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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科56巻13号

2001年12月発行

雑誌目次

特集 IVRの現状と問題点

IVR:歴史と最近の動向

著者: 古井滋

ページ範囲:P.1583 - P.1588

 この特集で紹介されている話題(動脈塞栓術,肝腫瘍に対する経皮的なablation,メタリックステントとステントグラフト,門脈圧亢進症の治療など)を中心にIVRの手技の歴史と最近の動向について述べた.IVRは最近約30年間で急速に発展した分野であり,近年では様々な疾患の診療を行う上で不可欠な手段として普及している.IVRでは新しい発想に基づいた手技の考案や,器具の開発が続けられており,本邦で考案された新しいIVRの報告も散見されるようになっている.

消化管出血の血管造影・IVRによるマネジメントの現状

著者: 橋本統 ,   栗林幸夫

ページ範囲:P.1589 - P.1593

はじめに
 近年,内視鏡診断および内視鏡治療の技術が長足の進歩を示しており,保存的治療法では対処しきれない消化管出血の大半は内視鏡的に診断・治療されるに至り,血管造影室に患者が搬送される頻度は減少傾向にある.
 しかしながら,内視鏡的には診断・止血が困難な症例,あるいは,内視鏡が到達しえない小腸出血なども少なからず存在し,これらは依然として血管造影・IVRの対象となる.

肝細胞癌に対するTAE

著者: 吉川淳 ,   松井修

ページ範囲:P.1595 - P.1600

 肝細胞癌に対するTAE(transcatheter arterial embolization)療法は技術的にはほぼ完成しており,ほとんどの症例で目的とする肝内分枝の塞栓が可能である.超選択的なカテーテル挿入技術による亜区域塞栓術(subsegmental TAE)と呼ばれる肝実質を強力に塞栓する方法も開発され,良好な治療成績が報告されているが,その局所効果は近年の凝固療法に比較すると十分ではない.TAEの治療効果は血流支配によって決定されるため,目的結節の正確な血行支配の検討が重要であり,この検討によって画像による臨床的悪性度診断も可能である.現在では単発あるいは多発でも比較的肝内に限局している例では手術や局所凝固療法が選択されることが多く,TAEは多発例や進行例で施行される施設が多いが,血流遮断や超音波ガイドの補助など他の局所療法と併用することも有用である.超選択的なカテーテルの挿入には精度の高い透視装置が必要であり,IVR-CT(angio-CT)の普及が望まれる.合併症では重篤なものは少ないが,胆管壊死,胆嚢梗塞がある.

IVRによる門脈圧亢進症の治療

著者: 近森文夫 ,   高瀬靖広 ,   渋谷進 ,   河島孝彦

ページ範囲:P.1601 - P.1608

 門脈圧亢進症におけるIVRには純粋なIVRと内視鏡を併用した内視鏡的IVRがある.前者にはバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)/経頸静脈的逆行性塞栓術(TJO),経皮経肝静脈瘤塞栓術(PTO),部分的脾動脈塞栓術(PSE),左胃動脈塞栓術(LGE),経皮的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)が,後者には内視鏡的栓塞療法(EE),シャント閉塞下硬化療法(SO-EIS)が含まれる.この中でEEは食道胃静脈瘤治療の中心的位置にあり,適用頻度は最多で,他の治療法はそれを補完するものとして位置づけられる.
 B-RTO/TJOは胃静脈瘤消失効果において勝れ,成功率は93〜100%と良好であるが,治療後の食道静脈瘤発生が主な問題点となっている.TIPSは門脈系減圧効果に勝れ,成功率は94〜97%と良好であるが,治療後の肝性脳症発生やステント閉塞が主な問題点となっている.内視鏡的治療も含めて,各種治療法を組み合わせることで各々の問題点はカバーされうるものと思われる.

