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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科55巻8号

2000年08月発行

雑誌目次

特集 肛門疾患診療の実際とコツ

病態理解のための肛門の構造と機能

著者: 進藤勝久

ページ範囲:P.937 - P.944

 直腸内輪筋から内肛門括約筋が起こり,恥骨直腸筋から外肛門括約筋が伸びてきた肛門では,その管腔上皮も上からは移行上皮,下からは皮膚付属器のない重層扁平上皮が連結して,そこに肛門腺が開口する.その外分泌系は固形便排泄の潤滑と腸内細菌の感染予防に役立っている.
 排便機能という観点からは肛門粘膜のレセプター説もあるが,ガスと形状便を識別する肛門感覚や,内圧関係の直腸肛門反射,蠕動関係の排便反射などが重要である.
 このような基礎的事項の理解が肛門疾患の病態を把握し,適切な治療や手術の応用に不可欠であろう.

肛門疾患の診察と診断の進め方

著者: 高野正博

ページ範囲:P.945 - P.954

 肛門部は狭い範囲で括約筋に閉ざされて種々の複雑な構造を示しているため,その診察,診断は簡単ではない.まず問診で症状を漏れなく聞き,訴えのすべてを検討し,それを満足させる診断がなされなければならない.患者の訴えと違う診断をつけ,治療をしても患者は満足しない.診察は視診,指診,肛門鏡診の3段階に分けられるが,いずれもていねいに行い,漏れがないようにする.各方向と深さにわたり,肛門周囲の組織,臓器なども十分みておく.特に指で触れるものと触れないもの,触れる範囲があるのでこれを十分わきまえておく.痔瘻は括約筋との関係において隅越の分類に従って診断をつける.肛門エコーが十分な補助手段となる.なお肛門疾患は奥のほうから手前に因果関係を持って連なっているので,この点も十分留意して観察する.

内痔核の保存的治療

著者: 松島誠

ページ範囲:P.955 - P.958

 内痔核の薬物による保存的治療の目標は痔核の出血,疼痛,違和感などの症状を軽減させる対症療法であり,自覚症状が改善されたところで投薬の漸減,中止を考える.痔核の症状を悪化させる要素は便秘や下痢などの排便習慣や食事,アルコールなど嗜好品,仕事,日常生活の中に様々あり,再燃を避けるためにも痔核の病態,症状などについて十分に説明した上で生活指導を行う.
 しかし頻回に症状を繰り返す時には手術治療を含めた他の方法を考慮し,漫然と治療を続けることがあってはならない.

内痔核の外来冶療—吸引式輪ゴム結紮療法

著者: 及川博 ,   月川賢 ,   松岡博光 ,   足立幸博 ,   赤石治 ,   山村卓也 ,   山口晋

ページ範囲:P.959 - P.962

 筆者らの教室では内痔核に対し吸引式輪ゴム結紮術を行っている.吸引式結紮器は操作性に優れ,外来で簡単に治療を行うことができる.Goligher分類の2度はもちろんのこと,3度以上の内痔核,1度の出血性内痔核においても治療成績は良好である.術後に疼痛,出血をきたすことがあるが,患者アンケートの結果では高い満足度(91.7%)が得られた.内痔核に対しては第一に保存的治療,次いで本治療法を行い,それでも軽快しない症例や再発を繰り返す症例に対してのみ手術的治療を行うべきである.また,直腸粘膜脱や軽度の完全直腸脱に対しても有用であり,適応の拡大が期待される治療法である.

内痔核の外科的治療—開放術式

著者: 平昇 ,   野垣正樹 ,   奥村嘉浩 ,   遠山邦宏 ,   柴田純孝 ,   野垣茂吉 ,   野垣正宏

ページ範囲:P.963 - P.966

 痔核組織を肛門外に脱出させて行うMilligan-Morgan原法からの改良点について述べた.主な相違点は,①肛門上皮の切除幅を狭くしたこと,②痔核と括約筋との間に存在する筋線維組織(Treitz's muscle)を温存すること,③粘膜・肛門上皮を縫縮することにより創の縮小をはかったこと,である.

