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特集 画像で決める癌手術の切除範囲—典型症例総覧 ⅩⅠ.乳癌
乳癌に対する胸筋合併乳房切除術
著者: 黒井克昌1 戸井雅和2 冨永健1
所属機関: 1昭和大学附属豊洲病院乳癌検診・治療センター 2都立駒込病院外科
ページ範囲:P.359 - P.363
文献購入ページに移動胸筋合併乳房切除術は乳房,大胸筋,小胸筋,リンパ節を一塊として切除する術式で,半世紀以上の間,乳癌に対する標準術式であったが,最近,その施行頻度は著しく減少している1).その理由として,術後に前胸部の変形が目立つこと,術後の上肢の浮腫,運動障害など,機能上,美容上の犠牲が大きいなどの問題があること,さらに症例を選べば胸筋温存乳房切除術,乳房温存術でも同等の根治性が得られることが明らかになったことが挙げられる.しかし,癌病巣が胸筋へ浸潤している症例においては本術式が適応となる.
また,広範な所属リンパ節転移(腋窩リンパ節,胸筋間リンパ節,鎖骨下リンパ節)のある症例も適応となるが,胸筋間溝の開大,小胸筋合併切除(Patey手術),あるいは牽引鉤による大胸筋挙上により,胸筋合併乳房切除術と同等のリンパ節郭清が可能な術式が多く考案され2),リンパ節転移が原因で適応となる症例は少なくなっている.
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