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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科58巻13号

2003年12月発行

雑誌目次

特集 内視鏡下手術で発展した手技・器具の外科手術への応用

内視鏡(胸腔鏡)下手術の呼吸器外科への応用

著者: 白日高歩 ,   岩崎昭憲 ,   白石武史 ,   山本聡 ,   平塚昌文 ,   三好立

ページ範囲:P.1591 - P.1595

はじめに

 胸腔鏡下手術が呼吸器外科に導入されて以来,従来からの開胸手術が種々の影響を受けてきたことは間違いない.その影響は手技的面あるいは手術器具の面において顕著である.今日のように各種の疾患において胸腔鏡手術と通常開胸手術の適応が確立され,それぞれの守備範囲が明らかとされてくると,呼吸器外科医はその両者に精通することが必要となってくる.これら2種の手術法を経験してきた呼吸器外科医であれば,手術現場において以下のような実感を持つに違いないと思われる.1)視野の限定された内視鏡手術に取り組んでいると,局所への術者の集中度が通常開胸以上にきわめて高度なものとなってくる.2)他方,このような状況から一転して慣れ親しんでいた開胸手術に復帰すると,これだけの広い視野および可動領域を与えられてよいのだろうかといった一種の驚きのような印象を持たされる.今後,どちらか一方の手技のみですべての領域の呼吸器外科手術をカバーすることはおそらく困難となろう.例えばごくポピュラーな自然気胸の手術にしても,今日では胸腔鏡手術がスタンダードであり,きわめて稀にしか開胸手術は実施されない.一方,bulkyなリンパ節転移のある肺癌手術に胸腔鏡で取り組むという呼吸器外科医は現時点では皆無である.要は各々の手術が持つ長所を修得し,自由に使い分けることであり,新しく開発された優れた手技あるいは器具などを積極的に利用する柔軟な姿勢であろう.安全で信頼性の高い器具や,患者にとって非侵襲的な手術法が開拓されているにもかかわらず,それらに背を向けて古い方法や器具に執着するのは厳に戒めるべきである.

 胸腔鏡手術が開胸手術に及ぼす影響については,その他にも周術期管理,クリニカルパスあるいは在院日数など種々あげられるが,ここでは手技ならびに器具面の影響を中心に述べることとする.

低侵襲心臓手術における手術器具の発展と改良

著者: 森光晴 ,   四津良平

ページ範囲:P.1597 - P.1603

 心臓外科手術は他の領域と同様,低侵襲化の方向に向かっている.現在,本邦で行われている低侵襲心臓手術(minimally invasive cardiac surgery:以下,MICS)は多くあるが,筆者らは主に胸骨部分切開によるいわゆるstandard MICS,右第4肋間を主とした小開胸,内視鏡補助下で行うport-access MICSによる弁膜症,心房中隔欠損症,左房粘液腫などの手術を多数積極的に行っている.こういった術式では術野が狭小なため,鉗子やカニューレ,大動脈遮断法に至るまで様々な手技や器具が開発,改良されてきた.その一部は通常の胸骨正中切開による開心術に応用されている.心臓外科手術は今後も新しい手技や器具の開発,改良に伴い,さらなる低侵襲化に向かっていくことが期待される.

内視鏡下食道切除術で発展した手技,器具の開胸手術への応用

著者: 川原英之 ,   立松秀樹 ,   山高浩一 ,   櫻井孝志 ,   山本貴章 ,   有沢淑人

ページ範囲:P.1605 - P.1608

 内視鏡下手術で使用される手法や機器の中からopen surgeryに利用可能な幾つかを紹介した.スコープを利用することで手術操作の詳細を助手らがリアルタイムに観察でき,また,照明の代用ともなり,明るい術野が得られる.体外結紮器を指先の届きにくい深部の結紮に使用すると比較的容易に結紮できる場合がある.一方,内視鏡下手術により早期離床,早期退院が一般化し,習慣的に行われてきた術後管理法にも大きな変化が見られつつある.

