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文献詳細

雑誌文献

臨床外科56巻5号

2001年05月発行

文献概要

特集 家族性腫瘍—診断と治療の現況

家族性胃癌—その実像と分子背景

著者: 前原喜彦1 杉町圭蔵1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科(第2外科)

ページ範囲:P.637 - P.643

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 DNAミスマッチ修復機構を構成する遺伝子群の変異がポリポーシスを伴わないタイプの遺伝性大腸癌(hereditary non-polyposis colorectal cancer:HNPCC)家系に遺伝していることが1993年に明らかになり,その後悪性腫瘍の家系内集積や重複癌のリスクにおけるミスマッチ修復異常の意義がクローズアップされた.家族性胃癌についても,その存在がこの時期より注目されるようになった.現時点で家族性胃癌とは「①家系内に胃癌症例が少なくとも3人いて,そのうち1人は他に対して第1度近親者である,②少なくとも2世代に継続して認められること,③1人は50歳以前に診断されていること,④他の家族性腫瘍が除外できること」といった条件を満たすものと考えられるが,実際には分化型胃癌と未分化型胃癌をそれぞれ中心とする2つ以上の疾患実態(entity)が存在すると考えられ,その実像は単純でない.家族性胃癌の分子背景としてはE-カドヘリン遺伝子のgerm-line変異が報告されたが,その意義は未分化型胃癌を中心とするfractionに限られるようである.ミスマッチ修復異常の意義は現時点では明らかではない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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