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特集 肝切除術のコツ 手術
J型切開方法の具体的開胸開腹法と視野の展開図
著者: 國土典宏1 今村宏1 菅原寧彦1 幕内雅敏1
所属機関: 1東京大学医学部肝胆膵外科・人工臓器移植外科
ページ範囲:P.601 - P.604
文献購入ページに移動安全で正確な肝切除を行うためには,肝の授動や肝切離をできるだけ良好な視野のもとに行うことが重要である.不測の出血への対処の難易も視野によって大きく異なるし,正確な切離面の確保のためにも良好な視野が必須である.この目的のため,筆者らはJ字型切開による開胸開腹アプローチ法を頻用している.このアプローチ法の最大の利点は肝切除で重大な事故が起こり得る肝静脈根部付近の操作を驚くほど良好で浅い視野で行うことができることである.開腹のみのアプローチと比べるとその差は歴然としている.この開創法は主に右肝の切除時に用いられるが,左肝への視野も良好で,肝切除のほとんどに対応できる1,2).
欠点としては,開腹のみのアプローチに比べて開創と閉創に余分に時間がかかることが挙げられる.しかし,良好な視野による肝切除操作そのものの容易さと時間短縮を考えると,この時間的不利も相殺される.一部の肝機能不良例を除き,術後の胸水貯留によって胸腔ドレーン留置期間が延長することも少なく,早期離床が可能である.
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