icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科56巻2号

2001年02月発行

雑誌目次

特集 重症急性膵炎の診療Now

わが国における重症急性膵炎の実態

著者: 広田昌彦 ,   小川道雄

ページ範囲:P.149 - P.153

 1998年における急性膵炎の患者数は年間19,500人(95%信頼区間17,000〜22,000人)と推計された.重症度別では軽症が10,800人(55%),中等症が3,800人(20%),重症が4,900人(25%)である.男女比は2.3対1で,年齢分布は男では40〜60歳の壮年期にピークがあり,女では加齢とともに増加し,75〜79歳にピークがある.成因は男ではアルコール性(49%),特発性(18%),胆石性(16%),内視鏡的乳頭操作(ERCP,EST,EPBDなど:4%)の順で,女では特発性(30%),胆石性(30%),アルコール性(11%),内視鏡的乳頭操作(11%)の順に多い.重症急性膵炎の致死率は27%であり,依然予後不良な疾患であるが,最近では特に2週間以内の早期致死率が改善されている.動注療法,CHDFなど新しい治療法の成果と思われる.

臓器機能不全からみた膵炎重症化の機序

著者: 山本正博

ページ範囲:P.155 - P.159

 重症急性膵炎では発症早期からみられる重要臓器の機能障害と同じレベルで免疫機能障害があり,現在もなおその治療成績の改善を妨げている重症感染症の発症と深く関連していると考えられる.急性膵炎の重症化機序の解明にあたっては,サイトカインネットワークを中心とした重要臓器障害発症機構とともに,感染防御能や免疫能にも着目した生体防御の観点からの検討が必要である.

サイトカインからみた膵炎重症化の機序

著者: 伊佐地秀司 ,   岩田真 ,   長沼達史 ,   川原田嘉文

ページ範囲:P.161 - P.168

 急性膵炎はSIRSをきたす代表的疾患であり,従来,間質に逸脱した活性化膵酵素が局所的ならびに全身的に作用して種々の全身症状や合併症を発現してくる固有な病態として扱われてきた.近年,SIRSや臓器不全の病態がサイトカインを中心とした種々のchemical mediatorsを介した反応であることが指摘され,生体内でのサイトカインカスケードやネットワークの解明が進むにつれ,急性膵炎の重症化機序においてもサイトカインの重要性が明らかにされている.本稿では現在までに明らかにされている急性膵炎におけるサイトカインの作用と意義につき,膵炎の初発機序から進展,遠隔臓器障害に分けて概説した.

厚生省の診断基準からみた膵炎重症化の評価

著者: 上野富雄 ,   松岡功治 ,   岡正朗

ページ範囲:P.169 - P.176

 急性膵炎は“重症”になると日本では医療費給付対象疾患となるため,それを判定する基準として1990年の「厚生省の診断基準」が一般的に用いられている.診断基準項目は日本での全国調査によって集計された急性膵炎症例の致死例をもとにretrospectiveに選別されたものであり,予後や入院時重症度を概ね反映している.この診断基準とSIRS因子,加齢因子を加えた重症度スコアは経時的な重症度評価や初期治療の効果判定には有用である.他方,診断基準は重症化をきたす要因までは反映しておらず,重症化を予知するまでには不十分であり,今後の課題と言える.

SIRSからみた膵炎重症化の評価

著者: 杉山貢 ,   荒田慎寿

ページ範囲:P.177 - P.182

 重症急性膵炎は高サイトカイン血症によってSIRSを呈する代表的疾患であり,SIRS陽性項目数は予後に関連するとして厚生省の重症度判定基準に加えられ注目されている.抗サイトカイン治療を念頭にした血液浄化療法も広く行われている.CHDFを積極的に導入した治療成績も良好であり,また自験例の検討でも入院時のSIRS陽性項目数は重症度判定項目の1つとして妥当と考えられるが,治療開始後の陽性項目数は治療開始早期に一様に減少を示し,各項目毎の陽陰性の推移をみると呼吸数と白血球数が治療の影響を強く受けることが推測された.治療開始後の治療経過中の指標としてはSIRS陽性項目数は利用しづらいと考えられ,十分な配慮を要する.

