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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科58巻12号

2003年11月発行

雑誌目次

特集 浸潤性膵管癌の診療をどうするか

わが国の現況―全国膵癌登録から

著者: 江川新一 ,   武田和憲 ,   福山尚治 ,   阿部忠義 ,   元井冬彦 ,   砂村真琴 ,   松野正紀

ページ範囲:P.1455 - P.1461

 膵癌の予後は組織型と進展度によって規定される.術前に組織学的診断および正確な進展度を診断することがきわめて重要であるが,画像診断が進歩した現在でも開腹してはじめて発見される肝転移や腹膜播種が存在する.通常型膵癌の切除率は約40%で,門脈,神経叢の合併切除は切除例の約40%に行われている.長期生存を得られたのは切除症例のみであるが,拡大郭清や血管合併切除は生存率の改善をもたらさなかった.外科切除を中心とした集学的治療が試みられ,切除例に対する術後の化学療法,非切除例に対する術中・術後照射,術後化学療法などの効果が示唆された.今後,より強いエビデンスを構築していくために多施設での前向きな無作為臨床試験を推し進める必要がある.

膵癌のハイリスク群を考える

著者: 田中雅夫 ,   横畑和紀 ,   小川芳明 ,   筒信隆 ,   川本雅彦 ,   小林毅一郎 ,   許斐裕之 ,   竹田虎彦 ,   山口幸二

ページ範囲:P.1463 - P.1467

 膵癌も高リスク群を認識できれば早期診断が可能である.高リスク群には慢性膵炎,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT),糖尿病,遺伝性膵癌,遺伝性慢性膵炎,家族性大腸腺腫症,遺伝性異形成性母斑症候群などがある.

 糖尿病患者を一定の選別をかけてERCPによる検診を行うと,163例中12例(7.4%)に膵癌が診断された.発症後3年以上の3.8%に対し3年以内は13.7%に達した.IPMTでも切除64例に上皮内癌2例を含む膵癌が7例(11%)みられた.慢性膵炎も遺伝性・非遺伝性慢性膵炎とも膵癌が多いとされるが,長期間経過観察したが発生はなかったとの報告もある.より正確な高リスク群の選定が重要である.

本邦膵癌取扱い規約とUICC新TNM分類

著者: 伊佐地秀司 ,   上本伸二 ,   川原田嘉文 ,   江川新一 ,   武田和憲 ,   松野正紀

ページ範囲:P.1469 - P.1473

 本邦膵癌取扱い規約(JPS)第5版とUICC規約第6版がともに2002年に発刊されたが,両規約は以前にも増して隔たりが大きくなった.全国膵癌登録症例の膵頭部管状腺癌切除例を対象に両規約の信頼性(生存率)を検討すると,膵局所進展度(T)分類は両規約とも各群間で有意差を認めた.リンパ節(N)分類はJPSのN0~N3では各群間で有意差を認めている.Stage分類は両規約の隔たりは顕著で,UICC-StageⅡの半数以上がJPS-StageⅣに相当することになった.Stage別生存率ではJPSのほうがUICCより層別化が優っていた.以上より,簡便さという点ではUICCが優るものの,信頼性および再現性という点ではJPSがより優っていることが示された.

超音波集検とその成果

著者: 田中幸子 ,   中泉明彦 ,   井岡達也 ,   高倉玲奈

ページ範囲:P.1475 - P.1478

 浸潤性膵管癌の予後は非常に悪く難治癌とよばれているが,早期診断例では長期生存も期待できる.膵癌を予後のよい早期に診断するための方法として,超音波による検診を取り上げ,その問題点と解決の糸口について解説した.また,筆者の施設で行っている膵癌に特化した超音波を主体とした定期検診システムについても紹介した.今後の方向としては,肝・胆・膵・腎など多種類の臓器の癌を一度に発見できる超音波検診を普及させること,その中から積極的に膵癌の間接所見を拾い上げ2次精査を行うこと,2次精査で膵癌を否定された場合にも高危険群に対しての膵に重点を置いた定期検査を行うことの3点が重要であろうと考える.

