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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科55巻10号

2000年10月発行

雑誌目次

特集 ベッドサイド基本手技とコツ

気管切開

著者: 青柳光生 ,   鈴木一郎

ページ範囲:P.1221 - P.1225

はじめに
 ベッドサイドにおける気管切開としては緊急気道確保の場合,critical careにおける中長期にわたる気道確保の場合を想定し,限られた環境下の臨床現場での気管切開術を念頭に稿を進める.緊急の気道確保の場合,経口気管内挿管ができない場合,時間的余裕が全くなければとりあえず輪状甲状靭帯切開術を施行し,酸素化をはかる.余裕があれば気管切開を施行する.以下,輪状甲状靭帯切開術,標準的気管切開術,経皮的気管切開術について述べる.

気管内挿管

著者: 繁田正毅

ページ範囲:P.1227 - P.1230

はじめに
 一般に挿管困難症の割合は非常に少なく,気管内挿管は正しく実行すればほとんど困難はないにもかかわらず,挿管に関する総説のほとんどは技術上の点が強調されている.外科医が気管内挿管を実施しなければならない事態を考えると,手術室内と異なり環境やスタッフなど望ましい状態ではないし,技術的にも難しい.しかし患者の状態もより危機的であることが多いことから,むしろ安全かつ有効な患者管理をするための基本的な知識と技術(すなわち挿管の目的や合併症に配慮することなど)も同様に重要である.
 ここでは臨床外科医が遭遇する状況での気管内挿管の技術と管理について概説する.

トラヘルパー(経皮的気管穿刺針)挿入

著者: 納賀克彦

ページ範囲:P.1231 - P.1232

はじめに
 意識障害や術後疼痛のある患者では自力による喀痰の喀出がなかなか難しいことが多く,重篤な肺合併症の原因となることも少なくない.このような症例に対して,水口らが考案したトラヘルパーを用いると肺合併症の予防や治療に有効である.トラヘルパー挿入は手技が簡単であり,安全に行え,確実に気管内や気管支内の喀痰吸引を行える方法である.

中心静脈確保(深部静脈穿刺)

著者: 境田康二

ページ範囲:P.1233 - P.1239

はじめに
 周術期管理において,中心静脈圧測定,中心静脈栄養などを行うことは日常茶飯事であり,このために中心静脈にカテーテルを留置する手技は外科医にとって必須のものとなっている.一般的に中心静脈とは胸腔内に存在する大静脈を指しているため,厳密に言えば中心静脈確保とはカテーテルの先端が中心静脈に存在していなければならない.しかし,臨床の場ではカテーテル先端の位置にかかわらず深部静脈にカテーテルを留置することを中心静脈確保と呼んでいる場合が多い.本稿では中心静脈確保のために行われる深部静脈穿刺について解剖,一般的な手技などについて述べる.

Swan-Ganzカテーテル挿入

著者: 大蔵幹彦

ページ範囲:P.1241 - P.1243

必要な器具と準備
 Swan-Ganzカテーテルは機能,挿入部位,カテーテルサイズにより種々のタイプがあるので,目的とするカテーテルを選択する.
 ①モニター装置:心電図,圧モニターが必要.

静脈切開

著者: 鉢呂芳一 ,   森下清文 ,   安倍十三夫

ページ範囲:P.1245 - P.1248

はじめに
 静脈確保は点滴投与のための必須手技であるばかりでなく,救急処置の第1歩としても重要な基本的手技の1つである.静脈確保の方法としては静脈の経皮的穿刺もしくは静脈切開があるが,最近では経皮的アプローチを容易に行うための各種キットが発達したため,臨床上ではもっぱら経皮的穿刺により静脈は確保されている.しかしながら,小児や表在血管が乏しい成人などで経皮的諸方法が困難な場合に,静脈切開法が静脈確保の第1選択になりうる.

動脈穿刺

著者: 浦山博

ページ範囲:P.1249 - P.1253

適応
 1.一時的動脈穿刺の適応
 ①血液ガス分析などで動脈血採血が必要な時.
 ②薬剤の局所の動脈内注入が必要な時.

