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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科55巻1号

2000年01月発行

雑誌目次

特集 肝臓移植を理解する

肝臓移値の現況

著者: 大村孝志 ,   岸田明博 ,   古川博之 ,   藤堂省

ページ範囲:P.13 - P.18

 肝移植は末期肝疾患に対する唯一の根本的治療法として,各国で定着している.脳死移植は年間8,000例以上が行われ,5年生存率は約75%に達している.臓器不足,移植後の原疾患の再発が重要な問題である.本邦では,脳死ドナーからの移植に代わるものとして生体部分肝移植が行われ,これまでに900例以上に達した.次第に成人症例が増加している.脳死ドナーからの臓器提供だけでは肝臓病死を減らすことはできず,生体部分肝移植は今後も車の両輪のごとく重要である.米国,東南アジアなどでも,深刻なドナー不足を背景として生体部分肝移植が行われている.移植肝のボリューム不足,ドナーの安全性,経済的負担などが問題点である.

肝臓移植の適応

著者: 藤原研司

ページ範囲:P.19 - P.25

 わが国では10年前から生体肝移植が行われ,既に900例以上がこれを受けている.脳死肝移植は2年余り前から法的に実施可能となったが,レシピエントの適応基準や選択基準は先進国のものと大きく異なっている.末期肝疾患として最も多いウイルス性肝硬変患者がこれを受ける可能性はきわめて低く,年齢制限や多臓器移植が不可能なこと,移植時期に対する考え方など,最近の肝移植の進歩からは見直す必要のある点が多い.また,実施施設の少数限定が肝移植を希望する患者に不公平性を生じている.ドナー不足の要因となっている可能性もあり,脳死臓器提供可能施設の規制も含め検討課題となっている.

法的脳死判定の実際と問題点

著者: 田中秀治 ,   山口芳裕 ,   島崎修次

ページ範囲:P.27 - P.34

 臓器の移植に関する法律(以下,臓器移植法)が1997年10月16日に施行されて以来,4例の脳死体患者から心,肝,腎臓を含む多臓器の提供がなされ,わが国でも本格的な脳死下移植医療がスタートした.しかし,この4例の臓器提供における一連の経過で当初予想されえなかったさまざまな問題が発生した.中でも法的脳死判定とその手続きでの混乱は臓器提供施設において解決すべき大きな課題である.一方で臓器提供施設ではいつドナー候補者が入院するかもしれず,その際に迅速かつ,正確な対応を行うためには,平素からの体制整備が必要である.その一つが臓器提供における手順を施設全体で理解しておくことである.また脳死判定のための委員会の設置,法的脳死判定に入る前の種々の必須条件の理解や,脳波測定の再チェックなど,臓器提供病院では準備しておかなければならないことは山積している.厚生省ではこれらの問題点に対応するための「法的脳死判定マニュアル」と「臓器提供施設マニュアル」を作成した.臓器提供施設ではこれらのマニュアルを参考に各施設での具体的対応策を早急にまとめておくことが必要である.

臓器移植ネットワークとコーディネーター

著者: 寺岡慧

ページ範囲:P.35 - P.45

 臓器の移植に関する法律が施行され,わが国においても脳死臓器移植の実施が可能となった.法施行とともに関連諸規則の策定,多臓器対応のネットワークの発足,移植希望者の適応評価と登録,意思表示カードの配布,臓器提供マニュアルの作成,各臓器提供施設における施設内の態勢整備,臓器搬送体制の整備などが着々と進められてきた.1999年2月末,わが国第1例目の脳死ドナーからの多臓器提供が行われ,6月までに4件の多臓器提供が実現し,心移植3例,肝移植2例,腎移植8例が実施された.今後さらに脳死臓器移植を定着させて行くためには,意思表示カードの実効的配布,臓器提供施設の負担軽減と公的支援,移植実施施設の拡大,法の見直し,死体臓器移植への健康保険の適用と死体臓器加算の新設,その他の費用負担の軽減などが必要と考えられる.