ヘリカルCTとMRIによる診断

著者: 曹博信 ,   市川智章 ,   荒木力

ページ範囲:P.1479 - P.1487

 膵の画像診断でとくにCT,MRIについて述べる.空間分解能にすぐれたCT,コントラストにすぐれたMRI,なかでも主膵管の情報,液体成分の描出にすぐれたMRCPを含め,使い分けていくのが重要となる.膵癌は線維成分に富む乏血性硬性癌であるため,ダイナミックCTにおいて,正常膵実質が最もよく造影されるタイミングでは膵癌は低吸収域として描出され,遅延相では豊富な線維成分を反映して正常膵実質より高吸収域として描出される.

 膵癌の画像診断は,肺癌と同様に治療方針(手術適応の有無)のためのstagingがとても重要である.とくに前方・後方組織浸潤,脈管浸潤,リンパ節転移の有無については最近登場したMDCTによるMPRでの多断面方向からの診断が有用である.鑑別診断としては腫瘤形成性膵炎が最も重要であるが,他の疾患とあわせて簡単に鑑別を述べる.

浸潤性膵管癌における内視鏡的診断法

著者: 相浦浩一 ,   熊井浩一郎 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1489 - P.1494

 浸潤性膵管癌におけるERCPの診断的意義は,MRCPなどの出現により,よりいっそう精密な読影が要求され,また,経乳頭的診断,治療のアプローチへの一過程との位置づけが強くなってきた.したがって,症例ごとにその目的と検査の組み立てをあらかじめ計画しておくことが大切である.ERPに引き続いて施行されるERP下生検,擦過細胞診,さらに膵液採取による細胞診を組み合わせることにより,膵癌の病理学的診断が可能となる.さらに早期膵癌の診断のためには,膵癌症例の高危険群の設定と,精度の高い詳細な膵管(とくに分枝膵管)像,そして癌に特異的な分子生物学的情報が今後ますます要求されてくるものと思われる.

膵癌の標準的な術式はなにか

著者: 天野穂高 ,   高田忠敬 ,   安田秀喜 ,   長島郁雄 ,   吉田雅博 ,   三浦文彦 ,   豊田真之 ,   井坂太洋 ,   和田慶太 ,   高木健司

ページ範囲:P.1495 - P.1498

 膵癌の長期生存には,癌遺残を認めない切除(R0)が唯一の方法であるが,術式は施設間で異なる.現在の膵癌切除の対象例の多くは進行癌であり,進行癌でR0を可能とするにはどうすべきかを考えた標準術式を決定する必要がある.根治性,安全性,QOLを考慮した場合,現時点での標準術式は胃や十二指腸球部の浸潤,胃周囲リンパ節転移を伴わない症例ではPPPDを選択し,門脈浸潤例では門脈切除を施行,D2リンパ節郭清および上腸間膜動脈右側の神経叢切除を伴う後腹膜郭清と考えた.合理的な膵癌の標準術式を明らかにするためには,今後のRCTによる検討が必要であると考えられた.

高度進行膵癌の治療法の選択

著者: 上坂克彦 ,   梛野正人 ,   新井利幸 ,   西尾秀樹 ,   湯浅典博 ,   小田高司 ,   前田敦行 ,   江畑智希 ,   金本秀行 ,   伊在井淳子 ,   二村雄次

ページ範囲:P.1499 - P.1503

 進行膵癌では,遠隔転移や明らかな大動脈周囲リンパ節転移がない場合,門脈系,動脈系,膵外神経叢への浸潤の有無と程度に着目して手術適応と術式を決める.門脈系への浸潤に関しては,門脈狭窄・閉塞によって著明な側副血行路が形成されている場合には手術適応はないが,それ以下の浸潤の場合は門脈合併切除の適応がある.動脈系については,癌の主座にかかわらず上腸間膜動脈浸潤には手術適応はない.膵頭部癌では,総肝動脈~固有肝動脈浸潤は原則的には手術適応はないが,膵体尾部癌では総肝動脈・腹腔動脈の浸潤にはAppleby手術変法の適応がある場合がある.主要動脈周囲の神経叢に浸潤がある場合の手術適応は,動脈系への浸潤の場合とほぼ同じである.今後は,進行膵癌の手術適応や術式選択に関して,無作為比較試験によるevidence levelの高い研究結果を本邦から発信していくことが求められている.

