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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科57巻1号

2002年01月発行

雑誌目次

特集 最先端の外科医療

最先端外科医療としてのテレサージェリー,ロボティクス,ナビゲーションサージェリー

著者: 大橋秀一

ページ範囲:P.13 - P.20

 近年,画像伝送技術の急速な進歩により,内視鏡外科分野を中心とした外科領域においても遠隔医療が応用されるようになってきた.リアルタイムでの画像伝送による遠隔教育やテレカンファレンス,さらには遠隔手術支援などが次第に各施設においても臨床応用されつつあるのが現状である.
 一方,IT技術の向上に伴ってコンピュータ支援による外科領域の手術への応用も進められており,ロボティクス,ナビゲーションサージェリーなどが試行段階に入っている.術者の手の動きを正確に伝えるマスタースレイブ方式のロボットシステムはすでに市販されているし,プログラム方式によるナビゲーションサージェリーもすでに実用段階に入っている.

外科領域におけるテレサージェリーの現況

著者: 貝羽義浩 ,   黒川良望 ,   大橋秀一 ,   里見進

ページ範囲:P.21 - P.24

 テレサージェリーとは,遠隔地から手術を指導する遠隔手術支援(tele-mentoring)とロボットにより遠隔操作で手術を行うrobotic surgeryの2つの要素を中心にした通信技術の外科分野応用をいう.遠隔手術支援は,エキスパートが移動せずに手術の指導が可能で,地理的制限を超越できるため,離島や僻地の患者・医師のみならず,大都市の患者・医師にも大きなメリットをもたらす.現在,ISDN 3回線を用いた画像伝送手段を用いている施設が多いが,近い将来光ファイバーが主流となることが予想される.テレサージェリーは保険診療,費用負担など法的,社会的問題があり,いまだ一般化していないが,これらの問題を解決し,早急な全国的普及が望まれる.

内視鏡外科における遠隔手術教育システム

著者: 古川俊治 ,   渡邊昌彦 ,   石井誠一郎 ,   納賀克彦 ,   北島政樹

ページ範囲:P.25 - P.32

 特殊な合併症の危険性が指摘されている内視鏡下手術の安全な普及のために,教育システムの確立が大きな課題となっているが,その一つとして通信回線を用いた遠隔手術指導システムが期待されている.動画像圧縮伝送システムの高性能化により,ISDN 3回線の通信容量(384 Kb)で,毎秒30フレームの良好な術野像を得ることができ,動画像上双方向書き込み機能を用いることにより,リアルタイムの実効的な手術指導が可能となった.ただし,遠隔手術指導においては,患者の損害に関する責任分担の明確化,患者のプライバシー保護のためのセキュリティ対策などの問題がある.近い将来には,手術用ロボットを遠隔操作することによる手技的な手術介助が可能となり,より効果的な遠隔手術指導が実現するであろう.

ZEUSTMを用いたロボット手術

著者: 渋谷和彦 ,   阿部永 ,   乙供茂 ,   砂村眞琴 ,   武田和憲 ,   松野正紀

ページ範囲:P.33 - P.37

 内視鏡外科手術においては,拡大された画像を見ながら手術器具を操作するといった特性から,術者の手の震えも拡大されること,人間の手の動きをそのまま体腔内で再現することは困難であるというところに,ロボット手術の導入の利点があると考えられる.現在,臨床応用が図られている手術支援ロボットとして,ZEUS robotic surgical systemTMについて述べた.1998年に初めて臨床応用が報告されて以来,種々の手術が行われている.通信技術の発展による遠隔手術指導など,手術支援ロボットは教育面での可能性も大きい.
 最近,遠隔手術指導のみならず,実際の遠隔医療も可能であることが示され,今後のさらなる発展が期待される.

da Vinci®を用いたロボット手術

著者: 橋爪誠 ,   富川盛雅 ,   島田光生 ,   杉町圭蔵

ページ範囲:P.39 - P.45

 近年,内視鏡下外科手術の導入に伴い手術支援ロボットの必要性は急速に高まってきている.筆者らは手術支援ロボットda Vinci®を33例の症例に応用し,全例で大きな合併症を起こさず手術を成功させた.そのうち本稿では胆石症症例に対する胆嚢摘出術と特発性血小板減少性紫斑病症例に対する脾臓摘出術の症例を呈示した.21世紀の高齢化社会において低侵襲で高いQOLを維持でき,かつ従来の方法では不可能であった治療を可能にすることが外科領域における今後の大きな課題である.この意味でロボット手術のもつ意義は大きく,かつ大きな可能性を秘めている.

