icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科55巻3号

2000年03月発行

雑誌目次

特集 Sentinel Node Navigation Surgery

[エディトリアル]Sentinel Node Conceptは癌の外科治療を変えられるか—その理論と歴史的背景

著者: 北島政樹 ,   北川雄光

ページ範囲:P.281 - P.286

はじめに
 固形癌はある段階を境に全身病となる.この厳然たる事実は外科手術を含む局所療法の限界を示すものである.これまで癌の臨床に携る多くの先達がこの「境」を正確に把握する手段を求めて努力してきた.またあるときは,その境を超えた癌にメスをもって挑もうともしてきた.しかし,その境はどこにあるのか,それをどのように見極めることができるのか,答えはいまだ謎である.
 われわれ外科医は,癌病巣を切除する際に常にこの見えない敵「微小転移」の存在に脅え,これに対峙する方法を求めてきた.予防的系統的リンパ節郭清はその結果確立された癌外科治療の大きな柱であるといえる.外科病棟では執刀医と医師の間にこんな会話がごく日常的に交わされている.

欧米におけるSentinel Node Navigation Surgeryの現況

著者: 三輪晃一 ,   津川浩一郎

ページ範囲:P.287 - P.294

 SLN(sentinel lymph node)の同定,そして生検による組織学的検索は,領域リンパ節への転移の有無を正確に予測する診断法として,現在,注目を集めている.この研究で先端を行く欧米では,陰茎癌にはじまり陰唇癌,悪性黒色腫,そして乳癌においてその有用性が証明され,潜在性リンパ節転移の効率の良い診断,リンパ節郭清程度の指標,術後補助療法の適応決定などで臨床への応用が進行している.乳癌では腋窩リンパ節郭清の省略化の比較臨床試験が展開中である.また,悪性黒色腫では,SLNの転移状況に応じて,その領域のリンパ節郭清を施行することの妥当性が検討されている.さらに,大腸癌ではSLN同定の研究が模索され,内臓癌でも急速にSLN概念が普及し,研究が躍進することが予想される.

乳癌におけるSentinel Nodeの術中転移診断

著者: 元村和由 ,   菰池佳史 ,   稲治英生 ,   小山博記

ページ範囲:P.295 - P.299

 Sentinel nodeの術中転移診断において,通常の迅速組織診ではsensitivityが低いために,多数切片を作成し,あるいは免疫組織染色を併用する,などの詳細な検索が必要となる.一方,捺印細胞診は短時間で正確に転移状況を判定できるばかりか,永久標本で見逃される微小転移を検出でき,術中検索法として有用であると考えられる.

乳癌に対するSentinel Node Navigation Surgeryの現状と未来

著者: 井本滋 ,   池田恢 ,   村上康二 ,   福喜多博義 ,   海老原敏 ,   松本武夫 ,   森山紀之 ,   落合淳志 ,   長谷部孝裕

ページ範囲:P.301 - P.305

 「Sentinel node navigation surgery」すなわち「sentinel node biopsy(以下,SNB)」は,乳癌の外科療法におけるいわゆる標準的「腋窩リンパ節郭清(axillar lymph nodes dissection:ALND)」に衝撃を与えた.乳癌でのSNBは1990年代前半に始まったが,今や日米欧の先進施設ではその手技がほぼ確立され,診断精度も100%近い.欧米ではSNBとALNDを比較した大規模な臨床試験が進行中であり,SNBの真価が問われようとしている.本稿では当院で昨年前半に確立したSNBとその後の実地医療への導入を概説し,日本におけるSNBの現状をふまえてその未来を展望する.

