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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科58巻10号

2003年10月発行

雑誌目次

特集 神経温存胃切除術

胃の自律神経系の局所解剖

著者: 佐藤達夫 ,   坂本裕和 ,   平馬貞明

ページ範囲:P.1311 - P.1315

 胃は食道に続く器官であるから,食道に随行する迷走神経から副交感神経成分を受け入れのは当然である.しかし他方で血流支配を腹腔動脈に依存するため,この動脈の起始部周囲に発達した腹腔神経叢を通じて交感神経成分と副交感神経成分を受け入れている.このように,副交感神経成分に関しては,胃は臓器随行型から血管随行型へ転換する移行部に位置を占める.そのことが胃の自律神経系を複雑化し難解にしている.この総説では神経配置の基本を模型図で示し,迷走神経の胃枝と肝枝,ならびに腹腔神経叢の構成と分布を実際の剖出標本を示説しながら解説した.

各種機能検査からみた神経温存胃切除術の評価

著者: 梨本篤 ,   藪崎裕 ,   滝井康公 ,   土屋嘉昭 ,   田中乙雄

ページ範囲:P.1317 - P.1323

 神経温存手術は残胃機能維持,QOL向上を目標としている.幽門保存胃切除術(PPG),空腸嚢間置噴門側胃切除術(JPI)を中心に各種機能検査を紹介しながら,その評価につき検討した.PPGの体重変動は術後減少幅が少なく回復が早かった.残胃炎,逆流性食道炎は低率であったが,食物残渣が32.3%にみられた.99mTc胆道シンチグラムでは胆汁逆流19.1%,胆汁排泄遅延11.4%であったが,胆石発生率は3.2%と低率であった.JPIでは残胃観察が全例に可能であったが,空腸嚢内食物残渣は50%と高率であった.血清ビタミンB12は術後次第に低下したが,2年以後では全摘より低下が緩徐であった.胃排出能検査にはRI法,アセトアミノフェン法,放射線不透過マーカー法,13C呼気試験など各種あるが未だ統一されていない.簡便,非侵襲性でどの各施設でも行える残胃機能評価の標準化が望まれる.

神経温存噴門側胃切除術

著者: 松木伸夫 ,   小林弘信 ,   江嵐充治 ,   伊井徹 ,   岩田啓子 ,   中村慶史 ,   古河浩之 ,   尾島英介

ページ範囲:P.1325 - P.1331

 噴門側胃切除術後に高率に発生する逆流性食道炎の原因として,胃切除時,残胃および幽門輪に分布する神経が切離されることによる残胃の運動機能の低下および幽門輪の機能不全が深く関与していると考え,迷走神経の前幹から分岐する肝枝および幽門枝を温存する神経温存噴門側胃切除術を考案し,1987年から20例に行ってきた.対象はU領域に限局し,漿膜浸潤を全く認めない症例とした.術後1年目に逆流性食道炎の有無を,症状,バリウムの逆流,内視鏡および24時間pHモニターにより検討したが,ほぼ全例に逆流性食道炎を防止しえたので報告した.

迷走神経温存胃分節切除術

著者: 藤本二郎

ページ範囲:P.1333 - P.1340

 胃中部の早期癌に対する胃分節切除術は機能温存という点では優れた術式であるが,リンパ節郭清や胃切除範囲の制約など根治性にかかわる問題があるため,胃癌治療ガイドラインではEMRと縮小手術の中間に位置づけられ,未だ研究的な治療法と考えられている.そこで主病巣の深達度や大きさの制約を受けずに適応できて,かつ術後に良好なQOLがえられる定型的手術術式として,D2郭清を伴う迷走神経温存胃分節切除空腸パウチ間置術を呈示した.胃切除範囲を大きくとると胃上部,下部の残胃が小さくなり,両者を直接端々吻合すると術後に逆流性食道炎や小胃症状などが出現する.上下の残胃の間にJ型空腸パウチを間置することにより,この問題を解決した.

