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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科55巻6号

2000年06月発行

雑誌目次

特集 胃全摘後の消化管再建—術式のベストチョイス

〔エディトリアル〕胃全摘後の再建術について

著者: 内田雄三

ページ範囲:P.669 - P.674

 胃全摘によって失われる機能のうち,手術によって再建できるものは,①食物が通過するルート,②胃袋としての機能(貯留能,撹拌,適当な速さでの排出),③逆流防止機能,のみである.胃全摘後の再建術式は食物が十二指腸を通過するか否かにより3型に大別される.食物が十二指腸を通過することの病態生理学的意義の評価は重要である.代用胃の貯留能を増大させる目的でのpouch形成は間置腸管の近位側,あるいは遠位側にあるべきかは,貯留・排出能の動的観察と逆流防止の両面から総合評価されるべきである.逆流防止機能は一定の長さの空腸の蠕動運動と弁様構造の形成によるが,背臥位では前者の効果のほうがより確実である.

胃全摘後Roux-en Y再建法

著者: 太田惠一朗 ,   松平秀樹 ,   大山繁和 ,   高橋孝 ,   武藤徹一郎 ,   中島聰總

ページ範囲:P.677 - P.684

 1897年のSchlatterによる胃全摘の成功以来,胃全摘後の再建方法はありとあらゆる方法が考案され,施行されてきた.しかし,「こうでなければならない」という再建法は存在せず,標準化はなされていないのが現状である.胃全摘後であっても長期生存する症例は存在し,術後長期間経過すれば胃全摘後の障害が生じてくる.なるべくQOLの損なわれない再建術式が望ましく,可能な限り食事は生理的ルートに近いほうが理想的である.筆者らは胃全摘後は空腸間置移植,doubletract,Roux-en Yの3再建術式を基本としており,根治度に応じて高いほうからこの順で採用している.また,高齢者や長期生存の望めない症例にはRoux-en Y法を適用する.

胃全摘後の小腸間置法による再建

著者: 山口浩和 ,   上西紀夫

ページ範囲:P.685 - P.690

 胃全摘後の再建法は実に様々なものがある.いかに失われた胃の機能を補うか,消化吸収に有利な再建法とするか,胃切除後の障害を軽減するかといった点が問題となる.小腸間置法は食物が十二指腸を通過する生理的経路を保つため,postcibal asynchronismの問題を解決し,消化液と食物の混和が良く,消化,吸収に有利と考えられる.しかし適度な貯留能と排出遅延による滞留感,食道逆流は表裏一体のものであり,その調節が重要である.これらの点を解決するため犠牲腸管作製による挙上腸管の血流・神経温存,空腸嚢作製による代用胃としての貯留能の補填が工夫されている.

空腸パウチ・ダブルトラクト法

著者: 近藤泰理

ページ範囲:P.691 - P.697

 ダブルトラクト法は食物の通過と貯留能を重視する術式であり,Roux-en Y法(R-Y)と小腸間置法の双方の利点を持つと考えられる.ダブルトラクト法はR-Yに比べて複雑な術式とはいえず,安全性の高い生理的な再建法であり,長期生存の期待される症例に対しては胃全摘後の消化管再建の第1選択術式でなければならないと考えられる.筆者らの行っている空腸パウチを作製したダブルトラクト法は器械吻合器の使用により手術時間が短縮し,R-Yに比べて血液学的検査に差がみられなかったが,術後の体重減少が少ない良好な結果が得られた.ダブルトラクト再建ならびにパウチ作製実施上のポイント,コツについて解説した.

早期胃癌に対する下部食道括約筋・幽門輪温存胃亜全摘兼空腸間置術—特に生理機能評価について

著者: 富田凉一 ,   藤崎滋 ,   丹正勝久 ,   福澤正洋

ページ範囲:P.699 - P.706

 早期胃癌に対する下部食道括約筋(LES)・幽門輪温存胃亜全摘兼有茎空腸間置術と胃全摘兼有茎空腸間置術について,術後の逆流性食道炎と早期ダンピング症候群の発生を機能面から比較検討した.その結果,前者に比較して後者では逆流性食道炎と早期ダンピング症候群の発生が多く,LES長の短縮とLES圧の低下,下部食道のアルカリ逆流,再建空腸内容排出時間の短縮を認めた.また,血中ガストリン値が経口摂取前および摂取15分後ともに低値を示した.したがって,胃全摘兼有茎空腸間置術例よりもLES・幽門輪温存胃亜全摘兼空腸間置術はより生理的な術式と評価することができた.