内痔核の外科的治療—閉鎖・半閉鎖術式

著者: 松田保秀 ,   川上和彦 ,   木村浩三 ,   友近浩 ,   大森斉 ,   平野敬太郎 ,   金子寛 ,   浅野道雄

ページ範囲:P.967 - P.974

 結紮切除創の閉鎖法は1959年Fergusonらによって発表され,主に米国では一般的である.
 本邦では1979年高野らによって初めてFerguson法が行われたが,まだまだ一般的ではない.筆者らは1996年から完全閉鎖法を標準術式としている.その手術のコンセプトはMilligan, Morgan法を原法にしてParksのsubmucosal hemorrhoidectomyの概念を導入した形成外科的手術である.
 閉鎖術式には半閉鎖法と完全閉鎖法とがあるが,いずれも術後の合併症として縫合部の皮垂が目立つ.しかし,後出血の防止効果があり,創治癒も速く,day surgeryにも適応できるのでメリットは大きい.本邦でも結紮切除術は閉鎖法を標準とすべきである.

内痔核の外科的治療—サーキュラーステープラーを用いた環状粘膜切除術

著者: 福田康彦

ページ範囲:P.977 - P.984

 支持粘膜の減弱による直腸粘膜のたるみが痔核の主な成因であるとすれば,痔核より上方の粘膜を環状に切除して粘膜を切り上げれば,痔核の原因治療が可能なはずである.その理論に基づいてイタリアのLongoは,サーキュラーステープラーを用いて痔核,粘膜脱患者の直腸膨大部粘膜の環状切除を行い,優れた治療成績を報告した.
 筆者も昨年からサーキュラーステープラーを用いた環状粘膜切除術を59例の内痔核患者に施行し,大半の症例で従来法の疼痛と長期入院という最大の障壁を取り除くことができた.しかし,比較的簡単な手技だけにむしろ微妙なコツが必要であり,脱肛が改善しなかった症例の解析からその手技的問題点について考察を加えたい.

嵌頓痔核の外科的治療

著者: 池内健二

ページ範囲:P.985 - P.989

 嵌頓痔核の治療には早期手術療法と保存療法が考えられる.できるだけ速やかに疼痛を緩和しようとする早期手術療法も必要であるが,浮腫が強い場合には必要以上に切除してしまい,術後の肛門機能に悪影響を残す場合がある.嵌頓を整復し,浮腫,腫脹を消退させてから手術を行えば過大手術を制限することができる.いずれが良い方法との結論には至っていない.当科においてはまず嵌頓を整復し,保存療法を選択する.しかし元の痔核の状態が推測でき,確実な手術が可能と判断できる場合にのみ早期手術を施行している.

直腸肛門周囲膿瘍の治療

著者: 山本克弥 ,   田澤賢次 ,   山崎一麿 ,   竹森繁 ,   新井英樹

ページ範囲:P.991 - P.995

 大部分の直腸肛門周囲膿瘍は肛門小窩からの細菌の侵入によって肛門腺感染を起こし,膿瘍を生じたものである(crypt-glandular infection theory).その治療の原則は切開,排膿であり,穿刺吸引後に抗生剤の投与で軽快することはほとんどなく,波動を認める症例では時期を逸することなく切開が必要である.低位筋間膿瘍の切開は比較的単純であるが,坐骨直腸窩膿瘍はCourtney�sspaceを介して拡がっているので切開は大きめにしてドレーンを挿入することが重要である.また,将来痔瘻の治療を行うことを考え,肛門の変形や機能障害を残すことのないように注意すべきである.

痔瘻の外科治療

著者: 丸田守人 ,   前田耕太郎 ,   佐藤美信 ,   滝沢健次郎 ,   升森宏次

ページ範囲:P.997 - P.1002

 痔瘻の外科治療,特に手術術式について,一般的に用いられている隅越分類から,術式の選択を適切に行い,それぞれの手術操作を理解しやすく述べる.痔瘻の手術は従来切開開放術が多く適応されていたが,肛門括約筋機能が障害され,術後のQOLが必ずしも良くないため,肛門機能温存手術を行うようになってきたが,再発などまだ問題がある.
 痔瘻の手術にあたっては術式を正しく選択し,施行する手術を治りやすく,再発のないように,できる限り短い入院期間で完全に治療するよう習熟して欲しい.

裂肛の治療

著者: 竹馬彰 ,   瀧上隆夫 ,   嶋村廣視 ,   根津真司 ,   仲本雅子 ,   竹馬浩

ページ範囲:P.1003 - P.1010

 肛門の3大疾患のうち裂肛の治療は保存的に行うのが原則である.近年,裂肛の成因に肛門管静止圧の上昇とそれに伴う肛門上皮の虚血が関与していることが示唆されている.従来の保存的治療に加え,肛門管静止圧を低下させる薬物治療が試みられ始めている.また,保存的治療では治癒しにくい症例にはLSISを行う.肛門狭窄にまで至った症例ではSSGが現在主として行われている治療法である.
 本稿では筆者らの施設で行っている裂肛の治療の実際とコツ,そして,これから普及していくと考えられる保存的治療法を紹介する.