超音波凝固切開装置によるリンパ節郭清および自動縫合器による胃切除後再建

著者: 松井英男 ,   宇山一朗 ,   杉岡篤 ,   蓮見昭武 ,   大谷吉秀 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1609 - P.1613

 腹腔鏡下手術に用いられる手技や器械の開腹手術への応用につき,胃癌手術を例にとり概説した.リンパ節郭清における超音波凝固切開装置の応用は開腹手術においても有用であり,結紮の少ない,体内に異物を極力残さない手術が簡便に施行できるが,器械の特性を理解し,いくつかの注意点を守って使用することが肝要である.また,胃切除後の再建では腹腔鏡下手術用の自動縫合器を用いることにより,狭い術野であっても残胃空腸Roux-en-Y吻合や食道空腸吻合が消化管の開放を最小限にして簡便かつ確実に施行できる.今後,コスト面での検討も必要であるが,開腹手術そのものも発展することが予想される.

内視鏡下手術から学ぶ大腸外科

著者: 磯本浩晴 ,   赤木由人 ,   松本敦 ,   貝原淳

ページ範囲:P.1615 - P.1619

 最近,腹腔鏡下手術で開発された器具や手技が一般の開腹手術の治療に応用されている.

 そのうち医療機器として,超音波凝固切開装置(LCS)の組織損傷の少ない蛋白凝固による止血・切離の利点は高く評価され,貢献度が高くなっている.

 その他の電気メス,ヘモロック結紮システムなどの応用について述べた.また内視鏡下手術の最大の長所は低侵襲性の手技であるので,その概念から派生したopen surgeryとしての低侵襲性への工夫としての小切開創による手術や内視鏡下手術から発展したハンドアシスト法とその器具の利用についても述べた.

内視鏡下肝切除術における手術手技,器具の開腹肝切除術への応用

著者: 金子弘真 ,   田村晃 ,   大塚由一郎 ,   高木純人 ,   渡邊正志 ,   中崎晴弘 ,   柴忠明

ページ範囲:P.1621 - P.1624

 内視鏡下手術の飛躍的普及に伴い,内視鏡下手術により再確認された手技や内視鏡用手術器具が外科開腹手術にも応用されるようになっている.

 内視鏡下肝切除術では凝固操作のみで肝切離を行うことができる浅層をできる限り長く,広い面を得ながら太いグリソン枝や肝静脈枝が露出される深層切離の視野を良好に保つことが重要である.そのため超音波凝固切開装置,外科手術用超音波メス,マイクロ波凝固装置などの器材の適切な使用法により開腹肝切除における手術手技操作を再確認することもある.

 内視鏡用自動縫合器を用いることにより開腹下肝右葉,左葉切除におけるグリソン一括処理や肝静脈の切離が安全に行える.

 今後も両術式の発展が相互の手術手技を向上させるものと期待される.

超音波外科吸引装置,超音波凝固切開装置および自動吻合器による膵臓切離

著者: 黒田嘉和 ,   鈴木康之 ,   藤野泰宏 ,   谷岡康喜 ,   酒井哲也 ,   市原隆夫

ページ範囲:P.1625 - P.1629

 膵臓外科における膵臓の切離は膵液瘻発生に直接関わる重要な手技であり,最近は超音波外科吸引装置,超音波凝固切開装置および自動吻合器などの使用で好成績が報告されている.これらの器具を用いた膵臓の切離手技は内視鏡下手術でも同時進行的に発展を見せている.超音波外科吸引装置による膵臓の切離では分枝膵管まで露出して確実に結紮・切離できるので,膵断端の虚血や挫滅の原因になる実質の糸針をかけずにすみ,膵液瘻の発生に関して良好な臨床成績が報告されている.超音波凝固切開装置では短時間に切離が完了し,十分な止血効果があるが,膵液瘻発生に関しては今後の検討を待たねばならない.また,自動吻合器は欧米を中心にTA-55(R)やEndo GIA(R)を用いた報告が多い.短時間で切離が可能である.断端の組織挫滅が術後の膵液瘻を惹起しないかが不安であるが,一般に安全性は高いと報告されている.内視鏡下膵臓手術も含め,膵臓の切離法に関しては短期・長期的な安全性,難易度,経済性など多角的な評価が必要である.

カラーグラフ 世界に向かう甲状腺疾患診療の新技術・1

甲状腺結節の超音波画像によるコンピュータ支援診断

著者: 栗田武彰 ,   佐々木賀広 ,   加藤智 ,   板橋幸弘 ,   小田桐弘毅 ,   羽田隆吉

ページ範囲:P.1583 - P.1590

どう読影されますか?

