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特集 輸液:その組成・アクセス・管理
基礎疾患に応じた輸液—(5)糖尿病
著者: 八木雅夫1 浦出雅昭1 高村博之1 永井昇1 三輪晃一2
所属機関: 1公立松任石川中央病院外科 2金沢大学医学部第2外科
ページ範囲:P.610 - P.612
文献購入ページに移動生体に手術侵襲や感染などのストレスが加わると,カテコールアミン,グルココルチコイド,グルガゴンなどのインスリン拮抗・異化ストレスホルモンレベルが上昇し,貯蔵脂肪から脂肪酸とグリセロールが放出される.肝臓貯蔵グリコーゲンはブドウ糖に分解され,筋肉組織からはアラニンなどの糖新生基質が放出され,糖新生は亢進する.その結果,高血糖,高アミノ酸血症,高遊離脂肪酸血症やケトン血症が見られ,体蛋白は喪失し,体重は減少する.この状態を外科的糖尿状態(surgi—cal diabetes)と称するが,エネルギー基質とタンパク質が適正に補給されないと,栄養障害から最終的には免疫機能や呼吸循環機能などの全身の機能障害に陥る.
未治療の糖尿病患者では,インスリンの絶対的または相対的作用不足による日常的な異化亢進のため,非ストレス下でも高血糖,高遊離脂肪酸血症やケトン血症が見られる1).このような状態にストレスが加わると異化亢進と代謝失調はさらに深刻化する。糖尿病患者の輸液療法の目的は,インスリンを併用し,エネルギー基質とタンパク質を適正に補給し,術中,術後あるいは絶食期間の異化亢進と体蛋白の喪失を抑制し,全身の機能障害ならびに糖尿病に起因する糖尿病性ケトアシドーシスや非ケトン性高浸透圧性昏睡などの重篤な代謝失調状態を治療・防止することである.
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