拒絶反応に対する治療の現況

著者: 川岸直樹 ,   大河内信宏 ,   小山田尚 ,   織井崇 ,   土井秀之 ,   藤盛啓成 ,   里見進

ページ範囲:P.47 - P.53

 肝移植における免疫抑制剤は,タクロリムスとステロイドか,サイクロスポリン,アザチオプリンとステロイドの併用が一般的である.タクロリムスとサイクロスポリンは,どちらも拒絶反応のごく初期にT細胞のIL−2産生を抑える.急性拒絶反応の確定診断は,移植肝の生検による組織診断で行い,ステロイドパルス療法を第一選択で使用している.この治療に無効な場合,当科においてはデオキシスパーガリン,OKT3を用いている.慢性拒絶反応に対しては,まだ確立された薬剤はない.新しい免疫抑制剤の導入が盛んである一方,免疫抑制剤の離脱も積極的に試みられている.

小児生体部分肝移植

著者: 上本伸二 ,   田中紘一

ページ範囲:P.55 - P.59

 小児生体肝移植症例381例の成績を検討した.全体での患者生存率は83.2%であったが,成績不良例は術前にICU管理を要した緊急症例(66.1%),血液型不適合症例(71.2%),10歳以上の年長児症例(68.8%),劇症肝炎症例(59.1%)であった.グラフト重量と患者体重の%比(GRWR)が1%未満の場合の患者生存率は65.1%と有意に不良であり,体格の大きい年長児の成績と相関していた.治療時期を1995年までの前期と1996年以降の後期に分けると,患者生存率は前期の78.1%から後期には88.1%と改善した.しかし,ICU管理症例と劇症肝炎症例(特に非A非B型)の成績改善は得られておらず,今後の課題である.

成人間生体部分肝移植

著者: 菅原寧彦 ,   幕内雅敏

ページ範囲:P.61 - P.63

 成人例では小児例と比較して,手術や術後管理に難渋することがあるが,慎重に対処すれば,生存率や合併症からみて,必ずしも高リスクであるとはいえない.脳死ドナーからの移植が一般的でない現在,適当なドナーが得られれば,積極的に成人例に生体部分肝移植の適応をひろげていく必要がある.

脳死全肝移植

著者: 橋倉泰彦 ,   三田篤義 ,   三輪史郎 ,   大野康成 ,   中澤勇一 ,   池上俊彦 ,   寺田克 ,   宮川眞一 ,   川崎誠治

ページ範囲:P.65 - P.71

 今後日本においても脳死肝移植の実績が一歩一歩積み重ねられていくことが見込まれる.本稿では,脳死肝移植の適応と禁忌,脳死ドナーの選択基準,ドナー手術,バックテーブル手術およびレシピエント手術の実際について記述する.

生体ドミノ分割肝移植の経験

著者: 中村太郎 ,   藤田士朗 ,   江川裕人 ,   木内哲也 ,   上本伸二 ,   猪股裕紀洋 ,   田中紘一

ページ範囲:P.73 - P.77

 今回,家族性アミロイドポリニューロパチーである50歳代男性の生体肝移植手術において,摘出肝をin situで分割し2人の患者に移植する,いわゆるドミノ分割肝移植を行った.一次レシピエントにおいてはCantlie線で肝を切離し,右葉を摘出,右門脈一下大静脈シャントを作成後,残る左葉を摘出した.一次レシピエントの手術での通常の手術との相違点は,術中胆管造影検査を行ったことと,体内での肝分割を行ったことであったが,造影検査での合併症はなく,肝切離にかかった時間や肝切離時の出血量も少なく,手術手技上の不利益は少なかったと思われた.今回の手技は生体肝移植手技の延長であり,脳死肝移植が発展するまでの間の一手段として有効と思われた.