早期胃癌に対する自律神経温存幽門側胃切除術

著者: 二宮基樹 ,   佐々木寛 ,   池田義博 ,   原野雅生 ,   青木秀樹 ,   高倉範尚

ページ範囲:P.1341 - P.1345

 腫瘍局在がMおよびL領域にある早期胃癌のうち幽門保存胃切除術の適応外の症例に対して,根治性を保ちつつ術後QOLの改善をめざして自律神経温存幽門側胃切除術を行っている.温存する自律神経は表層では迷走神経前幹から連続する肝枝であり,深層では迷走神経後幹から連続する腹腔枝と総肝動脈・脾動脈周囲神経叢,膵枝そして肝枝である.本術式は従来の術式と比べて術後胆石症発症頻度,体重回復,便通,残胃炎やダンピング症候群発症の頻度などの改善に有用であり,予防的郭清を必要とする早期胃癌症例に対して試みる価値がある術式と考えられる.

早期胃癌に対する胃全摘術―特に迷走神経・下部食道括約筋温存胃全摘兼J型空腸囊間置術

著者: 富田凉一

ページ範囲:P.1347 - P.1353

 機能温存縮小手術である迷走神経・下部食道括約筋(LES)温存胃全摘兼有茎J型空腸嚢間置術の有用性を,迷走神経・下部食道括約筋(LES)の非温存かつ空腸嚢を付加しない胃全摘兼有茎空腸間置術と術後の逆流性食道炎,早期ダンピング症候群,小胃症などの発生と生理機能を比較検討した.その結果,明らかに後者は前者よりそれらの発生,LES長短縮とLES圧低下,下部食道のアルカリ逆流などが多く,再建空腸内容排出時間の短縮(貯留能の低下)を認めた.したがって,迷走神経・LES温存胃全摘兼J型空腸嚢間置術は生理的な術式と評価することができた.

腹腔鏡補助下自律神経温存幽門側胃切除術

著者: 小嶋一幸 ,   山下俊樹 ,   山田博之 ,   森田信司 ,   加藤啓二 ,   三木陽二 ,   河野辰幸 ,   杉原健一

ページ範囲:P.1355 - P.1360

 腹腔鏡補助下自律神経温存幽門側胃切除術は腹腔鏡補助下に迷走神経の肝枝,腹腔枝,肝神経叢などの温存を行うことにより術後早期のQOLの向上のみならず,神経温存による長期のQOLの向上を目標としている.この手技を施行する上では腹腔鏡下の自律神経系の臨床解剖の理解と視野の展開法が特に重要である.早期胃癌に対して腹腔鏡下に自律神経系を温存するリンパ節郭清は安全に施行可能である.その成績も満足すべきものであり,胃体中・下部の早期胃癌に対して推奨される術式である.

目で見るカラーグラフ 世界に向かう乳腺疾患診療の新技術・6

乳癌に対する内視鏡補助乳房温存手術

著者: 玉木康博 ,   三好康雄 ,   金昇晋 ,   丹治芳郎 ,   田口哲也 ,   野口眞三郎

ページ範囲:P.1303 - P.1310

はじめに

 乳房に対する内視鏡手術は,1992年ごろより欧米の形成外科領域での豊胸術への応用から臨床応用が始まった1,2).その後,1996年ごろより乳癌手術の際の腋窩リンパ郭清を内視鏡で行ったとの報告がみられたが,その効果についてはまだ議論のあるところとなっている3).一方,乳癌手術において腫瘍切除そのものを内視鏡で行おうとする試みは,1995年Friedlanderら4)が解剖用献体を用いて実験した報告が最初であるが,臨床例での報告は1996年ごろよりわが国で始まったのが世界的にみてもおそらく最初である5~8).その後,わが国オリジナルの手術として,乳腺内視鏡手術研究会を中心に手技や器具の開発研究が続けられ,日本乳癌学会や日本内視鏡外科学会の協力により,昨年ようやく健康保険の適用となり,乳癌手術のひとつとして認知されるに至っている.

 健康保険収載上,従来の乳腺部分切除術に括弧付で「内視鏡手術を含む」という形で記載されているように,乳腺内視鏡手術は独立した特殊な手術ではなく,あくまで従来から施行されてきた乳房温存手術や乳腺全摘術の一部あるいは全部の手技を内視鏡下で行おうとするものである.しかし,実際に施行する際には,特殊な器具や手技を必要とし,経験も必要であるため,乳腺外科医にはなじみにくいものもあるかもしれない.また,施設によってその適応症例や手術手技が異なっていることも導入を迷ってしまう一因となっていると思われる.

