離して幽門上・下リンパ節を完全に郭清するとともに,大動脈周囲リンパ節の郭清や神経叢切除も行い,根治性を失わないことを原則としている.このリンパ節郭清を加えた膵頭部癌に対するPpPDについて手技を中心に述べてみたい.

病院めぐり

北海道社会事業協会小樽病院外科

著者: 川村健

ページ範囲:P.1192 - P.1192

 当院は,北の首都,札幌から高速道路で,30分の所に位置し,大正14年,北海道社会事業協会が,当時の社団法人小樽施療院および小樽慈恵病院の経営を引き継ぎ,北海道社会事業協会小樽病院(略称:小樽協会病院)として70年余の歴史を誇ります.平成8年に新病院が完成,病床総数240床の現在の病院となりました.国体も行われる小樽天狗山と日本海を一望できる景勝の地にあり,四季折々の風物が患者さんの心をなごませてくれます.
 小樽市の地名の由来は,アイヌ語のオタルナイからとされており,Ota:砂浜,Ru:路,Nai:川,と言う意味があるそうです.現在の人口は,15万4千人程です.その昔は北のウォール街と称された商都として栄えましたが,現在は運河の街,観光都市として有名で,今年の春には,東北以北最大のショッピングモールも完成し,大変な賑わいを見せています.

市立酒田病院外科

著者: 諸星保憲

ページ範囲:P.1193 - P.1193

 当院の在る庄内地区は新潟市から3時間,山形市からも2時間30分と遠く,久しく陸の孤島と呼ばれて来ました.しかし庄内空港が開設され,酒田—山形間の高速道路建設が進む現在は,豊かな自然と利便性を兼ね備えた将来性の高い土地に変身したといえそうです.庄内の中でも酒田市は人口10万の中規模都市ですが,市周辺を含めた医療圏としては約20万人が対象になります.本院は昭和22年公立酒田病院として開院し,同35年社会保険酒田病院と合併した後は市立酒田病院として地域医療の充実を目標に邁進してきました.医療の進歩に遅れぬよう高額医療機械も次々に導入し,市民の健康を守ることに誇りをもつています.平成5年県立日本海病院が酒田市内に開設された後は競合関係の激化から医療の本質を離れた展開も若干懸念されましたが,結果的には住民の受診機会を増大させ新たな医療需要を掘り起こしたものと分析されています.また両病院の間での競争がうまく作用し,医療そのものに加えて患者さんへのサービスなども高度なものに育まれている印象です.
 さて当院は400床の総合病院ですが,外科はそのうち77床を預かっております・スタッフは院長以下7名おり,手術日は月,火,水,金の4日間で定期手術は毎週8〜10件,これに臨時手術が1〜2件加わります.

メディカルエッセー 『航跡』・35

米国医学部入学制度(1)

著者: 木村健

ページ範囲:P.1194 - P.1195

 9月はアメリカの大学では新年度の始まる月である.8月の終わりともなると,街では一目でそれとわかる新入生たちが,受講手続き,教科書の購入,アパートや下宿の引っ越しなどで右往左往する.医学部の新人生も例に漏れない.こうした手続きがようやく一段落すると9月はじめの「白衣着用式」を待つばかりとなる.
 「白衣着用式」というのは,新学年の170名が一堂に会し,来賓や先達から医学生としての心得を聴かされたのち,壇上に呼び上げられて,医学部長から直々真新しい純白のジャケットに袖を通してもらう儀式である.毎年のことであるが,清々しく厳粛で気持ちの良い風景である.

臨床外科交見室

地方私立総合病院小児外科の小さな挑戦—あれから1年半たちました

著者: 末浩司

ページ範囲:P.1196 - P.1197

 昨年,大胆にも臨床外科交見室の欄をお借りして宣戦布告(臨外53:454,1998),先も案じられた当科の日帰り手術は,おかげさまで比較的順調に進み,現在は150例を超えました.やっと患者家族への啓蒙期間が終わったというところでしょう.当初心配した患者側の受け入れもアンケート調査では,日帰りにしてよかったという意見が多くほっとしています.確かに若い御両親の場合,この不況下,仕事や家庭のことを考えると,できるなら日帰り手術で,安全ならばOKという方が多かったのかもしれません.患者家族の中には生命保険の入院給付金との兼ね合いで日帰りに難色を示される方もいて,長期入院の根源がこんなところにあるのかもしれないと考えさせられたりもしました.
 スタッフのほうはどうかというと,以前に比べ,何か問題があっては一大事,死活問題になりかねないと患者家族との接触は従来以上になりました.術前日の電話再診,術翌日の電話再診.もちろん患者家族にも13ページに及ぶ小冊子(看護スタッフ中心に作成)(図)を術前に十分に読んで勉強していただき万全を期してきました.一方病床は空床が目立つことが多くなり事務や他科の目も気になるようになり,ストレスはこれまで以上になりました.

