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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科57巻2号

2002年02月発行

雑誌目次

特集 食道癌治療におけるcontroversy

食道表在癌の治療

著者: 吉田操 ,   葉梨智子 ,   出江洋介 ,   武市智志 ,   宮本裕士 ,   廣岡信一 ,   門馬久美子 ,   山田義也 ,   榊信廣 ,   船田信顕 ,   大橋健一 ,   清水辰一郎 ,   堀口慎一郎

ページ範囲:P.147 - P.152

はじめに
 食道の表在癌とは癌の食道壁深達度が粘膜下層までのものをいう.この定義は早期癌や進行癌とは異なるもので,リンパ節転移の有無を問わない.食道における早期癌とはステージ0癌をいう.具体的には深達度が上皮層(Tis)あるいは粘膜層(Tla)にとどまり,なおかつリンパ節転移のないもの,とされている1).しかし食道癌の領域においても早期診断・早期治療が実現して久しい.上皮内癌,粘膜癌が日常臨床に頻繁に登場し,粘膜癌はもちろん粘膜下層癌の一部にまで食道温存治療が広く行われ,しかも治療成績がきわめて良好と判明している.現在ではリンパ節転移の稀な粘膜癌を早期癌,リンパ節転移頻度が明らかに高くなる粘膜下層以上に浸潤した癌を進行癌とする考えが一般的である.治療法の選択もこれに良く合う体系となっている.食道癌取扱い規約にある早期食道癌の定義は現状と合わなくなってしまった.本稿では病態に沿った表在癌治療の現況とその成績を述べ,今後の課題に触れたい.

食道表在癌の放射線治療

著者: 西尾正道 ,   明神美弥子 ,   西山典明 ,   白井敬祐

ページ範囲:P.153 - P.159

 食道表在癌の放射線治療について概説した.この領域のエビデンスはレトロスペクティブな非実験的研究の報告が多く,手術治療とEMRと放射線治療の厳密な比較は困難である.しかしリンパ節転移の少ないm1〜m2の症例はEMRが推奨されるが,それ以上の深達度のリンパ節転移の明らかでない症例は放射線治療の良い適応である.
 食道癌は重複癌の合併が多く,他因死する症例も多いため,原病生存率で比較するとsm癌の手術治療と放射線治療の遠隔成績はほぼ同等である.正確な深達度診断とリンパ節転移の情報をもとに治療法の検討が必要であるが,治療法の選択にあたっては放射線治療に関する十分な情報開示が望まれる.

切除可能食道癌(Mt〜Lt)のリンパ節郭清

著者: 宇田川晴司 ,   堤謙二 ,   木ノ下義宏 ,   上野正紀 ,   中村豊英 ,   飯塚敏郎 ,   澤田寿仁 ,   渡邊五朗 ,   鶴丸昌彦 ,   秋山洋

ページ範囲:P.161 - P.167

 胸部中部〜下部食道癌に対する頸部郭清の必要性について,頸部・上縦隔転移頻度,頸部再発発見後の治療,予後に関する多変量解析,手術侵襲・QOLへの影響,頸部郭清と上縦隔郭清の有機的関係の多方面から検討を加えた.転移頻度の解析からLt主体の食道癌でもmp以深であればMt病変では少なくもsm2以深の病変には3領域郭清が必要と考えられた.安全かつ確実な#101から#106の連続的徹底郭清には頸部からのアプローチが必須である.より浅い病変には#106の術中迅速診やsentinel node navigation surgeryが有効の可能性があり,今後の解析が注目される.

切除可能食道癌の手術(開胸法)

著者: 梶山美明 ,   鶴丸昌彦 ,   鳴海賢二 ,   岩沼佳見 ,   服部公昭 ,   富田夏実 ,   天野高行 ,   関根正幸

ページ範囲:P.169 - P.172

 わが国では食道癌に対する手術治療は予後向上を目指して開胸下に確実にリンパ節を郭清する手術手技が追求され,確立されてきた.一方,リンパ節郭清範囲の拡大と同時に様々な術式の工夫や術後管理方法の改善が行われた結果,手術死亡率や術後合併症率は低下してきた.現在,筆者らは20cm前後の短い開胸創で広背筋や胸背動脈を温存して手術侵襲の軽減をはかった上で,特に左右反回神経周囲リンパ節郭清の徹底化を行っている.悪性疾患に対する手術である以上開胸アプローチ,非開胸アプローチのいかんを問わず手術の侵襲度と同様にそのqualityやsurvival benefitを冷静に評価することが必要である.

