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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科57巻6号

2002年06月発行

雑誌目次

特集 エビデンスから見直す癌術後患者のフォローアップ

〔Editorial〕エビデンスから見直す癌術後患者のフォローアップ法

著者: 田島知郎

ページ範囲:P.728 - P.729

 わが国では,癌初回治療後の患者について,定期的な各種画像診断法や腫瘍マーカー検査を組み入れて,重点的とも呼べるフォローアップ法が一般的には実施されている.これがどの程度のエビデンスに基づいているかを見直し,仮に効果がないのであれば無用な部分を整理しようというのが今回の特集の主眼である.本稿は,各癌についての論説に備えてのものであるが,この主題が外科医の仕事の内容や医療の将来とも密接に関わっているので,そのあたりまで考えてみたい.何故ならば,癌術後患者のフォローのために外科医がかなりの時間を費やしているからであり,もし無用な部分を見つけ出して,そこを割愛できれば,外科志望者が減少するほどの3K状況に陥っている外科医の職場を多少は改善できることにつながる可能性があり,また医療内容をじっくり吟味することは,医療費や医療保険制度を抜本的に見直し,医療の方向性を考えることになるからである.重要なポイントは,外科医が臨床の核であることを自覚し,その外科医が問題点に目覚めて,これからの医療をリードすることにある.

癌治療成績の統計解析と理解

著者: 浜田知久馬

ページ範囲:P.730 - P.734

 癌治療成績を評価する際には様々なバイアスによって結果が歪められてしまう可能性を十分に認識しておく必要がある.癌スクリーニング検査の効果を評価する際にはリードタイム・バイアス,レングス・バイアス,セルフセレクション・バイアスなどによって非検査群に比べて検査を受けた患者群の生存時間が長めに評価されてしまう傾向があるので注意が必要である.また,不完全例を含めて解析する際にはITTの原則に従わないと検定結果が偏ってしまうことになるし,打ち切りがイベント発生までの時間と独立ではなく,情報を持っている場合は通常の生存時間解析の結果には偏りが入ることになる.本稿では,これらのバイアスを中心に,癌治療成績を評価する際の統計的な落とし穴について解説する.

癌術後フォローアップにおける腫瘍マーカーの意義

著者: 高橋豊 ,   磨伊正義

ページ範囲:P.735 - P.738

 術後のフォローアップの意義は再発をより早期に指摘することである.そのためには,経験のみならず癌の生物学に基づいたフォローアップ法を確立することが重要である.今回,まず術直後の腫瘍マーカーの意義として半減期直線を観察し,そこからの解離が術後比較的早期の再発を予測できることを指摘した.次に,癌の発育速度に基づき,発見する大きさを2cm以内と設定し,フォローアップの間隔を理論的に求めると同時にこの条件を使ったprospective studyでもその有用性を確認した.このフォローアップに腫瘍マーカーを使う意義はまず簡便だということであるが,あくまでも画像診断の補助的診断と考えてゆくべきである.

甲状腺癌患者の術後フォローアップ

著者: 阪口晃一 ,   中井一郎 ,   中嶋啓雄 ,   水田成彦 ,   鉢嶺泰司 ,   牛嶋陽 ,   奥山智緒 ,   沢井清司

ページ範囲:P.739 - P.743

 筆者らが行っている甲状腺癌に対する術後フォローアップの方法を再発例から検証した.乳頭癌では甲状腺ホルモン投与下に頸部の触診と超音波検査を行えばCT,MRIやシンチグラムの必要性は少ない.濾胞癌では甲状腺全摘を行い,術後はサイログロブリンを測定すれば画像診断に頼る必要はない.髄様癌の術後はカルシウム・ガストリン負荷試験で残存腫瘍量を測定でき,カルシトニン,CEAがマーカーとなる.未分化癌は極端に予後不良であるが,救命しえた場合の再発診断には67Gaシンチが有効である.悪性リンパ腫の治療は放射線療法,化学療法が中心になるので,治療効果判定を含め画像診断に頼らざるをえない.