私の工夫—手術・処置・手順

難治性瘻孔に対する内視鏡検査と治療

著者: 中川国利 ,   鈴木幸正 ,   豊島隆 ,   桃野哲

ページ範囲:P.1198 - P.1199

1.はじめに
 消化器手術後の合併症の1つに難治性瘻孔があり,術後管理にしばしば難渋する1).そこで筆者らは従来の保存的治療に加えて,より積極的な治療法として瘻孔に対する内視鏡検査を行い,臨床的意義を認めている2,3)ので紹介する.

外科医に必要な泌尿器科common diseaseの知識・2

精索捻転・急性精巣上体炎

著者: 吉村一良

ページ範囲:P.1201 - P.1203

はじめに
 泌尿器科疾患は比較的救急疾患が少ないが,精索捻転は緊急な診断・治療を要する疾患である.精巣への血流が途絶するため,4〜6時間以内に適切な治療が行われないと精巣の壊死・萎縮が生じてしまう.
 また,精索捻転との鑑別が重要である急性精巣上体炎についても診断・初期治療について述べる.急激に陰嚢部痛をきたすこれらの疾患は,急性陰嚢症(acute scrotum)とも呼ばれる.

外科医に必要な整形外科common diseaseの知識・4

頸椎捻挫

著者: 横串算敏

ページ範囲:P.1205 - P.1207

はじめに
 日常診療で診断される頸椎捻挫例のほとんどは追突事故などの交通外傷に起因するものである.本章では主に交通外傷に起因する頸椎捻挫の診断と治療について述べる.

消化器疾患の総合画像診断

胃癌の腹膜転移

著者: 山村義孝 ,   小寺泰弘 ,   清水泰博 ,   鳥井彰人 ,   平井孝 ,   安井健三 ,   森本剛史 ,   加藤知行

ページ範囲:P.1209 - P.1214

はじめに
 進行胃癌にとって腹膜転移は最もよく見られる転移形式であり,手術の根治性を妨げる最大の要因である.しかし,その術前診断は困難なことが多く,開腹して初めて診断される例も珍しくない.腹膜転移を術前に知ることができれば手術の方針も立てやすいし,不必要な手術そのものを中止することができ,医療側のみならず患者にとってもメリットは大きいと思われる.そのため最近では術前に腹腔鏡検査を行う施設が増えつつあるが,腹腔鏡検査といえども腹膜転移をすべて診断できるわけではなく,患者に与える侵襲も小さいとは言えない.そこで本稿では,腹腔鏡検査よりは精度が落ちるかも知れないが,はるかに侵襲が小さい注腸X線透視の有用性について述べることとする.

臨床研究

大腿ヘルニア嵌頓の臨床的特徴—成人外鼠径ヘルニア嵌頓と比較して

著者: 竹内邦夫 ,   都築靖 ,   安藤哲 ,   小林正則 ,   萬田緑平 ,   野内達人

ページ範囲:P.1215 - P.1219

はじめに
 鼠径部ヘルニアは日常の外科診療上頻度の高い疾患の一つである.一般に大腿ヘルニアは嵌頓することが多く,ヘルニア門が狭いため腸管の絞扼をきたしやすいと言われている1).今回われわれは,大腿ヘルニア嵌頓(以下,大腿ヘルニア)症例の臨床的特徴を明らかにするために成人外鼠径ヘルニア嵌頓(以下外鼠径ヘルニア)症例との比較検討を行った.