画像診断からみた重症急性膵炎の評価

著者: 森俊幸 ,   杉山政則 ,   跡見裕

ページ範囲:P.183 - P.189

 重症急性膵炎ではその重症度判定や合併症の診断,治療に対し各種画像診断が不可欠である.画像診断による重症度判定は急性膵炎による膵実質の変化,膵周囲への炎症の波及などに対応した画像所見をパラメーターとしてgradingを行い,予後判定の一助としようとする試みである.これらの画像情報は造影CT検査で効率良く収集可能なため,画像による重症度判定にはCT所見が用いられている.急性膵炎の転帰は膵実質の壊死の程度,周囲組織への炎症の波及の程度,腹水貯留の有無といった重症度判定に用いられる所見ばかりでなく,膵膿瘍や感染性膵壊死,膵周囲の血管の破綻,仮性嚢胞の合併などにより大きく左右される.これらの要因まで考慮した重症度基準はなく,またCT検査のみでは十分な情報を収集できない.的確な診断,重症度の判定,治療法の決定には各々の画像診断の特性やその所見の背景を理解し,適切な画像診断を適切なタイミングで施行する必要がある.特にcriticalな症例では必要最小限の検査で効果的な診療を行っていくことが肝要である.

膵酵素阻害剤,抗生物質持続動注療法による重症急性膵炎の治療

著者: 武田和憲 ,   渋谷和彦 ,   砂村眞琴 ,   松野正紀

ページ範囲:P.191 - P.194

 全身的な炎症反応の程度は膵・後腹膜腔の炎症の進展度に一致することから,重症膵炎の治療戦略としては全身の集中治療管理のみではなく,膵局所に対する原因療法的な治療が必要となる.膵局所治療である膵酵素阻害剤,抗生物質持続動注療法により死亡率の改善,感染性膵壊死の頻度の低下がみられたが,とくに発症から48時間以内の早期に治療を開始することが救命率向上のためには重要である.

血液浄化法による重症急性膵炎の治療

著者: 竹山宜典

ページ範囲:P.195 - P.201

 重症急性膵炎において膵局所から逸脱した膵酵素やその二次産物であるサイトカインなどを,血液中や腹水中から除去するために各種の血液浄化法が臨床応用されてきた.現在,本疾患の初期治療において主として腹膜灌流と持続血液濾過透析が用いられている.これらの治療法により重症急性膵炎の病態改善が得られることは確実であるが,その適応や経済効果については解決すべき問題点もあり,検討の余地がある.また,今後は詳細な病態の解明により,生体にとって有害な物質のより選択的な除去が目指されると思われる.

感染性膵壊死に対する外科治療—Open managementの有用性

著者: 浅野武秀 ,   剣持敬

ページ範囲:P.203 - P.209

 教室膵炎例の検討では重症膵炎の死亡率は44.4%と未だ予後不良であった.死因の2/3が感染に起因する病態であった.教室では感染性膵壊死に対し腹腔開放ドレナージ手術+術後開放創からの洗浄,デブリードマンを行うopen managementを行い,6例中5例を救命しえた.膵炎診療に際しては発症早期の集中保存療法に加え,早期からの感染予防,特に早期での開腹ドレナージ術の回避が重要である.また壊死性膵炎の場合には検査所見,dynamic CT,細菌学的検索などにより感染性膵壊死と診断し,外科治療を適応していくことが救命率向上にとって肝要である.

