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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科56巻6号

2001年06月発行

雑誌目次

特集 大腸癌の術後再発をめぐって

大腸癌の術後再発様式と治療の現状

著者: 須田武保 ,   長倉成憲 ,   丸田智章 ,   谷達夫 ,   飯合恒夫 ,   岡本春彦 ,   白井良夫 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.741 - P.746

 大腸癌の再発様式をみると,全国登録集計では頻度の高いほうから順に肝転移,局所再発,肺転移,腹膜播種,リンパ節転移,骨転移,その他の再発形式の順であり,結腸癌では肝転移が主であり,直腸癌では局所再発,肝転移および肺転移が主であった.また術後に本邦で行われている形式の再発早期発見を目的とした定期的follow upは,十分大腸癌の予後向上に貢献していると考えられた.いずれの再発形式においても治療効果の面から治療の第1選択は外科的切除であり,特に肝再発においては複数回肝切除を行っても予後改善が期待できると考えられる.

大腸癌の術後再発高危険群の設定と再発予防の可能性

著者: 丸田守人 ,   松本昌久 ,   前田耕太郎 ,   内海俊明 ,   佐藤美信 ,   升森宏次

ページ範囲:P.747 - P.751

 大腸癌術後の再発しやすい癌とは手術時にすでに外科医の手術により取り切れない範囲に拡がっていた癌となる.早期癌より進行癌のほうが再発しやすく,病理組織学的項目および術前CEA値なども進行に伴い,その程度が強く発現してくる.しかし,同程度に進行した癌について,その再発,無再発を比較してその差となる要因を検討すると,深達度およびリンパ節転移の程度が再発に関係してくる.すなわち癌再発の高危険因子は時間的要因もあるが,現在用いられている進行度分類が正しく再発危険度を示している.

早期発見をめざした術後サーベイランス戦略とその成果

著者: 風間伸介 ,   渡邉聡明 ,   名川弘一

ページ範囲:P.753 - P.758

 大腸癌に対する治療としては外科的な根治手術に加えて,術後再発に対するサーベイランスが必要となる.術後サーベイランスの目的は局所再発,遠隔転移,あるいは新たな癌の発生を無症候性のうちに発見し,再治癒切除をはじめとする治療を早期に行い,術後生存率の向上を目指すところにある.しかし未だサーベイランスの必要性に疑問を呈する論文が見られるように,現在のサーベイランスは十分とは言えず,今後検討,改善を要する点も多い.本稿では大腸癌術後サーベイランスの概要について述べ,当科サーベイランスの成果についても触れたが,今後,サーベイランスが更に成果を上げるためには,患者個別ごとに適応できる柔軟性を持ったガイドラインの作成と検査法の選択,改善が望まれる.

骨盤内局所再発癌に対する積極的外科治療

著者: 森谷冝皓 ,   山口高史 ,   赤須孝之 ,   藤田伸

ページ範囲:P.759 - P.765

 再発癌120例に開腹手術を行った.74例には肉眼的に断端陰性の切除が行われ,39例は断端陽性ないし遠隔転移のため姑息切除で終え,残り7例は再発巣の切除は不能であった.縮小手術を35%に,TPEやTPESなどの拡大切除を65%に行った.仙骨切断レベルはS3上縁が多く,次いでS4,S2下縁の順である.全体の5生存率は30%であった.根治切除群5年生存率は48%,一方,非切除ないし非根治切除群は5%で有意に不良であった.手術経験とともに合併症,手術侵襲は軽減した.局所再発癌に対するstaging法を確立し,共通の土俵で治療成績や有効な術後補助療法が論じられる環境整備が不可欠である.

