文献詳細
特集 食道癌治療におけるcontroversy
食道表在癌の治療
著者: 吉田操1 葉梨智子1 出江洋介1 武市智志1 宮本裕士1 廣岡信一1 門馬久美子2 山田義也1 榊信廣1 船田信顕3 大橋健一1 清水辰一郎1 堀口慎一郎1
所属機関: 1東京都立駒込病院外科 2東京都立駒込病院内科 3東京都立駒込病院病理科
ページ範囲:P.147 - P.152
文献概要
食道の表在癌とは癌の食道壁深達度が粘膜下層までのものをいう.この定義は早期癌や進行癌とは異なるもので,リンパ節転移の有無を問わない.食道における早期癌とはステージ0癌をいう.具体的には深達度が上皮層(Tis)あるいは粘膜層(Tla)にとどまり,なおかつリンパ節転移のないもの,とされている1).しかし食道癌の領域においても早期診断・早期治療が実現して久しい.上皮内癌,粘膜癌が日常臨床に頻繁に登場し,粘膜癌はもちろん粘膜下層癌の一部にまで食道温存治療が広く行われ,しかも治療成績がきわめて良好と判明している.現在ではリンパ節転移の稀な粘膜癌を早期癌,リンパ節転移頻度が明らかに高くなる粘膜下層以上に浸潤した癌を進行癌とする考えが一般的である.治療法の選択もこれに良く合う体系となっている.食道癌取扱い規約にある早期食道癌の定義は現状と合わなくなってしまった.本稿では病態に沿った表在癌治療の現況とその成績を述べ,今後の課題に触れたい.
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