文献詳細
特集 内視鏡下手術で発展した手技・器具の外科手術への応用
内視鏡(胸腔鏡)下手術の呼吸器外科への応用
著者: 白日高歩1 岩崎昭憲1 白石武史1 山本聡1 平塚昌文1 三好立1
所属機関: 1福岡大学医学部第2外科
ページ範囲:P.1591 - P.1595
文献概要
胸腔鏡下手術が呼吸器外科に導入されて以来,従来からの開胸手術が種々の影響を受けてきたことは間違いない.その影響は手技的面あるいは手術器具の面において顕著である.今日のように各種の疾患において胸腔鏡手術と通常開胸手術の適応が確立され,それぞれの守備範囲が明らかとされてくると,呼吸器外科医はその両者に精通することが必要となってくる.これら2種の手術法を経験してきた呼吸器外科医であれば,手術現場において以下のような実感を持つに違いないと思われる.1)視野の限定された内視鏡手術に取り組んでいると,局所への術者の集中度が通常開胸以上にきわめて高度なものとなってくる.2)他方,このような状況から一転して慣れ親しんでいた開胸手術に復帰すると,これだけの広い視野および可動領域を与えられてよいのだろうかといった一種の驚きのような印象を持たされる.今後,どちらか一方の手技のみですべての領域の呼吸器外科手術をカバーすることはおそらく困難となろう.例えばごくポピュラーな自然気胸の手術にしても,今日では胸腔鏡手術がスタンダードであり,きわめて稀にしか開胸手術は実施されない.一方,bulkyなリンパ節転移のある肺癌手術に胸腔鏡で取り組むという呼吸器外科医は現時点では皆無である.要は各々の手術が持つ長所を修得し,自由に使い分けることであり,新しく開発された優れた手技あるいは器具などを積極的に利用する柔軟な姿勢であろう.安全で信頼性の高い器具や,患者にとって非侵襲的な手術法が開拓されているにもかかわらず,それらに背を向けて古い方法や器具に執着するのは厳に戒めるべきである.
胸腔鏡手術が開胸手術に及ぼす影響については,その他にも周術期管理,クリニカルパスあるいは在院日数など種々あげられるが,ここでは手技ならびに器具面の影響を中心に述べることとする.
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