胸部食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術の利点と問題点

著者: 大杉治司 ,   竹村雅至 ,   木下博明

ページ範囲:P.173 - P.176

 当科では胸腔鏡下食道切除術の適応を術前の胸部X線写真やCT像などで強度の胸膜癒着がない,左右肺分離換気で麻酔維持が可能,術前診断で深達度がT1b〜T3である症例としており,低肺機能の症例には適応していない.また5cmの小開胸を併用し,この創部から筆者らが独自に作製した気管鉤を挿入し,気管を腹側に圧排することにより気管左側を展開し,左反回神経周囲のリンパ節郭清を行っている.本手術の利点として術後の呼吸機能の回復が早いことや胸部創が小さく,疼痛が少なく,美容上有利であることがあげられるが,根治性と手術侵襲の面からみると従来の右開胸下の術式と同程度である.本術式が標準術式の1つとして広く認められるためには,リンパ節郭清とくに気管左側を含む頸胸境界部の郭清が従来の術式と同様に行えていることが必要条件である.

局所進行食道癌の集学的治療

著者: 藤田博正 ,   末吉晋 ,   田中寿明 ,   藤井輝彦 ,   唐宇飛 ,   峯孝志 ,   主藤朝也 ,   笹原弘子 ,   的野吾 ,   山名秀明 ,   白水和雄 ,   戸田幸博 ,   早渕尚文

ページ範囲:P.177 - P.184

 食道外科医はT4食道癌に対し放射線化学療法後にできる限り食道切除術(治癒切除)を行うことが予後を良くする方法であると信じている.一方,腫瘍内科医や放射線科医は食道切除の必要性に疑問を持っており,放射線化学療法+食道切除vs放射線化学療法単独の治療成績を比較するフェアな研究が必要と考えている.筆者らはインフォームドコンセントに基づいて患者が治療法を選択するというprospective trialでこの問題の比較研究を行った.その結果,「T4食道癌において放射線化学療法が有効な症例では食道切除術の必要性がなく,むしろ無効例で必要かもしれない.」との結論を得た.今後,この問題に関する多施設研究がなされるべきである.

局所進行食道癌の集学的治療—放射線化学療法を中心として

著者: 二瓶圭二 ,   石倉聡 ,   大津敦

ページ範囲:P.185 - P.189

 近年の食道癌の治療においては粘膜癌に対する内視鏡下粘膜切除術(EMR)や切除可能食道癌に対する放射線化学療法の適用など,生存率を下げることなくより侵襲度の低い治療法が開発されてきた.その一方で従来切除不能とされてきた局所進行食道癌の治療成績はきわめて不良であり,手術も含めた集学的治療が盛んに研究されている.今回は放射線化学療法を中心とした局所進行食道癌に対する治療の現況および今後の展望について述べる.

食道癌におけるsalvage surgery

著者: 篠田雅幸 ,   波戸岡俊三

ページ範囲:P.191 - P.198

 切除可能な食道癌の初回治療法として化学放射線療法を選択する症例が増える傾向にある.その結果salvage surgeryを経験する機会が多くなってきている.根治的化学放射線療法後の手術は治療の影響による組織の線維瘢痕化が著明で,手術は無治療または術前化学療法例に比べて難しい.必ずしも安全な手術とはいえないので,局所コントロールを重視した術式を考慮する必要がある.Salvage surgeryを意義あるものとするには再発の有無および治療効果がCRかnon CRを判定する診断基準の確立が急務である.再発,治療終了時から手術までの期間,手術適応など答えを出さなければならない課題が数多くある.Salvage surgeryは今後食道癌手術の大きなテーマになるであろう.

切除可能食道癌の手術補助療法—有効か否か

著者: 安藤暢敏

ページ範囲:P.199 - P.203

 本邦では手術単独に対する術前化療のsurvival benefitを検証する本格的なランダム化比較試験の報告は未だないが,欧米ではSWOG, ECOGなど共同の大規模なRCTにおいて生存率,無再発生存率のいずれも両群間に差は認められなかった.一方MRCから報告された最新の大規模なRCTでは有意に術前化療群が良好であった.術前化療が有効か否かはcontroversialである.同様に術前化学放射線療法についてもsurvival benefitあり,なしの両者がみられcontroversialである.術後化療についてはJCOG食道がんグループが行った手術単独とのRCTにて無再発生存率に差が認められ,再発予防効果が証明された.