心嚢穿刺

著者: 石川進 ,   森下靖雄

ページ範囲:P.1255 - P.1257

はじめに
 心嚢穿刺の主な適応は急性の心タンポナーデの解除および心嚢液の排除による血行動態の改善である.本稿では本手技の安全かつ迅速な実施と,合併損傷の予防に関してそのポイントを中心に述べる.

胸腔穿刺・胸腔ドレナージ

著者: 杉尾賢二 ,   北村昌之 ,   小野原俊博 ,   長谷川博文 ,   谷川治

ページ範囲:P.1259 - P.1261

解剖
 胸腔穿刺を行う上で肋間の解剖は重要である.肋間は外肋間筋,内肋間筋,最内肋間筋で構成され,内肋間筋と最内肋間筋の間を肋間動脈,肋間静脈,肋間神経が肋骨内面の下縁(肋間溝)を上から静脈,動脈,神経の順で走っている.さらに肋間動静脈は中腋窩線付近から分枝を出し,下位肋骨の上縁に沿って走っている.つまり,中腋窩線より背側では肋骨下縁を走行しているが,中腋窩線より前方では肋骨上下縁を走行している(図1).

腹腔穿刺・腹腔ドレナージ

著者: 岩瀬博之 ,   渡部脩

ページ範囲:P.1263 - P.1265

はじめに
 腹腔内に生理的量を越えて体液が貯留する状態を腹水と呼ぶ.その原因は肝障害などの良性疾患,癌性腹膜炎などによる悪性疾患など様々である.腹水穿刺はこれを採取し,性状から原因を明らかにする診断的穿刺と廃液,薬剤投与に結びつける治療的穿刺に大別される.

経皮的膿瘍ドレナージ

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.1267 - P.1270

はじめに
 皮膚を切開し,膿瘍を排膿することは外科手技の基本である.膿瘍の形成する場所,1)浅在皮下,2)浅在皮下よりやや深部,3)さらに深部の腹腔内や胸腔内により方法や注意点が異なる.
 最近では肝膿瘍や術後の腹腔内膿瘍でもエコーガイドにより,ベッドサイドで比較的安全に確実に膿瘍ドレナージが可能である.それぞれの方法や注意点を膿瘍形成場所に分けて述べる.

経皮経肝的胆道ドレナージ(PTBD)

著者: 馬場秀文

ページ範囲:P.1271 - P.1274

はじめに
 閉塞性黄疸に対して経皮経肝的胆道ドレナージ(PTBD)は安全確実な減黄術として開発され,閉塞部位の診断ならびに内瘻化のためのステント留置といった面でも利用されるようになってきた1).今回PTBDの基本的手技およびそのコツについて記載する.

肝腫瘍生検

著者: 權雅憲 ,   関寿人

ページ範囲:P.1275 - P.1279

はじめに
 肝生検はびまん性肝疾患の進行度や肝内占拠性病変の組織学的確定診断に広く用いられ,肝疾患の病態解明に大きく寄与してきた.従来は透視下あるいは腹腔鏡下に肝生検が施行されてきたが,超音波装置の進歩,普及により超音波ガイド下に肝生検が施行されるようになった.超音波ガイドにより穿刺経路をリアルタイムに確認することで胆管や脈管を回避し,確実な肝内の狙撃生検が可能となった.本稿では外科基本手技としての肝腫瘍生検の手技と要点について述べる.

乳腺生検

著者: 難波清

ページ範囲:P.1281 - P.1284

はじめに
 近年の画像検診の普及や患者のQOLの向上などにより,乳腺領域における生検は触診から切開生検へという流れから,画像診断から低侵襲の生検(針生検や乳管内生検など)へと大きく様変わりした.それにより,乳腺領域の生検には高度な専門知識と経験,技術が要求されるようになってきた.生検は正しい病理診断を得るための重要なステップである.微妙な判断を要する時は乳腺専門医に委ねることが最良の選択と言える.
 本稿ではマンモグラフィ装置や乳腺専用の特殊な機器を持たなくても,少なくとも高周波プローブ付きの超音波装置さえあれば,一般外科領域でも対処可能で頻度も多いと思われる生検を選択し,その基本手技とコツについて解説した.