消化器癌に対するナビゲーションサージェリー

著者: 平塚正弘 ,   宮代勲 ,   石川治 ,   古河洋 ,   横山茂和 ,   山田晃正 ,   村田幸平 ,   土岐祐一郎 ,   大東弘明 ,   亀山雅男 ,   佐々木洋 ,   竹中明美 ,   石黒信吾 ,   今岡真義

ページ範囲:P.47 - P.52

 消化器癌に対するナビゲーションサージェリーの目的は,最小の切除で癌病巣を完全に摘出することである.3次元画像による術中ナビゲーションは肝臓などの実質臓器の手術に試みられている.一方,消化管癌ではリンパ節郭清のナビゲーションサージェリーとして,sentinel node理論の適用が検討されつつある.筆者らは,胃癌に対して色素法を用いてsentinel node biopsyの診断能を検討した結果,T1胃癌では同定率,転移検出感度ともに100%であった.リンパ節転移の無いことを直接的に診断することが可能となり,この結果に基づいて施設倫理委員会の承認を得,小開腹下での局所切除への適用を開始した.腹腔鏡下手術に応用するには克服しなければならない問題が山積している.

乳癌に対するナビゲーションサージェリー

著者: 定永倫明 ,   片岡明美 ,   増田隆明 ,   森正樹

ページ範囲:P.53 - P.58

 乳癌に対するナビゲーションサージェリーとして,センチネルリンパ節生検が注目されている.現在,センチネルリンパ節の同定方法や診断法に対し,さまざまな工夫がなされている.これらの技術,方法を臨床応用することで,乳癌手術の際にセンチネルリンパ節転移陰性症例を選択し,そのような症例に対し,腋窩リンパ節郭清を省略する縮小手術が可能となる.そのためにも統一したプロトコール,ガイドラインの設定などの整備が必要である.

内視鏡外科におけるナビゲーションサージェリー

著者: 宮島伸宜 ,   山川達郎

ページ範囲:P.59 - P.65

 近年の器具や技術の進歩とともに,悪性疾患に対しても内視鏡手術が多くの施設で施行されている.内視鏡手術では触知感覚がないためにリンパ節の硬さを触れることができない.手術中にリンパ節転移の有無を判定し,適切な郭清範囲を決定するためにナビゲーションサージェリー(navigation surgery)が導入されつつある.早期癌においてはsentinel node navigation surgery(SNNS)が行われている。SNNSには色素法とRI法があり,ともに良好な成績が得られているが,微小転移の問題があり,今後さらなる検討が必要である.進行癌では67Ga-citrateを用いたナビゲーションサージェリーが行われつつある.こちらも良好な成績が得られている.今後,ナビゲーションサージェリーの普及によってminimally invasive surgeryの利点がさらに活かされることが期待される.

カラーグラフ 正しい外科切除標本の取り扱い方・10

胃の切除標本の取り扱い方

著者: 嘉悦勉 ,   河村正敏 ,   高村光一 ,   丸森健司 ,   鈴木恵史 ,   草野満夫

ページ範囲:P.5 - P.10

はじめに
 外科医にとって摘出標本を正しく取り扱うことは適切な組織学的検索のみならず,evidencebased medicine(EBM)に基づいた治療成績の比較検討には必要不可欠である.
 昭和大学医学部一般・消化器外科では切除標本の切り出し,組織標本の作製,診断までを以前は教室の研究室で行っていた.しかし,諸事情により今では固定標本の撮影までを研究室で,切り出し以後を病理検査室にお願いしている.多くの病院でも切除標本のホルマリン浸漬までが外科医の仕事で,その後を病理医にお願いしているのが一般的と思われる.そこで本稿では切除標本の取り扱い方のうち,当教室が行っている固定標本の撮影までについて述べる(図1).