乳癌患者の術後フォローアップ

著者: 岩田広治 ,   三浦重人

ページ範囲:P.745 - P.750

 乳癌術後フォローアップの口的は,1)患者の精神的・社会的サポート,2)自施設の正確な再発率・生存率を出すこと,3)再発の早期発見の3点が挙げられる.しかしエビデンスで検証すると,再発の早期発見が生存期間の延長につながってはいない.当然,intensive follow up(3か月毎の腫瘍マーカー,6か月毎の胸部X線,1年毎の骨シンチ,肝臓超音波など)にもエビデンスはなく,欧米のガイドラインでは推奨できない検査として定義されている.現時点で術後フォローアップの仕方を考えた時,日本に質の高いエビデンスがない以上,1998年に出されたASCOのガイドラインを参照すべきであろう,しかし保険制度や国民性なども考慮した日本独自のフォローアップの仕方があっても良いはずであり,現在ガイドライン作りが進行中である.さらに今後は作成されたガイドラインを用い,日本でも質の高いエビデンスを作る努力が必要である.

再発治療からみた食道癌術後患者のフォローアップ

著者: 松原久裕 ,   落合武徳

ページ範囲:P.751 - P.757

 食道癌の予後は近年,集学的治療の進歩により著明に改善してきている.しかし術後の再発例は少なくなく,多重癌の報告も数多い,再発後の治療についても化学療法,放射線治療の組み合わせにより著効を示すようになった.当科における食道癌術後の再発形式,再発時期,再発後の治療の検討から多くの症例は術後2年以内に再発を認め,リンパ節再発は遠隔臓器転移,播種に比べて再発後の生存率も良好であった.再発を症状の出現により認めた場合と無症状で確認した症例を比較した結果,リンパ節転移,遠隔臓器転移例とも無症状の群は再発後の治療により有意に生存が延長した.多重癌の検索とともに厳格なフォローアップは術後重要であることが確認された.

胃癌患者の術後フォローアップ

著者: 阪眞 ,   笹子三津留 ,   片井均 ,   佐野武 ,   深川剛生

ページ範囲:P.759 - P.763

 胃癌術後再発はリンパ行性,血正行性,播種性再発が同時に重複することが多く,きわめて治療困難な病態である.一方で,肝転移や大動脈周囲リンパ節などに単一形式で生じる再発は治療により長期生存が期待できる.播種性再発に対しても早期に対処することでQOLを維持することができる.原発巣の進行度や組織型から再発率や再発様式を予測して,効果的にフォローアップすることが治療効果の得られる症例をピックアップするために重要である.また,死を迎えるまでの準備期間を確保し,残された人生を充実させるという意味で,治療に関係なく定期的なフォローアップの意義はあると考える.

大腸癌患者の術後フォローアップ

著者: 丸田守人 ,   勝野秀稔 ,   前田耕太郎 ,   佐藤美信 ,   内海俊明 ,   升森宏次 ,   青山浩幸 ,   松岡宏

ページ範囲:P.765 - P.769

 進行大腸癌術後フォローアップを一律にしていたことから,1)術前のCEA値が基準値以上の症例は全例の1/3しかないが,その値が高ければ高いほど再発率は高くなること,2)CEA値が基準値以下であっても,再発時には高値を示すのは約40%あること,3)進行直腸癌の再発部位は肺,局所,肝,脳の順であること,4)肺初再発の発見はCEA値測定と関係なく,ヘリカルCTおよび胸部X線写真が有用であること,5)肺再発を認めて手術治療を施行できると予後がよいので,早期発見に努めること,などを考慮して重点的にフォローアップすることである.今回は省略したが,これらの情報に大腸癌進行度別の再発率などを三次元的に構築することが望ましいと考える.