 呈示した超音波画像をどう読影されますか.所見を述べ,診断をつけてください(図1a,b).

視覚的印象による診断基準の現状

 われわれは甲状腺結節の超音波所見の特徴を言葉で表現することが可能であり,診断基準には所見が定性的に示されている(表1).ほとんどの甲状腺結節は甲状腺の内部に存在する構造物として認識される.超音波画像上の結節の特徴は大きく分けて,形状とエコー強度の空間分布に大別される.甲状腺癌と診断されるためには,癌が備えるべき特徴がはっきりした形で医師に共通認識として共有されることが必要である.ところが,診断は同程度の経験を積んだ医師の間でさえ食い違い,いわんや経験年数の異なる医師の間では正反対の結論となることすらある.そこで診断基準なるものが登場し,その認識の差を少しでも埋めようとしている1).しかしその診断基準を使用しても所見の表現,さらに診断が異なることがまれではない.その原因は視覚的特徴の認識は数値として定量しがたい性質のものであることが第一に考えられる.

特別寄稿

社会鋪装国日本の医師―その社会的責任

著者: 本田宏

ページ範囲:P.1631 - P.1639

「クリプトクラシー国家日本」

 「日本はデモクラシーを装っているが,その実態は国家が国民から収奪して,一部の人間が私腹を肥やすクリプトクラシー政治体制だ」.ニューヨーク市立大学大学院教授の霍見芳浩氏はブッシュ政権が誕生した頃,米国政府内部でこう囁かれていたと警告した1).「クリプトクラシー?」は「収奪,盗賊」という意味だそうだ.この言葉,私は初耳だったが,果たして本誌の読者で聞いたことがある方はどれだけいるだろうか.

 年ごとに厳しくなる医療現場に疑問をもち,5年前に発足した「医療制度研究会」で日本の医療制度やそれを取り巻く政治や経済などについて勉強を続けてきた.その結果,日本の医療環境の荒廃とこの「クリプトクラシー」が見事にシンクロしていることが浮かび上がってきた.本論では日本の医療制度が陥っている危機的状況とその病理を概観し,私達医療関係者がこれからどう行動すべきか私見を述べさせていただきたい.

近代腹部外科の開祖:Billroth

ビルロート余滴・12―ドイツ外科学会とBillroth

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1640 - P.1642

 1870年7月に勃発した普仏戦争に際して,Billrothは弟子のCzernyとともに,このときはウィーン大学にあったため,オーストリアからの篤志救護団の「外国人医師」として,戦場となったザール地方へと向かい,寝食を忘れて戦傷者の治療にあたった(図1).このときBillrothは指揮者としての才能を十分に発揮し,新設されたマンハイムの野戦病院にて戦傷者の治療を体系立てて行ったのである.さらに,Billrothはこのときの軍陣外科の経験を「ベルリン臨床週報」に20数回にわたって報告した.そして,この篤志救護の功績から母国ドイツから鉄十字勲章を授与された.弟子のEiselsbergによれば,Billrothは終生この勲章を一番の誇りにしていたという(図2).

 その後,普仏戦争が終結した1872年に「ドイツ外科学会(Die Deutschen Gesellscaft fur Chir-urgie),図3」が創設されたのである.図3に示した写真は,ドイツ外科学会の総本山ともいうべき「Langenbeck-Haus」に飾られた壁画であり,この中には創設の際に中心となった外科医達が描かれている.彼らはBillrothと同世代であり,各自外科学史上に輝く業績を残しているので,人物像とともに紹介する.なお,外科学会創設に関してはBillrothへ事前の相談はなかったようである.Billroth自身も,業績の発表というものはお祭り的になり勝ちな学術集会においてではなく,原著論文として紙上発表すべきものと考えていたようで,Billroth自身はあまり外科学会総会には出席していない.このようにドイツ外科学会にはあまり協力的ではなかったBillrothではあるが,1887年にはLangenbeckに次いで二人目の名誉会員に推薦されている.なお,ドイツ外科学会総会は1892年から前述したベルリンの「Langenbeck-Haus」で定期総会が開催されるようになった.