外科医に必要な皮膚科common diseaseの知識・8

褥瘡

著者: 宇原久

ページ範囲:P.66 - P.68

疾患の概念
 仙骨部などの骨が突出している部位への体圧の集中によって生じる皮膚,軟部組織の壊死である.直接原因は持続的な圧迫であるが,発汗,失禁による皮膚の浸軟化,低栄養状態,知覚・運動神経障害,やせ,介護者の高齢化によるマンパワーの低下,予防や介護用品などについての情報不足なども発症に関与している.また,褥瘡に対する医師の関心が低く,創部の状態にかかわらず画一的な局所療法が行われている場合も少なくないなどの批判もある.

目で見る外科標準術式・25

肝癌に対する中央2区域切除

著者: 山崎晋 ,   小菅智男 ,   島田和明 ,   佐野力

ページ範囲:P.69 - P.75

適応
 肝臓の中央2区域切除とは,右葉前区域と左葉内側区域とを一塊として切除する術式である(図1).すなわち腫瘍がこの2区域に限局している症例で適応となる.多くは肝細胞癌や肝内胆管癌などの肝腫瘍,胆嚢癌で肝S4-5に浸潤(Hinf)がある場合が適応である.

私の工夫—手術・処置・手順

口径差がある回腸結腸の端々吻合

著者: 安達洋祐 ,   安田一弘 ,   垣迫健二 ,   北野正剛

ページ範囲:P.77 - P.77

 回盲部切除や右側結腸切除を行ったあとの再建では,回腸と結腸を端々吻合する1,2).少々の口径差があっても,結節縫合を両端→中間→その中間→……と均等に運針していけば,通常はきれいに端々吻合ができる.また回腸を斜めに切断し,口径を大きくしてから結腸と吻合する方法もある1,2).ところが,回腸と結腸の口径差が著しい場合は,このような工夫をしても端々吻合は困難である.回腸と結腸を端側で吻合する方法もあるが3),ここでは簡便で容易な端々吻合を紹介する.
 術式を図に示す.回腸は鉗子で挟んで切断してもよいが,結腸は自動縫合器で切断しておく.結腸断端を回腸断端に並べ,回腸の口径と同じ大きさの吻合口になるように結腸断端の縫合閉鎖部を切除する.回腸と結腸は同じ口径なので,連続縫合でも結節縫合でも通常の端々吻合が容易にできる.漿膜筋層縫合が終わったら,結腸断端閉鎖部の余った部分を無鉤鑷子かモスキート鉗子で内腔に押し込み,漿膜筋層縫合を軽く2針かけておく.以上の方法で行うとだれがやってもきれいに仕上がる回腸結腸端々吻合が完成する.

病院めぐり

今給黎総合病院外科

著者: 才原哲史

ページ範囲:P.78 - P.78

 当院は鹿児島市の北部,薩摩藩77万石,島津氏の居城(鶴丸城)跡の近く300mに位置し西郷隆盛の墓地(南洲墓地)の麓にあり,東に錦江湾と雄大な桜島が望める総合病院です.昭和13年7月に今給黎医院として開設し,昭和22年11月に今給黎病院となり,昭和63年に450床認可,総合医療診療科整備,平成元年総合病院認可となっています.
 鹿児島では鹿児島大学附属病院,鹿児島市立病院に次ぐ大規模な病院であり,民間病院として地域に根ざした医療を目指しております.

岩手県立宮古病院外科

著者: 佐藤雅夫

ページ範囲:P.79 - P.79

 岩手県は総人口141万人で,広大な県土(四国4県に相当し)を有しており,そこで県民が「何時でも,どこでも,誰でも良質な医療を受けられる」という創業の精神で昭和25年11月に県立病院が発足し,昨年で50周年を迎えました.
 当県立宮古病院は9つの広域中核病院の一つに位置づけられ,宮古下閉伊地区12万人の住民の唯一の総合病院として404床を有しています.陸中海岸国立公園の真直中の高台に建つ9階建ての病院は,本州最東端の病院で,東に太平洋を望み,水平線に昇る朝日を拝める良好な環境にあります.