消化器癌に対するRadio-guided Sentinel Node Navigation Surgeryの開発と低侵襲手術への応用

著者: 北川雄光 ,   藤井博史 ,   向井万起男 ,   安藤暢敏 ,   久保田哲朗 ,   熊井浩一郎 ,   池田正 ,   渡邊昌彦 ,   大上正裕 ,   大谷吉秀 ,   小澤壯治 ,   古川俊治 ,   長谷川博俊 ,   中原理紀 ,   久保敦司 ,   北島政樹

ページ範囲:P.307 - P.315

 乳癌や悪性黒色腫においてその臨床的有用性が実証されたsentinel node navigation surgeryも,消化器癌についてはその仮説の妥当性そのものが検証されていない.消化管リンパ流の多様性や,消化器癌における跳躍転移の頻度からその臨床応用に否定的な見方をする専門家も多い.われわれは,99mTc-tin colloidを術前内視鏡下に消化器癌病変直下の粘膜下層に注入し,術中ガンマプローブを用いてsentinel nodeを同定する手法を開発し,消化器癌におけるsentinel node conceptの妥当性の検証を行い良好な成績を得ている.さらに,内視鏡下手術に本法を導入した新しい消化器癌の低侵襲手術を開発し,臨床実地に向けた検討を進めている.本法を用いた消化器癌根治術の合理的個別化は,従来の画一的予防的リンパ節郭清に取って代わる新しい消化器癌外科治療の方向性を示すものと考えている.

癌のリンパ節微小転移からみたSentinel Node Navigation Surgery

著者: 夏越祥次 ,   愛甲孝 ,   東泰志 ,   崎田浩徳 ,   松本正隆 ,   中条哲浩 ,   中島三郎 ,   貴島文雄

ページ範囲:P.317 - P.321

 Sentinel node navigation surgeryはリンパ流を基盤とした理論的リンパ節郭清になりうる可能性がある.そのためにはリンパ節のみならず,原発巣からリンパ管への侵入,壁内リンパ管,結合組織内の壁外リンパ管を経てリンパ節微小転移巣の形成というsentinel nodeに至る経路についても考慮する必要がある.リンパ節微小転移の存在は様々な方法により明らかになってきている.臨床的意義に関しては予後と相関する報告が多いがさらに追求する必要がある,また,sentinel nodeを同定する場合には,手技上の問題の克服と,微小転移を念頭に置いた臨床応用可能な術中診断法の確立が望まれる.

本邦における皮膚原発悪性黒色腫に対するSentinel Node Navigation Surgeryの現況

著者: 山崎直也

ページ範囲:P.323 - P.328

 1992年,Morton,Cochranらは皮膚悪性黒色腫の治療にintraoperative lymphatic mappingとsentinel node biopsyという概念を導入し,その有用性について報告した.この方法の確立によって,所属リンパ節郭清の適応がより厳密に規定される可能性があり注目されている.本邦においては,1997年頃より,主に下肢原発の肢端黒子型黒色腫に対して,vital dyeを用いた色素法によるintraoperative lymphatic mappingとsentinel node biopsyが始まり,ようやく国内の数施設でその手技が確立されつつあるというのが現状である.今後は,下肢だけでなく全身の原発巣に対して,核医学的な手法を併用した幅広い応用が必要となると考えられる.

核医学からみたSentinel Node Navigation Surgeryの将来像—安全な普及のためのガイドライン

著者: 遠藤啓吾

ページ範囲:P.329 - P.333

 日本核医学会では「センチネルリンパ節の核医学的検出法ガイドライン」を作成した.投与する99mTcは少量だが,ガンマプローブと呼ばれる小型ガンマ線検出器を用いて手術室にて99mTcを検出するため,職員の理解が欠かせない.解決すべき課題は多いが,本法は安全で,患者に役立つ検査法であり,多くの病院に普及するものと期待される.

カラーグラフ 早期胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術・1

鏡視下における迷走神経の確認方綾と温存手技

著者: 小嶋一幸 ,   市川度 ,   仁瓶善郎 ,   杉原健一

ページ範囲:P.275 - P.279

はじめに
 胃癌に対する腹腔鏡下手術は,
 1)リンパ節郭清を伴わない腹腔鏡下胃部分切除術(LWR:laparoscopic wedge resection),腹腔鏡下胃内手術(LIGS:laparoscopic intragastricsurgery)

Current Topics

当院における配布型カルテ開示の実際

著者: 原春久

ページ範囲:P.335 - P.339

はじめに
 一般的にカルテ開示は患者の請求に従って行われるものであり,カルテ開示の法制化は法律により患者にカルテ開示の請求権を保障することである.当院ではこのような患者の請求に従って行うカルテ開示とは異なり,すべての患者を対象にカルテを配布し,閲覧を患者の意思に任せる「配布型カルテ開示」を行っており,患者の高い評価を得ているので紹介する.

