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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科56巻5号

2001年05月発行

雑誌目次

特集 家族性腫瘍—診断と治療の現況

家族性腫瘍の定義と遺伝性

著者: 馬塲正三

ページ範囲:P.593 - P.603

 家族性腫瘍は家族集積性を示す腫瘍性疾患を広く包含する臨床的用語である.遺伝的要因の強い疾患群は(1)単一遺伝子に起因し優性遺伝形式により発生する遺伝性腫瘍症候群と,(2)非腫瘍性病変を一次形質として発症し劣性遺伝形式をとる高発癌性遺伝性疾患が含まれる.高発癌性遺伝性疾患は稀な疾患が多く癌そのものは遺伝しないが,その原因遺伝子の機能はDNAヌクレオチド除去修復であり,遺伝子異常を起こしやすく結果的に癌が高率に発生することになる.
 遺伝性癌の原因遺伝子が次々とクローニングされ,発癌の機構が分子レベルで明らかにされつつある.遺伝子診断の診断限界,ethicolegalな問題についても言及した.

家族性腫瘍に対するインフォームドコンセントとカウンセリング

著者: 野水整 ,   竹之下誠一 ,   阿部力哉

ページ範囲:P.605 - P.610

 家族性腫瘍におけるインフォームドコンセントに必要なものは,癌の告知をはじめ正確な診断と病態,疾患と治療法の説明をすべて隠さずに行うことであり,患者の質問に対応できるだけの専門的知識を主治医が有することが,患者—医師の信頼関係を固きものへと導く.
 家族性腫瘍遺伝カウンセラーが育っていないわが国の現状では,主治医がこの信頼関係に基づいて患者および家族の人権尊重を最優先させて,遺伝性腫瘍および遺伝子診断に対するカウンセリングを行わなければならない.

家族性腫瘍に対する遺伝子診断

著者: 藤森実 ,   福嶋義光

ページ範囲:P.611 - P.615

 家族性腫瘍の遺伝子診断は患者およびその血縁者の生殖細胞系列の発症に関係する遺伝子変異を明らかにするために行われる.遺伝性腫瘍症における遺伝子診断は従来の臨床検査とは異なる面があるので,これを行う場合には倫理的にも十分配慮する必要がある.遺伝子診断技術を臨床の場で利用していくためには,主治医と患者という関係のみの従来の医療対応では不十分な点がある.このため信州大学医学部附属病院では,1996年5月より中央診療部として遺伝子診療部を院内措置にて設置し活動を開始していたが,2000年4月より文部省に特殊診療科の1つとして正式に認められ,全国初の「遺伝子診療部」が誕生した.

家族性腫瘍に対する化学予防

著者: 石川秀樹

ページ範囲:P.617 - P.621

 家族性大腸腺腫症に対する発癌予防における最近の研究として,cyclooxygenase 2選択的阻害剤であるcelecoxibと,スリンダクの代謝産物であるsulindac sulfone(exislind)による二重盲検無作為割付臨床試験の成績を紹介した.さらに,日本で2000年から開始された家族性大腸腺腫症患者に対するがん予防試験(Japan Familial Adenomatous Polyposis Prevention Study:J-FAPP Study)のプロトコールを示した.本試験はFAP患者を対象に,食事,運動指導を行ったうえで,小麦ふすまおよび緑茶抽出物による腺腫抑制効果を評価する無作為割付臨床試験である.

多発性内分泌腫瘍(MEN)

著者: 亀山香織 ,   菅重尚 ,   高見博

ページ範囲:P.623 - P.627

 多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia:MEN)は2腺以上の内分泌腺に特定の組み合わせで,同時にあるいは異時性に腫瘍が発生する疾患であり,その腫瘍の組み合わせでMEN1型と2型に分類され,いずれも常染色体優性遺伝の遺伝形式をとる.発生する腫瘍によりさまざまな症状を引き起こすが,腫瘍が小型で多発するという共通の特徴を有している.近年,これらの原因遺伝子が同定され,この分野の研究は急速な勢いで進んでいる.
 MEN 1型の原因遺伝子は11番染色体長腕上に位置し,10個のエクソンを含み610個のアミノ酸からなる蛋白(menin)をコードしている癌抑制遺伝子である.一方,MEN 2型は10番染色体長腕上にあるRET proto-oncogeneの点突然変異が原因である.こうした遺伝子の検査により保因者を早期に発見し,少しでも早く治療を開始することが望まれる.