大腸癌血行性転移の外科治療

著者: 岡部聡 ,   杉原健一

ページ範囲:P.767 - P.773

 大腸癌血行性転移の治療法について自験例の検討と文献的考察を行った.最も頻度の高い肝転移については画像診断技術や手術手技の進歩に伴い,外科的に転移巣を完全切除し,根治の期待できる症例が増えてきている.最近は従来切除不能であった肝両葉の多発転移巣に対しても経皮的門脈塞栓術後に5亜区域を切除したり,非手術的治療を組み合わせて2期的に肝転移巣を切除し,根治が得られるようになってきている.肺転移についても縦隔リンパ節を含めて完全切除が可能であれば根治が期待できるが,肝転移巣に対するような有効な非手術的治療法の開発はみられておらず,予後はあまり改善していない.脳転移については依然として有効な根治的治療法はなく,長期予後は期待できない.

大腸癌血行性転移の薬物療法

著者: 原聡 ,   奥野清隆 ,   安富正幸

ページ範囲:P.775 - P.779

 大腸癌の血行性転移の標的臓器は肝,肺,脳である.切除の対象となるのはごく限られた症例のみであり,ほとんどが化学療法に頼らざるをえない.肝転移巣については肝動注療法が肝局所に焦点を当てた治療法であり,副作用も少なく,抗腫瘍効果は全身療法よりも良好である.しかし,肝外病変には全く無力であり,肝転移がコントロールできたとしても続発する肺転移や局所再発には効果は乏しい.肝動注は肝外病変のないものにおいて第一選択として,あるいは肝切除後の補助療法として位置づけることが適切である.全身療法としてはirinotecan/5-FU/leucovorin併用療法が世界的な標準レジメンになりつつあり,本邦での成績の蓄積が待たれる.

大腸癌腹膜播種性転移の治療とその成績

著者: 加藤知行 ,   平井孝 ,   金光幸秀

ページ範囲:P.781 - P.788

 大腸癌腹膜転移の治療について,1975〜1998年に経験した162例の初回手術時の腹膜転移例と25例の腹膜再発例の治療成績を示し,文献的考察をした.自験例の生存期間を中央値でみると原発巣非切除例5か月,原発巣切除例でP1単独2年4月,P2単独1年6か月,P3単独1年3か月,腹膜再発例1年0月で,3年以上の長期生存は腹膜単独転移でP1およびP2例と治癒切除後の再発例に多く,また腹膜転移を完全切除した症例に多かった.腹膜転移と他の転移を合併した症例では長期生存例はない.
 腹膜転移例で長期生存を得るには,先ず原発巣と転移巣を完全切除することが肝要である.化学療法はMTX/5-FUまたは5-FU/leucovorinの全身投与とMMCなどの腹腔内投与があり,病巣の進展状況に応じて治療法を選択する.

カラーグラフ 正しい外科切除標本の取り扱い方・3

迅速凍結切片作製法

著者: 小坂健夫

ページ範囲:P.733 - P.736

目的
 術中の所見が術前診断と異なったときや,あるいは術中に新しく病変が発見されたときなどに,手術が適切に行われているかを判断する補助として迅速凍結切片(frozen section,以下,FS)が用いられることがある.FSの目的には大きく分けて以下の4つの場合が考えられる1)
 (1)手術的に切除された組織が,炎症性か腫瘍性か,腫瘍性ならばそれが良性か悪性か診断する.
 (2)腫瘍の切除に際して,摘出された標本の切除断端に腫瘍がないか,また腫瘍から断端までの組織学的な距離を診断する.
 (3)正常組織構成の異常増加や欠損などを診断する.たとえばHirschsprung病における神経節の有無,あるいは慢性偽性腸閉塞症におけるmyo-fibroblastsの過増殖などの有無を診断する.
 (4)本来の手術中のFSとはいえないが,各種の抗原を保存する目的で用いられてもいる.ホルマリン固定により抗原の多くがマスクされ,免疫組織学的手法の妨げになっていることはよく知られている2).凍結切片法では抗原が良好に保存されるため,ホルマリン固定標本に対するアンマスキングの手法が不要である.