Pseudo fornixを有する胃全摘後His角形成pouch間置術

著者: 池田正視 ,   上田哲郎 ,   山形邦嘉 ,   若林峰生 ,   岡田啓二 ,   馬越俊輔 ,   大橋佳弘 ,   高塚純 ,   柴忠明 ,   山口宗之

ページ範囲:P.709 - P.717

 近年,早期癌の増加に伴い胃切除後に長期生存する症例が増え,胃全摘後のRoux-en Y型再建法にもpancreaticocibal asynchronyなどいくつかの問題点が指摘されている.現在,それを解決すべく,生理的再建法であるpouch間置術が多くの施設で施行されているが,逆流感やもたれ感などの愁訴が出現し,必ずしも良好なQOLが得られない症例が少なくない.筆者らは生理的再建法である通常のpouch間置術にdouble stapling techniqueを導入し,隔壁のないpouchとすることでHis角,pseudo fornixを持ち,食道へのアルカリ逆流の少ないpouch間置術を可能とし,術後QOLを向上しえた.手術手技とその特徴と意義について述べる.

胃全摘後回結腸間置による再建術

著者: 柴田純祐 ,   藤野光廣 ,   川崎誠康

ページ範囲:P.719 - P.726

 胃全摘後Bauhin弁による逆流の防止と結腸のreservoir機能に期待して回結腸間置術を行っている.移植腸管は回結腸動脈を栄養血管とした回腸7cm,結腸15cmでこれを反時計方向に回転し,食道十二指腸(幽門)間に挙上する.術後愁訴を1年以上経過した時点でRoux-Y法と比較すると,逆流性食道炎は0%と19%でBauhin弁により完全に防止された.ダンピング症候群は21.7%と23.8%と同程度であったが重症例はなかった.本術式の特徴は,①小さな短い腸管で逆流が防止される,②血管系が太くてしっかりしている,③腸管の屈折や捻転が少ない,④結腸による貯留能にも期待できる術式である.

幽門温存・迷走神経再建近位側胃亜全摘術

著者: 小棚木均 ,   伊藤正直 ,   小山研二 ,   小玉雅志

ページ範囲:P.727 - P.733

 幽門温存近位側胃亜全摘術は,1)生理的経路での食物通過をはかり,2)十分な食物貯留空間を得,3)食物貯留能を保ち,4)食物の急速な十二指腸への排出を防止し,5)十二指腸液の代用胃への逆流を防止することを目的としている.通常の胃全摘とは,1)幽門輪から1.5cmの幽門を残す,2)迷走神経を切除後に吻合再建する,⑤リンパ節を郭清しないなどが異なる.本手術施行後には,胃全摘術後障害の多くが予防・軽減されることから,幽門および⑤リンパ節に癌が想定されない胃上部の癌に対して推奨されるべき術式である.

カラーグラフ

早期直腸癌に対する自律神経全温存腹腔鏡補動下前方切除術

著者: 小嶋一幸 ,   市川度 ,   榎本雅之 ,   仁瓶善郎 ,   杉原健一

ページ範囲:P.661 - P.665

はじめに
 結腸・直腸癌に対する腹腔鏡手術は欧米ではrandomized studyが行われており,もはや標準手術の1つとなった感がある.本邦でも多数の施設で,良性疾患,早期癌を中心に急速に普及している.しかしながら,その手術手技は施設間で異なる部分も多く,標準手術手技の確立が求められている.われわれの施設では,腹腔鏡の手術であっても,開腹術と同様の剥離層,手順,および同等の郭清を行うことを前提に腹腔鏡手術の適応を決定してきた.したがって早期直腸癌においては,腹腔鏡下に自律神経を確実に全温存する手術を行っている.
 本稿では,早期直腸癌に対する自律神経全温存腹腔鏡補助下直腸前方切除術の手術手技,腹腔鏡下の自律神経系の見え方を中心に紹介する.