家族性乳癌の遺伝子診断と治療

著者: 池田宜子 ,   野口眞之郎

ページ範囲:P.629 - P.635

 近年BRCA1,BRCA2がクローニングされ,家族性乳癌の遺伝子診断が可能となった.日本人と白人では乳癌の罹患率や生物学的特徴が異なるので,将来日本において遺伝了診断を実用化するためには,日本人における遺伝性乳癌の特徴を明らかにする必要がある.本稿ではBRCA1あるいはBRCA2が原因となって発生する遺伝性乳癌の臨床病理学的特徴および変異保因者のマネージメントの現状について概説する.

家族性胃癌—その実像と分子背景

著者: 前原喜彦 ,   杉町圭蔵

ページ範囲:P.637 - P.643

 DNAミスマッチ修復機構を構成する遺伝子群の変異がポリポーシスを伴わないタイプの遺伝性大腸癌(hereditary non-polyposis colorectal cancer:HNPCC)家系に遺伝していることが1993年に明らかになり,その後悪性腫瘍の家系内集積や重複癌のリスクにおけるミスマッチ修復異常の意義がクローズアップされた.家族性胃癌についても,その存在がこの時期より注目されるようになった.現時点で家族性胃癌とは「①家系内に胃癌症例が少なくとも3人いて,そのうち1人は他に対して第1度近親者である,②少なくとも2世代に継続して認められること,③1人は50歳以前に診断されていること,④他の家族性腫瘍が除外できること」といった条件を満たすものと考えられるが,実際には分化型胃癌と未分化型胃癌をそれぞれ中心とする2つ以上の疾患実態(entity)が存在すると考えられ,その実像は単純でない.家族性胃癌の分子背景としてはE-カドヘリン遺伝子のgerm-line変異が報告されたが,その意義は未分化型胃癌を中心とするfractionに限られるようである.ミスマッチ修復異常の意義は現時点では明らかではない.

家族性大腸腺腫症(FAP)の遺伝子診断と治療

著者: 権藤延久

ページ範囲:P.645 - P.649

 家族性大腸腺腫症(FAP)では,APC遺伝子による遺伝子診断が実用化されている.遺伝子検査法としては,APC遺伝子とその変異の特徴からprotein truncation test(PTT)が標準的に用いられている.FAPの遺伝子診断は,臨床的に診断のついたFAP患者からAPC遺伝子検査で変異が検出された場合,その血縁者において同じ変異の有無を遺伝子検査で確認することにより行われる.遺伝子診断は大腸検査の反復や不確実性の不安から保因可能者を解放するという患者利益を医学的に提供できるが,それがそれぞれの対象者にどういった意義を持つのかはさまざまである.適切なカウンセリングを前提として,当事者による自己決定により実施の選択がされなけばならない.FAPの治療においてもこのことは同様である.

遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)の遺伝子診断と治療

著者: 中原雅浩 ,   岡島正純 ,   浅原利正

ページ範囲:P.651 - P.657

 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)は常染色体優性遺伝形式をとり,若年に発症し,大腸多発癌および他臓器重複癌を高率に認める診療上重要な疾患である.しかし,現行の診断基準は家系内の大腸癌患者数に負うところが大きく正確に診断されているとはいえない.最近,HNPCCの原因遺伝子がDNAミスマッチ修復(MMR)遺伝子であると証明され,腫瘍部においてmicrosatelliteinstability(MSI)を高頻度に認めることが明らかとなり,その分子生物学的特徴をHNPCCの診断および治療法の選択に利用することが試みられている.MSIはHNPCCのより正確な診断に有用であり,MMR遺伝子解析はHNPCCの発症前診断の可能性を示唆している.治療法はいまだ統一された見解はみられないが,MSIおよびMMR遺伝子異常よりHNPCCと確診されれば大腸亜全摘術も考慮されている.

カラーグラフ 正しい外科切除標本の取り扱い方・2

手術材料の取り扱い・切開の原則

著者: 神谷順一 ,   梛野正人 ,   金井道夫 ,   上坂克彦 ,   佐野力 ,   二村雄次

ページ範囲:P.585 - P.590

はじめに
 消化器外科領域で標本を切開する第一の目的は,病変を粘膜面から観察して診断することである.この目的を達成するためには,病変を損傷しないように,あるいは損傷を最小限にとどめるように慎重に標本を切開しなければならない.また,切除直後においては腫瘍先進部と標本断端の距離を診断する必要があり,断端を意識して切開することも重要である.
 消化管の癌では,それぞれの取扱い規約で切開について具体的に記載されており,付け加えるべき事項もないので,本論文では胆道や膵臓の切除標本を切開するうえでのコツを述べる.