重症急性膵炎の長期予後

著者: 今泉俊秀 ,   原田信比古 ,   羽鳥隆 ,   福田晃 ,   高崎健

ページ範囲:P.211 - P.214

 従来,急性膵炎は機能的にも形態的にも障害を残さずに軽快すると理解されてきたが,重症急膵炎が救命されるに伴い,遠隔時に膵内外分泌機能や膵管・膵実質に様々な後遺的変化をきたしていることがわかってきた.重症急性膵炎後5年以上経過観察例18例(壊死性)の検討では,糖尿病が28%,外分泌機能低下が39%,膵石・膵嚢胞などの膵病変が39%,再発は28%にみられ,成因別ではいずれもアルコール性に高率であった.遠隔時の膵内外分泌機能低下例の多くは膵石や膵管拡張などの膵病変を伴っており,急性膵炎と慢性膵炎の関係を理解する上で重要な課題と考えられる.

カラーグラフ 食道癌の内視鏡下手術・3

HALS併用による鏡視下食道切除・再建術

著者: 井上晴洋 ,   中島康晃 ,   熊谷洋一 ,   奈良智之 ,   永井鑑 ,   河野辰幸 ,   岩井武尚

ページ範囲:P.141 - P.146

はじめに
 低侵襲手術の立場に立った腹腔鏡下胆嚢摘出術の成功は,近年の外科領域における最も画期的な出来事の1つであった.この成功が鏡視下手術を種々の外科手術に適応拡大する原動力となった.筆者らは当初より鏡視下手術を,消化器外科領域で最も侵襲の大きい手術の1つである食道癌根治術に適用することを目標に検討を行ってきた.
 その第1段階として,胸腔鏡下食道切除術の術式を開発し,本邦では川原ら1)に続いて報告した2).その後,第2段階として,腹腔鏡下胃管作製術(開胸食道切除)の検討に入り,HALS(hand-assistedlaparoscopic surgery)の導入によって術式も安定した3,4)ことから,第3段階として,1997年5月2日に本邦ではじめて,「胸腔鏡下食道切除術」と「腹腔鏡補助胃管再建術(HALS併用)」を同時に同一症例に施行した5).その後,現在までに17例に施行し(1例は術後16日目入院中),16例は退院後も再発なく元気に生活している.

目で見る外科標準術式・14

胃全摘後空腸パウチ再建術

著者: 竹下公矢 ,   斎藤直也 ,   谷雅夫 ,   林政澤 ,   佐伯伊知郎 ,   関田吉久 ,   海山智隆

ページ範囲:P.215 - P.223

はじめに
 近年,消化管吻合器の改良,進歩に伴い,胃切除後のQOLの改善を目指して,各種の空腸パウチ(pouch)を用いた再建術が行われるようになってきた1〜5).胃癌における胃全摘後空腸パウチ再建術では,従来の再建法に比べ安全性,手術時間の面で遜色のないことが普及するための必須条件である.本稿では最近筆者らが主として行っている方法6〜10)を中心に,その手技と成績を報告する.

麻酔の基本戦略・6

全身麻酔の導入(1)

著者: 稲田英一

ページ範囲:P.225 - P.228

目標
 1.全身麻酔の導入の方法適応について理解する.
 2.全身麻酔の導入で用いる麻酔薬の投与量,投与上の注意点について理解する.
 3.麻酔導入時の筋弛緩薬の選択法について理解する.
 4.挿管時に必要な筋弛緩薬の投与量や作用発現時間,作用持続時間を覚える.

外科医に必要な眼科common diseaseの知識・8

眼底疾患(Ⅱ)

著者: 湯沢美都子

ページ範囲:P.230 - P.232

加齢黄斑変性
 加齢黄斑変性は黄斑部の異常が加齢に基づいて起こる黄斑異常の総称である.網膜色素上皮下,時に感覚網膜下に脈絡膜新生血管(CNV)が発育し,出血や滲出を生ずる滲出型と網膜色素上皮—脈絡毛細血管板の萎縮の進行する萎縮型に分けられる.