腹部大動脈瘤に対するステントグラフトの現状と将来

著者: 江里健輔 ,   善甫宣哉 ,   竹中博昭

ページ範囲:P.1609 - P.1615

 大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術は開胸,開腹を必要としないことから,最近注目されてきた治療法の1つである.しかし,本法は新しい治療法のため,ステントグラフトの耐久性,宿主血管の形態変化に伴うmigrationなど未解決な問題が多い.
 本稿ではここ数年間,腹部大動脈瘤に対し,本法を行った施設に本法の適応,合併症,手術成績などについてアンケート調査を行ったので,その結果を中心に述べる.腎動脈下腹部大動脈瘤に対し本法が374例に行われた.その死亡率は4.0%で,従来手術とほぼ同等であったが,エンドリークはtransient 11.2%,persistent 8.1%,secondary 3.2%と決して少なくない.本法は低侵襲で魅力的な治療法であるが,術式,ステントグラフトの改良など解決されるべき問題が多いことも強調したい.

磁石圧迫吻合術による消化管吻合

著者: 萩原優 ,   山内栄五郎 ,   田中一郎 ,   小森山広幸

ページ範囲:P.1617 - P.1623

 サマリウム—コバルト系希土類永久磁石を2個利用し,腸管同士を吻合する方法を報告した.
 原理は2個の磁石を密着させることにより挟んだ組織を圧迫・壊死させ,その周囲が癒着して新たな吻合口を形成する方法である.
 適応疾患は癌性腹膜炎などによるイレウスに対して狭窄口側の小腸と大腸とを磁石を用いて吻合させる方法と狭窄部の解除を目的として吻合部の上下に磁石を留置して,挟んだ組織を圧迫・壊死させ吻合口を作製する方法である.この方法は開腹を要しない新しい消化管吻合術として注目される.

肝腫瘍に対する経皮的治療

著者: 丸山通広 ,   浅野武秀 ,   貝沼修 ,   剣持敬 ,   青山博道 ,   宮内英聡 ,   落合武徳

ページ範囲:P.1625 - P.1628

 肝細胞癌に対する局所療法の中心は現在でも切除であるが,併存する肝機能障害や多中心性発癌を考えると経皮的治療の役割も大きい.肝腫瘍に対する経皮的治療はエタノール注入療法に始まり,マイクロ波凝固療法が開発され,現在ではラジオ波熱凝固療法がその中心となりつつある.これは1回の焼灼で約3cmの範囲をほぼ完全に凝固壊死せしめることができる.自験例では施行後の1年,3年,5年生存率はそれぞれ87.1,68.7,45.8%と良好であった.また転移性肝癌に対しても良好な成績が得られた.さらに最近,集束超音波の肝腫瘍への臨床応用も始まっており,今後経皮的肝腫瘍治療は穿刺を必要としないさらなる低侵襲治療へと進んで行くであろう.

IVRによる胆管内瘻術

著者: 阿部展次 ,   杉山政則 ,   泉里友文 ,   徳原真 ,   山口康晴 ,   大和太郎 ,   正木忠彦 ,   森俊幸 ,   跡見裕

ページ範囲:P.1629 - P.1636

 切除不能悪性胆管狭窄に対するステントを用いた胆管内瘻術は内視鏡的アプローチを中心として今や患者のQOLを大幅に向上させうる確立された安全な手技となっており,良性胆管狭窄や胆道損傷にも積極的に応用されている.最近ではexpandable metallic stent(EMS)が悪性胆管狭窄に対する内瘻化の主流になりつつあり,bare EMSの最大の問題点であるステント内腫瘍進展も留置が容易なcovered EMSの登場によりその克服が期待されている.ステントを用いた胆管内瘻術においては,多種多様なステントの特徴や医療経済を考慮しながら個々の症例に見合った柔軟性のある内瘻術を選択することが要求される.

Interventional MRI

著者: 山本育男 ,   藤村昌樹 ,   平野正満 ,   森川茂廣 ,   犬伏俊郎 ,   村田喜代史

ページ範囲:P.1637 - P.1646

 IVR治療においては画像モニターの重要性が高いが,非血管系の治療においては超音波やX線,CTによる画像ガイドだけでは限界がある.
 最近登場したオープン型MR装置は患者へのアクセス改善がはかられており,MRIをIVRの画像モニターとするInterventional MRIが行われるようになってきた.
 最近,ダブルドーナッツタイプ垂直開放型超電導磁石を有するMR装置が導入されたが,このMR装置は垂直・軸方向の広い撮像空間内でのアクセスが可能なユニークなデザインのため患者へのアクセスが大幅に改善されており,非血管系IVRの画像モニターとして優れている.今後,このようなタイプのMR装置の導入によりIVR治療の画像モニターとしてのMRIの重要性がさらに高まるものと考えられる.