カラーグラフ 消化器の機能温存・再建手術・17

腹会陰式直腸切断術における肛門再建術

著者: 小西文雄 ,   佐藤知行

ページ範囲:P.5 - P.10

括約筋温存術式の進歩
 近年の直腸癌に対する手術方法の進歩により,低位前方切除施行症例の割合が増加し,直腸切断術症例が減少の傾向にある.これは自動吻合器の使用,特にdoulbe stapling methodの普及や,経肛門的吻合によるcolo-anal anastmosisの開発によって,低位の直腸癌においてもより多くの症例において括約筋温存手術(sphincter saving operation)が施行されるようになったためである.超低位のdouble stapling法では肛門縁から3〜4cmのレベルでの吻合が可能であり,また,さらに低位で直腸を切離する方法としては腹部操作で肛門管上縁までの剥離を行っておき,歯状線のレベルで内肛門括約筋を切離して内外括約筋間を剥離し,腹腔側からの剥離層に連続させて下部直腸を切除する方法がある.この方法では経肛門的に手縫いで吻合を施行することとなり,double stapling法よりさらに低位の直腸癌の切除が可能である.
 しかし,肛門管上縁附近から肛門管にかかる位置に腫瘍の下縁が存在する直腸癌においては,早期癌を除き現在でも直腸切断術を施行して永久的人工肛門を造設する術式を選択せざるをえないのが現状である.筆者らの施設における括約筋温存手術と直腸切断術の比率を検討すると,直腸切断術の割合は1980年代前半ころには40〜50%であったが,1990年以降は30〜40%と減少の傾向にある.

外科医に必要な整形外科common diseaseの知識・8

外反母趾

著者: 倉秀治

ページ範囲:P.81 - P.83

はじめに
 外反母趾による障害は近年,生活の欧米化,特に靴による影響を受け,わが国でも急増しつつある.本稿では外反母趾の概念,臨床症状と診断,治療について述べる.

外科医に必要な泌尿器科common diseaseの知識・6

尿管・膀胱結石

著者: 浅野友彦

ページ範囲:P.84 - P.85

概念
 尿路結石には腎・尿管結石などの上部尿路結石,膀胱・尿道結石などの下部尿路結石がある.日本人では約20人に1人が一生のうち1度は尿路結石に罹患するとされており,日常診療でよく遭遇する疾患である.尿路結石の80%以上はカルシウム塩結石であり,そのほか尿酸結石,シスチン結石,リン酸マグネシウム・アンモニウム結石などがある.結石形成の原因として,原発性上皮小体機能亢進症,腎尿細管アシドーシス,海綿腎,特発性過カルシウム尿症,原発性過シュウ酸尿症,高尿酸血症などがあるが,原因診断が確定できるのはまだ一部である.今回のテーマは尿管結石と膀胱結石であるが,両者では症状,診断,治療が全く異なるので,各々項を別にして解説した.

メディカルエッセー 『航跡』・38

病院の安全危機管理(2)—合同委員会認定基準

著者: 木村健

ページ範囲:P.86 - P.87

 ニッポンでは,病院や医院など医療施設の規準やケアは,厚生省が監視,規制,査定するのが常識である.アメリカではこの公的な任務を一民間団体に過ぎない医療施設認定合同委員会(JCAHO,以下,合同委員会と略す)にまかせている.一方では官の直轄の公務とされる任務が,他方では民間に委任され,いったいその責務は立派に果たされるのだろうか.認定というものには,まず一定の基準を設け,それに満たぬものに対し,何らかのペナルティを加えることによって,効力を保つことができる.ペナルティのない認定は,単なるコンテストであって,実効力を持たない.厚生省は医療施設に対し,設備やマンパワーに不都合があると施設としての認可を取り消す権限を持っている.
 一方アメリカの合同委員会は,認定する施設に対して許認可権は一切持っていない.施設側からの随意のリクエストに応じて,一定の査定料を受け取り,規定に従って施設としての適否を評価し,認定の合否を決めるだけである.認定の結果は情報の開示のルールに従い,アクセスするものには誰にでも公開されている.医療の質は地域住民の健康維持や生死に関わることである.住民は知る権利を行使して,自分のかかっている医療施設のレベルを知ることができる.合同委員会の認定の結果は医療費支給本部に報告される.これを受けて公私の医療費支給団体は,認定に不合格の病院やクリニックの活動に対し,医療費の支払いを拒否する.