肝細胞癌切除例に対するフォローアップ

著者: 首藤太一 ,   広橋一裕 ,   久保正二 ,   田中宏 ,   竹村茂一 ,   山本隆嗣 ,   金沢景繁 ,   上西崇弘 ,   田中肖吾 ,   西野佳浩 ,   木下博明

ページ範囲:P.771 - P.776

 肝細胞癌(肝癌)切除例のフォローアップの際には再発後にも有効な治療法が存在するため,再発を早期に診断することが亜要である.このため残肝再発の危険因子(転移再発:大型,肝内転移巣,門脈腫瘍栓陽性.多中心性再発:肝硬変併存,HBV-DNA高値,HCV-RNA陽性)に留意するとともに他臓器転移再発の有無を診断すべきである.さらにウイルス肝炎の沈静化や定期的な食道静脈瘤の観察など背景肝疾患の病状把握と治療にも注意しなければならない.

胆道癌患者の術後フォローアップ

著者: 佐々木亮孝 ,   斎藤和好

ページ範囲:P.777 - P.780

 再発のリスクファクターおよび再発例の治療成績から胆道癌術後フォローアップの意義を検討した.胆管癌切除例はリンパ節転移陽性例がリンパ節転移陰性例に比べ有意に術後再発および肝転移が高率であり,リンパ節転移陽性例は術後肝転移の高危険群と考えられる.再発例に対する転移部位毎の成績では,単発性肝転移症例で再発切除後長期無再発生存例を経験し,術後外来での定期的なフォローアップが有効な場合があると考えられた.抗癌剤感受性試験の結果,多剤併用では5—FU+ADM+MMCおよび5—FU+ADM+CDDPが感受性が高かったが,臨床例での奏効率は低かった.化学療法の適応となるリンパ節再発例などでは定期フォローアップの意義は明らかでないと思われる.胆道癌においては延命やQOL向上に寄与する手術療法以外の有効な治療法の確立が急務であると考えられる.

膵癌患者の術後フォローアップ

著者: 広田昌彦 ,   岡部明宏 ,   小川道雄

ページ範囲:P.781 - P.785

 膵癌の治療成績は悪性腫瘍の中で最も不良である(5年生存率は実測生存率で7%程度).また,術後の再発形式は肝転移と局所再発が約60%と高率で,次いで腹膜播種が35%と多い.ほとんどが腹腔内の再発である.
 膵癌術後のフォローアップは予後が不良であることや上記のような再発形式を念頭において行っていく必要がある.主要な再発部位が肝臓と局所であるので,上腹部の画像診断を定期的に行う必要があるが,筆者らは感度,読影・経時的比較の容易さなどからCTを中心に行っている.その他,胸・腹部X線写真,腫瘍マーカーの測定,身体所見のチェック(Schnitzler転移,Virchow転移のチェックを含む)を行っていく.原則として3か月ごとに画像検査,2か月ごとに血液検査(腫瘍マーカーの測定を含む),1か月ごとに身体所見のチェックを行っている.

カラーグラフ 正しい外科切除標本の取り扱い方・15

肝臓の切除標本の取り扱い方

著者: 山田晃正 ,   佐々木洋 ,   横山茂和 ,   大東弘明 ,   石川治 ,   今岡真義

ページ範囲:P.719 - P.725

はじめに
 手術により得られる標本は,個々の病態の把握のみならず,その詳細な検討と情報の蓄積は医学の発展のために極めて重要である.したがって,外科医は切除標本の取り扱い,データの収集・保管に対して細心の注意を払わなければならない.
 基本的な検体の取り扱いについては病理学の成書に記載されており1,2),また各臓器別「癌取扱い規約」にもその詳細が掲載されている.標本は規約に準じて処理され,臨床病理学的データとして蓄積されてきた.