カラーグラフ 正しい外科切除標本の取り扱い方・9

食道切除標本の取り扱い方

著者: 上野正紀 ,   宇田川晴司 ,   堤謙二 ,   木ノ下義宏 ,   中村豊英 ,   飯塚敏郎 ,   松下央 ,   秋山洋

ページ範囲:P.1575 - P.1580

はじめに
 外科医が新鮮標本を取り扱うときに術前の臨床所見を理解し,かつ切除検体の病理検索方法を知ったうえでリンパ節整理,検体の切開を行うべきである.
 今回,胸部食道癌に対する標準術式1,2)である頸・胸・腹3領域リンパ節郭清を伴う食道切除手術材料の取り扱いについて,切除から切り出しまで,現在われわれが行っている方法を紹介する(図1).

目で見る外科標準術式・24

腹腔鏡下大腸手術

著者: 渡邊昌彦

ページ範囲:P.1647 - P.1656

右結腸切除
 1.体位
 左半側臥位(15度位)にマジックベッドと側部支持器で体躯を固定する.下肢は間歇式下肢加圧装置を装着し,右上肢はハンセンマッケを用い良肢位で吊り下げ,テープで左右にずれないように固定,左上肢は開いて固定する.額部にレストンパッドをあて,そこをテープで頭部をベッドに固定する.

麻酔の基本戦略【最終回】

周術期:危機の回避(6)—循環器系トラブル(3):心筋虚血

著者: 稲田英一

ページ範囲:P.1657 - P.1661

目標
 1.心筋虚血を起こしやすい患者について理解する.
 2.心筋虚血の診断法について理解する.
 3.心筋虚血の治療法について理解する.
 4.心筋虚血を起こした患者の術後管理方針について理解する.

外科医に必要な皮膚科common diseaseの知識・7

蕁麻疹

著者: 松本和彦

ページ範囲:P.1662 - P.1663

疾患の概念
 1.病態
 原因は様々であるが,掻痒を伴う紅斑,膨疹が一過性に出現する病態である(図1).通常個疹は24時間以内に跡形もなく消褪する.全身のどこにでも出現するが,摩擦あるいは圧迫部位に多く生じる傾向がある.時に皮膚のみならず粘膜にも生じ,咽喉頭部に生じた場合は呼吸困難となる.組織学的に真皮上層の細小血管の拡張と浮腫を認める.

病院めぐり

国立嬉野病院外科

著者: 木田晴海

ページ範囲:P.1664 - P.1664

 嬉野町は人口約2万の小さな町で,佐賀県の南西部に位置し,長崎県との県境の盆地です.当院はその西方高台にあり,周辺は山に囲まれ院内には70℃のアルカリ泉源を有す風光明媚な所です.
 当院は1937(昭和12)年に嬉野海軍病院として創設され,1945(昭和20)年12月1日国立嬉野病院となり,2000(平成12)年2月1日国立嬉野病院と国立療養所武雄病院が国立嬉野病院の敷地内で統合し,国立嬉野病院として新しく発足して,政策医療である循環器病(脳血管疾患・心疾患),免疫異常(リウマチ,膠原病)を中心に,がん,骨運動器疾患,総合リハビリテーションおよび救急医療を行う専門施設となっています.このために1998年より増改修工事が始まり,2003年3月完成予定となっています.当院は佐賀県南西地区唯一の総合病院で診療圏は本院を中心とする半径20kmで人口約20万人が対象となっています.入院定床420床,19診療科,常勤医52名,レジデント2名,研修医7名で診療が行われています.

