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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科56巻10号

2001年10月発行

雑誌目次

特集 甲状腺外科—最新の臨床

〔Editorial〕甲状腺外科の現況

著者: 飯田太 ,   小林信や

ページ範囲:P.1303 - P.1305

はじめに
 最近,医学をとりまく諸科学の進歩はめざましく,とくに電子装置を組み込んだ医療機器の開発,改善や分子生物学の進歩などは,従来不可能あるいは困難と思われてきたことを次々に可能にした.甲状腺外科の領域でも,この数年,診断,治療のみならず,疾患概念に関しても飛躍的な進歩がみられた.以下,長年にわたって積み重ねられてきた知見に最近の進歩を加えて概観する.

甲状腺疾患の超音波検査

著者: 山田恵子 ,   五味直哉 ,   有賀明子 ,   沢野誠志 ,   河野敦 ,   小泉満 ,   山下孝

ページ範囲:P.1307 - P.1312

 超音波検査は甲状腺疾患の存在診断および質的診断に有用で,穿刺吸引細胞診のガイド,治療に際しての経過観察,手術後の再発の診断にも役立つ.結節性病変については悪性の場合は一般に形状が不整で内部のエコーレベルが低い.砂粒小体を反映した微細石灰化像は乳頭癌に特徴的である.良性結節では一般に形状は楕円体や卵形に近い.形状が整で内部エコーが周囲甲状腺より高く均一な結節はまず良性である.超音波所見は各病変の肉眼病理所見を反映している.びまん性病変については日常よく遭遇する橋本病,バセドウ病,亜急性甲状腺炎について,それぞれの超音波所見には他の疾患とのオーバーラップがあるものの,典型的な症例では診断が可能である.

超音波ガイド下穿刺吸引細胞診と経皮的エタノール注入療法

著者: 福成信博

ページ範囲:P.1313 - P.1320

 ここ10年来,超音波機器の発達は目覚ましく,甲状腺における超音波の臨床的役割は大きく変貌を遂げている.超音波診断としての微小病変の検出のみならず,機器の優れた画像分解能から可能となった超音波ガイド下穿刺吸引細胞診の普及と,PEITの導入が甲状腺疾患に対する新たな局面を切り開いている.今回,超音波下穿刺吸引細胞診の方法,手技を解説するとともに,当院における成績に関して述べる.また,PEITにおいては具体的な方法,手技に関し,嚢胞性病変と機能性結節各々に対して解説を行い,また,懸念される合併症と対策,施行時に注意すべき点などに関して述べる.

甲状腺乳頭癌の手術—甲状腺切除範囲を中心に

著者: 田中伸一 ,   芝英一 ,   中山貴寛 ,   山崎芳郎

ページ範囲:P.1321 - P.1325

 日本の甲状腺癌の約90%を占める甲状腺乳頭癌はその大半は予後良好の癌であるが,治療開始年齢,性,遠隔転移の有無,腫瘍の浸潤の有無により予後が違ってくる.病期分類・予後因子に基づいた手術適応・術式の検討が必要である.筆者らは術前乳頭癌の確定診断がつけば腫瘍の占拠位置・大きさにより甲状腺切除範囲・リンパ節郭清領域を決定している.原発巣に対しては少なくとも患側の腺葉・峡切除が必要で,腫瘍の進展に応じ亜全摘・全摘を行う.リンパ節郭清は通常,患側の保存的頸部リンパ節郭清(mRND)は必要と考える.大半は予後が良好な癌のためQOLが最優先された手術が必要である.また整容的にも目立つ場所にあり,術創の目立ちにくい内視鏡的手術の導入も望まれる.