私の工夫—手術・処置・手順

Delayed Primary Closureとその工夫

著者: 渡部脩 ,   卜部元道 ,   岩瀬博之 ,   鈴木義真 ,   内田陽介

ページ範囲:P.786 - P.787

 汚染創の縫合と創感染は古来より外科医を悩ませ,現在でも困窮することがある.そこで筆者らの病院で積極的に行っているdelayed primary closureを紹介する.
 一般的なdelayed primaryclosureの方法と手順は腹膜,筋膜と順層に縫合し,皮膚は糸を通して開放し,ガーゼをpackしておいて第3〜5病日に縫合閉鎖する.また縫合糸は吸収性の感染に強い糸を用いており,皮膚縫合はfigure of eight method,vertical or horizontal mattresssuture,single interrupted sutureなどが行われている.

病院めぐり

仁愛会浦添総合病院外科

著者: 伊志嶺朝成

ページ範囲:P.788 - P.788

 仁愛会浦添総合病院は昭和56年に沖縄県の中南部に130床の沖縄浦添病院として開院しました.その後増床,改築などを繰り返し,昭和63年に現在の302床となりました.職員数659名,医師79名,1日平均外来患者数400名,年間救急件数27,000件,年間総手術件数3,722件,平均在院日数は12日です(平成12年度).救急医療に力を入れており,1次〜3次救急まで受け入れています.
 診療科目は内科,循環器科,心臓血管外科,呼吸器科,消化器科(胃腸科),小児科,呼吸器外科,一般外科(消化器外科,乳腺外科,甲状腺外科),肛門科,整形外科,泌尿器科,産科,婦人科,眼科,耳鼻咽喉科,脳神経外科,麻酔科,放射線科,形成外科,歯科口腔外科,リハビリテーション科の21科です.平成13年7月には完全紹介型とし,地域支援病院,急性期指定病院,研修医指定病院に認可され,地域に密着した病院として診療を行っています.平成14年度より,研修医の募集をしています.

日本鋼管病院外科

著者: 高橋伸

ページ範囲:P.789 - P.789

 日本鋼管(株)は,古く1918(大正7)年から病院を開設していましたが,1937(昭和12)年2月1日に現在の場所に移り,この日を病院開設日としております.日本鋼管病院は開設当時川崎市内唯一の総合病院であり,その頃から社内患者だけではなく一般地域の方の診療も行ってまいりました.
 病院はJR川崎駅の南南西約2kmに位置し,建物は25,501m2の比較的広々とした土地に外来棟鉄筋コンクリート3階(5,580m2),病棟鉄骨鉄筋コンクリート地下1階,地上5階(19,874m2)から構成されています.総ベッド数は395床で,診療科は16科,医師数64名の臨床研修指定病院で,そのうち外科は49床,医師7名で運営にあたっています.外科関係では,日本外科学会認定医制度修練施設,日本消化器外科学会専門医制度専門医修練施設,日本乳癌学会認定医専門医制度研修施設となっています.

文学漫歩

—瀬名秀明(著)—『パラサイト・イヴ』(1995年,角川書店 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.790 - P.790

 岸和田は子供が多い.このご時世に出生率が低下していない.看護師さん達も子供が2〜3人いる人が多い.保育所も結構充実しているが,義母が孫の世話をしてくれる家庭が少なくない.「だんじり祭」で隣近所のつき合いが盛んで,近所同士でも良く面倒をみてくれるようだ.と言うわけで,女性にとって働きやすく住みやすいので,みんな岸和田に帰って結婚する.だから子供が減らない.
 しかし,日本全体では出生率は著しく低下している.これには社会学者が命名したパラサイトシングルの増加も一因であるとされている.すなわち親の家に住み,家賃も払わず家事も手伝わない,20代後半以上の独身女性の増加が,日本の人口を減少させているというのだ.もちろん当院でもパラサイトシングルの看護師さんも増加している.彼女らは家事や育児に煩わされず,自分のキャリアアップや趣味・教養を身につけることが可能であり,身だしなみにも十分に費やせるため,なかなか魅力的ではある.米国の新聞によると,彼女らの収入はほとんどが可処分所得に廻るので消費の活性化となるとのことで,1994年以降の日本のGDPは20%も下がったにも拘わらず,ルイヴィトンの日本の売上は24倍に激増し,同社の全売上の3分の1を占めるまでになったそうだ.