熊本赤十字病院外科

著者: 平田稔彦

ページ範囲:P.1665 - P.1665

 わが国における赤十字の歴史は明治10年,田原坂(熊本)の戦いで知られる“西南の役”の戦火の中で,人道,博愛の熱い志を掲げた博愛社(日本赤十字社の前身)が母体となり,明治19年,ジュネーブ条約に加盟したのがその始まりです.このことにより熊本は日本赤十字社発祥の地といわれています.
 当院は昭和19年4月,日本赤十字社熊本支部診療所として開設されました.その後,戦災で焼失という不幸に見舞われましたが,昭和25年には熊本赤十字病院として復興し,昭和50年,現在地に移転し,病床数480床の総合病院となり,平成11年3月には全面改築し新病院としてオープンいたしました.熊本市の東部,雄大な阿蘇を間近に望む一画にあり,日赤熊本県支部,血液センター,健康管理センターとともに日赤メディカルキャンパスを形成しております.人道,博愛,奉仕の実践という基本理念のもとに,救急医療,がん診療を中心とした高度医療,教育研修(臨床研修指定病院),地域連携,地球的視野で災禍を見つめた医療救援を基本方針として時代のニーズに応じた医療を積極的に展開しています.

文学漫歩

—金子みすゞ(著)—『美しい町(金子みすゞ全集Ⅰ)』(1984年,JULA出版局 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.1666 - P.1666

 学会で久留米に行く機会があった.久留米と言えば,ブリヂストン(創業者が石橋さんでbridgestoneだそうだ)と青木繁とチェッカーズだ.学会1日目の昼休みには石橋美術館で青木繁の『海の幸』を観た.黒田清輝や坂本繁二郎などの有名な絵も沢山常設展示されており,なかなか見応えがある.石橋正二郎という人は文化・教育に利益を還元し,美術館の他にも旧久留米医専の敷地と校舎も寄付したそうで立派な実業家である.
 学会2日目は午前中で終了したので,久留米から西鉄特急で16分の柳川に立ち寄った.柳川には『トンボの眼玉』『揺籠のうた』『ペチカ』(昔むかし,金髪好きの先輩にロシア人Barへ無理矢理?連れて行かれた時,私はペチカ,カチューシャ,トロイカ,百万本の薔薇,パルナス—ピロシキのCMソングなど,知る限りロシアに関係ありそうな歌を唄ってサービスに努めた)などの童謡も作詩した詩人・歌人北原白秋の生家と記念館がある.水郷柳川の風情が,白秋の美しい情緒溢れる詩とともに実感できるので福岡での学会の帰りにお勧めの地である.

南極物語

クレバス地帯

著者: 大野義一朗

ページ範囲:P.1667 - P.1667

 やまと山脈周辺は青い氷の平原が広がっていた.内陸から押し出される氷を山脈がせき止め,山が巻く強い風が氷を覆う雪を吹き飛ばし,露出した氷はさらに風で昇華し消えていく.すると氷の中に埋もれていた隕石がそこに残る.隕石は太陽系誕生時の状態をとどめていて,宇宙の進化を探る情報を提供してくれる.これまで世界で発見された隕石約3万個の半分は日本隊が南極で採取したものだ.
 朝食後まず吹き溜まりから車両を掘り起こす.総量8kgになる防寒具で全身を包む.雪上車を中心にスノーモービル4台が横にならび終日吹きさらしの氷原を走り回った.氷原にはさざ波がそのまま凍ったような細かな凹凸がある.その中にくっきりとみえる黒い点,隕石だ.46億年間宇宙を漂い,偶然地球へ落下し,数千年も南極の氷のなかにあった,黒い小さな石ころがたどった壮大な時間と空間を思い胸が踊った.

私の工夫—手術・処置・手順

注射器外筒を用いる深部結紮の工夫

著者: 青柳光生 ,   鈴木洋人

ページ範囲:P.1668 - P.1668

 深部結紮器にはその用途により数種類がある.Minimallyinvasive surgeryの盛んな昨今,小さな手術創からのアプローチは当然指の届きにくい操作となる.また内視鏡下の手術では器具による結紮が求められる.
 もうすこし指が長かったら,あるいは手が小さかったら簡単に結紮ができるのにという場合に,ごく手近なものを用いた結紮法を紹介する.

米国でのProblem-Based Learning形式による外科研修

Problem-Based Conference(2)—病歴と理学所見のとり方:頸部腫瘤

著者: 町淳二 ,   児島邦明

ページ範囲:P.1671 - P.1682

1 はじめに
 前回,problem-based conferenceの特徴,目的,長所,施行上のポイント,そして具体的方法における注意について述べました.今回から具体的な症例を取り上げ,症例のteaching pointやカンファレンス進行上の注意点などを交えながらカンファレンスを進めたいと思います.前回の繰り返しになりますが,problem-based conferenceを行う上での重要点を挙げると,以下のようになります.
 ①基本的には,日常の診療と同様に,病歴・理学所見からはじまり,鑑別診断,検査,診断,そして治療へとカンファレンスは進行する.

