文献詳細
文学漫歩(最終回)
―トールワルド(著),大野和基(訳)―『外科の夜明け』―(1995年,小学館 刊)
著者: 山中英治1
所属機関: 1市立岸和田市民病院外科
ページ範囲:P.1643 - P.1643
文献概要
『外科の夜明け』によると麻酔が開発されるまで,欧米ではブランデーを大量に飲ませるのが一般的であったそうだ.確かに泥酔すれば皮膚縫合程度なら無麻酔でできるが,手術となると暴れて気絶するであろう.本書では麻酔のない時代の拷問のような手術の様子がリアルに描かれている.麻酔の発見により,内科に比べて野蛮(今でも内科医はそう思っているような気がするが)とされていた外科医の地位も向上した.稀代の名外科医で冷徹なワレン教授が,麻酔の成功に涙を流して手術を遂行するシーンは感動的である.
掲載誌情報