文学漫歩(最終回)

―トールワルド(著),大野和基(訳)―『外科の夜明け』―(1995年,小学館 刊)

著者: 山中英治

ページ範囲:P.1643 - P.1643

 忘年会シーズンは夜間救急外来に酔っ払いが増える.気持ちが大きくなり判断能力などが低下するため,喧嘩や転倒などによる外傷が多い.共通点は当然酒臭いこと,「大丈夫,酔ってない」と繰り返すこと,傷を縫合する際にあまり痛がらないが,よくしゃべって,じっとしていないことなどである.最近は若い女性の泥酔も増えた.女性に幻想を抱く私は,煙草をふかす妊婦とともに最も見たくない姿である.かく言う私も泥酔して余計なことをしゃべったり,目覚めると手足に皮下出血があったり,どうやって帰ったか覚えていないことなどは日常茶飯事であるので,当直でも酔っ払いには比較的寛容である.

 『外科の夜明け』によると麻酔が開発されるまで,欧米ではブランデーを大量に飲ませるのが一般的であったそうだ.確かに泥酔すれば皮膚縫合程度なら無麻酔でできるが,手術となると暴れて気絶するであろう.本書では麻酔のない時代の拷問のような手術の様子がリアルに描かれている.麻酔の発見により,内科に比べて野蛮(今でも内科医はそう思っているような気がするが)とされていた外科医の地位も向上した.稀代の名外科医で冷徹なワレン教授が,麻酔の成功に涙を流して手術を遂行するシーンは感動的である.

医療制度と外科診療 最終回

医療に関する基本的事項(10)―医療の基本的事項

著者: 飯田修平

ページ範囲:P.1644 - P.1645

連載を終わるにあたり

 最終回は医療の基本的事項を再検討したい.

日本の医療制度は特殊か

 1.日本は特殊か

私の工夫―手術・処置・手順

陰囊巨大鼠径ヘルニア例やパンタロンあるいは再発鼠径ヘルニアに対する手術の注意点と工夫

著者: 岡崎誠

ページ範囲:P.1646 - P.1647

 近年,成人鼠径ヘルニアの手術はメッシュを使用したtension-freeの手術法が標準術式になっている.メッシュを使用するようになり,従来法よりさらに詳しい解剖の知識や手術の技術が要求される.また実際の手術では典型例ばかりでなく,再発例,陰囊が巨大に腫脹した巨大ヘルニアや腹腔内組織と癒着が強い例や,内・外鼠径ヘルニア合併例(パンタロンヘルニア)などに遭遇する.そのときの注意点や工夫点を検討した.

病院めぐり

京都第二赤十字病院外科

著者: 竹中温

ページ範囲:P.1648 - P.1648

 京都第二赤十字病院は明治45年に日本赤十字社の救護所として開設され,大正15年5月1日病床数25床の「日本赤十字社京都支部療院」として発足し,昭和18年には病床数100の「京都第二赤十字病院」と改称され,現在の地に移りました.昭和31年にはわが国では初めての救急専門病院として「救急分院」(病床数40床)を開設し,救急医療の先駆的役割を果たしてきました.昭和53年にはこの救急分院が現在の本院の敷地内に移り,京都で初の救命救急センターとして開設されました.現在では,21診療科,640床の基幹病院として京都市民の健康と福祉の向上に携わっています.

 当院は京都市のほぼ中心部に位置しており,京都市営地下鉄の「丸太町」で下車し徒歩5分の所にあります.近隣には京都府庁,京都府警本部,NHK,KBS京都放送局などの中枢機関があり,また京都御所,二条城などの名所旧跡が数多く存在しています.

岐阜社会保険病院外科

著者: 秋田幸彦

ページ範囲:P.1649 - P.1649

 当院は戦後の混乱期に国民の医療を守るべく社会保険庁が全国に設置した,現在52病院ある社会保険病院のひとつです.

 開設は昭和21年5月で,今年創立57周年を迎えました.病院は岐阜県の中濃地区,可児市にあります.市内には公立,公的病院がなく,当院に市民病院としての役割が期待されています.開設時は21床でした病床が,現在は一般病床250床で18標榜診療科に常勤医師45名,非常勤医師30名体制の中規模病院です.