 筆者らは,これまで比較的小さい腫瘍に対する乳腺部分切除術を内視鏡併用下に行う方法を研究してきた9~13).最近では,手技の簡便化,導入の容易化,ディスポーザブル器具の削減を目的として,乳輪周囲半周切開からの内視鏡併用乳腺部分切除術を行うことと,これとセンチネルリンパ節生検を組み合わせることにより美容的に良好な結果を得られるようになった.本稿では,筆者らの行っている内視鏡併用乳腺部分切除の手技を具体的に紹介する.内視鏡手術を導入しようと考えている乳腺外科医の一助となれば幸いである.

目で見る外科標準術式・41

ヘルニア・システム法(外鼠径へルニアの場合)

著者: 下間正隆 ,   竹中温

ページ範囲:P.1361 - P.1368

はじめに

 成人外鼠径へルニアは胎生期の腹膜鞘状突起が遺残している状態に加えて,成人になってから横筋筋膜が脆弱化して内鼠径輪が開大したために症状が出現したものである.したがって,基本的には「ヘルニア嚢の処理」と「開大した内鼠径輪の縫縮」の2操作だけでヘルニア症状は消失する.しかし一般的には,将来発生する可能性のある直接ヘルニア(内鼠径ヘルニア)を予防するために後壁補強を付加している.

 プロリン(R)・ヘルニア・システム(PHS)を用いて外鼠径へルニアを修復する場合,鼠径管後壁を補強するために腹膜前腔に下部パッチを留置する.下部パッチ留置スペースを作製するために,健常な鼠径管後壁(横筋筋膜)をかえって破壊して脆弱にしてしまうような粗暴な操作で腹膜前腔を剥離してはいけない.

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・10―1867年当時のウィーンの医学事情

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1369 - P.1372

 1867年,すなわち独襖戦争が終結した翌年のオーストリア-ハンガリー二重帝国が発足した年に,Billroth(図1)は前任者のSchuh(Franz Schuh:1805~1865:図2)の後任として,ハプスブルグ家が創設したウィーン大学の第二外科教授に迎えられた.ウィーン大学の外科学の流れを図3に示したが,1842年にウィーン大学の外科は2講座制となり,このとき新しく開設された第二講座の主任教授となったのが,Schuh(教授在任:1842~1865年)である.Schuhは当初法律家を目指していたようだが,後に医学に転じ,Wattmann(Joseph von Wattmann:1789~1866:教授在任:1830~1847年)の外科学講座の助手となった.1836年にSalzburgに転出したが,数年してウィーン総合病院の医長として復帰している.そして1842年には外科学正教授となり,第二外科講座を主宰するようになった.

 1865年に敗血症で死ぬまでの間に97編の研究論文を残しているが,内容としては,呼吸器疾患診療の大家であったSkoda教授(「ビルロート余滴・9」で述べた)の影響もあってか,心肺疾患の外科診療に関する先駆的研究(胸腔や心嚢腔穿刺,そして新しい換気弁の考案など)が多い.さらに,創傷後の感染や敗血症の研究や気胸の研究においても先鞭をつけ,オーストリアに最初にエーテル麻酔を導入したのもこのSchuhである.このようにSchuhは,「新ウィーン学派」とよばれたRokitanskyやSkodaらとともにウィーン大学医学部の改革に大いに貢献している.後にBillrothと対峙したDumreicherという変人教授(といわれている)が主任教授として君臨していた第一外科に比して,第二外科はSchuh自身の人柄の良さも手伝って,評判がよく大いに隆盛していた.しかし惜しいことに1865年12月22日,Schuhは手術中のちょっとした傷から致命的な敗血症にかかり急逝したのである.そして,このSchuhの後任としてウィーン大学医学部教授会は,Zurich大学から敵国ドイツ出身のBillrothを招聘したのである.

医療制度と外科診療10

医療に関する基本的事項(8)―患者の状態を全職員が把握

著者: 飯田修平

ページ範囲:P.1374 - P.1375

 患者の状態を全職員が把握するべきである

 院内の情報共有と連携,患者の状態を把握することの重要性は,改めて言うまでもない.

 今回は,患者の状態を全職員がどの程度把握しなければならないかを検証したい.