病院めぐり

栃木県立がんセンター外科

著者: 尾形佳郎

ページ範囲:P.88 - P.88

 当院は栃木県(人口220万人)の県庁所在地,宇都宮市(人口44万4千人)の中心から南南西5kmに位置しています.病棟からは北西に日光連山,南東に筑波山が一望出来ます.
 県立がんセンター設立の要望はかなり以前からありましたが,昭和46年5月にがん検診センターとして開所したのが始まりです.がんによる成人の死亡率の上昇とともに,検診から治療までの一貫した診療体制を求める県民の声が強く,昭和61年9月にがんに対する高度専門病院として開所されました.

—伊勢崎佐波医療事務市町村組合—伊勢崎市民病院外科

著者: 樋渡克俊

ページ範囲:P.89 - P.89

 当院は,昭和39年10月伊勢崎佐波医療事務市町村組合の病院として群馬県伊勢崎市に200床で開設されました.地域唯一の公立病院として住民に良質の医療を効率的に提供する努力を続け,開設以来増改築や診療部門の整備を行い平成3年4月には厚生省の臨床研修病院に指定され,平成5年5月には自治大臣表彰を受賞しました.平成10年3月には待望の10階建ての新病院が完成し504床となりました.リニアックをはじめとした先進医療機器を備え,地域において医療を完結できる高機能病院としてその役割を果たしています.
 当初から外科は多くの分野の手術を手がけ,現在スタッフは常勤医8名・研修医3名で消化器・呼吸器・乳腺甲状腺・末梢血管分野を担っています.平成11年9月,心臓外科が新設され,病棟は専門病棟・混合病棟など常時70床前後を預っています.

目で見る外科標準術式・1

頸部食道切除後遊離空腸再建

著者: 吉野邦英 ,   奈良智之

ページ範囲:P.91 - P.97

はじめに
 頸部食道癌切除後に遊離空腸で再建可能なのは癌が頸部に限局し,縦隔リンパ節転移のない場合である.術前に縦隔リンパ節転移が疑われたり内視鏡的に切除が不可能な胸部食道の副病変をもつものは,開胸して胸部食道を切除するため胃管または結腸による再建となる.
 また頸部食道に限局した癌であっても喉頭が温存できるのは前壁側の口側境界が下咽頭にかからないことと,気管や反回神経など周囲臓器への浸潤がないことが条件となる.
 ここでは喉頭が温存可能な頸部食道に限局した癌に対して,両側頸部郭清,頸部食道切除後遊離空腸による再建の術式の要点を述べる.

臨床研究

括約不全における肛門機能回復訓練—Biofeedback療法

著者: 荒井勝彦 ,   豊田正美 ,   黒木政純 ,   高木幸一 ,   高野正博

ページ範囲:P.99 - P.102

緒言
 肛門科の外来では便失禁,ガス漏れを主訴とした肛門括約不全の症例に遭遇する.その要因をあげると医原性のものが6割以上を占めており1),われわれ外科医もその予防と治療に関心を持たなければならないと思われる.欧米においてはこれらに関する文献が見られるが,わが国における文献は少ない.われわれの施設においては,肛門括約不全の症例に対する方策として,肛門括約筋訓練であるBiofeedback療法を行っている.また,これが有効でない症例には括約筋形成術を行うこともあり,Biofeedback療法は手術の適否に際しても参考になる.本文では,その臨床効果と肛門機能の経時的変化を報告する.

胃・十二指腸潰瘍穿孔に対する保存治療の試み

著者: 阿部理 ,   若山昌彦 ,   笹壁弘嗣 ,   杉木大輔 ,   久保忠彦 ,   門田俊夫

ページ範囲:P.103 - P.106

はじめに
 胃・十二指腸潰瘍穿孔に対する保存治療は1930年代に報告された1)が,すぐには普及せず最近まで手術治療が第一選択とされてきた.1990年代に入り保存治療が見直されるようになり,特に十二指腸潰瘍に対してこれを積極的に選択する施設も増えてきた.十二指腸潰瘍穿孔の全例に保存治療を第一選択とし良好な結果の報告も出されている2)が,一般には,どのような症例に保存治療を選択すればよいのか適応基準が曖昧なことが現在の問題点である.疼痛・腹部所見の客観的評価が困難なことも厳格な基準が確立できない原因のひとつと考えられる.どのような症例に適応すべきか,患者が来院した段階で何を基準に治療法を選択すればよいのかを,当院で経験した胃十二指腸潰瘍穿孔例に対する治療結果から検討した.