目で見る外科標準術式・43

Lichtenstein法

著者: 中嶋昭 ,   伴大輔 ,   佐藤康 ,   森園英智

ページ範囲:P.1651 - P.1658

はじめに

 成人の鼠径ヘルニアに対する術式はメッシュを用いた方法が標準となった.いわゆるtension free法の先駆的,代表的術式であるLichtenstein法は従来の自己組織によるヘルニア修復術に比較して手技的容易さ,低い再発率など数々の面で優れ,広く受け入れられた.また腹腔鏡下修復術を含めたその後の各種メッシュ修復術の展開に大いに貢献した.この術式について局所麻酔による手技を述べる.

日常診療に役立つPalm活用術・6(最終回)

Palm Desktopでデータ入出力

著者: 讃岐美智義

ページ範囲:P.1659 - P.1662

はじめに

 予定表,住所録,ToDo,メモ帳などのテキストデータは,PC側,Palm側のどちらで入力しても相互に同期がとれるようになっている.同期をとることをHotSyncとよび,クレードルとよばれるPCとPalmを接続する装置にPalmを載せてボタンを押すだけでデータのやりとりが可能である.アプリケーションソフトウェアも,この機能を使ってPCからPalmに組み込むことができる.PalmとPCとのデータの受け渡しに大きく関与しているのは,Palm DesktopというPC側の標準添付ソフトウェアである.今回は,Palm Desktopにどのようなデータを渡せばまとめてPalmに取り込めるのか,どのような形でPalm Desktopからデータが取り出せるのかを解説する.

臨床研究

急性無石胆囊炎―胆石症との比較

著者: 三枝伸二 ,   内野靖 ,   福元俊孝 ,   愛甲孝

ページ範囲:P.1663 - P.1666

はじめに

 急性無石胆囊炎は急性胆囊炎の5~10%を占め,急速な重篤化や穿孔の危険性があるため発症早期の診断,治療の開始が必要とされる.本症の臨床病理学的特徴を明らかにするため胆石症との比較を行った.

乳癌腋窩リンパ節転移陽性例に対する術前化学療法後センチネルリンパ節生検

著者: 尾浦正二 ,   平井一成 ,   吉増達也 ,   粉川庸三 ,   西田宗弘 ,   佐々木理恵 ,   岡村吉隆

ページ範囲:P.1667 - P.1670

はじめに

 乳癌手術における腋窩リンパ節郭清の主たる意義が正確なstagingにあるとみなされるようになってからは,レベル3までの完全な腋窩リンパ節郭清の意義が疑問視されるようになってきた.それ故,リンパ節サンプリングが腋窩リンパ節郭清にとって代わる可能性が示唆される1)とともに,リンパ節サンプリングよりも更に客観性の高いセンチネルリンパ節(SLN)生検が注目を浴びるようになっている.しかしながら,SLN生検の適応は腋窩リンパ節転移の可能性の低い症例に限定されているのが実情である2,3)

 今回,筆者らは腋窩リンパ節に転移を認め,術前化学療法(NAC)により腋窩リンパ節のdown-stagingが得られた症例に対してSLN生検を行ったので,少数例かつ短期結果ではあるものの,その初期成績を報告する.

原発性虫垂癌の11例

著者: 岡田健一 ,   貞廣荘太郎 ,   石川健二 ,   鈴木俊之 ,   幕内博康

ページ範囲:P.1671 - P.1674

はじめに

 原発性虫垂癌は稀な疾患である.術前診断が困難であり,急性虫垂炎同様の症状を呈して虫垂切除術が行われ,術後切除標本の病理学的検索によりはじめて虫垂癌と判明することが多い1,9,10,12).また術前の診断が困難であり,そのほとんどが進行癌として見つかる予後不良な癌である1).今回,筆者らは手術を施行した原発性虫垂癌の11例を経験し,その臨床的特徴を検討したので若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告 1

左水腎で発見され治癒的切除を行った下行結腸癌の尿管周囲再発の1例

著者: 岡田禎人 ,   鈴木勝一 ,   中山隆 ,   渡辺治 ,   多和田俊保 ,   線崎博哉 ,   稲垣宏

ページ範囲:P.1675 - P.1678

はじめに

 左結腸癌の左尿管周囲局所再発に対し切除を行ったという報告は稀で,自験例の他に1例の報告1)があるのみである.今回,筆者らは左水腎から局所再発を疑い,経過観察の後,腫瘍が比較的小さいうちに治癒的切除ができた下行結腸癌の尿管周囲再発症例を経験したので報告する.