補助療法の考え方

著者: 小菅智男 ,   島田和明 ,   佐野力 ,   阪本良弘

ページ範囲:P.1505 - P.1508

 膵癌は切除成績が不良なことから補助療法の必要性が指摘されてきた.アメリカのGITSGは1985年に無作為化比較試験(RCT)の結果を報告し,術後,放射線化学療法が有用であるとした.しかし,最近になりヨーロッパからこれを否定する報告が続いた.現時点では,膵癌に対する確立した補助療法はないと考えるのが妥当である.このようにRCTでありさえすれば信頼性が高いとする従来の考え方では,かえって長期間の混乱を招く危険性があることから,RCTであっても信頼性を吟味する必要があると考えられるようになってきた.

膵癌に対する遺伝子治療の現況

著者: 松本伸明 ,   阿部展次 ,   杉山政則 ,   金井好克 ,   遠藤仁 ,   跡見裕

ページ範囲:P.1509 - P.1513

 膵癌の治療として,外科手術,化学療法や放射線療法を組み合わせた集学的治療などが行われているが,いまだ満足する有効な治療法は確立されていないのが現状である.膵癌全体の治療成績の向上のためにはまったく新しい観点からの治療法の開発が必須である.遺伝子治療は一部の疾患において臨床的有効性が認められつつあり,癌の治療分野においても新たな展開をみせはじめている.難治癌の代表格である膵癌に対する遺伝子治療は,新たな戦略として集学的治療における重要な選択肢の一つとして発展していくものと考えられる.

目で見るカラーグラフ 世界に向かう乳腺疾患診療の新技術・7

乳腺良性腫瘍に対する内視鏡下手術

著者: 北村薫 ,   定永倫明 ,   古山正 ,   長谷川博文 ,   住吉康平 ,   斎藤元吉 ,   北村昌之 ,   杉町圭蔵

ページ範囲:P.1447 - P.1454

はじめに

 乳腺内視鏡手術は1995年に報告がみられて以来1),近年ではわが国でも実施施設が増加してきた2,3).とはいえ,早期から積極的に取り組んでいる施設ではすでに5年をこえる長期成績が出て,その根治性は証明されているにもかかわらず,腹腔鏡や胸腔鏡を用いた一般外科領域の手術に比べて普及の速度は非常に緩やかなものといわざるを得ない.

 筆者らは1997年より,主に若年者の良性乳腺腫瘍を対象に独自の内視鏡下術式を考案し,その手技が確立してからは乳癌に対しても積極的に臨床応用してきた4,5)

 本稿では,良性腫瘍摘出術に関する手術手技の詳細をわかりやすく解説するとともに,一般病院で実践可能な治療スケジュールとコスト対策について言及する.

目で見る外科標準術式・42

ヘルニア システム法(内鼠径ヘルニアの場合)