甲状腺の超音波誘導下穿刺吸引細胞診

著者: 植野映

ページ範囲:P.1285 - P.1289

はじめに
 甲状腺癌の質的な診断においては,シンチグラフィ,軟X線撮影は過去のものとなり,超音波診断と穿刺吸引細胞診が主流となった.中でも超音波誘導下の穿刺吸引細胞診は確定診断を得る上で外科系のレジデントが習得しなければならない一手技となっている.

Sengstaken-Blakemoreチューブ挿入

著者: 萩原優 ,   田中一郎 ,   小森山広幸

ページ範囲:P.1291 - P.1294

はじめに
 Sengstaken-Blakemore tube(以下,S-Bチューブ)は食道静脈瘤の緊急処置としては必須のチューブである.
 最近,内視鏡的治療の進歩に伴って,止血と治療を兼ね備えた内視鏡的硬化療法や内視鏡的静脈瘤結紮術により緊急出血例は治療されるようになり,S-Bチューブの使用範囲が限定されつつある.

胃管・イレウス管の挿入

著者: 下間正隆 ,   麦谷達郎 ,   山岡延樹 ,   相良幸彦 ,   松本真一 ,   山岸久一

ページ範囲:P.1295 - P.1299

胃管(経鼻胃管)の挿入
 1.必要な器具
 ①胃管:胃用サンプチューブ(アーガイルセイラムサンプチューブ®,日本シャーウッドなど)(14Fr,16Fr,18Fr)
 ②キシロカインゼリー®

経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)

著者: 中川国利 ,   鈴木幸正 ,   豊島隆 ,   桃野哲

ページ範囲:P.1301 - P.1305

はじめに
 脳血管障害などによる嚥下機能障害者の増加に伴い,中心静脈栄養と比較して管理が容易で生理的な経腸栄養が急速に普及しつつある1,2).経腸栄養の方法としては本邦では主に経鼻チューブを介して栄養剤を投与することが多いが,嚥下性肺炎や精神的ストレスが生じやすいなどの問題点が指摘されている3,4).そこで欧米では主に経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastro-stomy:PEG)が施行されており,我が国でも在宅医療に関心がもたれるに従い,PEGが普及しつつある.

血液浄化法

著者: 中島一朗 ,   赤松眞

ページ範囲:P.1307 - P.1310

はじめに
 今日の血液浄化療法は末期腎不全患者に対する血液透析のみならず肝不全,敗血症,高脂血症,自己免疫疾患などを対象とした血液濾過や吸着,さらには血漿交換などさまざまな疾患に対する治療法として確立されつつある1).そのなかでもベッドサイドで行う血液浄化療法は肝不全,心不全,呼吸不全などの重篤な病態を対象とすることが多く,全身状態への配慮が必要となる.本稿ではベッドサイドにおいて血液浄化療法を行う際の基本的手技や注意点,および合併症などを中心に述べる.

導尿・膀胱穿刺

著者: 広本宣彦 ,   小深田義勝 ,   井上勝己 ,   小川克之

ページ範囲:P.1311 - P.1314

はじめに
 導尿や膀胱穿刺は治療や診断のために膀胱内の尿を排出するために行われる.一般的にはまず導尿されることが多いが,なんらかの原因で導尿が不可能な場合に膀胱穿刺を行う.

カラーグラフ Robotic Surgery・1

胃食道逆流性疾患・食道アカラシアに対する腹腔鏡下手術

著者: 古川俊治 ,   小澤壯治 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1213 - P.1218

Intuitive Surgical社製内視鏡下手術支援装置“da Vinci®1)
 Master-slave manipulatorでは,術者の動作に対する鉗子の動きの縮小割合を自由に設定することが可能であり,しかも術者の生理的震動が鉗子の動きでは消失するため,縫合・結紮などの微細な手術操作は,直視下に行うよりも容易となる.
 Intuitive Surgical社(Mountain View, CA, USA)の開発したmaster-slave型内視鏡下手術支援装置“da Vinci®”は,先端部分に2つの回転可能な関節を持つ特殊な鉗子(Endo Wrist®)(図1)を用いた7自由度のシステムで,人の手首の上下および左右方向の柔軟な動きを模倣することができ,内視鏡下での体腔内手術操作を大きく術者の手指の動作に近づけた画期的なシステムである.