Current Topics

重粒子線治療の現状と将来展望

著者: 山田滋 ,   辻井博彦 ,   宮本忠昭 ,   鎌田正 ,   加藤博敏 ,   辻比呂志 ,   溝江純悦 ,   高山亘 ,   神津照雄

ページ範囲:P.735 - P.741

重粒子線の特徴
1.重粒子線とは
 図1は治療用に用いられている放射線を分類したものである.重粒子とは一般的に電子より重い粒子のことをいい,これを高速に加速したものは重粒子線と呼ばれる.これはさらに非荷電粒子線と荷電粒子線に分けられる.荷電粒子線はさらに陽子線,重イオン線,パイ中間子線の3つに分けられる.重イオン線は狭い意味で重粒子線と呼ばれることもある.重イオン線やパイ中間子線,中性子線は軌道に与える電離密度が高いので高LET線と称し,後述する生物学的効果が大きいという特徴を持つ.これに対し陽子線,電子線,光子線(X線,γ線など)は低LET線と呼ばれ,生物学的効果は小さい.重粒子線は,①線量分布が優れている,②生物学的効果が高いという2つの大きな特徴を有する1)

目で見る外科標準術式・6

幽門保存胃切除術

著者: 佐々木巌 ,   椎葉健一 ,   内藤広郎 ,   舟山祐士 ,   石井誠一 ,   福島浩平 ,   柴田近 ,   溝井賢幸 ,   児山香

ページ範囲:P.743 - P.749

はじめに
 幽門保存胃切除術(pylorus preserving gastrec-tomy:PPG)は槇ら1)により胃潰瘍に対する幽門温存機能手術として開発されたが,最近では早期胃癌に対する機能温存手術として広く行われている.本術式における幽門機能温存のポイントは幽門輪から1.5cmの幽門部を残して口側の残胃と吻合して消化管再建を行うもので,幽門機能が温存されることによりダンピング症状や逆流性食道炎の発生が少なく,従来のBillroth Ⅰ法,Ⅱ法に比べて良好な術後のQOLが期待される2,3).実際のPPGではリンパ節郭清度の違いにより,胃潰瘍に対する術式と同様の術式からD2リンパ節郭清に近い術式まで様々なものがある.本術式の手技的ポイントは幽門部周囲の血管・神経の処理法と胃・胃吻合に対する熟練度であり,その他の手術操作については従来の遠位側胃切除術とほぼ同様と考えてよい.

外科医に必要な眼科common diseaseの知識・1

眼外傷(Ⅰ)

著者: 嘉村由美

ページ範囲:P.750 - P.752

はじめに
 眼科救急疾患の中で眼外傷は重要な位置を占める.鈍的眼外傷,穿孔性眼外傷,異物,眼窩吹き抜け骨折,視神経管骨折など多岐にわたり,その症状も眼痛,視力低下(少しかすむ程度から光覚消失まで),複視など多彩である.

外科医に必要な泌尿器科common diseaseの知識・11

急性腎後性腎不全(腎瘻造設)

著者: 浅野友彦

ページ範囲:P.754 - P.755

概念
 腎後性腎不全は尿路の閉塞により腎機能が低下した状態である.上部尿路の閉塞によるものと,下部尿路(膀胱,前立腺,尿道)の閉塞によるものがあるが,外科領域においては大腸癌,胃癌などの局所浸潤,リンパ節転移などにより両側尿管が圧迫されて起こることが多い.したがって,今回は外科領域の悪性腫瘍が原因で腎後性腎不全に陥った場合を想定し,その概念,診断,治療について述べることとした.悪性腫瘍が原因である場合には尿管の閉塞は徐々に進行するので,尿管結石の時のような側腹部の激しい痛みが起こることは少なく,軽度の腎部違和感を訴えたり無症状であることが多い.腎機能としては,初期の段階ではまず尿の濃縮力が低下し,低張尿が排泄されるので,尿量は保たれているにもかかわらずクレアチニンは上昇する.その後,閉塞が進行するにつれて尿量は次第に減少し,やがて乏尿,無尿となり尿毒症となる.