目で見る外科標準術式・17

左半結腸切除術

著者: 山口高史 ,   森谷冝皓 ,   赤須孝之 ,   藤田伸

ページ範囲:P.659 - P.666

はじめに
 左側進行結腸癌に対する標準的なD3結腸左半切除(left hemicolectomy)は下腸間膜動脈(IMA)根部切離を伴い,下行結腸を脾彎曲部,S状結腸とともに切除し,残された横行結腸をS状結腸,あるいは直腸と吻合する術式である(図1).適応は下行結腸の進行癌が主であるが,腫瘍の場所,進行度,リンパ節転移の有無,血管の走行に応じて腸管切除,郭清範囲は適宜縮小される.一方,リンパ節転移状況によっては傍大動脈リンパ節郭清を施行することもある.本稿では当院で行われている左半結腸切除について,手術手技のポイントをシェーマを中心に述べる.

麻酔の基本戦略・9

術前合併症のある患者に対する対応(1)—循環器系合併症

著者: 稲田英一

ページ範囲:P.667 - P.672

目標
 1.冠動脈疾患および冠動脈疾患が強く疑われる患者の術前管理および麻酔管理について理解する.
 2.高血圧症患者の術前管理および麻酔管理について理解する.
 3.心房細動のある患者の術前管理および麻酔管理について理解する.

外科医に必要な眼科common diseaseの知識・11

斜視・弱視,色覚異常

著者: 澤充

ページ範囲:P.673 - P.675

斜視・弱視
 視力は単眼での問題が基本であるが,高度な視機能として両眼視,立体視がある.左右眼では視差があり眼底像には微妙なズレが存在する.この像のズレは立体視機能を得る上で不可欠である.この像のズレの存在は眼前に指を立て,片眼ずつで見た場合,利き目で見ると指が動かないが,利き目でないほうで見ると指が動くことでも理解しうる.左右眼での像のズレは視中枢での融像機能により統合され,立体感覚を生じる.この視機能は出生時から存在するわけではなく,10歳程度までに物を見る学習機能により発達する.

外科医に必要な脳神経外科common diseaseの知識・10

静脈洞血栓症

著者: 魏秀復

ページ範囲:P.677 - P.679

疾患の概念
 発症形態は脳出血である.しかし単なる「脳出血」と誤診され,止血剤の投与を受けて悪化することもある.病態はなんらかの原因で上矢状静脈洞,横静脈洞,S字静脈洞などの静脈洞が閉塞することにより,静脈環流が悪化して出血性静脈梗塞(静脈環流域の脳内出血)が生じたものである.症状は出血部位の巣症状とともに痙攣を呈することが多い.時間的・空間的に出血が増大したり,多発することもある.左右大脳半球に時間を異にして出血することも稀ではない.脳出血であっても止血剤の投与は禁忌である.小さな「脳出血」の治療中に出血が増大したり,反対側にも出血するような時,または出血が小さいわりに病状に重篤感があり痙攣が重積したり,またCTスキャンで頭蓋内圧亢進所見があれば静脈洞血栓症を疑い,速やかに専門医に転送すべきである.原因が明らかな場合にはホルモン剤内服などによる血液凝固系異常,乳様突起炎などのS字静脈洞近傍の感染症の直接波及などあるが,原因が特定できないことも多い.

病院めぐり

総合病院取手協同病院外科

著者: 川崎恒雄

ページ範囲:P.680 - P.680

 取手の歴史は,遠く縄文時代にまでさかのぼることができるようですが,今日の発展につながる直接の要因は,江戸時代に取手村が水戸街道の宿場町として栄えたことに始まります.茨城県の玄関口として,人口10万人を越え,文化都市を標榜するプロジェクトの1つとして,東京芸術大学取手キャンパスの完成があります.さらに第66回(昭和59年)全国高校野球夏の大会で,清原・桑田のいるPL学園をやぶり取手二高が優勝したことで,日本全国にその名を銘記されるようになりました.
 ところで当院は茨城県農協厚生連の傘下の基に昭和22年に開院した旧取手協同病院と昭和24年に開院した龍ヶ崎協同病院が昭和51年に合併し,現在地に新築移転したもので,病床数は410床,常勤医64名で1日の外来患者数は約1,400人です.

君津中央病院外科

著者: 田中壽一

ページ範囲:P.681 - P.681

 童謡「證誠寺の狸ばやし」で有名な木更津を中心とする君津郡の産業組合を構成母体とした保証責任医療購買利用組合連合会により昭和13年5月に開設,その後種々の変遷を経て昭和43年君津市郊外の地に移築,現在は木更津市・君津市・富津市,袖ヶ浦市が管理する「国保直営総合病院君津中央病院」と称しています.
 当地は東京湾横断道路アクアラインの向こうに富士山が展望できる房総半島西部の中央にあって,医療圏としての4市のみならず県南からの患者さんも多数来院され,基幹病院としての役割も果たしております.