甲状腺の濾胞性腫瘍

著者: 野口志郎

ページ範囲:P.1327 - P.1330

 甲状腺の濾胞性腫瘍とは甲状腺の高分化濾胞上皮細胞で構成される腫瘍で乳頭癌に特徴的な核の所見がないものであり,過形成と濾胞腺腫と濾胞癌が含まれる.濾胞癌と腺腫や過形成との鑑別は非常に困難である場合が多い.多発性であれば濾胞癌である確率は低く,孤立性,充実性で嚢胞形成がなく,大きいものは濾胞癌である確率が高い.しかし,このような臨床的な指標では濾胞癌の鑑別はできないとの報告もあり,あるいはできるとしても早期の診断にはならない.手術中の迅速凍結標本での診断も非常に困難である.形態学的な診断がほとんど不可能であるから,細胞表面の分子をマーカーにしてそれを免疫染色して診断しようとの試みがなされている.現在検討されているマーカーはgelantin−3,CD44,CD26などがある.抗体の作製法によって結果が異なるので,良いモノクローナル抗体の作製が成否の鍵になっている.
 筆者らの施設での濾胞癌の術前診断は約85%が良性腫瘍であった.濾胞癌が大きくなると肺転移の確率が高くなる.筆者らの症例で肺転移再発があった14例中で最も小さいものは最大径が20mmであった.したがって,20 mm以上の大きさの濾胞性腫瘍は手術を行うべきである.

音声外科からみた甲状腺手術のコツ

著者: 家根旦有 ,   福田多介彦 ,   清水直樹 ,   細井裕司

ページ範囲:P.1331 - P.1335

 甲状腺手術に伴う反回神経麻痺の治療には大きく分けて反回神経再建術と,喉頭枠組み術の2つがある.反回神経再建術は,①反回神経端端吻合,②神経移植,③頸神経ワナ・反回神経吻合の3通りの方法でほとんどの再建は可能と考えられ,即時再建によって多くの患者の音声を回復することが可能である.喉頭枠組み術には甲状軟骨形成術I型と披裂軟骨内転術があり,それぞれの特長を十分理解した上で術式を選ぶ.声門間隙が小さい場合には甲状軟骨形成術I型が適応となるが,声門間隙が大きく特に後方間隙が大きい場合や,左右の声帯レベルに差を認める場合には披裂軟骨内転術の良い適応となる.場合によっては甲状軟骨形成術I型と披裂軟骨内転術の併用法を行う.

バセドウ病眼症に対する甲状腺全摘について—58例の統計的観察と亜全摘との比較

著者: 栗原英夫 ,   谷村清明 ,   佐々木純 ,   高松正之

ページ範囲:P.1337 - P.1343

 バセドウ病の症状は甲状腺機能亢進症状と眼症に大別できる.甲状腺機能亢進症に関しては若年者には手術,成人には放射性ヨード療法を行うことによりほぼ問題なく治療することが可能となったが,バセドウ病眼症に関しては決め手となる適切な治療がないのが現況である.
 CatzおよびPerzikらは,バセドウ病眼症の原因はバセドウ病を発症させた甲状腺の中にあるという前提から,バセドウ病眼症の治療に甲状腺全摘を行い,素晴らしい成績を報告している.しかし,Wernerらの追試では甲状腺全摘はバセドウ病眼症に効果はなく,さらにWitteらのバセドウ病症例の全摘50例と亜全摘100例とのprospective randomized studyでも,甲状腺全摘と亜全摘との間にはバセドウ病眼症に及ぼす効果に統計学的に有意差はないとのことであった.
 筆者らも58例のバセドウ病眼症に甲状腺全摘を行い,術後2年以上経過した50例について手術前後の突眼度の変化を調査したが,術後突眼度は平均で0.9mm改善したが,統計学的には有意の改善はなかった(P=0.08).しかし,前述の全摘50例と同性で年齢,手術時期のほぼ同じバセドウ病亜全摘50例とを対比させて比較検討したところ,甲状腺全摘のバセドウ病突眼症に対する効果は統計学的にみて有意に良好であった(P=0.002).

内視鏡下甲状腺切除術

著者: 池田佳史 ,   高見博 ,   佐々木裕三 ,   高山純一 ,   栗原英子 ,   菅重尚 ,   新見正則 ,   小平進

ページ範囲:P.1345 - P.1349

 頸部手術における手術創と皮弁の形成は触覚や整容性の問題だけでなく嚥下時の手術創のひきつれなども引き起こし,患者のQOLを著しく低下させている.近年,内視鏡外科領域の進歩により,頸部手術にも内視鏡が導人されてきた.内視鏡下手術では頸部より離れた部位からのアプローチが可能であり,頸部の創を避けられるという利点がある.鎖骨下3cmから行う前胸部法は手術創は開襟シャツで披覆される.腋窩法は手術創は腕により自然に隠れ,美容上の満足度は非常に高い.しかし,アプローチ部位が頸部から離れるほど操作腔が大きくなり,侵襲も大きくなる.それぞれの手術方法の利点,欠点を考慮した術式の選択が必要となってくる.