目で見る外科標準術式・18

S状結腸切除術

著者: 河村裕 ,   小西文雄

ページ範囲:P.789 - P.795

はじめに
 本稿ではS状結腸癌に対する標準的な術式である自律神経を温存したS状結腸切除術に関して述べる.

麻酔の基本戦略・10

術前合併症のある患者に対する対応(2)—糖尿病・気管支喘息・腎機能不全・貧血

著者: 稲田英一

ページ範囲:P.797 - P.801

目標
 1.主な術前呼吸器合併症と,その周術期管理について理解する.
 2.糖尿病をもつ患者の周術期管理上の注意点について理解する.
 3.腎機能不全患者の周術期管理について理解する.
 4.貧血患者の周術期管理について理解する.

外科医に必要な眼科common diseaseの知識・12

神経眼科疾患

著者: 石川弘

ページ範囲:P.802 - P.804

はじめに
 神経眼科とは眼症状から神経疾患の診断や病巣局在を追求する分野であり,視覚系,瞳孔系,および眼球運動系に大別される.本稿では外科医が遭遇しやすく,しかも眼症状が肉眼でも観察できる瞳孔と眼球運動の異常について述べる.

外科医に必要な皮膚科common diseaseの知識・1

湿疹・皮膚炎

著者: 斎田俊明

ページ範囲:P.805 - P.807

疾患の概念
 湿疹・皮膚炎は一般外来でしばしば経験されるありふれた疾患である.湿疹(eczema)とは語源的に“boil out”の意味であり,皮膚表面に大小の水疱が多数生じた状態を指したものと考えられる.しかし現在,このような所見を呈する湿疹はアレルギー性の接触皮膚炎であることが明らかにされている.病態に基づく診断名のほうが治療上も有用なので,近年は急性湿疹とは呼ばず,アレルギー性接触皮膚炎と診断される.
 接触皮膚炎はアレルギー性接触皮膚炎と一次刺激性接触皮膚炎に分けられる.後者は刺激物に触れて生じる皮膚炎で,たとえば灯油なども原因物質の1つとして知られている.乳児のおむつ皮膚炎も一種の一次刺激性接触皮膚炎である.主婦湿疹(手湿疹)は洗剤類が手指に長期間作用し,角層が変性,傷害されて生じる慢性型の刺激性接触皮膚炎である.

病院めぐり

川崎製鉄健康保険組合千葉病院外科

著者: 山本義一

ページ範囲:P.808 - P.808

 昭和26年に川崎製鉄が千葉市に製鉄所を開設し,その後の設備拡大に伴い昭和30年代の半ばには従業員数が1万人を越えその家族を含めると2万5千人に及び,医療需要の急増につながったことが当院建設の契機となりました.千葉大学第2外科中山恒明教授のアドバイスのもと準備を進め,健康保険組合立としての設立が決まり,中山先生を初代院長として昭和41年4月に226床で開院しました.その後,故大西盛光先生,関 幸雄先生(現名誉院長)と外科のチーフが院長を務め,増改築を重ねて現在では診療科15科,医師57名,病床数360床の総合病院となり,千葉市の中核病院にまで発展しました.千葉市の人口の増加とJR蘇我駅前に位置するというアクセスのよさもあって,1日の外来患者数は平均1,260人を数えます.今では川鉄健保組合員は外来患者の10%,入院の5%にすぎません.
 当院は千葉大学の関連病院であり,医師は全員千葉大学の医局より派遣されています.開院当初より風通しのよいアットホームな雰囲気のある病院であり,その理由として次のようなエピソードが残っています.中山先生と大西先生が建築中の病院を見に行った時のこと,医局とささやかな院長室があるだけで医師のための個室はなく,大西先生がそのことを尋ねると中山先生は『診療の善し悪しは人によって決まる.部屋の有る無しとは関係がない.