外科医に必要な脳神経外科common diseaseの知識・7

クモ膜下出血(SAH)(1)

著者: 魏秀復

ページ範囲:P.233 - P.235

疾患の概念
 クモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)は,「クモ膜下腔内の出血」を指すのみであって,各科領域にわたって多種多様な原疾患がある.日常診療では頭部外傷によるものが多い.しかし最も代表的な疾患に脳外科的治療の必要な脳動脈瘤破裂によるSAHがある.破裂脳動脈瘤によるSAHの治療には再出血予防のための脳動脈瘤根治術,髄液吸収障害による正常圧水頭症の手術のほかに,特に問題となる脳血管れん縮(vasospasm)の治療が重要となる1,2)

病院めぐり

社会保険中央総合病院外科

著者: 柴崎正幸

ページ範囲:P.236 - P.236

 社会保険中央総合病院は保険診療のモデル病院として,1947年に新宿の地に設立されました.以来50年余にわたって社会保険の中核病院として高度な医療活動,医療スタッフの養成,医療システムの研究・確立,災害時の医療拠点としての積極的な救援活動をその使命として参りました.1987年に現在地に新築移転いたしましたが,新病院は当時としては最先端の設備を有する近代的病院で,他病院の羨望の的であったMRI装置,大学病院にもまだなかった原体照射が可能な放射線治療装置などが備えられました.また中央手術部は当院自慢の施設で,広々とした10の手術室が入り口を中心としてコの字型に整然と並び,その周囲には広い廊下がめぐらされています.移転当時の院長が大学手術部元教授で手術室の設計には特に念入りであったといわれています.
 当院は新宿副都心の約2km北部に位置し,夜には高層ビル群の美しい夜景が眼前に見渡せる絶好な立地条件を満たしています.しかしその反面,周囲には大病院がひしめき合い(大学病院3,国公立病院など3),大変な医療過密地域となっています.このため当院のレベルアップを計るため,1999年に財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価を受けました.

東京共済病院外科

著者: 宮本洋壽

ページ範囲:P.237 - P.237

 私たちの病院は東京都目黒区に所在し,山手線のすぐ外側になりますがかなり都心に立地した病院だといえます.来院される患者さんは近隣の目黒区,渋谷区の方が多く,古くからある町病院の外科として地域の方々に親しんでいただいています.戦前に海軍病院として開院しましたが,現在使用中の3つの病棟に加え,地下2階,地上10階の老健施設合築型新病棟を病院敷地内に新設中で平成14年3月にはオープンする予定です.
 現在当院の病床数は410床(新設後は460床)で,常時そのうち約60床を外科が利用しています.当科の大きな特長は2つあります.大腸癌治療に関しては内視鏡切除例も併せ,1995年の切除数が全国で国立がんセンターに続き2位と豊富なことと,外科,放射線科,形成外科,病理でチームを組んで最先端の医療を行うように努めている乳腺外科の活躍です(新聞,テレビ,雑誌などの従来のメディアに加え,インターネット上での紹介もありたいへん盛況です).

文学漫歩

—中島敦(著)—『名人伝』(1969,新潮社 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.238 - P.238

 数年ぶりに本棚の整理をした.以前看護学校の授業を担当する前に気負って買ったのだが,読まずに積んでいた『ベナー看護論:達人ナースの卓越性とパワー』(医学書院刊)が出てきた.読み出すと予想外に面白くて座り込んで耽読と相成り,毎度のパターンとして本の整理は頓挫した.
 この看護論は米国連邦政府の助成金を得て行われた研究結果に基づいている.ナースを臨床の看護実践能力から5段階の熟達レベル(技能取得に関するドレイファス・モデルという緊急事態におけるパイロットの行動調査をデザインした研究を土台にしている)に分類し,臨床現場の実例を示して,達人ナースへの道について説いている.同じ緊急事態の状況に直面しても熟達レベルに応じて判断能力や対処法が違うのが判然としていて興味深い.