カラーグラフ 正しい外科切除標本の取り扱い方・11

胃の切除標本の取り扱い方

著者: 山村義孝 ,   小寺泰弘 ,   伊藤誠二

ページ範囲:P.141 - P.146

はじめに
 『胃癌取扱い規約』1)の緒言に「本規約の目的は,患者情報,胃癌の原発巣と転移,手術療法,病理組織所見,薬物放射線療法などを,共通の基準で正確に記載することである.」と述べられている.共通の基盤に立って,初めて,複数の施設のデータを比較・集計することができ,診断技術や治療法の発達に結びつけることができる.
 また,胃癌に限らず,悪性腫瘍の正しい診断には病理医の正しい判定が不可欠である.病理医の正確な診断を期待するためには,外科医はつねに適切な標本を提供するよう努めなければならない.

目で見る外科標準術式・26

肝門部グリソン鞘一括処理による肝左区域(肝左葉)切除

著者: 山本雅一 ,   高崎健 ,   大坪毅人

ページ範囲:P.205 - P.210

はじめに
 グリソン鞘一括処理による肝切除は1986年に高崎ら1)が報告し,現在では広く認知された術式となってきている.グリソン鞘一括処理による肝切除は解剖学的であり,手技も平易である.肝葉切除だけでなく,肝機能不良例における肝亜区域切除,区画切除に至るまで応用範囲が広いことも特徴であり2),また術後の合併症も少ない3).消化器外科医にとっては基本的な手術手技と認識すべきと考えている.

病院めぐり

古賀総合病院外科

著者: 谷口正次

ページ範囲:P.212 - P.212

 当院は医療法人同心会の一施設として,宮崎市の北端に位置し,山と田園に囲まれた緑豊かな環境のなかにあります.春には病院を取り囲むように植えられた桜が,冬には豆電球でライトアップされた木々が病院を浮かび上がらせます.
 同心会は,昭和26年に先代の(故)古賀 孝先生が宮崎駅前に古賀病院を開院したのが始まりです.以来増床を繰り返し昭和57年に総合病院となり,平成6年に現在の場所に移転しました.現在,病床数は251床で,今年中には駅前の精神科92床も移転してくる予定です.医師数は栗林忠信院長以下常勤医32名で,先代の「The mostimportant person in this hospitalis the patient」の精神を基に病院スタッフ一同が協力して理想的なチーム医療をめざして努力しています.

高岡市民病院外科

著者: 澤崎邦広

ページ範囲:P.213 - P.213

 高岡市は,今から1255年前の天平18年(西暦746年),日本最古の歌集である「万葉集」の編者の一人と言われる大伴家持が,越中国守として赴任.越中の雄大な自然に触れ,在任の5年間に220余首もの歌を詠みました.“たちやまに 降りおける雪を 常夏に 見れどもあかず 神からならし”とうたわれた当地は全国有数の万葉の故地です.
 当院は,昭和26年10月に「健康保険高岡市民病院」として開設され,当時は内科,外科の2診療科で,病床数は一般病床50床でした.その後,地域住民とともに歩み,幾多の増改築を重ね,診療内容の充実を図り,昭和40年3月名称を高岡市民病院に改めました.現在の病院は,平成8年3月に全面改築工事に着手し,平成11年3月病棟部門が完成,平成12年3月に外来部門が完成し,現在19診療科で病床数476床(一般病床408,精神病床50,結核病床12,感染症病床6)となっています.医師数は常勤医61名,研修医9名,1日の外来患者数は約1,500名です.

文学漫歩

—井上ひさし(著)—『モッキンポット師の後始末』(1974年,講談社 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.214 - P.214

 昨年は化学調味料の原料の一部に豚肉由来の物質混入によるボイコットから始まって,イスラム原理主義過激派のテロ事件と,イスラム教という大きな宗教を再認識させられた.『コーラン』では飲酒と豚肉が禁じられているので「豚カツにキャベツでビール」が好きな私には回教は無理だ.
 大学合唱団の時代に讃美歌をよく練習させられたので,最近流行りの教会式結婚式に列席すると,つい大きな声で歌ってしまい「クリスチャンなんですか?」と訊かれ「時々ね」と答えている.大学4回生の年に創立50周年式典がザ・シンフォニーホールで開催された.このホールは立派なスイス製のパイプオルガンが設置され,残響2秒というクラシック音楽には最適のホールである.我が合唱団はこのオルガンの下に並んで学歌を唄うという幸運に恵まれた.プロの舞台に素人が立った感激は,のちに大阪大学との野球で,大阪球場のバッターボックスに立った時に比肩する.この年は記念ついでに学歌のレコーディングもスタジオで行ったが,レコードを聴くと私の声だけ目立っているので恥ずかしい.