病院めぐり

川崎社会保険病院外科

著者: 永澤康滋

ページ範囲:P.756 - P.756

 当院は川崎市の東部にあり,昭和23年の創立です.臨海工業地帯と住宅地域の境界に位置し,京浜急行「川崎駅」からの大師線「小島新田駅」より徒歩3分で来院できます.
 健康保険総合川崎中央病院という名称を平成10年末まで用いていたため,この地域では「川中病院」という愛称でよばれていました.平成10年9月に新病院が竣工となったことを機に「川崎社会保険病院」と名称がかわりました.7階のレストランからは羽田空港・多摩川が見え,西南方向には横浜ランドマークタワーや朝夕の富士山が遠望できます.

国際親善総合病院外科

著者: 森脇稔

ページ範囲:P.757 - P.757

 当院は,神奈川県横浜市の西南部にあたる泉区にあり,横浜市の西南部の2次医療の中核をなしており,地域住民のために貢献するために建設された病院です.
 当院の歴史は古く,慶應年間に外人専用の病院として横浜に設立されました.その後太平洋戦争勃発に伴い,敵国財産として日本に接収され,横須賀海軍病院の一部として利用され,敗戦と同時に米軍に返却されました.その折,米軍の好意で,病院スタッフによる新病院設立が許可されました.そこで外務省,横浜市,横浜財界関係者により,米軍の好意への感謝の気持ちも含め,国際親善病院の名のもとに横浜市中区(関内)に新病院が設立されたのです.その後,社会福祉法人国際親善総合病院と名称を変え,さらに平成2年,現在地横浜市泉区西が岡に新築移転,ベッド数300床の地域急性期型病院として泉区の中心的病院となり,地域住民の診療,健康管理を行っています.外来患者は1日平均1,200〜1,300名,全診療料を網羅した中規模型総合病院です.医師構成は,現院長は慶應大学出身,前久留米大学第1外科教授の掛川先生ですが,歴代の院長が順天堂大学の教授経験者であった関係上,順天堂大学出身者が主体となっています.その他横浜市立大,東邦大,北里大,昭和大などの混成軍ではありますが,大学どうしの確執は全くなくスムーズに診療が行われています.

メディカルエッセー 『航跡』・42

モノ書きにも一寸の魂

著者: 木村健

ページ範囲:P.758 - P.759

 わたしのデスクに載った18インチモニターのスクリーンには,毎日何十通というメールが送られて来る.ひとつひとつ開くだけでかなりの時間をとられてしまう.学内の広報,講演会やカンファレンスの案内に加え,外部からのメッセージは,文字通り全世界から送られてくる.「手強い手術患者に貴殿の開発した手術をしたいが,テクニカルな詳細を教えろ」というのもある.開発途上国の小児外科医からは,先進国のスタンダードからするとなんでもない手術や術後のマネージメントについての質問が多い.身近なところでは,週末ゴルフのテイタイムを報せたり,古い友人からどうしていると言って来ることもある.それもこれも含めて,1日平均50通のメッセージを全部読むには気骨が折れる.
 メッセージはひとまずニッポン語と英語に分けたあと,ニッポン語のメッセージから開いて読むことにしている.多くは返信を要する用件なので,英語環境で使えるニッポン語ワープロを使って,返信をタイプする.ニッポン語で頻繁に入ってくるメッセージは,何と言っても各誌編集部からの原稿の催促である.月の中ごろには時候の挨拶からはじまって,原稿のこともお忘れなく,というやんわりしたフレーズで結んである.だんだん締め切りが迫ってくると,じわじわ圧力を帯びた表現が混じってくる.