病院めぐり

公立加賀中央病院外科

著者: 山崎英雄

ページ範囲:P.1376 - P.1376

 当院の設立母体は加賀市,江沼郡山中町の両自治体であります.当院の位置する加賀市(人口約7万人)は古くは加賀百万石の分家大聖寺10万石の城下町で,石川県最南端にあり,西方は日本海に面しその海岸線は越前加賀国定公園に指定され,東方には霊峰白山を眺望します.また,上記両市町は山代温泉,片山津温泉,山中温泉を有し北陸屈指の温泉郷を形成するなど風光明媚で恵まれた自然環境にあります.

 当院の歴史は古く,明治13年金沢病院(現 金沢大学医学部)大聖寺出張所設立に遡ります.以後,時代の変遷とともに大聖寺病院(明治16年),江沼病院(明治24年),公立加賀中央病院(昭和48年)と名称こそ変わりましたが,地域の基幹病院として一貫して地域住民の健康増進に貢献して参りました.現在,常勤医師は27名,15診療科で,病床数230床,病床稼働率90%前後,外来患者数一日平均約700名であります.当院では,近年の目覚しい医療制度の変革に対応し,効率的な医療を提供するため平成12年にはトータルオーダリングシステムを導入,本年3月にはX線,MRI,内視鏡を初めとした各種検査データの電子化を完成させ,電子カルテ導入への準備進行中であります.

聖隷浜松病院外科

著者: 大場宗徳

ページ範囲:P.1377 - P.1377

 聖隷浜松病院は,人口60万人の静岡県浜松市のほぼ中央にあり,昭和34年に東京女子医科大学教授,榊原仟先生を顧問に招聘し,心臓外科を中心とした急性疾患病院として発足しました.現在では病床数744床,診療科44の総合病院で,職員数1,373名,医師数は174名です.外科領域では日本外科学会,日本胸部外科学会,日本呼吸器外科学会,日本乳癌学会,日本消化器外科学会,日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会などの認定施設病院となっています.

 外科は,消化器外科(上部消化管),肝・胆・膵外科,大腸肛門科,小児外科,乳腺外科,呼吸器外科の6科からなっており,戸田央副院長兼外科部長の下で10人のスタッフと9人の派遣医師で構成されています.現在,東京女子医科大学第2外科,浜松医科大学第1外科,順天堂大学小児外科からの派遣を受けています.2004年からは臨床研修のスーパーローテーションも受け入れることとなっています.

文学漫歩

―スタンダール(著),小林 正(訳)―『赤と黒』―(1957年,新潮社刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.1378 - P.1378

 病院に数か月おきに日赤の採血車が来る.これでも外科医なので,自分が医師になってから出血させた量には到底及ばないが,せめてもの贖罪に半年に1回は400mlの献血をする.「見かけによらず血の気が多いから,もっと抜いてもらえば」「先生の血なんか輸血されたら,おやじギャグ言うようになってしまうわ」などと,当院の優しいナースにからかわれながら横たわる.チューブを流れる血液は,こんな私の血でも赤く美しい.

 移動採血車は「宝くじ号」という名前で,宝くじ協会から寄贈されている.宝くじの当選金還元率は約半分なので儲かるわけがないし,パチンコと同じで考える要素がないので私は買ったことがない.博打はすべて胴元が儲かるようになっている.競馬や競輪などの還元率は75%である.ルーレットは比較的良心的で,0と00だけが胴元の取り分なので約95%が還元されるが最終的には負ける.

日常診療に役立つPalm活用術・4

Palmでデータベースを持ち歩く(2)

著者: 讃岐美智義

ページ範囲:P.1379 - P.1382

 前回に引き続き「Palmでデータベースを持ち歩く」ことをテーマに取り上げる.データベースを持ち歩く場合,閲覧のみではなくその場で内容の追加や変更を行い,さらにPalmからPCにデータを書き戻すことによってPC側のデータを変更するような使い方ができる.今回は文献データベースと症例データベースを例に,内容を書き換える場合の実例を紹介する.