肛門機能不全の治療

著者: 佐藤知行 ,   小西文雄 ,   中坪直樹 ,   永井秀雄

ページ範囲:P.1011 - P.1019

 肛門機能不全の外科治療は肛門縫縮術から,括約筋修復術,肛門後方修復術,肛門前方修復術,人工肛門括約筋,Pickrell手術,電気刺激を加えた大腿薄筋による新括約筋形成術へと発展し,現在ではいくつもの選択肢が用意できるようになった.また,バイオフィードバック治療や仙骨神経電気刺激法,また筆者らが開発した陰部神経手術など,治療法に新しい展開もみられる.しかし,現時点では肛門機能不全の治療法には未解決な点が多く,それらの施行に際しては,長期成績の限界をも含めた十分なインフォームドコンセントが重要となろう.

カラーグラフ 腹腔鏡下食道手術・2

アカラシアに対する腹腔鏡下Heller-Dor法

著者: 森俊幸 ,   下位洋史 ,   杉山政則 ,   跡見裕

ページ範囲:P.929 - P.935

アカラシア
 アカラシアは食道の神経異常症であり,食道の一次蠕動ならびに嚥下に対する下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)の弛緩反応の欠如を特徴とする.食道は種々の程度に拡張しており,輪状筋層の過形成は認めるものの,通常は器質的な食道狭窄は認めない.病理学的にはAuerbach神経叢の欠如または萎縮,ならびに食道壁内の神経線維の減少を認める.LESの弛緩反応を支配するVIPや他のペプチド原性神経支配の喪失がその病態であり,コリン原性神経支配は保たれている.病因は不明であるが,神経の原発性退行変性疾患とする説や,ウイルスなどの感染による説などが提唱されている.全身の副交感神経節細胞の破壊を特徴とするChagas病(Americantrypanosomiasis)でも,同様の病態を認める.
 アカラシアの治療の目的は下部食道の機能的閉塞を解消することにあり,下部食道のバルーンによる拡張術と手術による下部食道筋層切開術(Heller筋層切開術)1)が広く行われている.カルシウム拮抗剤もLES圧を下げ,嚥下困難などの症状を軽減する効果はあるが,副作用や有効率などの問題があり,実用的とはいえない.

臨床外科交見室

イレウス(ileus)の語源

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1021 - P.1021

 種々の要因で腸管内容の通過が障害された状態,すなわち「腸閉塞症」を「イレウス」とよぶがこの語源はギリシア語の「illein:ねじれる,巻き上げる」である.言うまでもないが,その時代には「腹腔内の腸管が“ねじれあがった”」病態を観察する術などあろうはずがなく,患者が痛みのために「身を“ねじって(傍点筆者)”悶え苦しむ」ところからきている.言い換えれば,“腸管がねじれあがる”状態(本態はまさにこういう状態であるが)ではなく,患者が痛みに耐えかねて“身体をねじって悶える”ことからきているようである.これに関連して,「volvulus(日本名:腸捻転)」という言葉があるが,この語源はラテン語の「volvo:巻く」であり,実際に腸管がねじれあがった(捻転した)状態を示しているようである.英語的には“twist”という単語のほうが,そのニュアンスをより正確に表しているように思える.さらにこの「ileus」に似た言葉に,「ileum(回腸)」と「ilium(腸骨)」が挙げられる.まず回腸を意味する「ileum」は,「ileus」と同じく「illein」に由来しており,剖検時にこの小腸係蹄が“とぐろを巻いたように屈曲蛇行している”ところから,こうよばれるようになった.