国立千葉病院外科

著者: 鈴木一郎

ページ範囲:P.809 - P.809

 国立千葉病院は千葉市の中心にあり,交通の便もよくかつ周辺にはいまだ緑を残す高台に位置しています.歴史的には他の国立病院と同様に昭和20年に旧陸軍病院より厚生省に移管され,一般国民への医療の普及を使命として発足しました.初代の院長は外科手術書のバイブルと言われた新外科手術を著わした鈴木五郎で,設立当初より標準的適正医療の提供,医療人の育成,臨床研究の推進を理念とし,中心的な役割を担ってまいりました.平成11年の国立病院療養所再編制計画では国の政策医療のうちの,がん,循環器疾患,精神疾患,内分泌・代謝疾患,感覚器疾患の5つの疾患の専門医療施設として,またエイズの拠点病院として位置づけられました.
 病床数は500床で,医師数定員51名,レジデント7名,研修医13名で,総職員数407名の病院です.

文学漫歩

—柳田邦男(著)—『「死の医学」への序章』『「死の医学」への日記』(1986年,1996年,新潮社 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.810 - P.810

 奈良の生家から自転車で15分程の矢田寺(金剛山寺)には,梅雨時に8,000株の紫陽花が咲きます.ピンク,水色,紫などの花々が雨に濡れた境内の風情は格別です.季節の花々は心を和ませてくれます.あの豪放磊落と言われた名外科医中山恒明先生が「小さい頃から花が好きで,学生時代も医師になってからもずっと庭で花を上手に咲かせていた」と『糖尿病とともに90歳(扶桑社刊)』で述べられているのを読み,繊細で優しい先生なのだと嬉しく思いました.
 岸和田は西は海,東は山で東西に細長い市です.山側は山村で庭があって家族も多い家が多く,末期癌の患者さんも住み慣れた自宅で庭の花など観ながら家族に囲まれて過ごしたいと希望されることが多くなってきました.訪問看護部も熱心で優秀なナースが多く,安心して任せられるので,希望があれば在宅に移行して,医師もできるだけ往診に同行するようにしています.私などはほとんど喋りに行ってるだけですが,大層歓んで頂けるので有り難いです.

南極物語

極夜

著者: 大野義一朗

ページ範囲:P.811 - P.811

 南半球では太陽は北の空を通る.ただそれだけのことですっかり時間と方向感覚が失われた.その太陽の北中高度がどんどん低くなり,5月には凍った水平線を転がるようになり,月末4日間のブリザードが明けてみるとすでに太陽の出ない極夜に突入していた.
 極夜といっても昭和基地の緯度では昼の数時間北の空が明るみ,全くの暗闇にはならない.それでも1日中螢光灯の下での生活を強いられた.目が覚めた時,時計の「10:00」が寝入りなのか寝過ごしたのか区別がつかない.日課は24時間で組まれていたが「昼間」はぼーっとして仕事にならず,逆に「夜間」は目がさえて基地のあちこちで騒ぎが始まった.昼夜の喪失に伴う概日リズムの乱れがじわじわと生活と心理面に影響を与えていた.越冬中のリズムの乱れについては米山重人先生(32,37次)の精力的な仕事(Am J Physiol277,1999)があるが,我々が越冬していた年(1997〜1999)の稚内市立病院外科は彼と部長の高木知敬先生(21,28次)の2名4回の越冬経験があり「わからない時は稚内」が合い言葉になっていた.

手術手技

ラジオナビゲーションによる上皮小体摘出術

著者: 北川亘 ,   清水一雄 ,   赤須東樹 ,   汲田伸一郎 ,   隈崎達夫 ,   田中茂夫

ページ範囲:P.813 - P.816

はじめに
 原発性上皮小体機能亢進症の原因の80〜85%は上皮小体腺腫であり1),その術前局在診断は頸部超音波検査,CT,MRI検査の組み合わせによって行われている.1990年代から99mTc-methoxyiso-butylisonitrile(99mTc-MIBI)シンチグラフィ検査が原発性上皮小体機能亢進症の局在診断に導入され,診断能が向上している2,3).近年携帯用のガンマプローブが開発され,99mTc-MIBIシンチグラフィと組み合わせることで欧米では病的上皮小体の取り残しを回避できる低侵襲手術が施行されている4〜6).今回筆者らは99mTc-MIBIと携帯用ガンマプローブを用いることにより術中局在診断が可能で,病的上皮小体の取り残しが防止できた4例を経験したので1症例を呈示し,手術手技とradio-guided parathyroidectomyの有用性について報告する.