著者: 山本俊二 ,   成田匡大 ,   亀山謙 ,   田村信子 ,   岡本正吾 ,   坂野茂 ,   山本正之

ページ範囲:P.1515 - P.1524

はじめに

 Open tension-freeヘルニア修復術は成人鼠径ヘルニアに対する標準術式となっているが,現在いくつかの形態のメッシュが用いられており,それぞれの適応については議論がある.プラグでヘルニア門を閉鎖するmesh plug法(メディコン,大阪)はプラグの硬結収縮やプラグとヘルニア門との隙間からの再発の危険がある.特に内鼠径ヘルニア症例では鼠径管後壁(Hesselbach三角)全体がヘルニア門になるためプラグのみではヘルニア門の閉鎖は不十分であり,メッシュ・シートでHesselbach三角全体を広く覆うことが必要である.一方,メッシュ・シートをonlay patchとして鼠径管後壁にあてるLichtenstein法は精索を通すスリットからの再発の危険がある.小切開創から腹膜前腔に特製のメッシュ・シートをunderlay patchとして留置するKugel法(メディコン,大阪)は術野の確保が困難であり,またメッシュの固定が確実でないため再発の危険がある.これらに対して,2枚のメッシュ・シートからなるPROLENE(R)Hernia System(ジョンソン・エンド・ジョンソン,東京)は下部パッチはコネクターとともに風呂桶の底の栓のように腹膜前腔側からヘルニア門を閉鎖するので,内鼠径ヘルニアでの大きなヘルニア門(Hesselbach三角)にも有用である.外鼠径ヘルニアでは内鼠径輪からの腹膜前腔の剥離は4~5cmくらいが限界であり,この剥離範囲に応じて下部パッチの大きさをトリミングする必要があるが,内鼠径ヘルニアではヘルニア嚢の処理の段階で腹膜前腔を広く剥離しており,下部パッチの腹膜前腔への挿入および展開は容易であり,また,下部パッチをトリミングする必要もない.

 本稿では,右側の内鼠径ヘルニアに対するヘルニア システム法について図説を中心に述べる.

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・11―ライバル:Eduard Albert

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1525 - P.1528

 長年にわたりウィーン大学第一外科を主宰していたが,極めて保守的かつ独善的で協調性に欠けたため,「変人教授」と揶揄されたDumreicherの死後(1880年)の教授選考の際,Billrothは愛弟子Vincenz Czerny(1842~1916,図1)を,自信を持って強く推した.そして,教授選挙においては業績,実力ともに申し分ないCzernyが過半数を獲得し,第一外科教授に選ばれかけた.ところが,そのときAlbertとInnsbruck時代に親交のあった法医学教授のHoffmannら親Albert派(言い換えれば,反Billroth派)の働きかけが功を奏してその決定が覆るところとなり,最終的にはときの皇帝フランツ-ヨゼフの裁可により,Eduard Albert(1841~1900,図2)が第一外科の次期教授に選出されることとなったのである.折りしも,Billrothが弟子たちとともに初めて胃癌に対して幽門切除を成功裡に行った1881年の2月のことであった.正義感の強いBillrothにとって,業績,実力とも申し分ないCzernyの教授就任が土壇場で覆されたことは痛恨の極みであったようで,堺哲郎氏の評伝(臨外29巻「Theodor Billrothの生涯」)によれば,1881年2月のCzerny宛の書簡では次のように述べて,その義憤を吐露しているという.すなわち「Unsinn!Du siegst Gegen die Dummheit kampfer selbest Gotter vergebens!」=「(彼らのしたことは)なんとばかげたことか! 君は教授の座を勝ち得ていたのだ! 神よ(彼らの)愚行と闘うことを許し賜え!」と.

 そして,このときの教授選考に際して生じた軋轢から,第一外科と第二外科の確執は決定的に根深いものとなった.しかし,1892年Billrothの教授就任25周年を祝う祝賀会に長年の怨念を捨ててAlbertが出席し,Billrothに対して最高の賛辞を述べたことにより,両外科教室間の確執は一気に氷解したのであった.この和解を反映しているのがその後の人事で,Albertの次の教授には第二外科からBillrothの弟子のEiselsbergが,またBillrothの次の教授であったGussenbauerの次の教授にはAlbert門下のHochennegが就任している(前号に「ウィーン大学外科の流れ」を呈示しているので参照されたし).

 さて1881年以降,Billrothのライバルとも言うべき存在となったEduard Albertの略歴を述べていきたい.

医療制度と外科診療11

医療に関する基本的事項(9)―患者の権利と義務

著者: 飯田修平

ページ範囲:P.1530 - P.1531

患者には権利と共に義務もある

 本欄ではすでに,“患者第一の医療をするべきである”,“患者の意向は絶対である”を検討した.

 今回は患者の権利と義務を検証したい.