臨床研究

肝転移を伴った早期胃癌症例の検討

著者: 青柳慶史朗 ,   孝冨士喜久生 ,   矢野正二郎 ,   山崎義哉 ,   武田仁良 ,   白水和雄

ページ範囲:P.763 - P.766

はじめに
 近年,診断技術の向上および集団検診の普及により早期胃癌の発見率が高まってきており,早期胃癌の5年生存率は96〜99%と非常に良好である1〜3).しかし,稀ながら再発もみられ,肝転移を伴う症例も認められる.また,早期胃癌の再発形式で最も多いのは肝転移と言われている4,5).そこで,肝転移を伴う早期胃癌の臨床病理学的検討を行ったので報告する.

手術手技

副甲状腺ホルモンの術中迅速測定を補助手段とした内視鏡下副甲状腺摘出術

著者: 山下弘幸 ,   大島章 ,   内野眞也 ,   渡辺紳 ,   山下裕人 ,   野口志郎

ページ範囲:P.767 - P.769

はじめに
 原発性副甲状腺機能亢進症の80%の症例は単一の腺腫であり,腺腫摘出により根治が可能である.術前の超音波検査や99mTc MIBIシンチなどによる腫大副甲状腺の局在診断能の向上1)により,片側あるいは1腺のみの縮小手術で終了することも可能であり,最近では内視鏡下手術も行われている2〜6).欧米では縮小手術において他の病的腺の見逃しを回避する補助手段として,術中迅速副甲状腺ホルモン測定7)が用いられているが,本邦での報告は少ない.筆者らは術前検査で単一の副甲状腺腫瘍と診断した症例に対して,術中迅速副甲状腺ホルモン測定を用いた内視鏡下副甲状腺摘出術を導入した.現在までに3例経験し,美容的にも満足する結果を得たので1症例を呈示し,手術手技と術中の迅速副甲状腺ホルモン測定の有用性について報告する.

臨床報告・1

直腸癌に併存した肝限局性結節性過形成の1例

著者: 石井祥裕 ,   福澤謙吾 ,   正久康彦 ,   岡部勇人 ,   鶴崎直邦

ページ範囲:P.771 - P.774

はじめに
 肝限局性結節性過形成(focal nodular hyper-plasia:FNH)は比較的稀な良性腫瘍性病変であるが,近年報告例は増加しつつある.今回筆者らは直腸癌に併存し,肝転移との鑑別に苦慮したFNHの1例を経験したので報告する.

長期生存が得られた髄外性胃形質細胞腫の1手術例

著者: 豊見山健 ,   川野幸志 ,   久高学 ,   久高弘志 ,   与儀実津夫 ,   新垣有正

ページ範囲:P.775 - P.778

はじめに
 骨髄以外に原発する形質細胞腫は上気道,口腔,結膜などに多いとされ,消化管原発は比較的稀とされている1).その中でも胃原発の形質細胞腫は稀であり,進行例の予後は不良である2).今回筆者らは胃全摘術後5年を経過した長期生存例を経験したので,若干の文献的考察を含め報告する.

化学放射線療法が奏効した肛門管扁平上皮癌の1例

著者: 千須和寿直 ,   五味光太郎 ,   柴田篤志 ,   石曽根聡 ,   土屋拓司 ,   岡本講平

ページ範囲:P.779 - P.782

はじめに
 現在,肛門管癌に対して一般的に行われている治療法は欧米と本邦で大きな隔たりがある.欧米では扁平上皮癌が多いため治療法の第一選択は化学放射線療法(chemoradiation therapy:CRT)であり1),5年生存率,肛門機能温存率ともに80%前後である.しかし,本邦では腺癌が多いため外科治療が中心となっており2),たとえ治癒切除が行えても5年生存率は50%前後である2,3).今回,筆者らは肛門管扁平上皮癌に化学放射線療法を施行し,触診所見,血清中squamous cell carcinomarelated antigen(SCC)値,画像所見からCRTが著効したと判断できた症例を経験したので報告する.

大網異常裂孔ヘルニアの1例

著者: 出口浩之 ,   豊川晃弘 ,   山下修一

ページ範囲:P.783 - P.786

はじめに
 内ヘルニアの中でも大網異常裂孔によるものは比較的稀である.筆者は最近,大網異常裂孔によって絞扼性イレウスを生じた症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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