南極物語【最終回】

南極からの出発

著者: 大野義一朗

ページ範囲:P.215 - P.215

 迎えのヘリは轟音をたてながらホバリングを始め,雪面レベルで静止した.ハッチが開き,真新しい防寒具を身につけきれいに髭を剃った人間が現れ,「ご苦労さまでした.おみやげです.」と生卵と新しいビールを手にさわやかに微笑んだ.39人,最後は8人がすべてであった越冬生活で1年ぶりに遭遇した別世界からの使者だった.続いて観測船の乗組員が次々に出てきては大声をあげてせわしく写真を撮りながら,やまと隊の傷だらけで薄汚れた荷物をヘリの中へと運んでいった.あとにはたくさんの足跡が残っていた.傍らにたたずんでいたやまと隊の8人はもう一度雪原を見回し,ヘリに乗り込んだ.「しらせ」へ直行するヘリの小さな窓に顔をこすりつけて眼下に広がるなじみの風景に別れを告げた.
 1999年2月22日,「しらせ」が昭和基地沖を出航した.青い航跡は瞬く間に閉じていく.白い大陸,殺伐とした岩だらけの基地,そこでの不思議な生活,すべては氷で封印された夢に戻っていった.

外科医に必要な皮膚科common diseaseの知識・9

イボと皮膚癌

著者: 斎田俊明

ページ範囲:P.216 - P.218

疾患の概念
 1.イボとその種類
 イボは表面がザラザラした小型の隆起性皮膚病変を指す俗語である.皮膚科学的にはイボのほとんどはウイルス性疣贅(ヒト乳頭腫ウイルス感染による)か脂漏性角化症のいずれかである.どちらも上皮細胞(表皮ケラチノサイト)の良性の増殖症であり,日常診療で頻繁に経験される.
 ウイルス性疣贅にはいくつかの病型が存在し,その病型とヒト乳頭腫ウイルス(HPV)のDNAタイプとの間に対応関係が認められる.主としてHPV2によって生じる尋常性疣贅は小児や若年者の手足,四肢などに1〜数個の大豆大前後の表面粗糙な結節としてみられる(図1).主としてHPV3による扁平疣贅は若年者の頬などに多発する扁平隆起性の小病変としてみられる.HPV6,11によって生じる尖圭コンジローマは外陰部に好発し,表面が棘状を呈する米粒大前後の小結節としてみられる.

米国でのProblem-Based Learning形式による外科研修

Problem-Based Conference(4)—問題点に焦点を絞った鑑別診断と診断法:急性上腹部痛(その2)

著者: 町淳二 ,   児島邦明

ページ範囲:P.219 - P.231

1 はじめに
 T(指導医):今回のproblem-based conferenceは,前回の症例の続きですので,患者さんの病歴と理学所見についてよく思い出して下さい.今回はこの患者さんの検査とマネージメントについて,鑑別診断を考慮しながらディスカッションを進めたいと思います.

臨床研究

自動分析器「ECLusys2010」による術中迅速PTH測定法の検討

著者: 山下弘幸 ,   山岡美穂 ,   猪俣啓子 ,   内野眞也 ,   渡辺紳 ,   山下裕人 ,   野口志郎

ページ範囲:P.233 - P.236

はじめに
 原発性上皮小体機能亢進症(pHPT)に対する画像診断の進歩1,2)による正確な部位診断ができるようになり,治癒率が高くなっているが,上皮小体は過剰腺や異所性腺の存在,腺腫だけでなく過形成,癌などの解剖・病理学的多様性のために手術が困難な症例もある.手術治療の治癒率を高めるには術前・術中の診断が重要である.
 術中の補助手段として欧米を中心に術中副甲状腺ホルモン(I-PTH)の迅速測定が行われ,その有効性が報告されている.欧米では原発性副甲状腺機能亢進症の初回手術例では部位診断を行わない施設もあるが3,4),部位診断に病的腺切除後のI-PTHの迅速測定をすることにより,片側あるいは1腺のみの縮小手術で終了する施設もあり,後者では内視鏡下手術との併用も行われている5〜8).一方,わが国では部位診断を行わない施設はほとんどないが,術中測定用のキットが認可されていないので,I-PTHの術中迅速検査はほとんど行われていない9).当院では,日本メジフィジックス社のルミコPTHを用いて短時間の測定に改良し,術中の補助手段としての有効性を報告してきたが10〜13),本年からロシュ・ダイアグノスティックス社の全自動電気化学発光免疫測定装置「ECLusys2010」(エクルーシス,図1)に変更した.今回,エクルーシスによる術中I-PTH測定の有用性およびルミコPTH迅速法との比較について検討した.