文学漫歩

—谷崎潤一郎(著)—『春琴抄』(1933年,中央公論社 刊) 『吉野葛』(1931年,中央公論社 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.80 - P.80

 編集委員の先生から,いつドクター・ストップがかかるかと思っていたこの連載も,早いもので1年続き,めでたく新年を迎えることができた.「文学漫歩」という御題を頂きながら,文学の内容には少ししか触れず,横道にばかり逸れていることに編集部が眼をつぶって下さっているお陰である.ごめんなさい,今年もはなから逸れまくりです.
 新年には各劇場で能や歌舞伎の『三番叟』が演じられる.『三番叟』は祝賀の際の演目だそうで,先代の教授の盛大な退官記念パーティーの際には,有名な役者に舞って頂いた.白状すると,先輩が「サンバソウを数十万円で呼ぶらしいで」と言っていたのを,私は「ブラジルのサンバショーかぁ,えらい派手な出し物やなあ」と思い込んでいたのである.

南極物語

夏の終わり

著者: 大野義一朗

ページ範囲:P.81 - P.81

 謹賀新年.南極2度目の正月を迎えた.8人だけのやまと山脈雪上車生活も4か月目に入っていた.隕石探査を終えてキャンプに戻ると水を作るための氷を採取し,通信用アンテナを張る.食事当番はソリから持ってきた食糧を日中解凍して調理した.一番人気は鍋だった.缶ビールは一度ぬるくなるまで完全に解凍して再び車外で冷やしたが,数分遅れるとまた凍結した.すっかり別物の味になったビールを飲みながら鍋をつつき,1日の出来事を話し合った.拾った隕石の大きさ,振り返ったときの氷の青さ,風の冷たさ,毎日同じ繰り返しのなかのちょっとした今日だけの特別さを共感し合える食卓だった.
 夕食後はささやかな自由時間だ.活字ならどんなつまらない雑誌でも隅々まで読んだ.氷原の散歩も人気があった.足元の氷は吸い込んだ白夜の陽光を吐き出し,妙に明るい.時折氷のきしむ音が足の底から響く.しばらく歩くと緩やかな起伏に車影が消え,一瞬風が止むと全く音が消えた.

米国でのProblem-Based Learning形式による外科研修

Problem-Based Conference(3)—問題点に焦点を絞った鑑別診断と診断法—急性上腹部痛(その1)

著者: 町淳二 ,   児島邦明

ページ範囲:P.83 - P.95

1 はじめに
 前回のカンファレンスでは,「病歴と理学所見のとり方」と題してディスカッションを行いました.そこでは「頸部腫瘤」という問題点を呈示しながらも,主としてより完全な病歴,そして理学所見のとり方について話を進めました.したがって,主訴となった問題点以外についても,病歴と理学所見についてかなり広い範囲にわたりディスカッションを展開しました.このような細かな病歴と理学所見のとり方は,一般のproblem-based con-ferenceにおいてはむしろ稀であり,通常は問題点に,より焦点を絞ったディスカッション,すなわちproblem-focusedな質疑応答がなされるのがふつうです.今回はそのようなproblem-focusedなディスカッションや質疑応答を行うために,急性腹症としての急性上腹部痛の症例を呈示したいと思います.
 主訴からはじまり,病歴と理学所見,そして検査に基づいた診断面でのディスカッションに重点を置き,治療面に関しては必要最小限の質疑応答にとどめます(注1),今回も医学生と研修医の双方を対象としてよいカンファレンスです.

手術手技

乳房温存術における深胸筋膜下腋窩郭清術

著者: 藤井宏二 ,   上原正弘 ,   高橋滋 ,   泉浩 ,   竹中温 ,   山下正人

ページ範囲:P.99 - P.103

はじめに
 乳房温存手術に対する整容的な要求度は高まっている,温存療法への社会的な認識の高まりとともに,術者の側にも美容的側面の認識が浸透してきたものとも言える.
 これまで,乳房そのものの温存や美容的配慮のうえではさまざまな努力がなされているが,一方で,腋窩から側胸部の整容性についてはまだ十分な取り組みがなされていないように思われる.乳房がよく温存されていても,郭清後の側胸部の変形が目立つことは少なくない.

臨床報告・1

大腸癌術後経過中に発症したSchönlein Henoch紫斑病の1例

著者: 三浦文彦 ,   岡住慎一 ,   宮崎信一 ,   牧野治文 ,   落合武徳 ,   高山亘

ページ範囲:P.105 - P.107

はじめに
 Schönlein Henoch紫斑病は紫斑,関節症状,腹部症状,腎症状を呈する疾患であるが,今回筆者らは大腸癌術後経過中に発生し,診断に難渋した1例を経験したので報告する.