南極物語

いざ,南極へ

著者: 大野義一朗

ページ範囲:P.239 - P.239

 「来年南極へ行ってくれますか」.
 あきらめきれない長年の夢で試しに出した手紙に思わぬ返事が返ってきたが,いざ実現しそうになると問題は大きかった.病院での責任,外科医としてのブランク,家内と小学校の3人の子供…….40歳を越えた外科医にとって1年あまりの南極越冬はそう簡単に円満に行けるものではなかった.

臨床外科交見室

“ツッペル”とは

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.240 - P.240

 術中鈍的剥離を進める際,「ツッペル」を用いる外科医は多いと思う.ところがこの「ツッペル」はどう綴るかについては正しくは知られていないようである.筆者も長年疑問に思い,先輩諸氏に尋ねたり文献調査を続けてきたが,不明のままであった.最近も数件の問い合わせがあり,ドイツ語辞典にある[Tupfer:(柄の先に綿球ないし折り畳んだ布を取り付けた)“斑点模様を画く道具”]が,おそらくそれに相当するのではないかと回答していた.ところがごく最近,胆道外科の先駆者であったドイツのHans Kehr(1862〜1916年)の胆道外科手術書のなかに「Tupfer」という言葉を見つけ,長年の疑問が一挙に氷解した次第である.この論文中に「Tupfer」の作り方の図解(図)があり,100×45(cm)のガーゼをまず長軸方向に三つ重ねに折り,さらにこれを端から折っていき,最終的に25×15(cm)の大きさにしたものを「Tupfer(gaze)」と呼んでいるのである.Kehrはこの「Tupfergaze」を,今日の我々と同じように血液や分泌物を吸収したり,腹腔内を拭うために用いている.置き忘れを防ぐために,四隅に黒糸の目印を付けることを勧めている一方で,「腹腔内遺残」をなくするために,術者は言うに及ぼず特に助手が細心の注意を払わねばならないとしている.

臨床研究

内視鏡摘除後に追加腸切除を必要とした大腸sm癌症例の検討

著者: 澤井照光 ,   辻孝 ,   地引政晃 ,   山口広之 ,   中越享 ,   綾部公懿

ページ範囲:P.241 - P.244

はじめに
 大腸内視鏡による検診によって欧米では無症状である中高年者の半数近くに大腸腺腫が発見されるという報告がみられる1〜3).このことは食生活の欧米化により大腸癌罹患者が増加している本邦においても重要な知見である.大腸の腫瘍性病変に対する内視鏡摘除は現在広く一般化した診断的治療法であるが,摘除後の組織学的検索によって初めてsm癌と診断される場合もある4)
 内視鏡摘除後にリンパ節転移のリスクが高いsm癌と判断された場合は追加腸切除の適応となるが,他医より紹介された追加腸切除例は本来の病変に関する術前診断を担当する外科医自身の目で行っていないこと,プレパラートを取り寄せることは可能でも摘除された標本をどのように取り扱ったか正確には不明であること,といった問題点がある.その結果,初回治療の妥当性を正しく評価することができず,手術適応の決定に術者がほとんど関与していないという特殊な状況下におかれる.これらのことから,追加腸切除例に関する検討は適切な内視鏡摘除を行っていく上で重要であり,手術を担当する外科医は関連施設で行われている内視鏡摘除の現状を把握するとともに,追加腸切除の結果をフィードバックしていく必要があると考えられる.

壊死の深さからみた急性腸間膜動脈閉塞症の臨床病理像

著者: 上田順彦 ,   小西一朗 ,   泉良平

ページ範囲:P.245 - P.249

はじめに
 これまで急性腸間膜動脈閉塞症の臨床所見,手術術式についての報告は数多くなされてきた1,2).しかしながら,臨床所見と病理所見の対比や病理所見からみた治療法選択の是非など病理所見を中心に検討された報告はほとんど見あたらない.今回,壊死の深さからみた急性腸間膜動脈閉塞症の臨床病理像を検討し,新たな知見を得たので報告する.