病院めぐり

大森赤十字病院外科

著者: 根岸征示

ページ範囲:P.1022 - P.1022

 大森赤十字病院は,木造の2階建て,26名のスタッフで昭和28年,東京城南地域公的医療機関としてスタートしました.その後,漸次発展し,診療科も増設されて総合病院となり,地域の基幹病院としての役割を果たしています.現在の病床数は351床,医師数52名で,赤十字の旗の下に地域住民の医療と災害救護を主体に奉仕と慈愛の精神で,日常の診療を行っています.日航ジャンボ機墜落事故,阪神大震災,地下鉄日比谷線事故などにも救護派遣をしました.当院は厚生省研修医修練施設でもあり,研修医も公募しています.また,日本外科学会,日本消化器外科学会,乳癌学会,日本消化器内視鏡学会,日本消化器病学会などの認定施設です.当院外科のスタッフは,小西富夫,根岸征示,渡辺春子,元吉 誠,武藤泰彦,渡辺俊之,山本晃太の7名です.外来診察は,一般外来と専門外来として月曜に大腸・肛門外来,水曜に乳腺外来および肝・胆・膵外来,木曜にストマ外来,金曜に上部消化管外来を開設し,患者さんから信頼される医療をめざしています.

東部地域病院外科

著者: 西村和彦

ページ範囲:P.1023 - P.1023

 東部地域病院のある東京都葛飾区は,北は埼玉県,東は千葉県に接し,いまだに人情味が残っている地域です.運営母体である(財)東京都保健医療公社は,昭和63年6月に東京都と(社)東京都医師会により設立され,都内の他の地域に比べて病床の不足している区東部地域(墨田・江東・足立・葛飾・江戸川区)を中心とした地域の中核病院として,他医療機関との密接な医療連携を図りながら,急性期患者を中心とした紹介型病院として平成2年7月に開設されました.開設当初は96床でしたが,翌3年7月には306床全面開設し現在に至っています.
 診療科は全12科で,医師の出身大学も日本大学,日本医科大学,東京医科歯科大学,千葉大学,岡山大学,順天堂大学とさまざまですが,各科間の交流を深めつつ診療に当たっています.

メディカルエッセー 『航跡』・43

ボカシ言葉と国際学会

著者: 木村健

ページ範囲:P.1024 - P.1025

 風薫る五月は学会のシーズンである.アメリカ各地の学会に出席した往き帰りに,アイオワに立ち寄る日本からのビジターの数は,この月が四季を通じて一番多い.ひと月の間にニッポンからのビジターを迎えて開いたパーティの数は十指に余る.お客さまにはまずアイオワ大学病院を見学し,つづいて大学の誇る18ホールのチャンピオンシップコースでゴルフのあと,わが家のバックヤードでレセプション,続いてステーキディナーというのがお決まりのコースである.厚さ4cm,500gのTボーンステーキは,ニッポンのレストランのメニューにはない.ずしりと重い骨つきのビーフを,灼熱したグリルに乗せ,さっと1,2分両面を焦がしたのをポン酢で食べるのがわが家のしきたりである.
 ニッポンのものはなんでも世界一と信じている人たちだから,旨いの美味だのといわれても,口にするまでは半信半疑.どうせアメリカのことだから,靴の裏のように固くていい加減な肉だろうという表情が見てとれる.ところが一口味わうと,この世にこんな旨いものがあったのかという複雑な笑顔に変わる.これをみてるのが面白くて,ステーキを焼くのをやめられない.実際,アメリカという国は懐が深くて,ステーキひとつにしても駆け足で表面を見ただけでは真髄には触れられない.こうべビーフのほかにも世界各地でステーキを味わったが,ビーフはアイオワが断然一番である.

外科医に必要な眼科common diseaseの知識・3

結膜・角膜疾患

著者: 庄司純

ページ範囲:P.1026 - P.1028

ウイルス性結膜炎
 1.概念
 ウイルス性結膜炎はアデノウイルス8・19・37型による流行性角結膜炎(epidemic keratoconjunc-tivitis:EKC),アデノウイルス3・4・7型による咽頭結膜熱(pharyngoconjunctival fever:PCF),エンテロウイルス70,コクサッキーウイルスA24による急性出血性結膜炎(acute hemorrhagicconjunctivitis:AHC)および単純ヘルペスウイルス1型(初感染)・2型によるヘルペス性結膜炎の4つが代表疾患である.EKC,PCF,AHCは俗称として「はやり目」と呼ばれるように伝染性の強い結膜炎で,接触感染により伝染するため,学童が罹患した場合には学校保健法により出校停止の処置がとられ,院内感染,家族内感染にも注意が必要である.