病院めぐり

本島総合病院外科

著者: 山田修司

ページ範囲:P.342 - P.342

 本島総合病院は,群馬県の東部の太田市にあります.太田市は昭和30年代より自動車産業の躍進や電機メーカーの誘致により高度発展を遂げた人口約15万人の工業都市です.当病院は約350年前の江戸時代初期の本島数馬に発し,現院長が第13代目であります.昭和16年に35床で病院認可を得,昭和40年104床で特定医療法人となりました.さらに平成元年より総合病院となり,現在346床となっています.そのうち外科は55床でありますが,いつも満床に近く他の病棟を借りてやりくりしています.このように歴史が古く,群馬県東毛地区の中心を担う病院であり,先輩諸氏の努力により,昔より「本島」に行けばなんとかしてくれると言われ,昼夜問わず地域住民に愛されています.また診療日は木曜日が半日,金曜日が休診で,土曜日と日曜日は全日診療を行っているため,患者さんだけでなく他の医療機関からの紹介も多く,期待を寄せられていることにわれわれ外科スタッフも十分責任を感じています.
 当院外科は,現在院長の本島悌司以下,山田修司,登田尚敬,大岩正夫,後藤与四之の5名です.さらに非常勤で群馬大学第1外科,慈恵医大第2外科や東京大学第2内科の応援を受け,内視鏡手術を幅広く行っています.また,日本外科学会および日本消化器外科学会の認定医修練施設にもなっており,若い医師が各大学の医局からの派遣で研修を積んでいます.

浦安市川市民病院外科

著者: 片見厚夫

ページ範囲:P.343 - P.343

 千葉県浦安市は,旧江戸川をはさんで東京都のすぐ東側の東京湾岸沿いに位置し,かつては山本周五郎の小説「青べか物語」の舞台として,現在では東京ディズニーランドの町として大変有名なところです.
 浦安市川市民病院は,昭和21年に浦安町南行徳町組合立国民健康保健直営葛南病院として開設されました.その後急速な都市化の進展により浦安は町から市となり,南行徳町も市川市と合併したため,病院の名称も昭和56年より浦安市市川市病院組合葛南病院となり,さらに平成9年より市民の公募により浦安市市川市病院組合浦安市川市民病院となり,より一層市民に身近で信頼される病院を目指し,現在に至っています.

メディカルエッセー 『航跡』・40

麻酔科教授の橇遊び

著者: 木村健

ページ範囲:P.344 - P.345

 アイオワ大学病院では,朝一番の予定手術は7時15分に執刀開始と決められている.6時半を過ぎると,30の手術室に続々患者が運び込まれ,一斉に麻酔がはじまる.各室入口のドアの横にあるシンクで,道具出し担当のテクニシャン達が手洗いをはじめる.1日のうちで手術室が最も活気にあふれるひとときである.
 ウィークエンドの明けた月曜日,いつものように7時過ぎには小児外科が使っている12号室に足を踏み入れる.手術台の上では患児の顔に麻酔のマスクがのせられて導入の真っ最中.室内を忙しく動き回っている外科研修医,ナース,テクニシャン,麻酔科スタッフ達から「グッドモーニング」の洗礼を浴びる.「ヘィ,ウィークエンドはどうだった?ずいぶん日焼けしてるじゃない.ほう,カリブ海へ1週間も行ってたの.道理でね.どれどれ,もう(患児は)眠ったかい?ぼつぼつ手を洗うとするか」.13年間,月曜日の朝が来るたび同じ手術室の同じ風景の中で,役者こそ違え同じ役柄の登場人物達とあきもせず同じ会話を繰り返してきた.最初の数年はひと言モノを言うたび相手から戻ってくる反応は,肌を刺し貫く針のように感じられたものである.必然的に寡黙となり,ジョークを連発するようなムードではなかった.相手の言葉にトゲがあるわけでなく,ただそう感じただけのことであった.

