特集 癌診療に役立つ最新データ
Ⅴ.食道癌
食道癌の治療に関する最新のデータ
著者:
北川雄光1
小澤壮治1
北島政樹1
所属機関:
1慶應義塾大学医学部外科
ページ範囲:P.113 - P.121
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早期食道癌発見率の上昇により内視鏡的粘膜切除術の適応症例は増加している.リンパ節転移のないT1aでは深達度m2までが適応となるが,耐術能不良例などを中心にm3〜sm1まで適応を拡大する試みが開始されている.T1b以深ではcN0であっても潜在的リンパ節転移の可能性を考慮して根治手術が施行されてきた一方,cT1bN0に対する化学放射線療法が一定の効果をあげており,今後手術療法との比較が注目される.T4ないしM1 lymph症例に対して化学放射線療法によりdown stageをはかったうえでsalvagesurgeryを行うことにより遠隔成績の改善が期待される.T2,T3の進行癌においては手術療法が中心に施行され,切除例5生率は施設により50%に達している.無作為化比較試験の結果,リンパ節転移陽性例では術後5—FU,CDDPによる補助化学療法の再発抑制効果が示され,現在術前化学療法との無作為化比較試験が進行中である.切除可能な進行癌に対する化学放射線療法の応用,普及しつつある内視鏡手術の根治術としての妥当性などが今後の課題である.