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文献詳細

雑誌文献

臨床外科57巻5号

2002年05月発行

忘れえぬ人びと

血管型ベーチェット病

著者: 榊原宣1

所属機関: 1十全会心臓病センター榊原病院

ページ範囲:P.672 - P.672

文献概要

 ベーチェット病.要蔵さんはベーチェット病だったのだ.いまさらステロイドを用いることもできず,これまでの処置,ガーゼ交換と大量出血に対する輸血しかない.直ちに文献を調べてみたが要蔵さんに適応する処置,治療法を見出すことはできなかった.
 要蔵さんの病型はベーチェット病のなかでも血管型ベーチェット病といわれるものである.その当時まだこの病態についてよくわかっていなかった.心・血管病変を伴うベーチェット病の病態と予後について調査報告が行われたのは1975年のことである.病変分類によれば,静脈閉塞が最も多く,動脈瘤,動脈閉塞と続く.動脈瘤では腹部大動脈に最も多い.血管型ベーチェット病に対して手術療法が行われる.動脈瘤に対しては,a)結紮術が勝れる.b)切除する時は病巣部を完全に切り取る.c)血管縫合部ないし吻合部は補強する.d)抗凝固剤などは使用しない.e)血圧は十分コントロールする.f)縫合部ないし吻合部出血が疑われる時には躊躇することなく再手術に踏み切る.この場合は結紮術が安全である.g)他動脈瘤の消長に気をつける.しかし,術後トラブルの発生頻度は高いとある.要蔵さんの病状そのものである.死因は主として動脈破裂で,死亡しないまでも縫合部出血や仮性動脈瘤形成などのために再手術を余儀なくされることが多い.本疾患では動脈中膜の弾性線維が断裂し,血管壁が脆弱なためである.とくに動脈瘤に対する手術成績はきわめて悪いという1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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