文学漫歩

—梶井基次郎(著)—『檸檬』(1967年,新潮社 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.682 - P.682

「血液銀行のなかに患者が血液なしで座っていることにだれも気づかなかったのです」
 2月号で紹介した『ベナー看護論(日本語版)』(医学書院)のなかの一節です.医学書は訳者が真面目な方が多く,原文に忠実に翻訳されるので,映画の字幕風のくだけた訳が好きな私などには少し読みづらいです.そこで原書(いつもちゃんと読んだためしがない)を手に入れようと思いましたが,病院出入りの書店に聞くと在庫がないとのこと.ならば洋書と言えば「丸善」です.便利になったもので丸善のホームページから簡単に注文できました.前記の部分は“No one had caughtthat the patient was sitting up there with no bloodin the blood bank”で「輸血部にこの患者の輸血用血液をオーダーしていなかったことに誰も気づいていなかった」ということでした.

南極物語

初めての女性隊員

著者: 大野義一朗

ページ範囲:P.683 - P.683

 1月まで白夜だったものが3月には昼と夜の長さが半々になり,同じ勢いでなお昼は短くなり続けた.南極の冬は夜の季節であり,オーロラの季節であった.
 日本隊のオーロラ研究は地上観測,宇宙からの人工衛星,直接ロケットを打ち込むなど先駆的で意欲的に行われてきた.現在では地磁気に引かれた太陽風のプラズマが大気分子を励起する現象と解明されたが,そのことでオーロラの美しさが損なわれることはない.南天の星座を背景にあでやかな色となまめかしい動き,そして全く音がしない神秘さ.北欧で不吉な前兆とされていたのも首肯ける危ういほどの魅力があった.理屈上はいつも出ているわけだが肉眼では天気のいい夜にしか見えず,なかでも本当に華麗なものは越冬中10回ほどであった.もっとも騒ぎ立てるのは初めの3,4回であとはバーの誰も見向きもしない窓の飾りになっていた.しかしその研究となると事情が変わる.39次隊のオーロラ担当は日本で初めて越冬した女性の1人カズボウだった.昼は眠り,暗くなると起き出す逆転生活でダボも含めすべてのオーロラを見続けていた.

私の工夫—手術・処置・手順

鼠径ヘルニア修復術において,プロリン・ヘルニア・システムの上下2枚のパッチを各スペースに手際よく留置する方法

著者: 下間正隆 ,   麦谷達郎 ,   山岡延樹 ,   相良幸彦 ,   山岸久一

ページ範囲:P.684 - P.685

 鼠径ヘルニア修復術に用いるプロリン・ヘルニア・システムは上下2枚のパッチをコネクターで結合したall in one型のgraftである.
 腹膜前腔に作製した後方スペースと外腹斜筋腱膜と内腹斜筋との間に作製した前方スペースにそれぞれ下部パッチと上部パッチを留置することにより,ヘルニア門を閉鎖してかつmyo-pectineal orificeを補強して鼠径ヘルニアを修復する.

Expert Lecture for Clinician

進行結腸癌に対する吊り上げ式ハンドアシスト腹腔鏡下腸切除(HALS)

著者: 亀山雅男 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.687 - P.693

 今回発表させていただくハンドアシスト腹腔鏡下腸切除は一般に“HALS”と呼ばれていますが,この手術をやり始めたのは,実は1999年の4月からです.まだそれほど時間が経っていませんので,問題点も幾つかあると思いますし,それを1つ1つ解決しながら現在に至っています.その経緯も含めてご紹介したいと思います.
 元来,癌の外科治療には根治性と機能温存という一見相反する2つのファクターがあります.生存率が低い食道癌とか膵臓癌といったものは,未だに拡大郭清をして生存率を上げる方向で頑張っています.ところが,ある程度根治性が上がってくると,手術のリスクもあり,機能障害という問題が起こってきますので,肝臓癌や肺癌の場合には縮小手術という流れが出てくるわけです.胃癌の場合は,sentinel nodeを駆使して分節切除などの縮小手術を行っています.さらに,乳癌とか大腸癌の場合は手術成績が良好ですし,美容上の問題も考慮に入れた治療を行っています(図1).