忘れえぬ人びと

右側頸部腫瘤の患者

著者: 榊原宣

ページ範囲:P.791 - P.791

 忘れえぬ人びとの1人に高橋睦子さんがいる.1957年,医師として初めて受け持つことになった病客であり,初めての症例報告となった方である.
 高橋睦子さん.30歳,既婚女性.主訴は右側頸部腫瘤で岡山大学病院第1外科を受診され,手術目的で入院となった.

目で見る外科標準術式・30

門脈合併切除を伴う肝門部胆管癌手術

著者: 宮崎勝 ,   伊藤博 ,   木村文夫 ,   清水宏明 ,   外川明 ,   大塚将之 ,   吉留博之 ,   嶋村文彦

ページ範囲:P.793 - P.799

はじめに
 肝門部胆管癌においてはその解剖学的特性のため,容易に門脈・肝動脈への浸潤をきたしうる.その際根治切除が望めると判断したら積極的にこれら血管合併切除再建を行っていくことで,予後の向上につながる可能性が報告されてきている1〜3)
 今回は肝門部胆管癌において比較的しばしば遭遇する門脈浸潤例に対する血管合併切除術について,特に拡大肝右葉切除,門脈合併切除再建法の手技について詳述する.

ここまで来た癌免疫療法・3

—臨床の場で実際に行われてきた癌免疫療法—サイトカイン療法

著者: 高山卓也 ,   角田卓也 ,   田原秀晃

ページ範囲:P.801 - P.806

リード
 抗腫瘍効果をもつサイトカインの臨床応用は,当初の過熱した期待とは異なり一部の疾患にのみ保険適用となったのが現状である.しかし抗癌剤との併用など,その目的および疾患の特異性によってはまだまだ期待が寄せられている.本稿では本邦で保険適用と承認されたサイトカインのうち,外科領域の癌に対して行われた治験を中心に,国内・外の報告を紹介する.

米国でのProbiem-Based Learning形式による外科研修

Problem-Based Conference(8)—ショックの病態とマネージメント(その2)

著者: 町淳二 ,   児島邦明

ページ範囲:P.807 - P.823

1 はじめに
 T(指導医):前回のproblem-based conferenceでは,ショックにおける初期の診断とマネージメント,そして種々のショックの分類について話を進めました.そのディスカッションのなかで種々のショックの病態についても触れてきましたが,今回はまずそれぞれの“ショックの病態”をより深く考察してみたいと思います.

臨床報告・1

胆嚢十二指腸瘻と胆嚢横行結腸瘻を伴った超高齢者胆石イレウスの1例

著者: 河野哲夫 ,   日向理 ,   本田勇二

ページ範囲:P.825 - P.828

はじめに
 特発性内胆汁瘻や胆石イレウスは胆石症の合併症として時折経験されるが,多発性内胆汁瘻を伴った胆石イレウスは比較的稀である.今回筆者らは胆嚢十二指腸瘻と胆嚢横行結腸瘻を伴った超高齢者胆石イレウスの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

虫垂憩室炎穿孔による腸腰筋膿瘍の1例

著者: 島本強 ,   鬼束惇義 ,   片桐義文 ,   味元宏道 ,   広瀬光男 ,   阪本研一 ,   島寛人

ページ範囲:P.829 - P.831

はじめに
 今回,筆者らは虫垂憩室炎穿孔による腸腰筋膿瘍の1例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する.

食道癌切除後再建胃管の早期胃癌に対して幽門側切除術・Roux-en Y再建術を施行した1例

著者: 長谷川正樹 ,   岡田貴幸 ,   青野高志 ,   武藤一朗 ,   小山高宣

ページ範囲:P.833 - P.836

はじめに
 食道癌治療の進歩により術後生存期間の延長に伴い,再建胃管内に異時性多発癌の発生をみる機会が多くなっている1)
 今回筆者らは,食道癌術後7年半後に内視鏡検査にて発見された早期胃癌に対して,大彎側血管を温存した胃管幽門側切除Roux-en Y再建術を施行した.本邦の胃管癌切除例の検討をあわせて報告する.

