特集 外科におけるクリニカルパスの展開
バリアンス分析と診療の改善
著者:
小西敏郎1
阿川千一郎2
古嶋薫2
針原康2
伊藤契2
外村修一2
長谷川潔2
佐貫潤一2
田原宗徳2
今井延年2
石川誠2
大塚裕一2
清松知充2
所属機関:
1NTT東日本関東病院外科
2三楽病院外科
ページ範囲:P.461 - P.466
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米国では診断群分類による医療費の定額支払い制度DRG/PPS(diagnosis related group/prospective payment system)の導入を契機に在院期間の短縮と人院費用の削減を目的としてクリニカルパス(clinical path)あるいはクリティカルパス(critical path)が広まった.しかしわが国では,実際にクリニカルパスを推進している臨床現場では,入院期間の短縮や医療費の削減よりは医療従事者の協調性の向上のために,そしてなによりも患者満足度の向上と患者中心の医療の展開のためにクリニカルパスは重要であるとの認識が広まっている.一般にはバリアンスの多い疾患ではクリニカルパスの適応は困難であると考えられている.だが,筆者らのこれまでの経験ではクリニカルパスの主目的はバリアンスを減らすことではない.在院期間の短縮やコストの削減を目標としてクリニカルパスを適応するのではなく,チーム医療の推進,患者主体の医療の展開などによる質の高い医療を提供することがクリニカルパスの大きなアウトカムである.胃癌の手術などバリアンスの多い疾患の治療でもバリアンスとなった理由を患者に十分に説明することにより,かえってクリニカルパスでの治療が患者に喜ばれることも多い.むしろ治療経過に変異の多い疾患であるからこそ,患者満足度の向上と医療従事者の協調性の向上の点からクリニカルパスのよい適応となると言える.