甲状腺癌におけるsentinel nodeの検索

著者: 中野静雄 ,   東泰志 ,   ,   喜島佑子 ,   大脇哲洋 ,   愛甲孝

ページ範囲:P.1351 - P.1356

 術前NO甲状腺乳頭癌症例25例を対象として,甲状腺癌に対するsentinel node(SN)conceptの妥当性について検討した.色素法では手術時に腫瘍近傍上下にLymphazurinR0.2 ml×2か所に注入し,染色されたリンパ節をSNとした.後期の11例ではRI法(99mTc-tin Colloid)を併用し,lymphoscintigraphy,ガンマプローブによるRIの取り込みによりSNを同定した.色素法ではSN同定率92%(23/25),正診率96%(22/23),感度91%(10/11)であった.RI法ではSN同定率100%(11/11),正診率91%(10/11),感度80%(4/5)であった.また,SN部位と微小転移部位の分布は類似しており,甲状腺癌においてもSN conceptが成立する可能性が示唆された.

甲状腺濾胞癌の病理の課題

著者: 亀山香織 ,   高見博

ページ範囲:P.1357 - P.1361

 甲状腺濾胞癌の病理学的診断の問題点として4点を取り上げた.1)被膜浸潤および脈管侵襲の有無をみる現在の診断基準は悪性腫瘍の有する特徴のうち,特に浸潤能のみを重視したものである.2)異型腺腫で認められる細胞異型は悪性化に伴うものではなく,変性による核の変化であり,良性腫瘍であるとする立場がある一方で,良悪性の境界病変である,あるいは他の臓器でいうcarcinoma in situに相当するなどといった見解もある.3)濾胞癌の組織内における不均一性が細胞診の精度を下げる1つの要因となっている.4)甲状腺自体は腺腫様甲状腺腫でありながら,遠隔転移をきたす例が存在し,臨床的に大きな問題となっている.

カラーグラフ 正しい外科切除標本の取り扱い方・7

切除標本の取り扱い方—病理医からのアドバイス

著者: 白石淳一 ,   向井万起男

ページ範囲:P.1299 - P.1302

はじめに
 外科切除検体の取り扱いは,各病院で日常的に行われていることである.しかし,必ずしも病理医と臨床医間のコミュニケーションが十分とはいえず,お互いに望む情報を得られてはいない.今回,切除標本の取り扱いについて,病理医の立場から気付いたことを述べたい.

目で見る外科標準術式・22

直腸癌に対する自律神経温存手術

著者: 榎本雅之 ,   樋口哲郎 ,   林哲二 ,   杉原健一

ページ範囲:P.1363 - P.1368

はじめに
 直腸癌の治療において骨盤腔内の局所再発およびリンパ節再発を減少させる目的で側方郭清を含む拡大リンパ節郭清が導入され,その効果も認められた1).しかし,局所再発およびリンパ節再発は減少しても生存率にはさほど反映されず,一方,自律神経系を切除するために生じる排尿・性機能障害が手術後の患者のQOLを低下させることが問題となってきた2).そこで,進行度に応じて自律神経を温存する手術が導入され,広く行われるようになってきた.

麻酔の基本戦略・14

周術期:危機の回避(4)—循環器系のトラブル(1):血圧の変動

著者: 稲田英一

ページ範囲:P.1369 - P.1374

目標
 1.血圧と臓器灌流の関係について理解する.
 2.術中高血圧の鑑別診断やそれぞれの治療について理解する.
 3.術中低血圧の鑑別診断やそれぞれの治療について理解する.

病院めぐり

札幌社会保険総合病院外科

著者: 松岡伸一

ページ範囲:P.1376 - P.1376

 当院の前身である北辰病院は,札幌市の中心部に位置し,1893(明治26)年に開設された古い歴史を有する病院でしたが,1947(昭和22)年に厚生省に引き継がれ,北海道健康保険北辰病院となり,1990(平成2)年6月に厚別地区に移転し,現在の札幌社会保険総合病院となりました.当院は別名副都心新札幌ともよばれる札幌市の東端に位置しており,地下鉄やJR駅に直結しています.また,江別市,北広島市など近郊の市町とも近く,地域の中核病院として機能を果たしています.ベッド数は276床,常勤医師は47名で,1日の平均外来患者数は約1,000人です.
 当院は外科関係では,日本外科学会をはじめとして日本消化器外科学会,日本乳癌学会,日本消化器病学会,日本肝臓学会,日本大腸肛門病学会などの認定施設となっています.当外科は消化器外科,乳腺・甲状腺外科,呼吸器外科を中心に診療にあたっていますが,内視鏡外科も積極的に行っています.また,当院は1999(平成11)年より臨床研修指定病院に指定されており,研修医を全国公募で受け入れています.