臨床報告・1

扁平上皮化生を伴った乳腺線維腺腫の1例

著者: 有本裕一 ,   藤本泰久 ,   高島勉 ,   坂手洋二 ,   水上健治 ,   奥野匡宥 ,   小林庸次 ,   井上健

ページ範囲:P.251 - P.253

はじめに
 扁平上皮化生を伴う線維腺腫は非常に稀である.今回,若年発症の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

十二指腸転位術が奏効した上腸間膜動脈症候群の1例

著者: 芝原一繁 ,   尾山佳永子 ,   荒能義彦 ,   佐々木正寿

ページ範囲:P.255 - P.258

はじめに
 上腸間膜動脈症候群(以下,SMA症候群)は十二指腸水平部が上腸間膜動脈により背側から圧排され,閉塞をきたす疾患として1842年にRokitan-sky1)によって初めてその概念が報告された稀な疾患である.
 本症に対してはまず保存的治療が選択されるが,本例のように慢性に経過する症例に対しては手術が行われる.今回筆者らは十二指腸前方転位術が奏効したSMA症候群の1例を報告する.

亜急性脾梗塞の1手術例

著者: 小林利彦 ,   滝浪實 ,   数井暉久

ページ範囲:P.259 - P.261

はじめに
 感染性心内膜炎の合併症として脾梗塞は知られているが,破裂または感染を併発し,手術が必要となる機会はきわめて少ない1〜4).今回,大動脈弁置換術後に脾梗塞巣の感染を否定しきれず脾臓摘出術を施行した1例を経験したので,若下の考察を加えて報告する.

右側腹部皮膚瘻を形成した原発性虫垂癌の1例

著者: 工藤通明 ,   内田聡 ,   平沢敏昭

ページ範囲:P.263 - P.266

はじめに
 原発性虫垂癌は術前に診断することが難しく,虫垂炎や回盲部腫瘍としての手術後に病理診断で虫垂癌と判明することが多い.また腹膜偽粘液腫をきたすことが多いことでも知られているが,皮膚瘻を形成することもある1).今回,虫垂炎による回盲部膿瘍と術前に診断され,ドレナージ術後,2か月以内に2回にわたって右側腹部皮下膿瘍を形成し,さらに回盲部切除術を施行し,病理組織学的診断で原発性虫垂癌と診断された症例を経験したので報告する.

巨大乳腺間質肉腫の1例

著者: 新保雅也 ,   仲本剛 ,   牧本伸一郎 ,   小川郭史 ,   坂本一喜 ,   筑後孝章

ページ範囲:P.267 - P.269

はじめに
 乳腺腫瘍の中でも間質肉腫は稀である.当院で重量3kgの巨大な間質肉腫を経験したので報告する.

胃結腸瘻を有する高度進行胃癌の1切除例

著者: 秋山和宏 ,   梁英樹 ,   吉田一成 ,   山下由紀 ,   中沢哲

ページ範囲:P.271 - P.273

はじめに
 胃結腸瘻は胃や横行結腸の癌の浸潤,あるいは胃潰瘍穿通などに伴う稀な合併症である1).その多くは胃外発育型胃癌として報告され,これまでに60数例を数えるのみである2〜6).それらは高度の下痢が引き起こされることから,癌の進行度以上に全身状態が不良となり,手術適応を誤らせてしまうことがある.今回筆者らは他医にて手術不能の胃癌の診断を受けた胃結腸瘻合併例に対して手術治療を行い,比較的良好な予後を得ることができたので報告する.

門脈ガス血症を呈した絞扼腸管非壊死の閉鎖孔ヘルニア嵌頓の1例

著者: 高井惣一郎 ,   小池保志 ,   上原正憲 ,   小松邦志 ,   田川豊秋

ページ範囲:P.275 - P.278

はじめに
 門脈ガス血症(portal venous gas,以下PVG)は大半が腸管壊死に合併し,稀ながら予後不良の病態とされている.今回筆者らはPVGを呈した絞扼腸管非壊死の閉鎖孔ヘルニア嵌頓の1例を経験し,術後良好な経過を得たので,若干の文献的考察を加え報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?