手術手技

ハーモニック スカルペル(R)Ⅱを用いた腹腔鏡下胆囊摘出術―キャビテーション現象を応用した層剝離

著者: 高木純人 ,   金子弘真 ,   柴忠明

ページ範囲:P.1385 - P.1389

はじめに

 腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)において,Calot三角で胆囊管,胆囊動脈を切離した後に胆囊頸部を挙上し,肝床切離を行う逆行性胆囊摘出術は,現在LCの一般的な手技として広く行われている1).しかしながら,Calot三角周囲の炎症性肥厚や解剖学的変異のため胆囊管の露出・確認に難渋した場合,総胆管を胆囊管と誤認し,損傷してしまう頻度はいまだ開腹術のおよそ2倍程度とされている2~4).Fundus down approachは従来開腹術で行われていた手技であり,胆囊底部から剥離を開始し,解剖学的位置関係が明確となった後に胆囊管の処理を行うものである.このため,胆囊管周囲の良好な視野のもとに安全な胆囊管処理が可能であり,容易な症例のみならず,困難症例においても胆管損傷の危険性がきわめて少ないと考えられている5)

 一方,ハーモニック スカルペル(R)(ジョンソン・エンド・ジョンソン社;HS)は超音波エネルギーを利用した手術機器で,凝固切開能力に優れ,電気メスに比べて組織の熱損傷が少ないという利点を持つ.さらに止血効果に優れることから,鏡視下手術のみならず,近年,開腹手術においても多用されてきている.加えて,2002年4月から本邦でもハーモニック スカルペル(R)(HSⅠ)の改良型であるハーモニック スカルペル(R)Ⅱ(HSⅡ)が使用可能となり,より難易度の高い手術手技へも対応が可能となった.

 本稿では,LCの標準術式として筆者らが行っているfundus down approachに,HSⅡから発信されるキャビテーションによる層剥離法を応用しているので,手術手技を中心にその有用性について報告する.

臨床報告 1

小児胃軸捻転に対して腹腔鏡下胃固定術を行った1例

著者: 大畠雅之 ,   井手昇 ,   高木克典 ,   田中朋子 ,   中越享

ページ範囲:P.1391 - P.1394

はじめに

 小児の急性腹症として重要な疾患の一つである胃軸捻転症は,捻転の程度により突然発症して胃の壊死・穿孔に至るものから慢性的に嘔吐を繰り返すものまで幅広い臨床症状をとる1).今回筆者らは急性腹症として発症し,保存的治療により病態の改善のみられなかった胃軸捻転症に対して腹腔鏡による胃固定術を施行した1症例を経験したので報告する.

虫垂原発印環細胞癌の1例

著者: 島田和典 ,   中島信一 ,   伊藤章 ,   後藤正宣 ,   安田大成

ページ範囲:P.1395 - P.1398

はじめに

 虫垂原発印環細胞癌の報告はきわめて稀であり1~6),今回,術後の病理組織検査にて虫垂原発印環細胞癌と診断した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

大腿静脈より留置したIVHカテーテルのmislodgingによる後腹膜血腫の1例

著者: 吉田禎宏 ,   斉藤恒雄 ,   今冨亨亮 ,   井川浩一 ,   中田昭愷

ページ範囲:P.1399 - P.1401

はじめに

 IVHカテーテルに起因する合併症1)にはさまざまなものがあるが,今回カテーテルのmislodgingによる血管破綻が原因と思われる後腹膜血腫の1例を経験したので報告する.

異時性多発性骨肝転移をきたした後腹膜原発悪性paragangliomaの1例

著者: 中村貴成 ,   福島幸男 ,   塚原康生 ,   柴田高 ,   北田昌之 ,   花田正人

ページ範囲:P.1403 - P.1406

はじめに

 原発性後腹膜腫瘍は比較的稀な疾患であり,なかでもparagangliomaはきわめて稀な疾患である.今回筆者らは血尿を主訴に発見され,術後11か月目に骨肝転移をきたした後腹膜原発悪性paragangliomaの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

ショックをきたした小児の急性胃軸捻転症の1例

著者: 藤田昌久 ,   南智仁 ,   松本潤 ,   高西喜重郎 ,   岩田要

ページ範囲:P.1407 - P.1410

はじめに

 胃軸捻転症は急性と慢性の経過をとるものが知られている1,2).慢性型は新生児,乳児の嘔吐を呈する症例にしばしば観察されるが,急性型は小児では比較的稀とされる1,2).今回,筆者らはショック状態で来院し,開腹下に胃瘻造設術を施行した小児の急性胃軸捻転症の1例を経験したので報告する.