帯広協会病院外科

著者: 西部学

ページ範囲:P.1377 - P.1377

 当院は北海道十勝平野の中央,帯広市にあります.地域センター病院の指定を受けており,北は大雪山系,西は日高山脈,南は太平洋に囲まれた南北150 km,東西100 kmに及ぶ十勝管内全域の患者さんの診療にあたっております.
 1937(昭和12)年12月28日,祉会福祉法人北海道社会事業協会(現在7病院)の3番目の病院として開院し,1999(平成11)年4月より現在地に移転新築し,診療を行っております.現在16診療科,病床数360床,常勤医師39名で,外来患者数は1日平均870名です.二次救急医療を担当しており,夜間,休日の救急患者さんも多数診療しております.

文学漫歩

—ルース・ベネディクト(著),長谷川松治(訳)—『菊と刀』(1967年,社会思想社刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.1378 - P.1378

 『ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれないに 水くくるとは』
 在原業平は屏風に描かれた竜田川の紅葉の絵を題として詠んだそうですが,私は奈良に住んでいますので,本物の竜田川に行くことができます.竜田大橋から竜田公園「花小路せせらぎの道」は静かでお勧めです.
 実は私,『ちはやぶる〜』は古今集よりも落語で先に覚えました.知ったかぶりのご隠居が歌の意味を解説します.竜田川という相撲取りが千早という遊女に振られ,その妹の神代にも聞いてもらえず,廃業して実家の豆腐屋を継ぐ.そこへ落ちぶれた千早が「おからを下さい」と訪ねてきたが,竜田川がやらなかったため水にくぐって死ぬ.「ほな,最後の『とわ』は何ですねん」と尋ねられ,「千早の本名や」というのがオチでした.

南極物語

やまと隊出発

著者: 大野義一朗

ページ範囲:P.1379 - P.1379

 大陸での長期調査が進行する一方で,基地では安定した海氷を走り回って沿岸部の調査が活発化していた.地震計メンテナンスや定点GPS測定などは重いバッテリーを最後は人力で丘の上まで運ぶような力だけの仕事だったが,希望者が絶えなかった.海洋調査では氷に開けた観測穴からアザラシが顔を出し,人間を驚かせた.夜は冷たい寝袋のなかで様々な音が聞こえた.突風が遠くから迫ってきては轟音となり,行き過ぎていく.氷河が海に崩落する氷瀑の音が鈍く響く.海のうねりで氷山がきしんで鳴った.ルートを遮る数10kmの氷山を迂回したり,悪天で3,4日の停滞はざらで,作業はなにかと遅れた.行動予定は容易に延長したが「困った,帰れない」と基地に届く無線の声はどれも嬉々としていた.
 そんな野外行動の医療体制は悩みの種だった.医師2名の一方は基地にいて他方が外に出たが,調査が重なると医師抜きのチームができた.事故の時は救援チームが到着するまでの数日を医師なしでしのがねばならない.

学会印象記

第26回日本外科系連合学会学術集会を主催して

著者: 高見博

ページ範囲:P.1380 - P.1381

 第26回日本外科系連合学会学術集会を2001年6月28日(木),29日(金)に京王プラザホテル(東京)において開催させていただきました.
 新世紀の幕開けにふさわしく新しい学会の概念を築き,参加者にとって明日へ向かい夢と希望と自信をもって飛躍できる環境を作るよう努力しました.完成された教育的講演,最先端を行く研究発表は他の中心的な学会にゆだね,私たちは「若手医師,女性医師の支援と真の国際性を求めて」をめざしました.

