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文献詳細

雑誌文献

臨床外科56巻13号

2001年12月発行

南極物語

クレバス地帯

著者: 大野義一朗1

所属機関: 1東葛病院外科

ページ範囲:P.1667 - P.1667

文献概要

 やまと山脈周辺は青い氷の平原が広がっていた.内陸から押し出される氷を山脈がせき止め,山が巻く強い風が氷を覆う雪を吹き飛ばし,露出した氷はさらに風で昇華し消えていく.すると氷の中に埋もれていた隕石がそこに残る.隕石は太陽系誕生時の状態をとどめていて,宇宙の進化を探る情報を提供してくれる.これまで世界で発見された隕石約3万個の半分は日本隊が南極で採取したものだ.
 朝食後まず吹き溜まりから車両を掘り起こす.総量8kgになる防寒具で全身を包む.雪上車を中心にスノーモービル4台が横にならび終日吹きさらしの氷原を走り回った.氷原にはさざ波がそのまま凍ったような細かな凹凸がある.その中にくっきりとみえる黒い点,隕石だ.46億年間宇宙を漂い,偶然地球へ落下し,数千年も南極の氷のなかにあった,黒い小さな石ころがたどった壮大な時間と空間を思い胸が踊った.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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