臨床報告・1

大網異常癒着による大網裂孔が原因と考えられたイレウスの1例

著者: 荒川元 ,   小山文譽 ,   素谷宏

ページ範囲:P.817 - P.820

はじめに
 開腹歴や腹部外傷歴もなく,大網遊離部下端の相互による異常癒着によって形成されたと考えられた大網裂孔にてイレウスを生じた非常に稀な症例を経験したので,若干の文献的考察1〜14)を加え報告する.

鼠径ヘルニア,閉鎖孔ヘルニアを既往とし,大腿ヘルニア虫垂嵌頓手術後に胆嚢捻転症を生じた1例

著者: 山本尚人 ,   橘尚吾 ,   中村昌樹 ,   馬場聡

ページ範囲:P.821 - P.824

はじめに
 今回筆者らは鼠径ヘルニア・閉鎖孔ヘルニアの既往を持ち,大腿ヘルニア虫垂嵌頓の手術後に胆嚢捻転症を起こした症例を経験したので,その発症素因につき文献的考察を含め報告する.

腹腔鏡下胆嚢摘出術後の落下結石による腹壁膿瘍の1例

著者: 芝原一繁 ,   船木芳則 ,   稲木紀幸

ページ範囲:P.825 - P.827

はじめに
 腹腔鏡下胆嚢摘出術後の合併症として膿瘍形成の報告が散見されるようになってきた1〜10).そのほとんどが術中の落下結石が原因となっており,治療は結石除去が原則である3〜7)
 今回筆者らは腹腔鏡下胆嚢摘出術3か月後に臍下創に膿瘍形成を認め,結石除去により軽快した1例を報告する.

多発性肺動静脈瘻に対し両側同時に胸腔鏡補助下で中葉切除および舌区部分切除を施行した1例

著者: 加瀬昌弘 ,   山形達史 ,   蔵田英志 ,   岡本雅彦 ,   都島由紀雄

ページ範囲:P.829 - P.832

はじめに
 先天性肺動静脈瘻(以下,AVF)は時に重篤な合併症発生の可能性がある1,2)ことから,多発例であっても肺機能を温存した可及的切除が推奨されている3,4).今回筆者らは両側肺のS5領域に発生したAVFに対し,それぞれを胸腔鏡下手術(VATS)で切除した.左側は胸膜直下にあり,舌区部分切除術を,深部に存在した右側は中葉切除術を施行した.両側同時VATSの報告は稀であるので若干の文献的考察を加えて報告する.

胃内へ穿破した脾動脈瘤の1例

著者: 原田洋明 ,   木村正美 ,   松下弘雄 ,   兼田博 ,   久米修一 ,   上村邦紀 ,   光永憲央 ,   畑中義美

ページ範囲:P.833 - P.835

はじめに
 脾動脈瘤は比較的稀な疾患であるが,無症候性に経過することが多いため発見が遅れ,腹腔内や消化管内などに破裂した際は致死率が高い重篤な疾患である1).今回筆者らは胃内への穿破による吐血を契機に発見され,血管造影下に塞栓療法を施行し,良好に経過した症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

バリウム性肉芽腫に対しMiles手術を施行した1例

著者: 浦川雅己 ,   高橋克之 ,   澤田玲 ,   山本英司

ページ範囲:P.837 - P.840

はじめに
 注腸造影検査のきわめて稀な合併症としてバリウム性肉芽腫(barium granuloma)が挙げられる.今回,筆者らは本症を1例経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

