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文献詳細

雑誌文献

臨床外科57巻5号

2002年05月発行

文献概要

特集 肝切除術のコツ 手術

Arantius管索の解剖と臨床的意義

著者: 松田政徳1 藤井秀樹1 松本由朗1

所属機関: 1山梨医科大学第1外科

ページ範囲:P.631 - P.633

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Arantius管の発生とその意義
 胎生期の肝臓の発育の過程で,肝内に左右の卵黄嚢静脈どうしの吻合(卵黄静脈叢)が作られる.さらに,この中に臍静脈が直接入り込んで吻合する.胎盤からの血流が増加するに従ってこの吻合路の中の1本が次第に太くなり,Arantius管(Duc-tus venousus:静脈管)が形成される(図1).胎生期には,この臍静脈と下大静脈の吻合路である静脈管によって胎盤からの酸素に富む血液が,肝臓の類洞を通過することなく下大静脈に直接注ぎ込むことが可能となる.Arantius管は,中膜の平滑筋束の作用で,生後2〜3か月以内に内腔が閉鎖して,Arantius管索(ligamentum venosum:静脈管索)とよばれる線維性組織へと変化する.
 先天的あるいは後天的因子で臍静脈の開存を認め,腹壁静脈の怒張,静脈性雑音などを主症状とする症候群はCruveilhier-Baumgarten syndromeとよばれる.また,成人で何らかの要因で静脈管が開存し,門脈と下大静脈間にシャントを形成し,肝性脳症類似の症状を呈した症例の報告1)もある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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