外科医に必要な脳神経外科common diseaseの知識・1

意識障害

著者: 松本健五

ページ範囲:P.1030 - P.1033

疾患の概念
 意識とは脳の統合的機能に対し与えられた概念であるが,一般に覚醒している状態,または周囲のことがわかる状態のことをいう.意識障害とはこの覚醒の程度,すなわち外界の刺激に対する反応が低下ないしは消失した状態をいう.覚醒状態は橋上部,中脳,視床から大脳皮質へ双方向性に投射する網様体賦活系により維持されている.このため意識障害は大脳の広範な障害か脳幹網様体賦活系の障害により生じる.その原因は脳内の病変か,脳以外の臓器障害かによって,一次性脳障害と二次性脳障害に分けられる.また一次性脳障害において器質性(脳出血など)か機能性(てんかんなど)かに分けられる.意識障害の程度の評価にはいくつかの分類がある.Mayo clinicの分類である5段階評価(清明,傾眠,昏迷,半昏睡,深昏睡)が以前から多く用いられていたが,現在ではJapan coma scale(3-3-9度分類),グラスゴー昏睡スケール(Glasgow coma scale)がしばしば用いられている(表1).意識障害には2つの型,すなわち意識の清明度の低下と意識内容の変化とがある.上記はいずれも清明度の低下を主に評価している.意識内容の変化としてはせん妄やもうろう状態,錯乱状態などがある.意識障害を認める状態は脳の重篤な機能障害を意味しており,生命の危険にさらされている場合が多く原因のいかんにかかわらず緊急治療の対象である(表2).

目で見る外科標準術式・8

進行胃癌の拡大手術(左上腹内臓全摘術など)

著者: 古河洋 ,   池田正孝 ,   今村博司 ,   龍田眞行 ,   桝谷誠三 ,   宮章博 ,   石田秀之 ,   平塚正弘 ,   石川治 ,   川崎高俊 ,   里見隆

ページ範囲:P.1035 - P.1041

はじめに
 胃癌の手術法は「経験的」に決定されてきたが,その治療成績や安全性が一般に発表されているので,それが「標準手術」として扱われてきた.進行癌では「根治B」になるよう,すべてとり除く術式が採用された.一方,リンパ節郭清のために一定の臓器を合併切除する術式も定着し,たとえば「胃全摘+膵・脾合併切除」が行われてきた.さらに拡大した手術術式として「左上腹内臓全摘術」や「膵頭十二指腸切除」も行われている.ここでは,胃全摘+膵・脾合併切除を標準として「左上腹内臓全摘術」などそれより大きい手術の意義と手術術式,治療成績について述べる.

Current Topics

FDG-PETによる消化器癌の診断

著者: 佐賀恒夫 ,   中本裕士 ,   小西淳二

ページ範囲:P.1043 - P.1051

はじめに
 ポジトロン断層法(positron emission tomo-graphy:PET)は定量性,空間分解能に優れる核医学検査法である.当初,脳神経,心血管領域における機能検査,病態解析に用いられてきたが,1990年代に入り,腫瘍診断にも応用されるようになり,特に18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いたFDG-PETは種々の組織型を有する悪性腫瘍の診断において有用と報告されている1).未だPET検査の可能な施設は限られているが,近年の全身PET装置の普及に伴い,癌診療における役割がますます大きくなってきた.本稿ではFDG-PETによる消化器癌診断の現状と問題点について解説する.

臨床報告・1

血管造影検査に起因した外腸骨動脈解離による急性動脈閉塞の1例

著者: 石川雅彦 ,   森本典雄

ページ範囲:P.1055 - P.1057

はじめに
 血管造影検査に起因した医原性合併症の頻度は2.9〜9.3%とされ1),近年interventional radiologyの発展に伴い,その発症の増加が危惧されている2).今回,血管造影検査にて動脈解離を引き起こし,急性動脈閉塞に至った症例を経験し,その問題点を検討したので報告する.

高吸収性ポリマーを用いた動脈塞栓術が有効であった内腸骨動静脈奇形の1例

著者: 岸渕正典 ,   堀信一 ,   三谷尚 ,   島本茂利 ,   油谷健司 ,   原田貢士

ページ範囲:P.1059 - P.1062

はじめに
 動静脈奇形(arteriovenous malformations,以下,AVM)は血管奇形の一種で,一般に先天性の発育異常と考えられ,全身のあらゆる部分に発生するが,とくに脳・四肢に好発し,骨盤内のものは比較的稀である.
 今回,筆者らは内腸骨AVMに高吸収ポリマー(super absorbent polymer microsphere1),以下,SAP-M)を用いた動脈塞栓術(以下,TAE)が有効であった1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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