Mirizzi症候群に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術

著者: 權雅憲 ,   乾広幸 ,   高橋完治 ,   上山泰男

ページ範囲:P.1221 - P.1224

はじめに
 Mirizzi症候群は1940年にアルゼンチンの外科医Mirizziが総肝管の括約筋機能障害による胆管狭窄の概念を提唱し1),1948年に胆嚢頸部や胆嚢管に嵌頓した結石により総肝管狭窄をきたした状態をsindrome del conducto hepatico2)と呼んだことに由来する.近年,腹腔鏡下胆嚢摘出術(lap-aroscpic cholecystectomy,以下LC)の普及は目ざましく,従来の開腹下胆摘術を席巻し,胆石症の標準術式となってきている.LCは当初,強度の胆嚢炎や肝硬変症例さらに上腹部の手術既往による強い癒着症例は禁忌とされてきたが,手技や機器の開発に伴い次第に適応が拡大されつつある.しかし,Mirizzi症候群については適応外とする施設が多い.われわれはMirizzi症候群もLCの適応と考えており,その成績を報告する.

臨床経験

左側大腸閉塞に対する経肛門的腸管減圧術の検討

著者: 岩川和秀 ,   梶原伸介 ,   高井昭洋 ,   角岡信男 ,   今井良典 ,   篠原洋伸

ページ範囲:P.1225 - P.1229

緒言
 左側大腸閉塞は経鼻用イレウスチューブによる減圧では改善が得られず,緊急に一時的人工肛門が造設されたり,口側病変の検索や術前腸管処置が不十分であるために術後合併症の危険性が高くなり根治度の高い手術を施行するのが困難なことが少なくない.今回われわれは9例の左側大腸閉塞に対して内視鏡的に経肛門的イレウスチューブを挿入し,全例に減圧でき,手術適応5例において一期的切除・吻合が可能となったので本治療法の有用性について報告する.

臨床報告・1

十二指腸異物性肉芽腫の1切除例

著者: 光吉明 ,   財間正純 ,   池田房夫 ,   露木茂 ,   南口早智子

ページ範囲:P.1231 - P.1233

はじめに
 消化管の粘膜下腫瘤には良性,悪性の非上皮性腫瘍(粘膜下腫瘍)のほかに,嚢胞,迷入膵,炎症性腫瘤などの非腫瘍性疾患も含まれるが,異物による肉芽腫の文献報告例はない.今回われわれは,十二指腸潰瘍底の食物残渣を中心に炎症性に増大した植物異物性肉芽腫を経験したので報告する.

17歳男子にみられたHirschsprung病の1例

著者: 久保宏幸 ,   内田恵一 ,   大井正貴 ,   畑田剛 ,   浦田久志 ,   白石泰三

ページ範囲:P.1235 - P.1238

はじめに
 Hirschsprung病は新生児期および乳児期に発症し,その多くが小児期に外科的治療を受ける疾患である1〜5).しかし稀に,成人期に診断が確定し根治術が施行される例がある6).われわれは,幼少児期より排便障害を呈していたが,緩下剤,浣腸で排便習慣がコントロールされ,17歳時にHir-schsprung病と確定診断され外科的治療を受けた1例を経験したので報告する.

Hassab手術後に肝内門脈血流の改善が示唆された肝外門脈閉塞を有する特発性門脈圧亢進症の1例

著者: 馬場秀文 ,   板野理 ,   高尾正彦 ,   伊藤均 ,   杉浦功一 ,   石井克巳

ページ範囲:P.1239 - P.1243

はじめに
 特発性門脈圧亢進症(idiopathic portal hyperten-sion以下,IPH)は食道・胃静脈瘤などの門脈圧亢進および脾機能亢進症状を伴う予後良好な疾患である1).われわれは,以前IPHの症例に対してHas-sab手術後に肝内門脈血流量の改善が示唆された症例を報告した2).今回,肝外門脈閉塞を伴っているにも拘わらずHassab手術後に肝内門脈血流の改善が示唆されたIPHの症例を経験したので報告する.

臨床報告・2

自己整復により小腸穿孔をきたした鼠径ヘルニアの1例

著者: 戸屋亮 ,   大江信哉 ,   稲葉行男 ,   飯沼俊信 ,   林健一 ,   渡部修一 ,   千葉昌和

ページ範囲:P.1244 - P.1245

はじめに
 鼠径ヘルニアの合併症としての嵌頓,腸管壊死はよく知られているが,これらを伴わない腸管穿孔1〜3)にも注意が必要である.今回われわれは,嵌頓に至らず,脱出したヘルニア内容の自己整復により小腸穿孔をきたした外鼠径ヘルニアの1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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