一時的横行結腸瘻造設にて治癒しえたS状結腸間膜膿瘍の1例

著者: 秋山和宏 ,   鈴木博孝 ,   深澤雄一 ,   内野敬 ,   小出研爾 ,   東仲宣

ページ範囲:P.109 - P.112

はじめに
 結腸間膜膿瘍は大腸の結腸間膜側への穿孔によって引き起こされる稀な疾患であり,これまでの報告は13例ときわめて少ない1〜10).腸管穿孔にもかかわらず腸管内容が遊離腹腔内に漏出しないため腹膜炎所見に乏しく,診断が困難である.確定診断のつかぬまま急性腹症として緊急開腹,腸切除術が行われることも多いと思われる.今回筆者らは術前診断が可能であった結腸間膜膿瘍例に対し,腸切除を行わずに一時的な人工肛門造設にて治癒しえた1例を経験したので報告する.

出血により高度貧血をきたした閉鎖孔ヘルニアの1例

著者: 松尾浩 ,   小久保光治 ,   山内一 ,   三鴨肇 ,   近藤哲矢 ,   渡辺進

ページ範囲:P.113 - P.116

はじめに
 閉鎖孔ヘルニアは高齢,多産,やせ型の女性に多く,通常閉鎖神経の刺激症状であるHowship-Romberg徴候以外に特徴的な所見がないため診断に苦慮する疾患である.今回,筆者らは慢性的な経過をたどり,閉鎖孔ヘルニア嵌頓部小腸からの持続的な出血によって高度貧血をきたした症例を経験したので報告する.

鼠径ヘルニア内虫垂嵌頓にProlenei® Hernia Systemを用いた1例

著者: 岸渕正典 ,   柳生俊夫 ,   山崎誠 ,   万井真理子 ,   西敏夫 ,   川崎勝弘 ,   弥生恵司 ,   加藤充

ページ範囲:P.117 - P.120

はじめに
 鼠径ヘルニア嵌頓は比較的多く遭遇する疾患であるが,その大部分は小腸や大網であり,虫垂の嵌頓例はきわめて稀である1〜3).今回,筆者らは鼠径ヘルニアに虫垂の嵌頓と腹腔内膿瘍を認めた症例に対して,Prolenei® Hernia Systemを用いたヘルニア根治術が有用であった1例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する.

早期胃癌に併存した胃壁外型有茎性発育を呈したgastrointestinal stromal tumor(uncommitted type)の1例

著者: 上田順彦 ,   吉光裕 ,   礒部芳彰 ,   山元龍哉 ,   山口直則 ,   今村好章

ページ範囲:P.121 - P.123

はじめに
 近年,免疫組織化学的あるいは電子顕微鏡的検索により消化管の紡錘形細胞からなる間葉系腫瘍をgastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)として総括される傾向にある1,2).今回,早期胃癌に併存した胃壁外型有茎性発育を呈したuncommit-ted typeのGISTの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

完全内臓逆位症に併存した胆嚢結石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した1例

著者: 細井則人 ,   斉藤孝 ,   鈴木克彦

ページ範囲:P.125 - P.128

はじめに
 内臓逆位症(以下,本症)は内臓の一部または全部が左右逆転し,正常位に対して鏡面的位置関係にあるものをいう.本邦においては2千人から1万人に1人の割合で認められる比較的稀な疾患である1).しかし,近年の腹腔鏡下手術の普及に伴い内臓逆位症に対して胆嚢摘出術を経験する機会が増してくるであろうと思われる.今回,筆者らは完全内臓逆位症に併存した胆嚢結石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下,LSC)を経験したので,文献的考察を加え報告する.

直腸原発gastrointestinal pacemaker cell tumorの1例

著者: 倉立真志 ,   近石寛 ,   矢田清吾 ,   余喜多史郎 ,   仁木美也子 ,   広川満良

ページ範囲:P.129 - P.132

はじめに
 近年,消化管間葉系腫瘍(gastrointestinalstromal tumor:以下,GIST)のなかで免疫組織化学的にc-kitレセプター陽性のものはその起源がCajalの介在細胞由来と考えられ,gastrointestinalpacemaker cell tumor(以下,GIPACT)として注目されている1).今回,直腸原発GIPACTの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて,報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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