臨床報告・1

乳癌術後におけるMRSA創部感染症に対する超酸化水の使用経験

著者: 田澤賢一 ,   高橋博之 ,   山岸文範 ,   鈴木修一郎 ,   新井英樹 ,   川又隆 ,   塚田一博 ,   田澤賢次

ページ範囲:P.695 - P.698

はじめに
 超酸化水は水道水に微量のNaClを混ぜて電極間に隔膜を介して電気分解を行った生成された水である.活性塩素0.05〜50ppm,活性酸素10〜50ppmを含有し,酸化電位が高く,pH 2.7以下である1〜3).強い殺菌性,弱い組織障害性,低コストなどの点から臨床的応用性が高いとされる.今回,われわれは乳癌術後のMRSA(methicillin-resistantStaphylococcus aureus:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)創部感染症に対し,超酸化水の洗浄療法が有効であった症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

多発性肺転移を伴った肝細胞癌がspecific substance mycobacterium(SSM)単独投与で完全寛解した1例

著者: 井上康一 ,   田島隆行 ,   高誠勉 ,   佐藤哲也 ,   杉田輝地 ,   遠藤茂通

ページ範囲:P.699 - P.702

はじめに
 肝細胞癌はときに自然寛解することが報告されている1)が,多数の肺転移を伴った肝細胞癌が自然寛解することはきわめてまれである2).われわれは今回,多発性肺転移を伴った肝細胞癌がspecific substance mycobacterium(SSM,いわゆる丸山ワクチン)単独投与後に完全寛解した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

胃壁外性に発育した消化管間質細胞性腫瘍(分類不能型)の1切除例

著者: 岡山順司 ,   松村一隆 ,   杉原誠一 ,   中辻直之 ,   西和田敬 ,   丸山博司 ,   中野博重

ページ範囲:P.703 - P.706

はじめに
 消化管の間質細胞性腫瘍(stromal tumor)は,その概念,発生分化の起源,良・悪性の鑑別などの議論が多い疾患である1).近年,種々の免疫組織学的手法が用いられ,stromal tumorの組織由来の鑑別が可能となってきた.今回,われわれは胃壁外性に発育し術後の病理組織検査において組織由来が明らかでない狭義のgastrointestinal stromaltumor(以下,GISTと略す)と診断された1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

胃切除後の十二指腸・空腸悪性リンパ腫の1例

著者: 川本昌和 ,   今田敏夫 ,   富山泉 ,   利野靖 ,   高梨吉則 ,   中谷行雄

ページ範囲:P.707 - P.710

はじめに
 小腸悪性リンパ腫は,消化管原発悪性リンパ腫の20〜40%を占めるといわれている.その多くは回盲部に発生するが,今回,われわれは胃切除後18年経過して発見された稀な十二指腸・空腸悪性リンパ腫(follicle center lymphoma)を経験したので報告する.

特発性血気胸に対する胸腔鏡下手術の1例

著者: 津屋洋 ,   桑原生秀 ,   田中秀典 ,   富田弘之 ,   波頭経明

ページ範囲:P.711 - P.713

はじめに
 自然気胸に胸腔内出血を伴う特発性血気胸は比較的まれな疾患である.今回,われわれは胸腔鏡下手術で良好な経過を得た特発性血気胸の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

抗癌剤感受性試験の結果に基づいた抗癌剤投与が著効を示した胃癌癌性腹水の1例

著者: 陣内祐二 ,   月川賢 ,   瀬田真一 ,   長嶋隆 ,   窪田倭 ,   山口晋

ページ範囲:P.715 - P.718

はじめに
 癌性腹水貯留による腹腔内圧上昇症状は重篤かつ治療不応性で緩和ケアが困難である.癌性腹水より採取した癌細胞をYoshiokaら1)が開発した温度感応性ポリマーを培養基材に用いた三次元ゲル培養し,4種の抗癌剤に対する感受性試験を行った.この結果より感受性のある薬剤を選定し,かつ50%抑制濃度(IC50)以上の腹水濃度を達成する薬用量を算出し,腹腔内に投与した.投与後1〜2週間で腹水が消退し,QOLが改善した症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

嚢腫型肝内胆管拡張症の肝部分切除後に発症した胆管癌の1例

著者: 上之園芳一 ,   才原哲史 ,   立山健一郎 ,   熊之細透 ,   白濱浩 ,   高尾尊身 ,   愛甲孝

ページ範囲:P.719 - P.724

はじめに
 胆管拡張症あるいは膵胆管合流異常に胆管癌が発生することはよく知られている1,2).今回,膵胆管合流異常を伴わない結石合併の嚢腫型肝内胆管拡張症に対し結石,嚢腫を含めた肝部分切除を行った.しかし,約1年半後に閉塞性黄疸で異時性に肝内胆管癌が発症し,切除した1症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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