外科医に必要な皮膚科common diseaseの知識・5

ホクロ,メラノーマ

著者: 斎田俊明

ページ範囲:P.1382 - P.1383

疾患の概念
 1.ホクロとは
 ホクロは小型の黒色調の皮膚病変を指す俗語であり,漢字では「黒子」と表記される.「黒子」という文字は中国の漢書や日本の奈良時代の計帳(徴税のための台帳)にも見出され,古くから上述のような意味で使われていた.他方,黒子は皮膚科学の用語としては「こくし」と読まれ,欧米の1entigoの訳語として使われている.lentigoは語源的にlentil(レンズ豆:径4mm程度の凸レンズ状形態の黒褐色の豆)に由来する.古くから洋の東西を問わず,これらの用語はほぼ同一のものを指していたらしいことがわかる1)
 図1に黒子(lentigo)の定型像を示したが,このような黒子のほとんどは後天性色素細胞母斑であるとみなされる(小型の先天性色素細胞母斑も少数含む).筆者は黒子などの小型の色素細胞母斑は真の母斑(皮膚の限局性の組織奇形)ではなく,表皮メラノサイト(メラニン色素産生細胞)の良性腫瘍であると考えている1)

手術手技

切除不能頸部,胸部上部食道癌に対する血管吻合を付加したバイパス術

著者: 川浦幸光 ,   木下敬弘 ,   龍沢泰彦 ,   竹原朗 ,   清水淳三

ページ範囲:P.1385 - P.1387

はじめに
 切除不能の食道癌に対する治療法の1つとしてself expandable metallic stent(SEMS)を留置する方法が広く普及している1,2).しかし,下咽頭,頸部および胸部上部食道癌ではステントの上縁が口腔内に露出し,SEMSを用いることができない.バイパス術も選択肢の1つであり,胃あるいは大腸が頻用されている.最近では胃切除や大腸切除の既往歴を持っ症例が増加し,挙上に必要な長さが取れない症例をよく経験するようになった.バイパス術はリスクの悪い症例に行われるので,挙上腸管の血流を保持しなければならない.筆者らは切除不能頸部,胸部上部食道癌に対して血管吻合を付加したバイパス術を行っているので手術手技について報告する.

臨床経験

陶器様胆嚢に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術

著者: 權雅憲 ,   乾広幸 ,   内田洋一朗 ,   福井淳一 ,   上山泰男

ページ範囲:P.1389 - P.1393

はじめに
 陶器様胆嚢(porcelain gallbladder)は胆嚢壁の広範な石灰化により外観および硬度が陶器様に変化した比較的稀な疾患であるが,胆嚢癌や他臓器癌の合併が報告されており1,2),発見された場合は開腹術の適応となることが多い.一方,腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下,LC)は今日広く普及し,技術や機器の進歩により適応が拡大されている.陶器様胆嚢も術前検査にて胆嚢癌の合併がないと判断できれば,腹腔鏡手術の適応となりうると考えられる.今回,筆者らは陶器様胆嚢に対するLCの問題点を検討した.

臨床報告・1

出血シンチグラフイーが診断に有用であった回腸潰瘍の1例

著者: 中島康夫 ,   藤澤憲良 ,   花房徹兒 ,   浮草実 ,   新宅雅幸 ,   太田仁八

ページ範囲:P.1395 - P.1397

はじめに
 下血の病因のうち小腸に由来するものは比較的頻度が少ない.また,その解剖学的特性により検査・診断に難渋することが多い.今回,筆者らは5年間にわたって散発性の下血が認められながら,診断できなかった患者に出血シンチグラフィーで出血源を回腸と推定でき,根治術を施行しえたので報告する.

毛細血管拡張症を伴った外傷性大腸粘膜下血腫の1例

著者: 明石建 ,   荒川明 ,   岩下方彰 ,   塚本文仁

ページ範囲:P.1399 - P.1401

はじめに
 消化管の壁内血腫は内視鏡などの外力によるものが多く1),体外からの外傷によるものは稀である.今回,粘膜下腫瘍と鑑別が困難であり,毛細血管拡張症を伴った鈍的外傷による大腸粘膜下血腫の1例を経験したので報告する.