臨床研究

高齢者癌手術の死亡率に関する研究—全国アンケート調査から

著者: 芳賀克夫 ,   西村嘉裕 ,   和田康雄 ,   木村正美 ,   岡義雄 ,   山下眞一

ページ範囲:P.1683 - P.1687

はじめに
 高齢者の癌手術に関しては,術後合併症が多く危険であるという報告1〜4)と,逆に非高齢者と変わりがないという報告5〜7)がみられる.癌手術の死亡率に関する国レベルの報告は少なく,高齢者は非高齢者より術後死亡率が高いのか,その実態は不明である.
 筆者らは「高齢者手術の安全性の向上と術後合併症の予防に関する研究」をテーマとしている厚生労働省の研究班であり,現在班として「高齢者がん患者のEBMに基づく外科治療ガイドライン」を作成している.その基礎資料として日本における癌手術の死亡率を全国規模でアンケート調査した.本稿ではその結果を文献的考察を加えて報告する.

鼻腔内除菌による術後メチシリン耐性黄色ブドウ球菌腸炎発症の予防

著者: 安部利彦 ,   平野文明 ,   荒木昌典 ,   増田正徳

ページ範囲:P.1689 - P.1692

はじめに
 近年常在菌であった黄色ブドウ球菌にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が出現し,当院でも術後MRSA腸炎を発症する患者が認められるようになった.感染経路として院内感染が指摘されており,これら感染症対策として手洗い施行,術前患者のポビドンヨードによるうがいの施行を行っていた1).術後MRSA腸炎は術後病態と相まって体力消耗が著しく,合併症を持つ患者や高齢者では致命的ともなりうるため,予防が必要である.症例を検討し,対策を講じたのでここに報告する.

臨床報告・1

9歳男児の上行結腸にみられたびまん浸潤型大腸癌の1例

著者: 大津一弘 ,   古田靖彦 ,   塩田仁彦 ,   隅岡正昭

ページ範囲:P.1693 - P.1697

はじめに
 若年者大腸癌は近年報告が増加しているもののまれである1〜5).とくに16歳未満の小児において発症した大腸癌はきわめてまれで予後も不良である.筆者らは術前診断に難渋した9歳男児のびまん浸潤型大腸癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

成人に発症した特発性腸重積症の1例

著者: 淀縄聡 ,   小川功 ,   藤原明 ,   平野稔 ,   内藤貴臣 ,   伊藤吾子

ページ範囲:P.1699 - P.1701

はじめに
 成人の腸重積症は比較的まれな疾患であるが,その発生原因は腸管の腫瘤性病変が多く,小児例にみられるような特発性腸重積はきわめてまれとされている1).今回,器質的疾患に起因しない特発性と思われる成人の腸重積症の1例を経験したので報告する.

乳癌治療中にタモキシフエンによる高トリグリセリド血症をきたした1例

著者: 館花明彦 ,   福田直人 ,   宇井義典 ,   山川達郎 ,   酒井滋 ,   福間英祐

ページ範囲:P.1703 - P.1706

はじめに
 乳癌は内分泌・化学療法が奏効することの多い癌であり,多種類の薬剤の使用経験に基づき,さまざまな副作用が報告されている1,2).今回筆者らはクエン酸タモキシフェン(tamoxifen citrate,以下TAM)が原因と考えられた高トリグリセリド血症の1例を経験したので報告する.

臨床報告・2

早期診断にヘリカルCTが有用であった急性上腸間膜動脈塞栓症の1例

著者: 小山基 ,   稲葉行男 ,   渡部修一 ,   林健一 ,   大江信哉 ,   神尾幸則 ,   千葉昌和

ページ範囲:P.1707 - P.1708

はじめに
 急性上腸間膜動脈閉塞症は早期に血流を再開しないと大量腸切除や試験開腹となる予後不良の疾患である1).今回,筆者らはヘリカルCTによる早期診断により,血行再建のみで救命しえた急性上腸間膜動脈塞栓症の1例を経験したので報告する.

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「臨床外科」第56巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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