目で見る外科標準術式・10

大動脈周囲リンパ節郭清

著者: 喜多村陽一 ,   小熊英俊 ,   高崎健

ページ範囲:P.1315 - P.1321

はじめに
 胃癌手術において,大動脈周囲リンパ節郭清術は進行胃癌手術術式として広く行われるようになり,術式として確固とした地位を得たと言える1,2)
 しかし,どの進行程度の胃癌が本術式の適用となるのか,またどのようなアプローチでどの範囲の大動脈周囲を郭清することが最良か,未だ明確ではない3).そこで本稿においては,日頃当教室で行っている方法をシェーマを中心に呈示する.

病院めぐり

東芝病院外科

著者: 久米進一郎

ページ範囲:P.1322 - P.1322

 品川区は東京の城南地区に位置し,日本考古学発祥の地として名高い大森貝塚や旧東海道品川の宿として栄えた歴史があります.江戸時代から始まった埋め立てが進み,現在は海岸線は遠くなり,京浜工業地帯の流通の要所となっています.この数年,再開発地域に高層ビル群が建設され,都心から多くの事務所が移転し,情報発進都市として21世紀に羽ばたこうとしています.当院はJR京浜東北線大井町駅から徒歩6分,線路の東側に建っており車窓からご覧いただけます.昭和20年1月,東芝の従業員福祉施設として南品川の地に当院の前身「東芝大井病院」が設立されました.外科は昭和22年に併設され,戦後の混乱期における従業員医療と地域医療に貢献してきました.昭和39年,東大井の現地に移設「東芝中央病院」と改称,その後311床まで増床されましたが,本館建設から約30年が経過し,最先端の医用機器の導入が困難となったため,平成5年,近代化計画による新1号館が完成し,名称も「東芝病院」と改め,東芝グループの医療センターとして新たなスタートが切られました.「患者さん優先の医療」を合言葉に21世紀のインテリジェントホスピタルを目ざし,院内機能の効率化を計るとともにアメニティ豊かな空間造りに重点が置かれています.

東京都教職員互助会三楽病院外科

著者: 桐渕義康

ページ範囲:P.1323 - P.1323

 三楽病院は東京都の公立学校教職員の福利厚生に寄与するために昭和8年お茶の水,駿河台の高台に設立され現在に至っています.
 三楽病院という名前は,孟子の尽心篇の「君子有三楽」に由来し,教育者の心を汲み,病院の使命に鑑み,当時の東京市長によって命名されました.開院以来教職員を主たる対象とした所謂クローズドな職域病院であったためか,交通至便な都心にありながら一般には馴染みの薄い存在であったと思われます.

メディカルエッセー 『航跡』・45

医療事故は防げないのか?

著者: 木村健

ページ範囲:P.1324 - P.1325

 インターネットで送られてくる朝日,毎日,サンケイ,ニッケイ新聞と,衛星でオンタイムに放映されるNHKのニュースによって,ニッポンで起きた事件は即日つぶさに知ることができる.このところ,読売と毎日がキャンペーンをしている医療特集を読むと,連日の医療事故のレポートに気持ちは暗くなっていくばかりである.
 いまや当地のメディアにも報告され,世界に知られた横浜市立大学の手術患者取り違え事件に続いて,筑波大学のバイオプシー標本取り違えから起きた誤手術事件,青森で起きた左右趾取り違え手術など,外科関係の事件が頻発している.
 医療事故は,その発生過程に何らかの措置を加えると予防し得るものと,予防は絶対に不可能なものの2つのグループに分けられる.横浜市立大学や筑波大学,青森などは予防しえた事件である.