病院めぐり

北野病院外科

著者: 高林有道

ページ範囲:P.1532 - P.1532

 当院は,大正14年に大阪在住の商家「田附政次郎氏」の寄付により「財団法人田附興風会」が設立され,昭和3年に京都大学医学部を基盤として「財団法人田附興風会医学研究所並びに北野病院」が開院されました.その後,戦争のため一時閉院となりましたが,昭和25年に京都大学医学部附属病院の分院的な立場で再開院され,平成13年9月新病院(写真)として再出発し,大阪北部の中核病院(梅田近隣に位置する)として活動する実働75年の歴史を持つ病院として今日に至っています.

 開院当時は病床数120床でしたが,現在は741床,常勤医師数130名を擁する総合病院となっています.

富山県立中央病院外科

著者: 薮下和久

ページ範囲:P.1533 - P.1533

 当院は,昭和26年4月に開設され,病床数810床(一般710床,結核20床,精神80床)の総合病院であり,富山県の中核病院,また富山県がん拠点病院として位置づけされています.当院の特徴は,公立病院では日本初の緩和ケア病棟や,第3次救命救急センター,母子医療センター,和漢診療部門を有し,唯一の県立総合病院です.

 外科は,消化器一般外科,乳腺外科を担当し,スタッフは小西孝司病院長の下9名で構成されています.当科は,日本外科学会,日本消化器外科学会の認定施設であり,また金沢大学医学部,富山医科薬科大学医学部の臨床教育病院として,臨床研修医の指導にあたっています.外科における平成14年度の1日平均外来患者は91名,入院患者78名,紹介患者率31.3%,平均在院日数22.9日,病床利用率94.0%という現状です.平成14年度の外科総手術件数は1,063件と多く,少ないスタッフで,毎日多々の手術を行っています.

文学漫歩

―吉行淳之介(著)―『暗室』―(1973年,講談社 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.1534 - P.1534

 私の実家は開業医で,かつてレントゲンフィルムを現像していた暗室がある.かくれんぼでは最適の隠れ場所だったが,酸性の薬液の匂いと,ほの暗い赤ランプが怖くて長居はできなかった.現在は物置と化して蜘蛛の巣が張り,棚には旧いホルマリン漬けの標本瓶も並んでいて,子供をお仕置きに閉じこめるには恰好の場所である.

 私は現在は大人しい良い子であるが,お寺の幼稚園では先生を犬のウンコを充填した落とし穴にはめたりして,「蛇の部屋」という大蛇の襖絵の反省室に何度も入れられた.母の実家には土蔵があって,ここにも悪戯をする度に入れられたが,祖母の長持におしっこをかけるぞと言って出して貰っていた.

日常診療に役立つPalm活用術・5

PalmでPCファイルを持ち歩く

著者: 讃岐美智義

ページ範囲:P.1535 - P.1539

はじめに

 Palmでファイルを持ち歩くのは,どんな場合だろうか.一番多いと思われるのは,忘れたときにちょっと見るための自分のためのメモであろう.次に,予定表や患者家族との面談などのスケジュール,院内薬品集や今日の治療薬などの一般薬品集,患者データベースなどが思い浮かぶ.また,患者説明用のイラストや表なども携帯してすぐに閲覧できれば便利であろう.今回は,PCで作成された書類,とくにマイクロソフトオフィス(Word,Excel,PowerPoint)書類やJPEGなどの画像ファイル,PDFファイルをPalmで持ち歩き活用することを考える.

私の工夫―手術・処置・手順

鎖骨下静脈から中心静脈カテーテルを安全に挿入するための7ステップ

著者: 下間正隆 ,   竹中温

ページ範囲:P.1540 - P.1541

 中心静脈カテーテル(以下,CVC)は周術期の栄養管理,集中治療にきわめて有用である.CVCの挿入は,気胸をはじめとする種々の機械的合併症が起こりうる侵襲的処置であるが,CVCを安全に挿入する方法について系統立てて記述したものは少ない.今回筆者らは,右鎖骨下静脈から中心静脈カテーテルを安全に挿入するための7ステップについて検討したので報告する.

臨床報告 1

胃癌の播種に伴う急性虫垂炎の1例

著者: 神保雅幸 ,   関根義人 ,   郷右近祐司 ,   遠藤忠雄 ,   菅井有 ,   中村眞一

ページ範囲:P.1543 - P.1547

はじめに

 胃癌の経過中に転移あるいは播種に伴うまれな合併症としての急性虫垂炎があり1~3),胃癌の多い本邦でも報告例は30例に満たず,虫垂切除後長期生存例の報告は非常に少ない.

