NSTとクリニカルパス
著者:
東口髙志
,
五嶋博道
,
根本明喜
,
池田剛
,
安田淑子
,
大川光
,
大川貴正
,
矢賀進二
,
樋口香代
,
川口恵
,
福村早代子
ページ範囲:P.297 - P.305
はじめに
栄養管理はすべての疾患治療の上で共通する基本的医療の1つである.一般に栄養管理を疎かにすると,いかなる治療法も効力を失い,さらに外科手術に代表される侵襲的な治療法に伴う合併症や副作用の発生を容易にすることが知られている1).したがって,栄養管理が確立された上で種々の疾患に対する治療を実施することはごく当然のことであり,治療法を対象とするクリニカルパス(以下,パス)においても,いや標準的な医療の実施をめざすパスだからこそ,グローバル・スタンダードな栄養管理法をすべてのパスの根底においておくこと(栄養パス)が必要とされる.しかし,実際の臨床の場では必要エネルギー(カロリー)や必要栄養素は治療対象となる症例個々によって異なっており,具体的に各症例の状態や各疾患治療に応じて適切な栄養管理を実施することが要求される.この各症例に最も適した栄養管理を職種の壁を越えて実践する集団(チーム)がnutrition support team(NST:栄養サポートチーム)である1,2).パスとNSTはいずれもチーム医療の1つとされるが,その活動内容は全く異なる.しかし,これら2つのチーム医療を推進していくと,これらはまさしく表裏一体(NST&Clinical Package)となるべきものであることに気づく.すなわちパスとNSTはそれぞれの長所を増幅するとともに短所を相補的に補う関係にある.したがって,パスとNSTを同時に稼働することによって,それぞれが単独で活動するよりも医療の質の向上,医療安全管理の確立,医療経済・病院経営の改善の面で飛躍的な力を発揮するものと考えられる1,3).そこで,本稿では尾鷲総合病院の病院構造改革の主軸として構築したNST&Clinical Path Complex(NCC)の概要と活動状況を紹介しつつ,NSTとパス同時稼動の有用性を概説し,さらにパスの適応を大きく拡大する目的で新たに考案したNSTパスについても言及する.