胃癌腹膜播種に対する腹腔内化学療法の現状と将来

著者: 伏田幸夫 ,   木南伸一 ,   二宮致 ,   藤村隆 ,   西村元一 ,   三輪晃一

ページ範囲:P.237 - P.242

はじめに
 胃癌の腹膜播種に対する治療法は各施設でさまざまな方法がとられているが,決定的なものがなく,治療成績の向上をほとんど認めない領域の一つである.
 以前から当科では胃癌の腹膜播種に対して持続温熱化学療法(chemohyperthermic peritoneal per-fusion:CHPP)やperitonectomyが行われてきたが1〜3),その煩雑さや手術侵襲が過大であることから,閉腹時に抗癌剤を腹腔内に投与する現行法に移行している.また,最近では腹膜播種が疑われる症例には積極的に腹腔鏡検査を導入している4,5).今回,筆者らは胃癌の腹膜播種に対するこれまでの治療成績を解析し,今後の治療方針を決定するために検討した.

臨床報告・1

腹部CT検査が術前診断に有用であった大網裂孔ヘルニアの1例

著者: 河野哲夫 ,   日向理 ,   本田勇二

ページ範囲:P.243 - P.245

はじめに
 大網の異常裂孔に腸管が嵌入して生じる大網裂孔ヘルニアは比較的稀で,しかも術前診断のきわめて困難な疾患である.今回,筆者らは腹部CT検査が術前診断に有用であった大網裂孔ヘルニアの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

4歳幼児に発症したBochdalek孔ヘルニアの1例

著者: 安藤拓也 ,   榊原堅式 ,   安藤重満

ページ範囲:P.247 - P.249

はじめに
 Bochdalek孔ヘルニアは多くは新生児期に呼吸不全で発症する緊急度の高い疾患である1)が,稀に無症状に経過し,幼児期または成人になって初めて発見されることがある.今回,筆者らは幼児期になって初めて発症したBochdalek孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.

虫垂切除後,意識障害をきたした先天性下垂体性小人症の1例

著者: 太田裕之 ,   目片英治 ,   遠藤善裕 ,   来見良誠 ,   花澤一芳 ,   谷徹

ページ範囲:P.251 - P.253

はじめに
 下垂体性小人症は成長ホルモンの分泌不全により低身長を呈する疾患であるが,わが国では1万人以上の患者がいるとされる1).本症の患者が外科手術を受ける機会もしばしばあると思われるが,今回,筆者らは虫垂切除後,意識障害をきたした先天性下垂体性小人症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

著明な低心肺機能を併存した胆嚢捻転症腰麻下手術の1例

著者: 永井盛太 ,   岡田喜克 ,   町支秀樹 ,   野田直哉 ,   堀智英

ページ範囲:P.255 - P.258

はじめに
 胆嚢捻転症は急激な胆嚢頸部の捻転によって生じる胆嚢の血行障害と壊死が主な病態であり,急性胆嚢炎と診断されることが多いため術前診断が困難とされていたが1),近年の画像診断の向上によりその術前の正診率は次第に上昇している.今回,著明な低心肺機能を併存した胆嚢捻転症腰麻下手術の稀な1例を経験したので報告する.

先天性胆管拡張症(戸谷V型)に発生した肝内胆管癌の1例

著者: 八木洋 ,   板野理 ,   小林直之 ,   神野浩光 ,   鈴木文雄 ,   大高均

ページ範囲:P.259 - P.263

はじめに
 先天性胆管拡張症とは総胆管を含む胆道系が先天的に種々の程度の拡張を示す疾患のことを称し1),ほぼ全例に膵胆管合流異常を合併することが知られている.胆道癌が高率に発生するため,膵胆管合流異常による膵液の胆管内逆流が発癌の重要な要因と考えられている.今回,筆者らは膵胆管合流異常を合併しない先天性胆管拡張症(戸谷V型)に発生した肝内胆管癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

腸重積を契機として診断された血清CEAの軽度高値を示す虫垂粘液嚢腫の1例

著者: 馬場將至 ,   桧垣直純 ,   石田雅俊 ,   川崎博泰 ,   篠山喜昭

ページ範囲:P.265 - P.268

はじめに
 虫垂粘液嚢腫は近年の画像診断法の発達により術前診断が可能となり,報告例が増加した9,10,12).虫垂粘液嚢腫は腸重積,絞扼性イレウス,腹膜偽粘液腫などを合併することがあるが,腸重積を合併し,術前診断された例は少ない.今回,筆者らは腸重積を契機として診断された血清CEAの軽度高値を示す虫垂粘液嚢腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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