虫垂切除術後イレウスにて発症した腹腔内膿瘍を伴つたMeckel憩室穿孔の1例

著者: 長田俊一 ,   高橋徹也 ,   亀田久仁郎 ,   福島忠男 ,   高橋利通

ページ範囲:P.841 - P.844

はじめに
 Meckel憩室は胎生期に存在する卵黄腸管の遺残がもたらす小腸の憩室であるが,多くは無症状である.しかし,イレウス,腸重積,出血,憩室炎,穿孔,嵌頓ヘルニアなどの合併症を併発した場合,外科的治療となる.今回,筆者らは虫垂切除術後に発症したために診断が困難であった腸閉塞によって発症した腹腔内膿瘍を伴うMeckel憩室穿孔を経験したので,文献的考察を加え,報告する.

鼠径ヘルニアを契機に発見された腹膜偽粘液腫の1例

著者: 田中玲人 ,   待木雄一 ,   朽名靖 ,   高山哲夫 ,   酒井雄三

ページ範囲:P.845 - P.848

はじめに
 腹膜偽粘液腫(pseudomyxoma peritonei)は1884年Werth1)により報告されたのが最初で,原発は主に虫垂,卵巣であり,以来本邦でも多くの報告があるが,その病因,病態については未だ不明な点が多い.今回鼠径ヘルニアを契機に発見された腹膜偽粘液腫の1例を経験したので報告する.

回盲部が嵌頓した鼠径ヘルニアと小腸捻転が合併した総腸間膜症の1例

著者: 稲木紀幸 ,   芝原一繁 ,   舩木芳則

ページ範囲:P.849 - P.851

はじめに
 総腸間膜症とは腸回転異常症の1型で,小腸と結腸が共通の腸間膜を有している状態をいう1).今回筆者らは右鼠径ヘルニア嵌頓の手術を施行したところ回盲部が嵌頓しており,腹腔内で小腸の捻転を併発していた総腸間膜症の稀な1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

臨床報告・2

胆嚢内異所性骨形成の1例

著者: 藤井正彦 ,   仁木寛治 ,   仁木由子 ,   瀬尾浩二 ,   森住啓

ページ範囲:P.853 - P.854

はじめに
 異所性骨形成は手術創瘢痕内や悪性腫瘍内における発生が知られているが,胆嚢に発生することはきわめて稀である1).今回筆者らは胆嚢結石に合併した胆嚢粘膜内骨形成を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

臨床経験

交通事故による慢性期外傷性胸部大動脈瘤4例の治療経験

著者: 井隼彰夫 ,   千葉幸夫 ,   木村哲也 ,   森岡浩一 ,   奈良雅文 ,   津田武嗣

ページ範囲:P.855 - P.858

はじめに
 鈍的胸部外傷による胸部大動脈損傷は大動脈峡部に最も多く見られ,受傷後30分以内にその80から90%が死亡し,慢性期まで生存するものは文献的に5%以下と言われている1).また,慢性期の多くは仮性動脈瘤の形をとるとされ,発見されれば破裂予防のため積極的に手術をすべきとされている2).筆者らは現在までに交通事故による慢性期外傷性胸部大動脈瘤4例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

鎖骨下動脈閉塞症に対する胸郭外血行再建術の経験

著者: 植草英恵 ,   千葉幸夫 ,   井隼彰夫 ,   木村哲也 ,   森岡浩一 ,   上坂孝彦

ページ範囲:P.859 - P.862

はじめに
 鎖骨下動脈閉塞症に対する胸郭内血行再建術としては大動脈—鎖骨下動脈バイパス術,胸郭外血行再建術として総頸動脈—鎖骨下動脈transposition法,総頸動脈—鎖骨下動脈バイパス術,鎖骨下—鎖骨下動脈バイパス術,腋窩—腋窩動脈バイパス術,さらに最近ではpercutaneous transluminal angio-plasty(PTA),stenting1)などがあり,症例によって選択されている.今回,筆者らはグラフト経路の異なる3種類の胸郭外血行再建術を選択し,良好な結果を得たので文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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