 筆者らは残胃癌手術後に播種に伴う急性虫垂炎の1例を経験し,長期生存が得られたので,文献的考察を加えて報告する.

総肝管に陰影欠損を認めた肝囊胞腺腫の1例

著者: 劒持雅一 ,   森下紀夫 ,   石井博 ,   青木秀樹 ,   常光謙輔

ページ範囲:P.1549 - P.1553

はじめに

 肝嚢胞腺腫はまれな疾患であり,特異的な症状はなく,ときに嚢胞が大きくなり腹部腫瘤や腹痛,腫瘤による胆管の圧迫から黄疸を併発して発見される場合があるが,小さなものは放置される場合が多い.今回,筆者らは膀胱癌術後の定期検査で肝内胆管の拡張を指摘され,総肝管に陰影欠損を伴う肝嚢胞腺腫を経験したので報告する.

胆管内腔に膨張型発育を認めた早期胆囊管癌の1例

著者: 後藤康友 ,   寺崎正起 ,   久留宮康浩 ,   新宮優二 ,   夏目誠治

ページ範囲:P.1554 - P.1556

はじめに

 胆嚢管癌は比較的まれな疾患とされてきたが,近年その報告例は増えている.今回筆者らは,胆管内に乳頭状に発育し,閉塞性黄疸をきたした胆嚢管癌の1例を経験したので報告する.

針生検にて胸壁転移をきたした肝細胞癌の1例

著者: 成田公昌 ,   山村剛司 ,   増田亨 ,   矢野秀 ,   坂倉究 ,   草野五男

ページ範囲:P.1557 - P.1560

はじめに

 エコー下の肝生検は肝細胞癌の診断において決定的な方法であるが,穿刺経路にseedingを起こす合併症が知られている.かつては穿刺経路seedingの確率は極めて低いとみられていた1)が,近年エコー下の肝生検の長期予後が報告されるようになり,以前にいわれていたよりこの合併症の発生率が高いことが明らかになってきた2~4).今回筆者らは針生検による肝細胞癌胸壁転移の1例を経験したので,これに文献的考察を加えて報告する.

小児に発症した外傷性十二指腸閉塞の1例

著者: 渡邊常太 ,   大森敏弘 ,   中室誠

ページ範囲:P.1561 - P.1564

はじめに

 腹部鈍的外傷は肝・腎・脾・膵などの多臓器損傷をきたすことが多く,十二指腸の単独損傷は比較的まれである1).また十二指腸損傷は,損傷の形態により診断の困難性と手術成績の不良なことがしばし問題となる2).今回,筆者らは小児に発症した腹部鈍的外傷による十二指腸閉塞の1例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.

進行胃癌穿孔術後6年無再発生存の1例

著者: 倉立真志 ,   余喜多史郎 ,   矢田清吾 ,   宮内隆行 ,   兼田裕司 ,   山口剛史

ページ範囲:P.1565 - P.1568

はじめに

 進行胃癌が穿孔した場合,予後は不良といわれ1),長期生存例は比較的まれである.今回,進行胃癌穿孔手術後6年,無再発生存の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

食道ステント挿入直後に急速な多量の胸水貯留をきたした1例

著者: 山口祐二 ,   井上晴洋 ,   吉田達也 ,   岩下方彰 ,   薄井信介 ,   工藤進英

ページ範囲:P.1569 - P.1572

はじめに

 食道癌による悪性食道狭窄に対するステント挿入は標準的治療として広く行われている.しかし,ステント挿入に対する合併症の報告も多く,とくに化学療法,放射線療法後の挿入に対しては多くの合併症が報告されている3~9).今回,筆者らは化学療法後のステント挿入の後に,食道穿孔などを起こしていないにもかかわらず急速に多量の胸水貯留をきたし,残念ながら救命しえなかった症例を経験した.胸水貯留の原因が特定できず,原因検索に苦慮したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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