上腸間膜静脈ガス血症を呈した上腸間膜動脈閉塞症の1救命例

著者: 鎌田壽夫 ,   中西章人 ,   中山裕行 ,   松谷泰男 ,   尾池文隆

ページ範囲:P.1403 - P.1406

はじめに
 急性腹症の中で上腸間膜動脈閉塞症は早期に発見し,適切な処置を行わなければ腸管が壊死に陥り,死に至る重篤な疾患であるにもかかわらず,特異的な症状や所見に乏しく,診断が難しい1),このような中で,門脈ガス血症は腸管壊死を示唆する唯一の所見であるので,急性腹症の診断にあたって見逃してはならない2)
 ただ,これまでの報告によると,門脈ガス血症を呈した患者を発見し治療したとしても,それが上腸間膜動脈閉塞症による場合にはその救命はきわめて難しいとされている4,5)

術前にm癌と評価し局所切除により治療した有茎性早期十二指腸癌の1例

著者: 小窪正樹 ,   兼古稔 ,   村上和正 ,   佐藤剛利 ,   宮本光明 ,   竹村清一

ページ範囲:P.1407 - P.1411

はじめに
 原発性早期十二指腸癌は本邦では比較的稀な疾患とされるが1),術前に正確に深達度を評価することは治療法を選択する上できわめて重要と考えられる.今回,筆者らは3年間で急速に腫大した有茎性の十二指腸腫瘍病変に対して術前に超音波内視鏡を用いてm癌と評価し,局所切除により治療した早期十二指腸癌の1例を経験したので報告する.

大量下血で発症した小腸型Crohn病の1例

著者: 長晴彦 ,   熊本吉一 ,   片山清文 ,   白石龍二 ,   谷和行 ,   岡本隆英 ,   豊田洋 ,   松浦仁 ,   菅野伸洋 ,   内山雅之

ページ範囲:P.1413 - P.1416

はじめに
 Crohn病は一般的に下痢や腹痛で発症することが多く,大量下血を生じることは稀である1).特に小腸型では内視鏡で所見が得にくく,診断に難渋することも多い.今回,筆者らは大量下血で来院した患者に対し腹部血管造影検査の所見をもとに手術を行い,小腸型のCrohn病と診断した症例を経験したので,文献考察を加え報告する.

血中CA19-9値が異常高値を示した胆嚢結石症の1例

著者: 高橋博之 ,   田澤賢一 ,   山岸文範 ,   鈴木修一郎 ,   塚田一博 ,   岡田英吉

ページ範囲:P.1417 - P.1420

はじめに
 Carbonhydrate antigen 19-9(以下,CA19-9)は悪性疾患,特に膵癌,胆管癌,胆嚢癌の診断,治療効果判定,再発のモニターとして有用な腫瘍マーカーである1,2).良性疾患で血中CA19-9値上昇を認める場合,胆道系疾患のみで100U/mlを越えることは少ない.今回,筆者らは血中CA19-9値が異常高値を示した胆嚢結石症の1例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.

十二指腸球部に嵌入した早期胃癌に対し幽門保存胃切除術を行った1例

著者: 久留宮康浩 ,   寺崎正起 ,   岡本恭和 ,   坂本英至 ,   浅羽雄太郎 ,   夏目誠治

ページ範囲:P.1421 - P.1424

はじめに
 胃の悪性隆起性病変が十二指腸球部に嵌入した本邦報告は82例で,比較的稀である.今回,筆者らはこの十二指腸球部に嵌入した胃体上部の早期胃癌の1例を経験した.本症例に対し幽門保存胃切除1〜3)を行い,術後は順調に経過した.十二指腸球部に嵌入した胃癌症例の特徴を文献的に明らかにし,この手術が妥当であったか考察を加え,報告する.

MRIが診断に有効であった膵原発性悪性リンパ腫の1切除例

著者: 町田浩道 ,   陳尚顕 ,   小林靖幸 ,   鈴木一史 ,   大場宗徳 ,   中谷雄三 ,   清水進一

ページ範囲:P.1425 - P.1428

はじめに
 膵原発悪性リンパ腫は稀な疾患で,術前に診断される症例はほとんどなかった1〜3).最近では,画像診断の発達により術前に膵原発悪性リンパ腫を疑われた症例の報告が散見されるようになった4).筆者らはMRIが術前診断に有効だった症例を経験したので文献的考察を加え,報告する.

十二指腸への脱出をきたした胃上部平滑筋肉腫の1例

著者: 宮本康二 ,   清水幸雄 ,   松波英寿 ,   由良二郎 ,   池田庸子 ,   辰澤敦司 ,   戸川保

ページ範囲:P.1429 - P.1432

はじめに
 胃腫瘍が十二指腸へ脱出することは比較的稀であるが,今回筆者らは胃上部に発生した平滑筋肉腫が十二指腸へ脱出する症例を経験したので,文献的な考察を加え,報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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