外科医に必要な泌尿器科common diseaseの知識・8

尿路損傷(2)

著者: 吉村一良

ページ範囲:P.348 - P.349

膀胱損傷
 交通事故や労災などの事故による骨盤骨折に伴いやすい.また下腹部への強い力が働いた時(特に膀胱充満時)や内視鏡手術時に起きることがある.膀胱の腹膜内膀胱破裂と腹膜外破裂の鑑別が重要である.

外科医に必要な整形外科common diseaseの知識・10

骨粗鬆症

著者: 高田潤一 ,   石井清一

ページ範囲:P.350 - P.351

疾患の概念
 骨粗鬆症は,「低骨量で,かつ骨組織の微細構造が変化し,そのため骨が脆くなり骨折しやすくなった病態」と定義される.さらに骨粗鬆症は原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症に分類される.続発性骨粗鬆症には内分泌性,栄養性,薬物性,不動性などがある.
 骨粗鬆症を診断する際に最も大切なことは鑑別診断である.低骨量を示す疾患は原発性骨粗鬆症に限らない.骨は運動器であるとともに,代表的なカルシウム貯蔵器官である.したがって,カルシウム代謝に関与する臓器やホルモンに異常が起こると骨はその影響を受ける.先述した続発性骨粗鬆症のほか,骨軟化症,副甲状腺機能亢進症,悪性腫瘍の骨転移,多発性骨髄腫などの疾患が存在することを念頭におかなければならない.

私の工夫—手術・処置・手順

直腸切断術における右寄りの皮膚切開

著者: 安達洋祐 ,   北野正剛 ,   藤川由美子

ページ範囲:P.353 - P.353

 直腸がんに対する手術は,肛門を温存する低位前方切除術が第一選択である.しかし,進行がんが肛門近くにある場合は,腹会陰式直腸切断術の適応となる.一般に直腸切断術では,下腹部正中切開で開腹し,S状結腸ストーマは左下腹部に造設する1,2).ところが,小柄な日本人では,正中の開腹創とストーマが近いため,ストーマ装具の貼付やストーマケアに,少なからず支障をきたすことがある.これは,皮膚切開を臍の右側によけても,切開が正中にあるかぎり解決できない.
 そこで私たちは,下腹部の右側に寄った斜めの皮膚切開を行い,切開創がストーマ造設部位から,十分に離れるよう工夫している.すなわち,臍の右で約2〜3cmの部位から,恥骨上縁の正中に向かって,弧状もしくはまっすぐの皮膚切開を行う.皮下脂肪を斜めに切り込み,腹直筋前鞘の正中にいたり,開腹は通常通り下腹部の正中で行う.したがって,以降の手術操作や術野の展開には全く影響しない.閉腹は通常通りに行い,皮膚の縫合糸の結び目は,ストーマと反対の右側になるようにする.

目で見る外科標準術式・3

食道亜全摘胃管再建

著者: 安藤暢敏 ,   小澤壯治 ,   北川雄光 ,   北島政樹

ページ範囲:P.355 - P.362

はじめに
 食道亜全摘胃管再建術は本邦における胸部食道癌に対する最も標準的な切除再建術である.その多くは右開胸開腹により行われるが,右開胸下の食道亜全摘,縦隔郭清については,本項の共通項目なのでその手順を簡潔に述べるにとどめ,本稿では胃管再建について詳述する.

臨床研究

透析用ブラッドアクセスとしてのポリウレタングラフトの使用成績

著者: 中尾篤典 ,   宮崎雅史 ,   岡良成 ,   松田浩明 ,   田中紀章 ,   国米欣明

ページ範囲:P.365 - P.369

はじめに
 人工透析用のブラッドアクセスとして人工材料を利用した代用血管の移植が増加しつつある.人工血管としては従来,expanded poly-tetrafluoro-ethylene graft(E-PTFE)が頻用されており,生体適合性,長期開存性に優れているが1,2),術後の浮腫や血清腫を生じやすく3),穿刺部よりの出血が止まりにくい欠点がある.また,仮性内膜(パンヌス)の増生やそれに伴う吻合部狭窄も比較的早期に出現し2),改良が待たれていた.最近開発されたポリウレタンを素材としたThoratec VascularAccess Graft(TVAG;Thoratec Laboratories Cor-poration, Pleasanton, CA, USA)は非常に弾力性に富んだ性質を持つ新しい人工血管であり,最近ブラッドアクセスに用いられるようになってきた4〜7).当院でも1998年以来TVAGを使用しており,移植21症例につきその成績を検討したので報告する.またその経験の中で,TVAGの材質的特徴である強い弾力性により発生する血管吻合部のトラブルを数例経験した.われわれはTVAGの欠点ともいえるこの合併症を克服するために,E-PTFEを吻合部のみに使用する方法を考案し好成績を得ているので,その手技も併せて示すことにする.