手術手技

VATSマーカー針と深部用マイクロ波凝固針を応用した腹腔鏡下肝切除術の1例

著者: 竹内仁司 ,   黒子洋介 ,   小南賢吉郎 ,   丁田泰広 ,   小林正彦 ,   土屋健

ページ範囲:P.107 - P.111

はじめに
 低侵襲手術を目指した各種腹腔鏡下手術術式が開発されているが,肝切除術は技術的困難性から適応が限られている1).われわれは安全で容易な腹腔鏡下肝切除術の開発を行ってきたが,肝表面に露出していない腫瘤に対しては数mm単位での位置の同定は困難であった.この問題を解決するために,従来の腹腔鏡用超音波検査プローブによる位置決めではなく,体外式超音波検査プローブを用いて胸腔鏡下手術(video-assisted thoracicsurgery:VATS)時の肺小病変の同定目的に開発されたVATSマーカー針2)(八光商事製,ガイディングマーカーシステム)を手術直前に腫瘍周囲に留置して正確な位置決めを行った.また,われわれの考察した深部用マイクロ波凝固針(日本商事製,TMD−16C−10/250)を使用した切離予定面の凝固止血を行った後,肝切離を行った3).両手技は腹腔鏡下肝切除術の適応拡大のために寄与すると考えられたので報告する.

臨床報告・1

悪性限局性胸膜中皮腫様所見を呈した肺腺癌の1例

著者: 塩尻康宏 ,   門倉光隆 ,   野中誠 ,   国村利明 ,   櫛橋民生 ,   高場利博

ページ範囲:P.113 - P.115

はじめに
 胸壁浸潤肺癌のうち,胸膜直下に発生し,胸膜に沿って進展する症例は少なく1),その画像診断,特に胸膜腫瘍との鑑別は困難である2〜5).今回筆者らは,悪性限局性胸膜中皮腫との鑑別に難渋した末梢肺腺癌の1手術例を経験したので報告する.

肝転移をきたした径10mmの直腸カルチノイドの1例

著者: 古川義英 ,   浦住幸治郎

ページ範囲:P.117 - P.120

はじめに
 直腸カルチノイドにおいて径が10mm以下の症例での転移率は低く1〜3),なかでも肝転移はきわめて稀である4).今回われわれは,多発肝転移をきたした径10mmの直腸カルチノイド症例を経験したので報告する.

高齢者に発症した原発性小腸軸捻転症の1例

著者: 樋口卓也 ,   森本芳和 ,   角村純一 ,   宮崎実 ,   安政啓吾 ,   永井勲

ページ範囲:P.121 - P.125

はじめに
 成人の原発性小腸軸捻転症は,腸閉塞の一つとして報告される稀な疾患である1〜3).臨床的に特有の症状を欠き,術前診断が困難なことが多い1〜3).多くは腸管壊死をおこしており,腸切除を余儀なくされる1〜3).今回われわれは,高齢者に発症した原発性小腸軸捻転症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

MRIで経過観察した小児十二指腸壁内血腫の1例

著者: 伊藤祥隆 ,   野澤寛 ,   平野誠 ,   宇野雄祐 ,   村上望 ,   橘川弘勝

ページ範囲:P.127 - P.130

はじめに
 十二指腸壁内血腫は,外傷後や凝固系に異常を認める患者にみられる比較的稀な疾患である1).本症の診断は画像診断の進歩により比較的容易となったが,治療においては手術を選択するか否かが問題となるところである.今回われわれは保存的治療にて治癒した十二指腸壁内血腫の1例を経験したのでこれを報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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