腹腔内出血をきたした空腸間膜原発悪性線維性組織球腫の1例

著者: 小笠原豊 ,   東晃平 ,   岡野和雄 ,   米原修治

ページ範囲:P.837 - P.840

はじめに
 悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histio-cytoma:以下,MFH)は成人軟部悪性腫瘍中では最も多く,四肢軟部組織に好発するが,腹腔内に発生することは比較的少ない1).今回,腹腔内出血をきたした腸間膜原発のMFHを経験したので報告する.

大量出血をきたした小腸GISTの1例

著者: 金子隆幸 ,   米満弘一郎 ,   生田義明 ,   杉原重哲 ,   江上哲弘 ,   瀬戸口美保子

ページ範囲:P.841 - P.844

はじめに
 Gastrointestinal stromal tumor(GIST)という比較的新しい疾患概念が提唱され,従来消化管の粘膜下腫瘍のうち,平滑筋腫や平滑筋肉腫に分類されてきたものの多くがGISTに分類されるようになり,実際には消化管の粘膜下腫瘍の約80%を占めることが推測されている1〜3).今まで本疾患による大量出血の報告はなかったが,今回筆者らは大量下血をきたした小腸のGIST症例を経験し,今後同様の症例の増加が予想されるため報告する.

新生児期に発症した先天性梨状窩瘻の1例

著者: 石井雅昭 ,   小林美奈子 ,   湊栄治 ,   荒木俊光 ,   浦田久志 ,   楠正人

ページ範囲:P.845 - P.847

はじめに
 先天性梨状窩瘻は急性化膿性甲状腺炎の原因として注目されており,多くは幼児期以降に発症する1).新生児期に発症するものは少ないが,幼児期以降と症状が異なり,頸部腫瘤による気道や食道の圧迫により呼吸障害や哺乳障害をきたすことが多い2).今回,筆者らは新生児梨状窩瘻の1例を経験したので報告する.

両側に同時発生した後腹膜神経鞘腫の1例

著者: 成田公昌 ,   多羅尾光 ,   池田哲也 ,   増田亨 ,   矢野秀 ,   坂倉究

ページ範囲:P.849 - P.852

はじめに
 近年,画像診断の進歩で後腹膜原発神経鞘腫の報告数は増加して来ている1).今回,筆者らは両側に同時多発した後腹膜神経鞘腫の1例を経験した.神経鞘腫の多くは単発性で多発することは少ないと言われているが,本症例のごとく同時に多発する場合もあるので手術前の十分な全身検索が必要と思われる.

CT検査で消化管異物を認めた食餌性イレウスの1例

著者: 安藤拓也 ,   大和俊信 ,   鈴木龍二

ページ範囲:P.853 - P.856

はじめに
 消化管異物によるイレウスのなかで,日常摂取している食物によって起こる食餌性イレウスは比較的少ない.筆者らはCT検査で消化管異物を認め,保存的治療で軽快したジャガイモによる食餌性イレウスの1例を経験したので報告する.

興味ある画像を呈した魚骨による回盲部炎症性肉芽腫の1例

著者: 綛野進 ,   塩見昌史 ,   李昌人

ページ範囲:P.857 - P.859

はじめに
 誤嚥した異物はそのほとんどが消化されるか,排泄されるが,稀に消化管穿通・穿孔をきたし,外科的処置の対象となる.最近,魚骨による回盲部炎症性肉芽腫で興味ある画像を呈した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告・2

カラードプラ超音波検査で胆嚢壊死と術前診断された胆嚢捻転症の1例

著者: 綛野進 ,   大鳥和彦 ,   金沢景繁

ページ範囲:P.861 - P.863

はじめに
 胆嚢捻転症は比較的稀な疾患ではあるが,画像診断の進歩で術前診断される症例が増えている.今回,筆者らは術前に胆嚢壊死と診断された胆嚢捻転症の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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