総胆管結石症に対して施行した総胆管空腸吻合術後16年目に発症した胆石イレウスの1例

著者: 馬場將至 ,   桧垣直純 ,   西原政好 ,   石田雅俊 ,   金井俊雄

ページ範囲:P.1411 - P.1413

はじめに

 胆石イレウスは比較的稀な疾患で,本邦では全イレウスに対して0.05~1.0%と報告されている1,2).イレウスの原因となる結石の通過経路は胆囊十二指腸瘻,胆囊胃瘻,総胆管十二指腸瘻,自然胆道などがあり,胆囊十二指腸瘻が最も多い.今回,筆者らは総胆管空腸吻合術後に胆石イレウスを合併した1例を経験した.自験例のように以前の手術により人為的に総胆管空腸瘻を形成した症例においての胆石イレウスの症例は本邦でこれまで報告を認めない.稀な症例であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

腹腔鏡下手術時ドレーン留置をしたポート部ヘルニアの1例

著者: 鬼頭靖 ,   神谷里明 ,   小川明男 ,   松永宏之 ,   成田裕司 ,   松崎安孝

ページ範囲:P.1415 - P.1418

はじめに

 腹腔鏡下手術後の合併症としてポート部ヘルニアが散見されるようになってきた1~21).今回,当科でドレーン留置に使用したポート部のヘルニアを経験したので,文献的考察を加えて報告する.

治癒切除しえた右副腎悪性褐色細胞腫の1例

著者: 水沼和之 ,   春田直樹 ,   新原亮 ,   艮雄一郎 ,   川西秀樹 ,   岡田武規

ページ範囲:P.1419 - P.1423

はじめに

 悪性褐色細胞腫は稀な疾患で,その治療として手術療法以外に有効な手段がないとされているが,診断時には進行したものが多く,一般的には手術不適応のことが多い1).今回,筆者らは明らかな転移および局所浸潤がなく,外科的に摘除しえた9cm大の副腎原発悪性褐色細胞腫の1例を経験したので報告する.

潰瘍性大腸炎に併存した虫垂粘液囊腫に対し腹腔鏡下手術を施行した1例

著者: 阿部仁郎 ,   宗本義則 ,   三井毅 ,   浅田康行 ,   飯田善郎 ,   三浦将司

ページ範囲:P.1425 - P.1428

はじめに

 虫垂粘液嚢腫は比較的稀な疾患であり,術前に確定診断が困難なことも多い1,2,6).今回,筆者らは潰瘍性大腸炎に併存した虫垂粘液嚢腫に対し腹腔鏡下盲腸部分切除を施行した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

乳房腫瘤を主訴とした高齢者乳管内乳頭腫の1例

著者: 龍沢泰彦 ,   寺田卓郎 ,   石田善敬 ,   清水淳三 ,   川浦幸光 ,   今井美和

ページ範囲:P.1429 - P.1431

はじめに

 乳管内乳頭腫は閉経前の比較的若い女性に好発し1,2),乳頭異常分泌を主訴とすることが多い3~5).今回筆者らは乳房腫瘤を主訴とし,高齢者に発生した乳管内乳頭腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告 1

腸重積を合併した小腸脂肪腫の1例

著者: 折田創 ,   岩瀬博之 ,   鈴木義真 ,   内田陽介 ,   寺井潔 ,   渡部脩

ページ範囲:P.1433 - P.1436

はじめに

 腸重積症は乳幼児に多い疾患であり,成人では比較的稀な疾患とされている1).今回,腹部CT検査にて診断,手術施行した空腸脂肪腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告 2

胸部食道亜全摘術後の再建胃管内容排出遅延にerythromycinが有効であった1例

著者: 岩瀬和裕 ,   老松夏美 ,   檜垣淳 ,   三方彰喜 ,   宮崎実 ,   上池渉

ページ範囲:P.1437 - P.1439

はじめに

 胸部食道亜全摘術後の胃管内容排出遅延はいまだ完全に克服されていない1).最近,erythromycin(EM)のmotilin receptor agonistとしての一面が注目され,幽門輪保存胃切除術あるいは幽門輪温存膵頭十二指腸切除術後急性期の胃内容排出遅延に対する有用性の報告が散見される1,2).食道癌術後急性期の再建胃管内容排出遅延に対してEMを使用した報告はほとんど見当たらないが,再建された大彎側胃管に対してもEMが有効に作用しうるとの報告も見られる3).胸部食道亜全摘術後の再建胃管内容排出遅延にEMが有効であった1例を報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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