胃軸捻転症を伴った食道裂孔ヘルニアの1例

著者: 高久秀哉 ,   山洞典正 ,   大西康晴 ,   多々孝 ,   斎藤英俊 ,   仁平武

ページ範囲:P.1679 - P.1682

はじめに

 食道裂孔ヘルニアは日常遭遇する疾患であるが,胃軸捻転症を伴った症例は筆者らが文献を検索した範囲内では45例と比較的少ない1).間膜軸性胃軸捻転症を伴った食道裂孔ヘルニアの1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

横行結腸と瘻孔を形成した壁外性発育型の胃腺扁平上皮癌の1例

著者: 田中浩明 ,   西口幸雄 ,   大平雅一 ,   平川弘聖

ページ範囲:P.1683 - P.1686

はじめに

 胃腺扁平上皮癌は1905年にRollestonら1)により最初に報告され,その発生頻度は低く,胃癌症例全体からみても0.2~0.6%程度と考えられている2).今回,筆者らはきわめて稀な結腸との瘻孔を形成する腺扁平上皮癌について報告する.

同時性肝腎重複癌の1手術例

著者: 重田博 ,   田中一郎 ,   小森山広幸 ,   萩原優 ,   山口晋

ページ範囲:P.1687 - P.1691

はじめに

 近年の超高齢化社会,平均寿命の延長,ならびに各種診断技術の進歩により無症状の癌が偶然発見されたり1),治療成績の向上により重複癌症例の発見頻度も増加している.その一方で同時性の肝腎重複癌は臨床上稀な疾患と考える.今回,筆者らは同時性肝腎重複癌の一期的同時切除術を施行した1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

他臓器浸潤をきたした胃内分泌細胞癌の1例

著者: 藤井正彦 ,   三宅秀則 ,   佐々木克哉 ,   高木敏秀 ,   鷹村和人 ,   田代征記

ページ範囲:P.1693 - P.1696

はじめに

 胃内分泌細胞癌は稀な疾患であり,腺癌と比較して予後不良である1).今回筆者らは壁外性に発育し,胆嚢,横行結腸に浸潤した胃内分泌癌の1例を経験したので報告する.

乳腺のinvasive micropapillary carcinomaの1例

著者: 小笠原豊 ,   桑田久子 ,   米原修治 ,   万代康弘 ,   大谷順

ページ範囲:P.1697 - P.1699

はじめに

 Invasive micropapillary carcinoma(以下,IMP)は1993年にSiriaunkgulら1)が浸潤性乳管癌の1亜形として報告してから,浸潤癌のなかでもリンパ管侵襲,リンパ節転移が高度で予後の悪い組織型として近年注目されている.

 腫瘍のなかでIMPの形態を示す部位がどの程度占拠したものをIMPとするかは報告により異なるが,IMPが腫瘍の全体を占めることは比較的稀とされている2).今回,腫瘤の全体がIMPの形態を呈した乳癌症例を経験したので報告する.

乳房温存術を施行した乳腺原発純粋型扁平上皮癌の1例

著者: 佐伯宗弘 ,   谷口巌 ,   中村嘉伸 ,   森本啓介 ,   山家武 ,   中本周

ページ範囲:P.1700 - P.1702

はじめに

 乳腺原発の扁平上皮癌は全乳癌中0.17~0.4%と比較的稀な乳癌の特殊型の1型である1,2).このうち純粋型はさらに少なく,0.046~0.28%とされている1,3,4).また,乳腺扁平上皮癌は通常の乳癌に比べ腫瘍径の大きいものが多く,乳房温存術報告例は本邦では自験例を含め9例のみである5~11).今回,純粋型の乳腺扁平上皮癌に対し乳房温存術を施行した症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

臨床報告 2

開腹膿瘍ドレナージにより救命しえたアメーバ性肝膿瘍の1例

著者: 高野学 ,   秋山裕人 ,   宮本修 ,   小野要 ,   生田宏次 ,   住田啓

ページ範囲:P.1703 - P.1705

はじめに

 赤痢アメーバ症は1980年代以降都市部を中心に急激に増加し,それに伴いアメーバ性肝膿瘍も増加している1).今回,筆者らはアメーバ性肝膿瘍に対し経皮的膿瘍ドレナージ(以下,PTAD)を施行した後破裂をきたした1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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