Open tension-freeヘルニア修復術における局所浸潤麻酔法の有用性について

著者: 山本俊二 ,   前田敏樹 ,   内田靖之 ,   矢部慎一 ,   中野正人 ,   坂野茂 ,   山本正之

ページ範囲:P.371 - P.374

はじめに
 成人の鼠径ヘルニアに対する麻酔方法としては,通常,腰椎麻酔や硬膜外麻酔が行われているが1),day surgeryを行ううえでは,局所麻酔が有用であるとの報告がある2,3).今回われわれは,成人鼠径ヘルニアに対するメッシュを用いたopentension-freeヘルニア修復術の麻酔方法として,腰椎麻酔と局所浸潤麻酔とを比較検討したので,報告する.

臨床報告・1

仮性動脈瘤を形成した下腿の外傷性動静脈瘻の1例

著者: 重松久之 ,   浜口潔

ページ範囲:P.377 - P.379

はじめに
 近年,交通事故,労働災害,スポーツ外傷の増加とともに四肢外傷に伴う血管損傷も増加してきている1).これら血管損傷はその受傷機転にもよるが,急性期,慢性期においてさまざまな病態を呈することとなる.いずれにしても,適切な治療が施行されなければ,大量出血,血栓塞栓症,損傷部末梢の虚血症状などの重篤な合併症を引き起こす可能性がある.今回われわれは,鎌による左下腿の切創処置後に仮性動脈瘤を形成した後脛骨動静脈瘻の1例を経験したので報告する.

イレウス管の先端が小腸内で結節を形成した1例

著者: 下間正隆 ,   庄林智 ,   小野公裕 ,   葛西恭一 ,   赤田渉 ,   山岸久一

ページ範囲:P.381 - P.384

はじめに
 消化器外科の臨床において,イレウス患者にイレウス管を挿入することは日常しばしば行われ,いずれも問題なくその管理が行われている.
 しかし最近われわれは,術後イレウス患者に挿入したイレウス管の先端が,小腸内で経日的にループから結節を形成した症例を経験したので報告する.

潜在性に経過し動静脈瘻を形成した破裂性感染性腸骨動脈瘤の1例

著者: 長谷川毅 ,   宮本康二 ,   佐藤裕英 ,   清水明 ,   瀬戸口誠 ,   嘉村正徳

ページ範囲:P.385 - P.389

はじめに
 腹部大動脈瘤はしばしば破裂し予後不良となるが,時に破裂部が小さく周囲組織に被包され,数週ないし数か月以上にわたり無症状で経過し,腹部CT検査などで偶然発見される場合があり,最近このような潜在性破裂例が注目されている1).筆者らは比較的稀な感染性腸骨動脈瘤で,1か月余の経過中に再破裂し,動静脈瘻を形成し治療に難渋した例を経験したので報告する.

胸椎骨折により右胸腔内に大量出血をきたした1例

著者: 金子隆幸 ,   小林広典 ,   生田義明 ,   杉原重哲 ,   江上哲弘 ,   徳永正晴

ページ範囲:P.391 - P.394

はじめに
 86歳の患者が,右胸腔内に大量出血を生じショック状態で搬送され,高度の呼吸困難と激しい胸背部痛を訴えていた.緊急で胸部CTと血管造影検査を行ったが,出血源は不明であった.胸腔ドレナージと輸血にて保存的に治療したが,出血が持続するため,2週間後試験開胸したところ,第6胸椎が前方に脱臼骨折し,同部から出血していた.今回調べた範囲では,胸椎骨折による胸腔内出血の報告は見あたらず,稀な病態と考えられるため,成因について検討し報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?