外科医に必要な脳神経外科common diseaseの知識・3

けいれん

著者: 松本健五

ページ範囲:P.1326 - P.1328

疾患の概念
 けいれんは筋肉の急激な,かつ不随意な収縮をいう.Convulsion,spasm,crampはいずれも日本語でけいれんと言われる.Convulsionは随意筋の急激な不随意な収縮である.範囲が広く,てんかんやヒステリーにみられるようなものにも使用される.これに対しspasmは比較的限局性,恒常的な不随意筋の収縮,例えば食道けいれん,喉頭けいれんなどに用いられる.しかし,顔面けいれん,眼瞼けいれんなど,随意筋にみられる筋収縮に対して慣用する場合もある.一方crampは痙直(こむらがえり)ともいい,有痛性の筋収縮に用いられる.
 Convulsionはてんかんの最もありふれた症状である.元来てんかんはこの全身けいれん発作(大発作)を指していたが,その後小発作や精神運動発作などと呼ばれるものも含められるようになった(表1).その分類や本態に関しては必ずしも意見の一致をみていない.てんかんにおけるけいれんは反復性の間代性(clonic)けいれんと持続性の強直性(tonic)けいれんの2つに分けられる.しかし,これらが単独にくることは稀であり,両者を伴う強直間代発作が日常診療で最もよくみられる.この全身けいれん発作は中枢神経に異常が発生したことを警告する症状であり,意識障害を伴っていることが多く,的確な処置を必要とする.

麻酔の基本戦略・2

脊椎麻酔(1)

著者: 稲田英一

ページ範囲:P.1329 - P.1334

 目標1・脊椎麻酔の危険性について認謝する.
 2.脊椎麻酔の適応について列挙できる.
 3.脊椎麻酔の禁忌を列挙できる.
 4.主な術式で必要な麻酔高について述べることができる.

Expert Lecture for Clinician

革新的治療法「PPH」の可能性

著者: 日高久光 ,   福田康彦 ,   寺本龍生

ページ範囲:P.1335 - P.1342

 寺本(司会):「革新的治療法「PPH」の可能性」というテーマです.ジョンソン・エンド・ジョンソン社が発売しておりますPPH(procedure forprolapse and hemorrhoids),すなわちステイプラーを使って痔核には手をつけないで高位結紮を確実に行うという手術方法で,現在ヨーロッパを中心にして急速に普及しており,わが国においても発売後わずか7か月間ですが急速な普及をみております.本日はお2人の演者にお話いただいたあと,会場の先生方には質疑とアンサーパッドを用いたアンケートをお願いしたいと考えております.

臨床報告・1

大腸癌の孤立性尾状葉転移の1切除例

著者: 山本聖一郎 ,   固武健二郎 ,   尾澤巖 ,   菱沼正一 ,   尾形佳郎 ,   小山靖夫

ページ範囲:P.1343 - P.1345

はじめに
 画像診断の技術が進歩した今日においても大腸癌の尾状葉への孤立性転移の報告は稀であり,その臨床的特徴は不明である.筆者らの検索しえた限りでは大腸癌の孤立性尾状葉転移の報告は本邦では10例のみであり1〜10),欧米の文献には報告例を見出せなかった.筆者らはS状結腸癌術後,異時性に発見され切除しえた孤立性尾状葉転移の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

腹膜垂による腸閉塞の1例

著者: 有川俊治 ,   長谷川智巳 ,   大原忠敬 ,   莇隆 ,   高橋洋 ,   中村敬

ページ範囲:P.1347 - P.1349

はじめに
 腸閉塞は種々の原因によって引き起こされるが,今回筆者らは腹膜垂どうしの癒着により腸閉塞をきたすという稀な症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

鼠径ヘルニアが併存したSpigelヘルニアの1例

著者: 三宅敬二郎 ,   橋本哲明 ,   三宅俊三

ページ範囲:P.1351 - P.1354

はじめに
 Spigelヘルニア(以下,本症)は,きわめて稀な疾患であり,術前診断が困難とされている.また,その発症にはSpigel腱膜の解剖学的特徴に加え,加齢などによる組織の脆弱化や肥満などの増悪因子が関与していると考えられている1〜9).今回,筆者らはイレウスで発症し,術前診断しえた1例を経験した.自験例は両側鼠径ヘルニアが併存していたが,検索しえた限り同様な報告例はない.そこで若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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